BIツールであるLooker Studioは、使い方次第でデータから多くの打ち手が見えてきます。その1つが4象限マトリクス分析です 。GA4やGoogle Search Consoleのデータと連係させることで、直感的なデータの可視化だけでなく具体的な施策の打ち手まで見えてくるようになります。本記事では、そんなLooker Studioの応用的な使い方を具体的に解説いたします。

「4象限マトリクス」で具体的なアクションにつながるデータ分析をしよう
何のためにデータ分析をするのかと問われれば、答えは1つ。具体的なアクションにつながる糸口を見つけることにあるのではないでしょうか。データ分析の手法は数多くありますが、中でもコンサルタントもよく使うフレームワークの1つ4象限マトリクスを使った分析手法を紹介します。まずは4象限マトリクスとは何か、どんな使い方があるのかをおさらいしましょう。
コンサルも多用する社会人の必須フレームワーク
ビジネス課題を整理したり解決する糸口を見つけたりするのに役立つフレームワーク。
SWOTや3Cなどその種類や用途は多彩ですが、今回ご紹介するフレームワークは、たった2本の線を引くだけで課題を整理できる4象限マトリクスです。ビジネスパーソンなら誰もが一度は見たことがあるはず。具体的な活用事例は、次章で説明する「ポジショニングマップ」ですが、軸の取り方次第であらゆる課題を整理するのに役立つフレームワークです。
【活用事例】ポジショニングマップ
4象限マトリクスの代表的な使われ方がこのポジショニングマップです。
X軸とY軸にそれぞれ比較したい項目を置き、自社製品と他社製品の位置をプロットすることで、自社の独自性や他社との差別化ポイントを視覚的に把握することができます。
他社が参入していない空白エリアを自社の強みにできると、大きな差別化ポイントになります。しかし、その一方で「参入していない理由」もそこにはあるはずなので、競合分析を行う際には、その理由までしっかりと把握する必要があります。
【活用事例】マネジメントでの活用法
より身近な活用方法としては、タスク処理の順番を考える際のヒントにもなります。全世界で4,000万部以上を売り上げた世界的なベストセラー「7つの習慣」(著:スティーブン・R・コヴィー)の中では、こうしたタスクの優先順位を「時間管理のマトリクス」として費やすべき時間の優先度を定義しています(下図参照)。詳しくは名著を読んでいただきたいのですが、ざっくりまとめると以下のような解釈ができます。
「緊急度も重要度も高い」第1領域は最優先、「緊急度も重要度も低い」第4領域は最後なのはいうまでもありません。問題は、第2領域と第3領域のどちらを優先するかです。
答えからいうと、2番目に着手すべきなのは「第2領域」です。この領域は、自分の能力を伸ばすための領域と定義され、優秀な人間はこの領域に時間を割くのだそうです。これをビジネスシーンに置き換えれば「人材教育」や「顧客開拓」など、すぐに成果が出るわけではないけれども、組織づくりや業績に影響のある重要な領域といえるのではないでしょうか。
一方、「第3領域」は「緊急性が高い」ために「第1領域」と同じく優先度が高いと勘違いしてしまいますが、実は「重要度が低い」もの。この領域にリソースを割きすぎると、忙しいけれども成果にはつながらないという事態に陥りかねません。生産性や効率性が問われる現代では、この領域をいかに減らすかが課題ともいえるでしょう。
4象限に分類された「時間管理のマトリクス」、普段時間に追われているマネジメント層の方だけでなく、ビジネスパーソンなら誰もが身につけておきたい考え方ではないでしょうか。
出典 : [ スティーブン・R・コヴィー. 完訳 7つの習慣 人格主義の回復: Powerful Lessons in Personal Change. キングベアー出版. 2018. 572p. Kindle版.].(参照 2025-03-19)
【実践】GA4 × Looker StudioでロジカルにCVアップ!
