近年マーケティング人材の不足やデジタル化が後押しし、MAツール(マーケティングオートメーション)を導入する企業が増えています。
マスメディア+フィジカルな営業というスタイルから、インターネット環境の普及により購買プロセスが変化し、顧客接点の拡大・営業手法も複雑化しています。複雑化する顧客情 報を整理し、効率的な営業活動を行うために、MAツールのニーズが高まっています。
本記事は、MAツールに興味がある方、導入を検討している方に向けた記事です。MAツールを使う目的、実現できる4つのマーケティング施策、BtoB・BtoCそれぞれのMAツール活用モデルなどを紹介します。
まずはMAツールを使うと何ができるのか、どんなメリット・デメリットがあるか大枠をつかんでください。
BAsixsでは、MAツールを社内で運用している経験・知見を活かし、「MAツール導入・運用を支援するサービス」を始めました。ビジネス課題や目的を整理し、達成したい事に合ったMAツールの選定や運用・改善提案も得意です。
何から始めればいいか分からない、社内のリソースが足らないなどの不安もお気軽にご相談ください。
MAツールを使う3つの目的
MAツールを使う目的は大きく分けると3つあります。
MAツールを使う3つの大きな目的
- ユーザーに見つけてもらう
- ユーザーにとって最適なタイミングで情報を提供する
- サービスや商品の購入を後押しする
MAでは、これまで手動で行ってきた接客業務のうち、定型化できるマーケティング業務プロセスを自動化できます。たとえば、製品カタログをダウンロード請求した顧客に対して、サンクスメールを送ったり、3日後に導入事例コンテンツ紹介メールを送信したりできます。
手動で行っていた業務の一部を自動化することで、マーケティング戦略のコアに近い施策の立案・実行に時間を割けるようになります。さらに施策の成果を可視化し分析することで、次の施策案を検討する助けになります。
まずMAツールでどんなマーケティング施策ができるのか、大きく4つ紹介します。
施策1.顧客に自社ブランドを見つけてもらう:リードジェネレーション
MAツールを使ったマーケティング施策では、まずリードを獲得することから始めます。MAツールは、接点のあるユーザーを一元管理できます。
様々なチャネルとMAツールを連携し、ターゲット市場で認知を拡大し、自社サイトへの流入を促す導線を作ります。以下の3つの方法を組み合わせることで相乗効果が見込めます。
1.SEO施策でWebサイトへの流入数を増やす
ユーザーはまず情報を収集する時に検索画面でキーワード検索します。検索上位に表示されている検索結果の中から求めていた情報がありそうなWebページに移動します。
広告費をかけずユーザーに見つけてもらうためには、SEO(検索エンジン最適化)施策に継続的に取り組み、自社のサイトが検索上位に表示され続ける必要があります。
どういうキーワードで検索されているか、サイト内のどのページがよく閲覧されているか、問い合わせに結びついたページはどこか、などを分析します。分析結果を元に、仮説を立て、ユーザーが求めている情報を継続的に追加していきます。
ユーザーが求めている情報を提供し続けると検索エンジンに評価され、検索順位の向上につながります。
2.複数のSNSチャネルから情報を発信する
SNSへの有益な情報提供や業界知識の継続的な提供、フォロワーとのコミュニケーションにより、ユーザー接点が増え、自社ブランドのより深い理解に繋がります。これは潜在ニーズがあるユーザーに自社を見つけてもらうための施策の一つです。
ユーザーによって頻繁に利用するチャネルは異なります。目的やターゲット層の属性に合わせて複数のチャネルを活用することで、より幅広く新しいユーザーの認知を獲得したり、ファンを育成したり、ブランディングを強化できます。
MAツールではSNSアカウントを紐づけることで、各アカウントへMAツールから直接投稿を予約できます。そして各チャネルでの投稿の反応を1画面で可視化・分析し、効果を比較することが可能です。
3.複数媒体へWeb広告を出稿する
Web広告施策も、ニーズが顕在化しているユーザーを獲得するためには重要な施策です。
SNSと同様に目的やターゲット層に合った媒体を選びますが、場合によっては複数の広告媒体を利用することもあります。広告媒体の管理画面に毎回ログインすることなく、MAツール内で複数媒体への広告出稿を同時におこなったり、効果を比較することで予算の割当を見直ししやすくなります。
MAツールに蓄積したオンライン・オフラインでの顧客の行動履歴情報と、広告から自社Webサイトへ流入した訪問者リストを組み合わせて、より狙うべきセグメントを細かく設定して、次の広告の配信に生かせます。
また、広告で認知してからコンバージョンし、最終的な受注状況までMAツールで管理することで、顧客の傾向分析やペルソナ・カスタマージャーニーの見直しができます。
施策2.Webサイト訪問者を見込み顧客へ育成する:リードナーチャリング
まずターゲット層の顧客の関心を深堀りし、求めている情報をコンテンツ化します。そして定期的にコンテンツを共有し、自社サイト再訪を促すことで、自社ブランドを深く理解してもらえます。
