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進行管理から個人のスキルまで、テレワーク時代の"見える化"とは?

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岡島(ビジネス・アーキテクツ)

大手精密機械メーカーで、採用及び社員教育や新規事業開発を担当。その後、スタートアップ企業での起業家支援と大企業の新規事業立上げ支援に携わり、新人からマネジメント層、起業家から大企業の中間管理職まで、幅広い層を支援してきた。2020年にBAへ入社、人事と新規事業の両方の経験を活かし、人材開発事業に従事している。

新型コロナウイルスの感染拡大にともない、テレワークが急速に普及しつつあります。ネットなどでは"テレワーク時代に必要なスキル"についての議論が盛んですが、Web業界では今後どのようなスキルが求められるのでしょうか? この機会に考えてみたいと思います。

テレワークに必要なのは"進行管理"と"工数"の見える化

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テレワーク先進国といわれる欧米に比べ、いまだ道半ばといった印象が強い日本。では、なぜ欧米や一部の先進的な企業で、テレワークが成功しているのか? それは、成果主義と評価システムが成熟していることと、「いつリストラされるか分からない」という雇用慣習にあるといえるでしょう。

成果主義と評価システムとは、つまり社員一人ひとりの業務内容の"見える化"です。それを各プロジェクトに落とし込むなら、"進行管理"と"工数"が明確になっているかが、一つのポイントになるでしょう。顔が見えているオフィスであれば、「〇〇君、これやっておいて」と口頭で仕事を割り振れました。これがテレワークになると、"誰の手が空いているのか?"が分からなくなる企業も少なくありません。

管理者はスキルアセスメントなどを駆使して、メンバーの一人工――1人あたりが1日に働く作業量を把握し、それを元にしたスケジュールを組み、きちんと運用するスキルが求められることになります。一方、現場の人間はプロジェクトの売り上げ、工数あたりの人件費を比較。どれだけの作業量をこなせば評価につながるか、ある程度は把握しておきたいところです。

日本人は一般に「オンオフの切り替えが下手」といわれています。在宅勤務では不要なサービス残業、精神的な負担にもつながりかねないので、工数あたりに求められる作業量を、まずは見える化してみてはいかがでしょうか。

"進行管理"の見える化にありがちな落とし穴、それは……

ここである架空のWeb制作会社を、例に挙げてみたいと思います。同社ではSlackやZoomを駆使して現場間のコミュニケーションを密に行い、さらにAdobeXDの共同編集機能を利用して作業履歴を管理していました。この企業はテレワークに移行したとして、生産性を落とすことなくプロジェクトを進められるでしょうか? 一見すると問題なさそうですが、そこには大きな落とし穴があります。

まず、どんな現場においても、チャットツールでのコミュニケーションに不慣れなメンバー、プロトタイプを「印刷物で見たい」と言い出す上司などは、必ずいると考えた方がよいでしょう。Slackを中心にコミュニケーションをしていても、どこかでメールや口頭でのやり取りをはさんでしまうものです。

また、社内においてはAdobeXDで履歴やコメントを管理できていたとしても、外部の人間にユーザーテストを依頼した場合はどうでしょうか? 印刷物に赤字を入れたり、口頭ベースで修正箇所をヒアリングするといった慣習は、まだまだ多くの企業で健在です。

結果として本来なら各サービス内で完結していたはずのコメントや履歴は、他のサービスに分散されてしまいます。進行管理を妨げる原因となるので、メンバー全員がコメントや履歴を残す場所――例えば、TrelloやBacklogといったサービスなどを、別に用意する必要があるでしょう。そして、その場所にコメントや履歴を残すことをルール化することが、一つの解決手段となります。

管理者においても、現場においても、進行管理は今後さらに求められるであろう技術の一つ。自分なりのやり方を、今のうちに確立させておきたいところです。

テレワーク時代のWebサービス開発に求められるスキルとは?

テレワークが普及する中で、今後は先に紹介したような各種サービスの利用がますます進むことでしょう。サービスの種類も増え続け、その開発に自ら携わる機会が出てくるかもしれません。その現場ではどんなスキルが求められるのか、考えてみたいと思います。

近年のトレンドを振り返ると、一つのキーワードになりそうなのがAIです。デザインの現場では「Adobe Sensei」などの制作支援が注目されていますが、今後はサービスそのものへのAIの導入が進み、その実装が案件に含まれるようになるでしょう。

AIとテレワークに関わる各種サービスの連携でいうと、真っ先に思いつくのがグループウェアです。最近ではHRテックの普及にともない、組織の状態をAIが診断するサービスが登場しています。この流れからAIとグループウェアが連携し、グループウェア上で行われているコミュニケーションを、AIが診断するという未来が考えられます。

さらに、各種サービスのセキュリティ対策においても、AIとの連携は有効です。近年では社外のメンバーとチャットやビデオ会議を行う機会が増えていますが、ここで社外秘のファイルが流出するなどのトラブルが起きています。コメントやファイルの投稿を反映させる前に、AIでリスク管理を行うことが、今後は必要となるわけです。

また、AIとデザインの関係では、音声認識も一つのテーマとなります。Q&Aのチャートを作り、"声の操作"をデザインする。いわゆる"ノンデザインUI"と呼ばれるような案件も、今後は増えていくことでしょう。

このように、各種サービスにAIが実装されていけば、コンシェルジュ的に過去のコメントを検索したり、議事録を残してくれる機能も容易に追加できるようになります。ビデオ会議の普及で“対面”することの価値が上がると言われていますが、ZoomやMicrosoft Teamsなどが今よりさらに多機能になれば、「ビデオ会議の方が便利だよね」と言われる時代が来ることは間違いないでしょう。

成果主義時代に向けて自らのスキルを"見える化"する

テレワークでは互いの働く姿が見えづらいため、その評価は日々の成果物に左右されることになります。適切な領域で最大限のパフォーマンスを発揮するためにも、自身の得意分野や弱点を客観視しておく必要があるでしょう。