最近では「著作権」という考え方は随分と浸透し、著作物に対する権利を守らなければならないという意識が広まってきています。しかし、実際には著作権侵害に関するトラブルも多く、どのような場面で著作物が保護されるのか分からないという人も多いではないでしょうか。
著作権には保護される期間や対象範囲などが設 定されています。そこで今回は、Webサイト担当者必見の著作権の基礎知識を分かりやすく解説します。
著作権とは:人間の感情や考えを表した創作物を保護する権利
著作権とは「文化的な創作物」を保護する目的で与えられている権利のことで、「著作権法」によって個々の創作物が守られています。音楽や学術、文芸、美術などが文化的な創作物に分類されており、人間の感情や考えを創作物として表した作品のことを「著作物」と呼んでいます。
著作権が発生する創作物を創作した人のことを「著作者」と呼び、著作者の創作物は著作権法のもとに保護の対象となります。
特許権や商標権、意匠権、実用新案権などの「産業財産権」と呼ばれる権利は個人が申請・登録を行わなければ保護を受ける権利は得られませんが、著作権は手続きを行わなくても創作物を生み出した時点で保護の権利が発生します。
著作権が保護される期間は?:「70年間」がキーワード
著作物は、原則的に著作者の死後70年まで保護されます。以前は50年間までとされていましたが、2018年12月30日に効力が生じた「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」に基づいて、保護の期間が死後70年に延長となりました。
ただし、無名や変名、団体名義、映画の著作物については死後70年ではなく「公表後70年」となります。創作から70年以内に該当の著作物が公開されていなければ、「創作後70年」が適用になります。
著作権の種類は多種多様:ダンスの振り付けも対象?
一口に著作権といっても、実際にはさまざまな分類があります。例えば言語の著作物には小説や俳句、脚本、詩、論文などが挙げられます。音楽の著作物としては、楽曲そのものや付随する歌詞が保護されます。
ダンスやバレエ、舞踊の振り付けや、絵画や漫画、美術工芸品なども著作物の一例として挙げられるでしょう。住宅などの建築物についても、芸術的な建造物として保護されます。他にも地図や模型、映画館で放映される映画、家庭用ゲームソフト、カメラで撮影された写真、ソフトウェアを動作させるプログラムなど、著作物の種類は多種多様です。
著作物は完成度で権利の有無が決まるということはなく、創作されたものであればどのようなものであっても著作者が権利を主張できます。著作者の考え方や感情が反映されている著作物であれば、幼い子どもが書いたイラストや絵日記なども著作権で守られる対象となります。
二次的著作物や辞書・データベースなども対象になる
前述の著作物に加えて、著作物を翻訳したり、編曲したりした二次的著作物も著作権保護の対象となります。また、既存の言葉をまとめた辞書やデータを編集したデータベースも著作物として扱われます。
著作物の範囲は、思っていたより広いと感じるかもしれません。基本的には、著作者が制作した創作物については著作権が発生すると考えておくと良いでしょう。
著作者が守られる2つの権利:「人格」と「財産」
著作者が持っている権利には、人格的な権利と財産的な権利の2種類があります。それぞれの権利がどのような意味を持つのか見ていきましょう。
人格的な権利
人格的な権利は「著作者人格権」とも呼ばれており、著作者自身が保有する権利です。他者に譲渡・相続することは認められておらず、著作者の死亡後70年が経過した段階で権利は消失します。
著作者人格権では、著作物を公開するかしないかを決める権利や、著作者の氏名を明示するかどうか、著作物を無断で改変されない権利などが認められています。
財産的な権利
財産的な権利における著作権は、人格的な権利とは異なり、他社に譲渡や相続することが認められています。そのため、財産的な権利者は著作者自身ではない可能性もあります。
財産権は著作物を複製する権利や上映・演奏を行う権利、公共の電波を通じて放送する権利など、著作物を使用するための権利全般を指しています。財産的な権利を持たない人が無断で著作物を複製したり、第三者に見える場所で公表したりすると著作権違反となります。
「著作隣接権」という伝播者のための権利もある
著作者自身ではないものの、著作物を伝搬するための役割を担っている人に認められている権利が「著作隣接権」です。著作隣接権が認められるのは、実演家や放送事業者、レコード製作者、有線放送事業者などが該当します。
実演家は自身の名前を明示するかどうか、自身の名誉を害する形で作品を改変されない権利、実演を録画したり放送したりする権利、CDや放送が行われた場合に二次使用料を受け取る権利、貸与権などを持っています。