収集した顧客情報をもとにパーソナライズしたメッセージを届けることで、ひとりひとりの顧客満足度を高め、顧客に選ばれるブランドの育成につながります。
1.チャットボットを活用し問い合わせのハードルを下げ、ユーザーの要望を蓄積する
特にBtoBでは、サービス契約・商品購入の検討期間が長期化しやすいです。
気軽に会話できるチャットボットをサイト内に設置することで、ユーザーの悩みや関心を理解して関連情報を提供したり、よくある質問をQ&Aページや解説記事、ダウンロード資料にまとめて公開できます。
実在するユーザーの疑問を解消するために作成したコンテンツは、必ず他のユーザーにも刺さるのでチャットボットの活用は有効な取り組みの一つです。さらに、問い合わせ対応後に簡単な満足度アンケートを実施し改善し続けることで、ユーザーからの信頼や契約・購買意欲向上にもつながります。
2.ダウンロード資料を提供、資料請求フォームに入力してもらう
具体的な検討ステージに進んだユーザーは、比較・検討に必要な情報は手元に置きたいと考えます。ダウンロード資料を作り、情報を提供する代わりに顧客情報を要求し、連絡をとれる状態にします。
比較・検討に必要な情報をまとめて、ダウンロード資料を作成する取り組みやすいファーストステップの例を3つあげます。
ダウンロード資料のファーストステップ・3つの作成例
- 今までWebサイト上に掲載していた事例をまとめた事例集を作成しダウンロード資料にする
- 調査レポートやアンケート結果をまとめて資料にする
- 過去のブログ記事をカテゴリ毎にまとめた資料を作成する
資料をメール送付後、ユーザーの検討ステージに必要と思われる情報を提供し続けることで、自社の専門性を印象付けできます。
3.Eメールを配信する
メールマーケティングは「同意(Opt-in)」が必要です。同意を得たユーザーにだけ配信するので効果的なマーケティング手法のひとつです。
新商品の案内など、一斉送信する場合もありますがMAツールでは他にも4つのキャンペーンを実施できます。
代表的なEメールを使った4つのキャンペーン
- 休眠顧客の掘り起こしメールを送付する
- 顧客を属性や関心などに応じたセグメントメールを送付する
- 顧客行動に応じてステップメールを設定し、メール送信を自動化する
- メールマガジンを定期的に送付する
それぞれを簡単に解説します。
1. 休眠顧客の掘り起こしメールを送付する
商談化しなかった休眠顧客はいませんか。
企業名・役職・氏名・連絡先や、過去の商談履歴なども残っている状態で営業活動を始められるので、休眠顧客の情報は企業にとって大きな資産です。
さらに過去に接点があった顧客は、新規顧客を獲得するよりも集客コストがかかりません。一度興味を持ってもらえているので、再び商談化しやすいです。
まずは休眠顧客の中で、自社のターゲット層である顧客リストを作成します。状況を確認するアンケートを送ると、ユーザーの状態を把握した上でアプローチが可能になります。
「連絡がとれる休眠顧客」リストを精査しておくと、定期的に接点を持ち、新商品やイベントの案内に活用できます。
2.顧客を属性や関心などに応じたセグメントメールを送付する
一斉送信メールとは違い、顧客を属性や行動履歴で区分(セグメント)し、それぞれの区分でニーズに合わせた情報を提供することで、確実にターゲットに近いユーザーに届く確率が高まります。その結果、無駄なメールが減り、メールの開封率やクリック率の向上につながります。
さらに展示会などのオフラインでの行動(興味を持った商材や検討の温度感など)もMAツールで管理すると、よりユーザーが欲しい情報に絞ってメール配信できます。
ここで、具体的にセグメントの設定例を紹介します。
顧客情報のセグメント化の代表例
- 属性:会社の所在地、会社規模、業種、職種など
- 行動:資料ダウンロード、ウェビナー参加など
注意点は、一斉送信と違って各セグメント毎に配信内容を作成する必要があるので、運用工数がかかります。配信内容によって一斉送信とセグメントメールを使い分け、ユーザーが困ったときに思い出してもらえる良好な関係を築いていきましょう。
3.顧客行動に応じてステップメールを設定し、メール送信を自動化する
資料ダウンロードやセミナー申し込みのお礼メール送信後に、関連情報や事例紹介などを数日おきに送信するメールをステップメールと呼びます。
ステップメールは、配信の間隔がユーザーにぴったりとハマれば、ユーザーの関心が高まっているタイミングで必要な情報を提供できる利点があります。ユーザーが不快に感じにくく、記憶に残りやすい効果的なフォロー方法のひとつです。
4.メルマガを定期的に送付する:継続が最も大切
ユーザーは日々多くの情報を受け取っており、一度の接点だけではすぐに忘れられてしまいます。そのため継続的かつユーザーにとって役立つ情報を配信することが大切です。
メルマガ限定情報やブログの更新情報、イベント情報など、新しい情報を欲しいというポジティブな意思のあるユーザーを対象にメルマガを配信します。メルマガがユーザーの期待値を上回る内容、頻度や時間帯がちょうどよい場合は次に配信されるメルマガも開封してくれる可能性が高まります。
どのカテゴリ内容でメールからサイト再訪を促したか、効果を過去のメールと比較・分析することでよりユーザーのニーズがある情報を提供できるようになります。
