前編では、Search ConsoleやGA4のデータを見ていても、「何をどう判断 すればいいのかわからない」という状態が、なぜ起こりやすいのかを整理しました。
後編では、その課題に対して、Business Architects(ビジネス・アーキテクツ、以下BA)が実際の業務の中でAI分析をどのように使い、判断をどう変えていったのかを事例として紹介します。
取り上げるのは、「AIによる記事リライト方針の策定」です。データをどう整理し、どこで人が判断し、どのように改善方針を決めていったのかを、STEPごとのプロセスを通して解説します。

実際に行ったAIを活用した分析の事例
ここからは、BAで実際に行ったAIを活用したコンテンツ分析・改善の事例を紹介します。
今回取り上げるのは、Search ConsoleやGA4などのデータをAIに読み込ませ、各記事がどのレベルのリライトを必要としているのかを整理した取り組みです。
従来は、担当者の経験や感覚に依存しがちだった「どの記事を」「どこまで見直すべきか」という判断を、AIによって構造化し、再現性のあるプロセスとして整理しました。
この事例のポイントは、AIに結論を出させるのではなく、判断材料を可視化させることにあります。
その結果、人は意思決定に集中できるようになりました。
なぜ「リライト方針の分類」を行ったのか
BAがこの事例で課題と捉えたのは、すべての記事を同じ前提でリライトしてしまう非効率さでした。一口にリライトといっても、
- 情報更新だけで足りる記事
- 構成を見直すべき記事
- テーマや役割から再定義すべき記事
が混在しています。
これらを一律に扱うと、工数配分や優先順位が曖昧になり、判断が属人化しがちです。
そこでBAでは、「どの記事を」「どこまで見直すべきか」を明確にするため、
AIを使って各記事の状態を整理し、リライト方針を事前に分類することを分析の起点としました。
AIを活用したリライト方針分類の6つのプロセス
リライト方針の分類は、「AIにすべてを判断させる」プロセスではありません。
AIで整理し、人が判断することを前提に設計した分析フローです。
プロセス全体は大きく分けて、以下の6つのプロセスで進めました。
- 目的を明確にする
- 目的に応じて改善すべき課題の仮説を立てる
- AIにデータを読み込ませ、現状を可視化する
- AIが課題解決のための「リライト分類」を提示する
- 分類に応じて改善を実行する
- データを再分析し、仮説が正しかったか検証する
このプロセスの特徴は、AIを「結論を出す存在」ではなく、判断に必要な情報を構造化・言語化する役割として使っている点です。
AIが示すのはあくまで「このデータから見ると、どのレベルの見直しが必要そうか」
という部分です。それをどう解釈し、どの改善を実行するかは、人が文脈を踏まえて判断します。
このセクションでは、このプロセスの一部を切り取って、BAがとくに意識してきたことをご紹介いたします。
STEP1:分析の前提「目的とゴール」の設定
リライト方針の分類に入る前に、BAではまず分析の前提条件を整理しました。
この工程は、AI分析の精度を左右する重要な準備フェーズです。
具体的には、次の流れで前提を固めています。
- 分析対象となる記事群を決める
- 今回の分析で改善したい「目的」を定義する
- 改善できたと判断できる「ゴール」を設定する
- 判断基準をチーム内で揃える
まず、どの記事を分析対象とするのかを明確にし、全体を見るのか、特定のカテゴリや課題をもつ記事に絞るのかを決めました。
次に、「なぜこの記事群を見直すのか」という目的を定義します。
流入改善、CTR改善、CVや回遊への貢献強化など、分析の軸を一つに絞ることで、AIに重視させる指標が明確になります。
あわせて、改善できたと判断できる状態(ゴール)を設定し、数値や状態定義をもとに評価基準を揃えました。
このように「分析対象→目的→ゴール→判断」の順で前提を固めたうえで、AIにデータを読み込ませ、次のステップ「現状の可視化」へ進みました。
STEP2&3:AIにデータを読み込ませ、現状を可視化する
分析の前提となる目的とゴールを定めたあとは、その目的を妨げている要因がどこにあるのかを仮説として整理し、AIを使って現状を可視化しました。
まず、データを見る前に「どこに問題がありそうか」を人が整理します。
- 情報が古く、ユーザーの期待と合っていない
- 競合が新しい強いコンテンツを出している
- 検索意図と表示キーワードが一致していない
- Googleのアップデートで評価軸が変化した
このような仮説を立てることで、AIにどこを重点的に見せるべきかが明確になります。
次に、これらの仮説を検証するため、Search Console・GA4・記事データ一覧をAIに読み込ませ、現状を整理しました。
- 流入がどこで落ちているのか
- CTR低下に共通する傾向はあるか
- どの検索意図で評価されているか
- 競合と比べて弱くなっている点はどこか
このように現状の全体像を可視化します。
この工程によって、立てた仮説が妥当かどうかを判断するための材料がそろい、
次の「リライト方針の分類」へ進む準備が整います。
STEP4:AIが提示した4つのリライト分類