ここまで、一般的に使われる4象限マトリクスについて説明してきました。情報を2軸で整理することで強みや弱み、優先度などが明確になるのがお分かりいただけたと思います。
ここからは、こうした4象限による考え方を、Webサイトのアクセス解析に移して考えてみたいと思います。普段、Excelなどの表組みや折れ線グラフで数値を見ているマーケターやWeb担当者の方にとっては、「次の打ち手」が簡単に見つかる新しい分析手法となるでしょう。
「で?」と上司に言われないためのロジカル分析
GA4の場合、通常のレポート画面でおおまかに数値の変動を把握し、詳しくは探索レポートやLooker Studioにつなげて見ている方も多いと思います。GA4の分析手法は目的によってさまざまありますが、その目的を一言でいうならば「ボトルネックを見つけて改善の糸口を見つける」ことに尽きます。PDCAでいうと「Check」に当たりますが、Checkした結果、上司に「で?」とツッコまれた経験はありませんか?分析することに注力するあまり、次のアクションを考えられていなかったというケースはよくあります。これでは担当者として失格です。あくまで、分析は次の打ち手につながるものでなくてはいけません。
そこで活用したいのが、BIツールであるLooker Studioを使った4象限マトリクス分析です。続く章では、GA4とLooker Studioを連携させた活用法を具体的に解説いたします。
GA4 × Looker Studioの設定方法
今回はGoogleのデモアカウントを使い、「add to cart」をコンバージョン(キーイベント)とした場合の4象限をLooker Studioのバブルチャートを使って可視化してみます。
GA4とLooker Studioの接続方法や詳しい設定については、本記事では省略いたしますが、ぜひこちらの関連記事も参考にしてみてください。
Looker Studioでサイト・ビジネスパフォーマンスを可視化!データに基づいて描く成長戦略
データ可視化が導く社内DXと業務効率化の方法 | BAsixs(ベーシックス)
X軸には「セッション」、Y軸には「CVR」(注1)を入れます。バブルサイズは「キーイベント数」、ディメンションは「ページパスとスクリーンクラス」とします。
そうすると、下図のようなバブルチャートが作成できます。
さらにX軸の1,000セッションの値で基準線を引き、Y軸にはCVR40%に基準線(注2)を引きます。そうすることで、下図のような4象限マトリクスができます。
では、ここからどのように分析していけば良いのか、象限ごとに解説していきます。
(注1)「CVR」については、貴社の状況に応じて別途右カラムの下にある「フィールドを追加」の「計算フィールドを追加」から「(目的の)イベント数/セッション数」で新規CVRとして登録してください。
(注2)基準線については、Webサイトに合わせて調整してください。
最優先に改善すべき象限Bと納得の理由
この4象限の中で最も目的のコンバージョン(キーイベント)に貢献しているページは、象限Aに分布されるページです。象限Aに位置するページは「セッションが多くかつCVRも高い」ページです。できるだけ多くのページがこのエリアに来るような施策を打つと売上も大きく変わってきますが、他の象限の中で最優先に改善すべき象限はどこでしょうか?KGIやKPIによって変わる所もありますが、基本的には象限Bです。
象限Bに位置するページは「セッションは多いけれどもCVRは少ない」ページということになります。つまり、集客力はあるのにコンバージョンさせる力が弱く、Webサイトには「大きなバケツの穴」が空いている状態です。じゃぶじゃぶと水が漏れるようにこのページに訪問してもコンバージョンせず離脱してしまうため、何よりもコンバージョンさせるための施策が急務です。具体的な対策としては
- CTAおよびマイクロコピーのABテストで勝ちパターンを見つける
- ヒートマップを活用して離脱ポイントを見つけ、ページの構成を変える
- CVRの高いページへの導線を強化する
などが考えられます。特に1番のマイクロコピーの改善は、テキストを少し変えるだけでコンバージョン数が大きく伸びたという事例も多く、労力が少ないのに成果が出る施策としてとても有効です。
2番目に着手すべき象限Cとその理由
象限Cに位置するページは「CVRは高いけれどセッションは少ない」ページです。ここに分布されたページは購買意欲の高い人がよく見ているページです。そのため、このページにユーザーを連れてくることができれば、ビジネス成果に大きなインパクトを与えられます。 つまり、このエリアから象限Aのエリアに移動させるには集客施策が必要だということです。具体的には3つの施策が考えられます。
- 広告やSNSなど外部からの直接流入を増やす。
- SEO対策を見直し上位表示を狙う。
- セッションの多いページ(象限B)からの導線を強化する。
最後に回すべき象限Dともっともな理由
そして象限Dに分類されたページは、「セッションも少なくCVRもしない」いわば問題児です。改善するにはセッションとCVRの両軸で考えないといけませんから、リソースをかなり割く必要があります。公開して間もないページなどは、どうしてもこのエリアに分布されてしまいます。しかし、長期間このエリアにあるページについては、まず象限BとCを改善した後、余裕があれば手をつけるぐらいにしましょう。
くれぐれもこのエリアのページを増やさないように、制作段階で十分に顧客理解を深めた上でページ制作をする必要があります。
【実践】Google Search Console × Looker Studioで改善ページをあぶり出す!
