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セキュリティ対策は“コスト”ではなく“信用”への投資|取引先から選ばれる企業になるには?

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プロフィールアイコン(写真):システムエンジニア 今野
今野インフラエンジニアグループ/システムエンジニア(ビジネス・アーキテクツ)

2024年に旧クラウドテクノロジーズへ入社。インフラエンジニアとしてPaaS提供やSI業務を担当。

今や世界中のどこかで24時間365日、サイバー攻撃は止まることなく続いています。

大企業に比べて、専任のIT担当者や十分な予算を持ちにくい中小企業の社内IT環境は、セキュリティ対策が後回しになっていたり、緊急度が低く見えてしまうのが現実だと思います。

多くの企業は、自分たちは狙われるはずがないと考えがちですが、実際にはそうした思い込みが被害を招くケースもあります。そして、一度でも情報漏えいやシステム停止などの被害に遭ってしまうと、取引先や顧客からの信頼は大きく損なわれ、信頼回復には膨大な時間とコストが必要になります。

本記事では、そんな中小企業の緊急の課題である「セキュリティ投資」について、その必要性や実際の脅威、すぐにできる実用的な対策をわかりやすく解説します。

自社の体制を見直したい方や、将来的にクラウド化を検討している方も、ぜひ最後までご覧ください。

セキュリティ対策は“コスト”ではなく“信用”への投資|取引先から選ばれる企業になるには?

中小企業も標的に。「ITセキュリティは大企業の問題」と思っていませんか?

「うちみたいな小さな会社は、サイバー攻撃の標的にならないはず…。」
そう思っている経営者や情報システム担当者の方、実は多いのではないでしょうか。でも、その考えはちょっと危険かもしれません。

近年のデータ(2024年度中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査報告書)を見てみると、サイバー攻撃のターゲットは、大企業から中小企業へとシフトしている傾向が伺えます。

中小企業がサイバー攻撃を受けた際の平均的な被害額は1件あたり73万円にものぼります。決して小さな金額ではありませんが、さらに深刻なのはその最大被害額で、1億円規模の損失を出したケースも報告されています。

金銭的なダメージだけではありません。業務復旧にかかる時間も深刻で、平均5.8日間は事業活動が止まってしまうのです。中には被害が長期化し、360日以上も業務がストップした企業も存在します。

「うちは大丈夫」という根拠のない自信が、いつか大きな損失につながってしまうかもしれません。この目に見えない攻撃は、もはや他人事ではないのです。

被害額、発生回数、期間の平均値と最大値

出典 : P79〜81. 2024年度中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査報告書(全体版)(PDF:5.5 MB). 「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査」報告書について. IPA 独立行政法人 情報処理推進機構. (参照 2025-09-04)

「狙い撃ち」ではなく「無差別攻撃」なんです

サイバー攻撃は、あなたの会社の名前を調べて「よし、あそこを攻めよう!」と計画しているわけではありません。
実態はもっとシンプルで、世界中のネットワークに向けて無差別に攻撃をばらまいています。
インターネットにつながっている機器のログを見たことがある人なら「あるある」かもしれませんが、どこの誰だかわからない相手からの接続試行や、不審なアクセスの痕跡が、びっしりと残っているものです。
その中で、ガードが甘い場所やちょっとした穴を見つけると、そこから一気に侵入してくる…。
だから「うちは狙われる理由がない」と思っていても、穴さえあれば標的になってしまうのです。

中小企業が被害に遭う理由。攻撃者から見た“スキ”とは

中小企業は人材・予算の制約からどうしても防御体制が十分に整わず、ガードが手薄になりがちです。そのため、先述した無差別に行われる攻撃の餌食になりやすいと考えられます。
実際に起きている被害例を紹介します。

被害例1:OSの更新不足による被害
長期間、OSやミドルウェアのセキュリティパッチを当てていなかったケース。
そのスキを突かれて、既知の脆弱性から不正ソフトをインストールされました。

結果、ファイルやサーバーがまるごと暗号化され、業務は完全停止する事態に。
こうした事態は、日頃からOSやソフトを最新の状態に保ち、定期的な更新を怠らなければ防ぐことができました。

被害例2:不要なポート開放による被害
「ちょっとした作業のためにSSHやRDPを外部公開していたら…」
インターネット上から誰でも接続できる状態だったため、ブルートフォース攻撃(パスワードを総当たりで試す攻撃)を受け、管理者アカウントを奪われてしまいました。

攻撃者はそのサーバーに“バックドア”という隠し通路を作り、他社システムへの攻撃拠点として利用し、最終的には複数の取引先に被害が広がってしまうケースもあります。

もし業務の都合で一時的に開放せざるを得ない場合でも、利用後に速やかに閉じる運用や、定期的に設定を見直す体制が整っていれば、被害の拡大を防ぐことは十分に可能でした。

被害は自社だけで終わらない

小規模企業を経由して大手企業のシステムに侵入するなど、企業同士のつながりを利用する手口のことを“サプライチェーン攻撃”と言います。
自社のセキュリティ対策が甘かったことにより、関連会社にまで被害が及んでしまっては後悔してもしきれません。

とくに重要なのは、被害によって顧客や取引先からの信頼を一度失うと、信頼の回復は非常に困難であることです。

セキュリティ事故による情報漏えいや業務停止は、単なる損失にとどまらず、企業の社会的信用を著しく損ないます。顧客の個人情報を守れない企業としての評価は、契約打ち切りや新規取引の減少につながり、結果として長期的な経営悪化を招きかねません。