AIによる分析結果をもとに、各コンテンツを「どこまで見直すべきか」という観点で4つに分類しました。
この分類は、仮説と現状データを突き合わせながら、改善の深さを事前に整理するために行ったものです。
- 情報の更新
内容の方向性は問題ないが、情報やデータが古く、最小限の更新で改善が見込める状態 - 構成や流れを見直す
テーマは適切だが、検索意図やユーザーの読み方と情報の並びが合っていない状態 - テーマや役割を再定義する
記事の方向性や想定読者が曖昧で、市場ニーズや検索意図と合っていない状態 - 統廃合や再編が必要
類似コンテンツが複数存在し、役割が重複してしまっている状態
この4分類を行ったことで、「これは情報更新だけで足りる」、「これは構成から見直さないと意味がない」といった形で、最初にどこまで手を入れるべきかを整理できるようになりました。
とくに、着手前に立ち止まってしまう場面が大きく減った点は、実務上で強く実感できたポイントです。
その結果、判断や進行の面で、以下のような変化が生まれています。
- 判断に迷う時間が減った
- 担当者による対応のばらつきが小さくなった
- 工数配分の説明がしやすくなった
この分類は、改善内容を決めるための答えではなく、次の判断をしやすくするための整理軸として機能しています。
STEP5:AIの分析結果を、どう最終判断に落とし込んだか
AIによってリライト方針が分類されたあと、BAではその結果を前提として、人が最終的な改善判断を行いました。
今回の分析では、次の流れで改善方針の決定と実行を進めました。
- AIが提示したリライト分類を確認する
- 分類内容が目的や文脈に合っているかを人が判断する
- 必要な改善レベルと作業範囲を決める
- 実際のコンテンツ修正を実行する
分類によって、情報更新で足りるのか、構成から見直すのか、あるいは統合や再編が必要かといった作業の深さが変わるため、最終判断は人が行います。
このように、AIは改善の方向性を整理する役割を担い、最終的な意思決定は人が行うことで、効率的かつ再現性のある改善プロセスを実現しています。
今回の事例で、人が補完した判断ポイント
AIのリライト分類は有効な判断材料ですが、今回の事例では、その結果を前提としつつ、人が最終判断を行いました。
主に次の3点を人が補完しています。
- 事業フェーズ
- 事業の意図やフェーズに関連した判断は、数値データだけでは完結せず、AIにすべてを任せると意思決定を誤る可能性があります。
- 今回の対象記事
BAとして今後強化したい事業領域に関連する内容が含まれており、単純な数値評価ではなく、事業戦略を踏まえたうえで人が判断しました。
- 既存コンテンツとの関係
- サイト全体での役割整理や、類似コンテンツの統合・棲み分けの判断は、個別データだけでは判断できません。
- 今回の分析対象
類似テーマの記事が複数存在しており、どの記事を残し、どう役割分担させるかは、サイト全体を俯瞰したうえで人が判断しました。
- ブランドトーン
- 表現の一貫性や語り口といったブランドトーンは、数値データでは測れないため、人の判断が必要になります。
- 表現のトーンや語り口
既存のBAsixsの記事との一貫性を保つ必要があり、最終的な表現調整は人が行いました。
このように、AIは「改善の候補」を示し、人が文脈を踏まえて最終判断を行うことで、現実的で実行可能な改善につなげています。
最終判断と改善実行の考え方
BAでは、リライトの最終判断と改善実行において、AIと人の役割を明確に分けています。
- AIの役割:選択肢を広げる
- 人の役割:最終的に決断する
AIは分析結果をもとに、
「どのレベルの見直しが必要そうか」
「どんな改善の方向性が考えられるか」
といった複数の選択肢を整理して提示します。
一方で、どの改善を採用し、どこまで手を入れるのかを決めるのは人です。
分類によって作業の深さが変わるため、目的や文脈を踏まえながら判断します。
- 情報の差し替え・更新
- 構成や見出しの見直し
- 内容の追加や強化
- サイト内導線の調整
- 統合・分割などの再編成
といった対応を、必要に応じて組み合わせて実行しました。
このように、AIが「何が考えられるか」を示し、人が「何をやるか」を決めることで、効率的かつ再現性のあるコンテンツ改善を実現しています。
STEP6:改善後の検証と、次の判断へのつなげ方
改善施策を実行したあとは、必ず効果検証を行い、次の判断につなげることをBAでは重視しています。
この検証フェーズでは、再びSearch ConsoleなどのデータをAIに読み込ませ、改善前に立てた仮説が正しかったのか、設定した目的に近づいているのかを確認します。
AIはデータの変化を整理し、人はその結果をもとに、「この改善で十分か」「次の施策が必要か」を見極めます。
BAでは、この検証結果をもとに「このまま様子を見るのか」「追加で構成まで踏み込むのか」「別の記事と統合すべきか」といった、次の判断を切り替えています。
「改善→検証→次の判断」までを一連のプロセスとして回すことで、コンテンツ改善を継続的に最適化していきます。
次のセクションでは、この検証プロセスをどのように設計し、どんな視点で結果を見ているのかを詳しく解説します。
検証を独立させている理由
