MA(マーケティングオートメーション)を使っている企業は多くありますが、Web接客ツールを導入している企業は意外と少ないように思います。しかし、Web接客ツールを活用し ないのは、大きな機会損失を招いています。メアドがないと活用できないMAに比べて、cookieだけでユーザーとコミュニケーションが図れるWeb接客ツールはデジタルマーケティングには必須のツールです。
MAとWeb接客ツールの特徴の違いを理解しつつ、どんなシーンでWeb接客ツールが活用できるのか、実践的なナレッジをご紹介します。

Web接客ツールって何?
デジタルマーケティングに携わっているマーケターやディレクターであれば、「Web接客ツール」という言葉をご存じの方も多いことでしょう。これから話を進めていく上で、まずはおさらいとして「Web接客ツールとは何か?」を整理しておきたいと思います。
Web接客ツールとは、サイトに訪問してきたユーザーに対して、チャットやポップアップなどでユーザーとコミュニケーションを取りながら目的の情報に案内することができるツールのことです。実店舗で店員が声をかけて接客することに似ていることからそう呼ばれています。しかし、Web接客ツールと一口に言ってもそのタイプは2つに大別されます。
どちらのタイプも目的に応じて使い分ければ非常に有効なツールですが、本記事ではポップアップ型を念頭に実践的な活用方法をお伝えしたいと思います。
MAとWeb接客ツールの決定的な違いとは?
Web接客ツールと同じくユーザーとのコミュニケーションを強化するツールとしてMAが挙げられます。スコアリングなどにより見込み客の質を見極めたり、見込み客の興味関心を高めるナーチャリングに活用したりとマーケティング活動には欠かせないツールです。
しかし、この2つのツールには決定的な違いがあります。それがこちらの表に示したポイントです。
MAとWeb接客ツールの違いについて、もう少し具体的に考えてみましょう。
例えばBtoB企業の場合、問い合わせをコンバージョンとした時のCVRの目安は0.5%~1%(注1)と言われています。月間10,000セッションあっても資料請求してくれるのは、せいぜい50〜100程度。つまり、MAの場合、コミュニケーションの対象にできるターゲット数は、資料請求やお問い合わせなどでメールアドレスを取得できた50〜100/10000人ということになります。残りの約9900人にはアプローチができません。
一方、Web接客ツールの場合は、メールアドレスがなくてもcookie(1st Party)を元にコミュニケーションを図ることができるため、コミュニケーションの対象はサイトに訪問してきたユーザー全員になります。つまり、リーチできるターゲット数に圧倒的な差があるのです。
Web接客ツールの強み
また、MAはサイト外のユーザーに対してメルマガ等で来訪を促す施策に対して、Web接客ツールはサイト訪問中のユーザーに対してコミュニケーションを図ることができる点に強みがあります。
言い換えると、Web接客ツールは「サイト訪問というあなたのサービスに興味を持った熱量の高い瞬間に接点を強化することができる」のです。一番興味関心が高い時に接点を強化できるということは、つまりアノニマスだったユーザーを見込み顧客へと育成させやすいとも言えるでしょう。
一見似たようなツールですが、マーケティングで活用できる範囲は大きく異なるため、それぞれの特長を活かした使い分けが必要です。
※1 CVRの平均はどれぐらい? 業界別・経路別に平均値と傾向を解説. ferret One Tip編集部. (参照 2025-11-27)
ポップアップはUXに良くない?
ポップアップ型のWeb接客ツールでよく議論になるのが、「ポップアップをいっぱい出したらユーザーにウザがられるんじゃないか?」という点です。結論から言うと、私はユーザーの「得」になる情報はウザくないと思っています。こうした議論には1つの誤解があるように思います。つまり、「ポップアップ=広告=ウザい」という感覚です。訪問したサイトと全く関係がないポップアップが表示されたり、動画の途中でいきなり流れたりするCMのように、ユーザーが探している情報ではないものが強制的に表示されると「ウザい」と誰しも感じるのではないでしょうか?
しかし、購入を検討している商品やサービスに関する「お得」な情報ではどうでしょうか?あるいは、スキルがアップしそうなセミナーの情報やビジネスに活かせそうなホワイトペーパーなどの情報ではどのように感じるでしょうか?きっと、「教えてくれてありがとう!」といった情報に接することができたうれしさをひそかに感じているのではないでしょうか?
それこそがWeb接客ツールでポップアップを表示させるメリットだと思います。一口に「ポップアップ」と言っても、広告とWeb接客ツールとではユーザーの反応は正反対。だから「Web接客ツールのポップアップはウザいのでは?」という疑問には「ウザくない」とお答えしています。
押さえておきたいWeb接客シナリオ3選
現在各社がサービス展開しているWeb接客ツールには、実にさまざまな機能が実装されていますが、マーケティング施策で必ず押さえておきたいWeb接客シナリオというものが3つあります。
- 特定ページを見たかどうかでポップアップを出し分ける。
- 初回訪問と2回目以降の訪問など、訪問回数でポップアップを出し分ける。
- 離脱防止に活用する。
シナリオ1:特定ページを見たかどうかでポップアップを出し分ける
1つ目は、特定ページを見たかどうかでポップアップを出し分ける施策です。特定ページを見たかどうかはcookieで判別できますから、「ページAを見た人にはAのバナー」「ページBを見た人にはBのバナー」「見ていない人にはCのバナー」と閲覧履歴を元にバナーを出し分けることで、ユーザーの興味関心をより高めることができたり、次のアクションにつながる「一押し」を打てたりすることができます。
シナリオ2:訪問回数でポップアップを出し分ける
2つ目は、訪問回数でポップアップを出し分ける施策です。ユーザーは興味のあるページに何度も訪問してくれますから、初めて訪問した人と訪問が3回目の人とでは熱量が違いますよね。より熱量の高い人にはCVへの導線バナーを見せ、初めての人には「他のユーザーがよく見ているページへ誘導する」といった施策を打つことで、自社への興味関心を高めCVへの行動喚起を促せます。
また、ツールによっては訪問回数によってキービジュアルを変えたり、テキストを変えたりすることもできます。ユーザーを適切にセグメント分けして最適な接客シナリオを組むことで次の行動につなげることができます。
シナリオ3:離脱防止として活用
そして3つ目は、離脱防止策。例えば、ブラウザーの「戻るボタン」を押下した時に表示させたり、ページの上部や下部にキャンペーンの期限を告知したりといった施策に活用できます。BtoBでもBtoCでも解約率(チャーンレート)の数値は非常に重要な指標ですから、顧客を獲得するだけでなく手放さないための施策はとても大切です。こうした施策にもWeb接客ツールは活かせるのです。
まとめ:Web接客ツールでサイト内の接点強化を!
ここまでWeb接客ツールの特長や施策のポイントをお伝えしてきました。サイト訪問者全員に対してコミュニケーション施策を打つことができるのが、Web接客ツールの最大のメリットであることがおわかりいただけたと思います。MA(マーケティングオートメーション)とは活用できる範囲が異なるので、どちらか一方を利用するというよりも上手く組み合わせることでマーケティングの守備範囲を大きく広げることができます。
Business Architects(ビジネス・アーキテクツ)では、データドリブンなマーケティング戦略の立案からKGI/KPIを達成するためのロジカルで効率的な施策提案など、企業のデジタルマーケティング活動を支援しています。どのようなご相談でも結構ですので、お気軽にお問い合わせください。お待ちしております。