つまり、セキュリティ対策は単なる社内ITの問題ではなく、企業の生命線である「信頼」を守るための最重要課題であると言えます。

セキュリティ対策は“コスト”ではなく信用を得るための最も有効な“投資”

取引先が企業を選ぶ基準に「セキュリティ対策」がある

BtoB取引では、セキュリティ対策の有無が選定基準になることが増えています。
ISMS認証の取得はもちろん、場合によっては基本的なセキュリティポリシーの整備まで求められることもあります。
もし対策が不十分だと、そもそも商談のスタートラインに立てないこともあり得ます。

一方で、セキュリティ認証を取得していれば、「情報管理に強い会社」としての信頼を得られ、差別化につながります。
新しい取引のチャンスを広げる意味でも、セキュリティ対策は大きな武器になるのです。

「情報セキュリティ対策投資が取引につながったか」というアンケート結果では、投資した企業の49.8%が取引につながったと回答しています。

アンケート結果:情報セキュリティ投資が取引につながったか

引用 : P148 図3-149. 2024年度中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査報告書(全体版)(PDF:5.5 MB). 「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査」報告書について. IPA 独立行政法人 情報処理推進機構. (参照 2025-09-04)

長期的に見ればコスト削減にもつながる

いざ事故が起きると、謝罪や賠償、復旧などにかかるコストは、事前の対策費用の何倍、場合によっては何十倍にも膨らんでしまいます。

だからこそ、リスクは未然に防ぐのが一番!
しっかりと備えておくことで、余計な損失を減らし、企業の信頼や価値を守りましょう。

中小企業でも今すぐ始められる!セキュリティ対策3ステップ

ステップ1|社内の意識改革

  • 不審メールを見極める訓練
  • セキュリティハンドブックの配布
  • パスワード管理ルールの共有

セキュリティ対策の第一歩は「意識を変えること」です。ITに詳しい人だけでなく、社員全員が「ちょっと怪しいな」「普段と違うな」と気づけることが大切です。こうした小さな気づきが、会社全体の安全を守る大きな力になります。

また、ルールや操作手順をまとめたハンドブックを用意しておくと、誰でもすぐに確認できて安心です。一見地味に思える取り組みですが、日常の中で自然にセキュリティ意識を高める効果があります。

さらに、定期的に訓練や振り返りの場を設けることで、社員一人ひとりのスキルや注意力を無理なく維持していくことができます。

ステップ2|IT環境の簡易チェック

次に、社内IT環境を点検しましょう。

  • OS・ソフトの自動更新は有効ですか?
  • ウイルス対策ソフトは最新ですか?
  • ファイアウォールは設定済みですか?
  • 二段階認証は導入済みですか?

更新やセキュリティソフトのチェックは、攻撃者が最も簡単に狙う「穴」を塞ぐための基本中の基本です。自動更新を有効にしていれば、既知の脆弱性による攻撃を未然に防げます。

また、ファイアウォール設定や二段階認証は、外部からの侵入リスクを大幅に減らす重要な防御策です。「ちょっとめんどうだな」と思うかもしれませんが、このステップを抜かすと小さな隙間から大きな被害につながる可能性があります。定期的にチェックリストを作り、誰でも確認できる体制を整えることが大切です。

以下は、IPA 独立行政法人 情報処理推進機構にて配布されている「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」というチェックリストのチェック項目です。情報セキュリティ対策のレベルが数値化されており、問題点を素早く見つけることができます。簡単にチェックが可能ですので、自社の状況を確認してみてください。

5分でできる!情報セキュリティ自社診断(P3)チェック項目

引用 : 5分でできる!情報セキュリティ自社診断. IPA 独立行政法人 情報処理推進機構. (参照 2025-09-04)

ステップ3|外部の力を借りる

  • 専門家によるセキュリティ診断
  • 社内IT運用支援サービスの活用
  • クラウド化によるセキュリティの標準化

全てを自社で抱え込まなくても大丈夫!外部の専門家やサービスを活用することも重要です。専門家による診断では、自分たちだけでは気づけない脆弱性や設定ミスを発見できます。

Business Architects(ビジネス・アーキテクツ)の運用支援サービスでは、PCのキッティングやサーバー障害対応など、日常の情報システム業務をリモートで一貫サポートします。専任担当者を置く余裕がない中小企業でも、安心して日常業務に専念いただけます。

さらに、クラウドサービスを利用すれば、ネットワークからPC管理までオフィスに必要なIT環境をまとめて提供可能です。とくにデータ共有が多い企業には、ファイルサーバークラウドを導入いただくことで、安全かつ効率的に情報資産をクラウド上で活用できます。

「セキュリティ人材がいないから仕方ない」と諦めず、外部の力を賢く利用することで、少ないリソースでも大企業に引けを取らないセキュリティ体制を整えることが可能です。

中小企業こそ、今すぐセキュリティ対策を

セキュリティ対策は、ただ守るためだけのものではありません。実は、取引先やお客さまからの信頼を高めたり、新しいチャンスにつながる投資でもあるのです。

いきなり大きな社内改革を考えなくても大丈夫です。できることから少しずつ、「大切なものを守ろう」という気持ちで始めてみませんか?
日々の小さな見直しから始めて、必要があれば専門家の手を借りる。そんな一歩一歩の積み重ねが、やがて大きな安心となり、信頼される企業へとつながっていくのではないでしょうか。

ビジネス・アーキテクツではセキュリティ製品の導入や社内ITインフラのクラウド化などを手掛けています。お困りの際はぜひご相談ください。