レコード製作者は作成したレコードを複製する権利や、複製したレコードを一般消費者などに譲渡する権利を有します。
また、放送事業者特有の権利としては、放送の複製や再放送、テレビ放送の権利などが挙げられます。
Web記事を書く上で著作権に抵触する2つの主なケース
近年では、Web上のさまざまな媒体で記事を書く機会があります。ブログやSNSなど、個人でも発信の機会を気軽に持てる時代になりました。だからこそ、Webサイト担当者としてWebの記事を書いたり管理をしたりする際には、著作権に抵触しないかどうか十分にチェックしておかなければなりません。
1.他サイトのスクリーンショット
Webの記事を書く際に著作権法に違反する可能性があるもののひとつに、他サイトのスクリーンショットがあります。他サイトはそれ自体がそのサイトを制作した人の著作物とみなされるため、無断で複製して公開したことにより著作権に抵触します。
2.記事そのもののコピペ
また、記事そのもののコピーも認められていません。自分が書いた記事であるかのように見せかけて他者の著作物である記事を公開することは、法律違反となるので注意しましょう。ただし、データを必要とする記事などにおいて、出典を明示するなど一定の条件下で「引用」する場合はこの限りではありません。
また、Web画像のダウンロードにも注意が必要です。ダウンロードしたデータを個人で楽しむ分には問題ありません。しかし、他サイトなどからダウンロードした画像を無断で他の媒体にアップロードすると著作権に抵触します。
動画のアップロードは違法になるの?
最近は個人や企業を問わずに動画のアップロードを行う機会が多くなりましたが、一部の例では動画アップロードが違法になるケースもあります。Webサイト担当者として違法な動画をアップロードしないためにも、どのような場合に違法となるのか押さえておきましょう。
違法になるケース:書籍朗読・カラオケ投稿・キャラクターの二次創作
例えば、著作権が切れていない書籍の内容を朗読する動画は著作権違反にあたる可能性が高いでしょう。書籍の内容が著作者に無断で公開されてしまっているので、著作者の意思に反するとみなされます。文章を読み上げなかったとしても、挿絵などがあるケースでは、挿絵を公開するだけでも違反となるので注意が必要です。
また、カラオケで歌っている動画をそのまま動画投稿サイトなどにアップロードするのもリスクが高い行為です。楽曲そのものに対して著作権違反になるケースと、レコード製作者に対する著作隣接権違反になるケースのどちらかが発生する可能性があります。ただし、カラオケ店が公式に主催している動画投稿企画など、問題がないものもあるため、見極めが重要になります。
また、漫画やアニメのキャラクターを自分で描いて公開する場合は、著作権を有している人や団体が認めている場合は違法になりません。しかし、認めていない場合は違法となるので、取り扱いをよく確認する必要があるでしょう。
違法にならないケース:キーワードは「オリジナル」
自分で作成したオリジナルキャラクターのイラストを公開したり、オリジナルの詩や小説を読み上げたりする動画は、自分に著作権があるため違法にはなりません。
また、オリジナルの楽曲を自宅やスタジオなどで歌って公開する場合も、著作権は自分にあるので特に問題はないでしょう。「自分に著作権がある場合」や「著作者から許諾を得ている場合」であれば、動画を公開しても著作権の侵害にはなりません。
著作物を無断利用するとどうなる?:著作権は「親告罪」
著作物を無断で利用すると、著作権侵害として民事裁判による損害賠償請求の対象となる可能性があります。
親告罪であるため、著作権を侵害されたと感じた著作者が裁判を起こすことで初めて裁かれる可能性が生じます。著作権を侵害すると個人で10年以下の懲役又は1000万円以下、法人では3億円以下の罰金に処される場合があるので、くれぐれも著作権には注意して著作物を取り扱うことが大切です。
まとめ:Webサイトの運営にあたり、著作権はおさえた上で発信をしましょう
著作権は、著作物を創作した人であれば誰にでも認められている権利です。死後70年まで保護され、種類や範囲も広いため、思わぬ場面で著作権法に違反しないように意識しましょう。
動画のアップロードなどでは、不注意で意図せず著作権を侵害してしまうトラブルもあります。
今回ご紹介した内容も参考にしながら、著作権に関する正しい知識を身につけてWebサイトの運営、Web記事などのコンテンツの発信をすることが大切です。
BAsixsでは、クライアント様の記事コンテンツ制作の運用支援も行っております。
適切なWebサイト運営・記事コンテンツ制作のノウハウを持っていますので、お気軽に御相談ください。