ここまでGA4を使ったLooker Studioの活用方法を解説してきましたが、Looker StudioはGA4だけでなくさまざまなデータと連係させることができます。
この章では、Webサイトへの流入キーワードなどを確認できるGoogle Search ConsoleとLooker Studioをつなげた分析手法を解説します。
「サチコ」は地味だけど実は隠れた分析のセンター
俗に「サチコ」の愛称で知られているGoogle Search Console。Google検索での掲載順位の確認やWebサイトの流入キーワード、コアウェブバイタルの値などの分析を得意としています。GA4と同様に、Webサイトを構築したら必ず入れておくべきツールの1つです。しかし、実際にはあまり活用できていないという企業も多いのではないでしょうか。
そこで、ここからはページ改善に焦点を当てた分析手法を紹介します。ECサイトやコーポレートサイトなど、どのようなWebサイトにでも使える分析手法です。
特に、SEOに敏感なオウンドメディアを運営している企業のマーケターやWeb担当者にとっては、必須のスキルといっても過言ではないでしょう。
Google Search Console × Looker Studioの設定方法
設定方法は、以下の手順で行います。
- 「データを追加」から「Search Console」を選択
- X軸に「Average Position」、Y軸に「URL CTR」を設定
- ディメンションに「Query」と「Landing Page」を設定
- バブルサイズに「URL Clicks」を設定
- 「スタイル」から基準線を追加
- 象限にそれぞれ任意の名前をつけます
今回、X軸の「Average Position」には、Google検索結果の1ページ目となる10位にラインを引き、Y軸の「CTR」は50%としています。また、基準線については、貴社のビジネスに沿って設定してください。
次に、具体的な分析に移ります。
まず「データを追加」から「Search Console」を選択し、X軸に「Average Position」、Y軸に「URL CTR」を設定します。
ディメンションには「Query」と「Landing Page」、バブルサイズは「URL Clicks」としてください。
次に「スタイル」から基準線を追加します。今回、X軸の「Average Position」には、Google検索結果の1ページ目となる10位にラインを引き、Y軸の「CTR」は50%としています。そうしてできた象限にそれぞれ名前をつけます。次に、具体的な分析に移ります。
※基準線については、貴社のビジネスに沿って設定してください。
最優先に対策すべき象限Bとその理由
こうしてできた4象限を元にページ改善に着手するわけですが、どこから着手しますか?「【実践】GA4 × Looker StudioでロジカルにCVアップ!」の章で説明した優先順位と基本的に変わりません。
まず象限Aのエリアは、平均掲載順位も高く、CTRも高いので、優良なページと評価できます。できればこのエリアに全ページが入るようにしたいですね。このエリアのページについては「良いページをさらに伸ばす」という考えもありますが、明らかに改善が必要な点がないかぎり、いったんは合格ページとして手はつけません。
それよりも、象限Bのエリアにあるページの対策が最優先です。この象限のページは「平均掲載順位が高いのにクリックされていない」ページですから、「検索結果画面に表示されているtitleとdescriptionがユーザーニーズに合っていない」と判断できます。言い換えればtitleとdescriptionを改善するだけで、合格圏に入る可能性が最も高いのです。一番労力が少なくて改善効果が見込めるので、最優先に着手するのはこの象限Bのエリアに分布しているページとなります。もちろんその中でも、順位を上げたいキーワードやページ順に優先順位をつけて改修していきます。
2番目に着手すべき象限Cとその理由
では、2番目に着手するのはどのエリアでしょうか?それは象限Cのエリアです。
この象限のページは「CTRは高いのに平均掲載順位が低い」ことが問題です。つまり、コンテンツの評価が他の上位表示されているページに比べて低いといえます。
このエリアのページを左の象限Aのエリアに持っていくには、「コンテンツの質を改善する必要がある」でしょう。そう考えると、象限Bのtitleとdescriptionを改善するだけのページよりも、よりリソースが必要になりますから、優先度は2番目なのです。
まずは、同一キーワードで自社のページよりも上位表示されているコンテンツの構成を分析することから始め、足りない要素やオリジナリティーを強化する必要があるでしょう。
最後に回すべき象限Dともっともな理由
そして問題なのは、象限Dのエリアです。
このエリアのページは「平均掲載順位も低くCTRも低い」ため、title、descriptionと合わせてコンテンツの質も改善する必要があります。つまり、最もリソースが取られてしまうページ群のため、改善の優先度は一番低くなります。当面は手をつけない領域という認識で問題ありません。
こうした分析手法を用いると、Google Search Consoleは単にクエリや掲載順位だけを見るツールではなく、「Webサイト改善の中心的役割をも担っている」といえるのではないでしょうか。
まとめ:4象限マトリクスで改善ページをロジカルに見つけよう
いかがでしたか?4象限マトリクスがどんなフレームワークなのかを理解した上で、GA4やGoogle Search Consoleのデータ分析に応用してみると、改善すべき対策ページと打ち手がロジカルに見つけられることがおわかりいただけたのではないでしょうか。
BIツールだからこそ、見せ方1つで具体的なアクションにつながる気付きを得ることができますから、ぜひ活用してください。
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