BAでは、改善施策と効果検証を別の工程として切り分けています。
理由は、改善を「やって終わり」にしないためです。
改善施策は、あくまで「立てた仮説が正しいかどうかを確かめるための手段」にすぎません。
そのため、施策実行後には必ず検証を行い、目的に近づいているかを確認します。
検証フェーズでは、次のようなポイントを中心に変化を確認します。
- CTRは改善したか
- 検索流入は回復・増加しているか
- 想定した検索意図に近づいているか
- 競合との差分はどう変化したか
AIがデータの変化を整理し、人はその結果をもとに「この改善で十分か」「次の施策が必要か」を判断します。
検証で見ている指標と判断軸
それでは、先ほどご紹介した検証フェーズの各ポイントについて、具体的にどのようなことを確認するのかをご紹介いたします。
-
CTRは改善したか
表示回数に対してクリック率が上がっているかを確認し、タイトルやディスクリプションが検索意図に合ってきているかを判断します。 -
検索流入は回復・増加しているか
一時的な変動ではなく、中期的に流入が戻りつつあるか、伸びているかを見ます。 -
想定した検索意図に近づいているか
表示されているクエリが、想定していたユーザーのニーズに沿ったものへ変化しているかを確認します。 -
競合との差分はどう変化したか
掲載順位や表示傾向をもとに、競合との距離が縮まっているかを判断します。
これらの指標を総合的に見たうえで「改善が十分か」「追加施策が必要か」を判断します。そして、改善を「やったか・やっていないか」ではなく、「次にどう判断を変えるか」という視点で捉えられるようになりました。
AI活用における注意点(実務視点)
ここまで見てきたSTEP1〜6のプロセスは、AIを「判断の材料を整える存在」として使うことを前提に設計しています。
この章では、その前提を崩さないために、実務上あらかじめ押さえておくべきポイントを補足として整理します。
以下の観点から、AIを業務に取り入れる際に押さえておきたいポイントを解説します。
- 分析目的の置き方による影響
- データの扱い方や運用上の注意点
目的が曖昧だと、分析はブレる
AIを活用した分析で最も起こりやすい失敗が、目的を定めないまま分析を始めてしまうことです。
目的が曖昧な状態では、AIはさまざまな切り口でデータを解釈するため、同じデータを使っていても、担当者やプロンプトごとに異なる部分が出てしまいます。
例えば、
- 流入を増やしたいのか
- CTRを改善したいのか
- CVへの貢献を高めたいのか
この違いによって、重視すべき指標も、分析の視点も変わります。
そのためAIにデータを渡す前に「何を改善したいのか」「どんな状態を目指すのか」を必ず明確にする必要があります。
目的が定まってはじめて、AIの分析結果は判断に使える材料となり、ブレのない改善につながります。
データの扱い・運用上の注意
AIを使った分析は便利ですが、データの扱い方を間違えると、結果も簡単にずれてしまいます。ここでは、実務でとくに注意しているポイントをまとめます。
まず押さえておきたいのは、AIは「渡されたデータの範囲」でしか判断できないという点です。
期間が短い、条件が偏っているなど、元データの前提が適切でない場合、分析結果にもその影響がそのまま表れます。
また、Search ConsoleやGA4のデータは、
- どの期間を見ているのか
- デバイスやクエリの条件はどうなっているのか
によって見え方が大きく変わります。
「そのデータがどんな条件で抽出されたものか」を意識せずに使うのは危険です。
AIはデータを整理し、傾向を示すことは得意ですが、その結果に意味づけを行うことはできません。事業の状況やブランドの方針を踏まえ、どの判断を採用するかを決めるのは人の役割です。
最後に、実務ではデータ管理のルールにも注意が必要です。
社外に出せない情報や内部資料を扱う場合は、AIに渡してよいデータの範囲を事前に決めておくことが大切です。
AIの活用は、ツールの性能よりも、データをどう扱い、どう判断に使うかで決まります。
まとめ:AIは「戦略を回すための加速装置」
今回の事例が示しているのは、AIがコンテンツ改善を自動化する存在ではなく、戦略的な判断を支える加速装置として機能するという点です。
AIを活用することで、以下のような変化が生まれます。
- 判断の基準が整理され、再現性が高まる
- データ解釈にかかる時間が短縮され、改善スピードが上がる
- 個別記事の修正ではなく、戦略レベルでの意思決定が可能になる
重要なのは、AIに結論を任せるのではなく、判断材料をAIで整え、人が決断するという役割分担です。この関係が成立してはじめて、AIは業務の中で意味をもちます。
もし今、「データは見ているが判断に迷う」「改善しているのに全体像が見えない」と感じているのであれば、それは施策ではなく、判断の前提やプロセスに整理の余地があるサインかもしれません。
ビジネス・アーキテクツでは、こうした課題に対して、AIを判断の代替ではなく判断を支える道具として使いながら、コンテンツ戦略や改善プロセスの設計を支援しています。
生成AIを活用したWebマーケティングやコンテンツ戦略について、「自社の場合はどう考えればいいのか」を整理したい場合は、お気軽にご相談ください。
