本記事は株式会社ニュートラルワークス取締役CMO石田哲也氏(@te2319)による寄稿記事です。
マーケティングにおいて目標設定と予算決めは非常に重要です。適切な目標設定やKPI設定により定量的な数値でKPIを可視化することで、事業の進捗や改善点に対して適切な対応をすることが可能となります。
本記事でわかること
- マーケティング予算の決め方がわからない
- 精度の高いシミュレーションの作り方がわからない
- 適切なKPI設定方法がわからない
本記事では、上記のようなデジタルマーケティングにおける予算設定の手順や主要なKPI(Key Performance Indicators)設定について、具体的な方法を解説します。
マーケティング予算の変化
オンラインのマーケティング規模は年々拡大傾向ですが、新型コロナウイルスの影響でオフラインのマーケティング活動ができなくなり、多くの企業がデジタルマーケティングを強化しています。
特にBtoBマーケティングは展示会やセミナーなどオフラインでのマーケティング活動が重要でしたが、外出自粛やリモート勤務により展示会はオンライン展示会へ、セミナーはウェビナーというようにオンライン上での代替手段に変化していきました。
一方で、オフラインとオンラインではマーケティングの考え方が異なるため、オンライン上のマーケティングに注力する場合は、適切な目標設定が必要となります。
KPI設定方法で大切なこと
マーケティングの予算策定に際しては、まずフェーズごとの状況を分析し、それに基づく有効なKPIを設定することが不可欠です。
KPIについて少し説明します。KPIとは、ビジネスの成果を測定し目標を達成するための進捗を確認するための指標で、定量的に判断できる数値やパーセンテージとして表されます。
有効なKPIとは、以下のようなものを指します。
KPIと目標の関連性
KPIはビジネスの目的と相関性のある数値を設定する必要があります。KPIが変動したときには、全体実績も変動する数値であるべきです。例えば、流入数を増やしても売上が増えないのであれば、それはKPIにはなり得ません。
KPIが明確なこと
KPIは明確で、誰が見ても理解できるような数値である必要があります。KPIは多くのメンバーが意識する必要のある数値ですが、曖昧なKPIは正確に把握できず効果的な動きが出来なくなってしまいます。たとえば、「サービス認知度」はどのように測定されるのか、何を意味するのかを明確にする必要があります。
測定可能なKPIであること
KPIは具体的な数値やパーセンテージで可視化することが大切で、経過の変動を確認できるようにすべきです。これにより、戦略の有効性の評価や必要に応じて施策を調整することが可能になります。
KPI設定方法の解説
ビジネスはデジタルマーケティングだけで回っているわけではありません。売上を作るためにはセールスのKPIも把握した上で戦略を設計することが大切です。
KPIの設定(セールス)
マーケティング予算の策定においても、セールスのKPIを把握することは重要です。
- 売上
- 受注数
- 受注率
- 平均顧客単価(単月/累計)
- 商談数
- 商談化率
- 有効リード数
KPIの設定(WEBサイト)
GA4で計測する指標になります。ユーザーが流入してからリードに至るまでの過程を可視化させることで、改善点が明らかになります。
- リード数
- 入力完了率
- フォーム遷移数
- フォーム遷移率
- エンゲージメント数
- エンゲージメント率
- セッション数
KPIの設定(SEO)
SEOで重要な点は、『売上を作れる流入をどれだけ増やせるか』です。すべてのチャネルやキーワードの流入数や順位を追うのでは無く、価値のある流入数や順位をチェックすることが大切です。
- リード数
- 検索流入数
- 表示回数
- 可視性
KPIの設定(広告)
広告は刈り取り型なので獲得単価のみで判断しがちですが、必ず投資対効果も見た上で有効な施策を判断しましょう。
- リード数
- 獲得単価
- ROI
- 広告流入数
マーケティング予算を決める手順
マーケティング予算を決める際、予算の目的と意図をはっきりさせること、事業計画と連動していることが重要です。目的と狙いがはっきりしていないと適正予算の算出が出来ませんし、事業計画を考慮していないと必要なタイミングで必要な予算が確保されていないという状況になります。
予算の決め方については、事業目標から決める場合と決まった目標を達成するためのマーケティング予算を決めるパターンがありますが、今回は事業目標が決まっている前提での手順を解説します。
STEP1. 前年度の振り返り
既存事業であれば、過去の振り返りが必須です。マーケティング予算に対してどのような成果があったのか設定したKPIにより状況を可視化させますが、KPIは必ずKGI(売上)に紐づく数値を設定します。
GA4で計測できるBtoB企業におすすめのKPIを記載します。
他には、カスタムイベントでフォーム遷移数を計測するとWebサイト上でのユーザーの動きをファネルで可視化することができるのでオススメです。
STEP2. 前年実績をもとに、今年の叩き台を作る
まずは、前年実績をもとにしたシミュレーションを作成します。このとき、シーズナルの影響は考慮に入れますが、できるだけマーケティング施策による増加分は含めずに作成します。前年実績をもとにしたシミュレーションの作成ができたら、次は目標を当てはめて乖離幅を確認します。
STEP3.目標達成に必要なマーケティング予算をざっくり決める
STEP1で振り返った前年実績をもとに、マーケティング予算をざっくり決めます。まずは目標達成に対してマーケティング予算がいくら必要か算出しましょう。
STEP1で可視化させた前年のリード獲得~商談~成約までのKPIにより、シミュレーション上の目標に足りない売上を埋めるための商談数とリード数がどれだけ必要か算出できるはずです。
STEP4.予算配分を決める
限られたマーケティング予算を効率的に使えるように予算配分を決めます。この際に重要なことは、売上と投資対効果を鑑みて判断することです。獲得単価(CPA)で判断してしまうマーケターも多いと思いますが、ビジネスの目的は成約数では無く『売上』です。投資対効果が最も良い予算配分を決めることが大切ですが、余力があれば新しい施策分の予算も確保しておくと良いでしょう。
STEP5.マーケティング予算を承認してもらう
次年度の予算が作成できたら、経営層もしくは予算申請先の部署へ上申します。承認を得やすくするためには日頃から経営層からの信頼を獲得することが重要です。組織では「何を話すか」より「誰が話すか」が重要な場合が多々あります。
まずは意見をしっかり聞いてもらえるような関係性の構築を目指しましょう。マーケティング施策は投資なので、コストと想定される効果を可視化することで施策の有効性を説明できます。承認を取るためには、以下が必要になります。
- 日頃の信頼感
- 予算の根拠
- 費用の妥当性
- 施策の有効性
- 目標達成確度
- わかりやすいプレゼン資料
まとめ:正しくKPIを設計してマーケティング予算を決めよう
効果的なマーケティング予算の策定には、かならずKPIを設定した定点観測が必要です。
マーケティングに慣れていない担当者の場合、KPIを必要以上に多く取得しようとしがちですが、本当に有効で必要なKPIはそこまで多くありません。定期的に有効なKPIで進捗を確認して、効率の良い施策に予算をスライドさせるなどで、効率的な運用ができるようにしましょう。
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