もしメールの到達率が低い場合は、以下2点の確認をおすすめします。
メールの到達率の向上の2つのポイント
- 配信解除や、既に退職済みユーザーへのメール不達の検知し送信リストを毎回更新する
- 迷惑メールと判断されないように送付メール数をコントロールし自社ドメインの信頼低下を防ぐ
施策3.見込み顧客を分類して検討ステージ毎にアプローチを行う:スコアリング
ユーザーの行動から検討ステージで分類し、スコアをつけることで、各ステージの顧客に最適なアプローチができるようになります。一般的な検討ステージは以下の通りです。
検討ステージを5分類に設定する例
- 見込み無し
- 今すぐではないが将来的に購入の可能性あり(訪問者)
- 具体的に購入を検討中(見込み顧客)
- 受注(顧客)
- 優良顧客(推薦者)
次に、検討ステージの分類方法について説明します。
1.行動履歴をもとにスコア付けし、検討ステージに分類する
まずユーザーが確実にそのステージにいることを判断するための客観的な判断基準を事前に定めておきます。各ステージでユーザーの検討度合がそろうので、次のステージに進んだときの負担を軽減し、手戻りを防げます。
たとえば、「メルマガ内のリンクをクリックした」「セミナーに参加した」「資料をダウンロードした」「商品デモ動画を視聴した」などの各行動にスコアを与え、ユーザーの購買意欲を数値化します。
ここでは完璧さを求めず、一度基準を作り、運用してみることが必要です。
まず最初は、購買意欲が高いか低いかの2つを設定しましょう。
スコアが一定の基準を超えて購買意欲が高いユーザー(ホットリード)と、購買意欲が低いユーザー(コールドリード)とのアプローチ方法を分けることができます。
BtoBの場合は業種・企業規模などの会社情報を加味して優先順位を付けます。
さらにユーザーによっては、「今すぐではないが将来的に購入の可能性あり」→「具体的に購入を検討中」→「受注」のように、検討ステージをひとつひとつ順番に進むとは限りません。
例えばターゲット企業が最初から見積を請求した場合や、商品・サービスのお試し利用の申し込みがあれば、「具体的に購入を検討中」と考えられます。購買意欲が高いと判断し、すぐに営業へ通知してアプローチする仕組みが必要です。
一度検討を打ち切った・失注した場合は、休眠顧客リストに入れて、配信するメールの内容を変更します。しばらくして頻繁に価格ページや事例ページへアクセスがあった場合は、営業へ通知し、すぐにフォローします。
見込み顧客の点数化・優先順位付けを自動化可能なAI搭載のMAツールもあります。マーケターの経験や勘などの暗黙知に頼った運用からの脱却を実現したい場合は、検討項目に入れるとよいでしょう。
2.行動履歴をもとにレポート作成し、分析する
WebサイトやSNS、メール、セミナー、ターゲティング広告など、複数のチャネルを活用し、ターゲットのユーザー層と接点を持ちます。ユーザーの行動をトラッキングし、情報を収集・蓄積し、分析することでユーザーの行動や嗜好を読み取ります。
ユーザー理解を深め、検討ステージを分解して、シナリオ作成などのマーケティング施策に生かします。今後さらにデジタルシフトが進むと収集できるデータが増え、より精度の高いユーザー分析が可能になります。
各施策の効果を可視化したり、施策の比較や分析をしたりすることで次の施策に役立てられます。また、施策のROI(投資収益率)を算出することもできます。
施策4.見込み顧客リストの管理をする
ユーザー情報を最新に保ち、行動を分析したりメール配信リストの定期的な見直しに活用します。
1.行動履歴や属性情報をもとに、顧客リストを作成する
収集したユーザー情報をもとに顧客リストを作成し、セグメントメールなどに利用できます。
ただし、5月時点で検討ステージにいたユーザーが10月になっても検討しているとは限らないため、定期的に顧客リストを精査する必要があります。
さらに、異動や退職等によって不要なリードが増えていくので、メールが未達のリードを定期的に整理することも大切です。
2.CRMやSFAとMAツールを連携し、ユーザー情報を最新に保つ
営業部門など関連部門が蓄積した情報をMAツールに同期し、ユーザー情報を最新に保てます。ユーザー情報が最新でないと、顧客リストの見直しの意味が半減してしまいます。
過去に関連部門で対応した履歴が残っていると、事前に情報を頭に入れて顧客対応に臨めるため、やり取りの重複や入れ違いを減らせます。
参考
- 小池智和.マーケティングオートメーション 最強の導入手法.初版.2018.KADOKAWA.192p(参照 2022-3-28)
- 福田康隆.THE MODEL マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス.初版.2019.翔泳社.328p(参照 2022-3-28)
名刺管理ツールとメール配信システム、MAツールの違い
各ツールの目的と主な機能を簡単に説明します。会社全体での課題に合うツールはどういうものかを判断する参考にしてください。
名刺管理ツールの目的は、名刺をデータ化すること
名刺管理ツールの代表的な3つの機能
- 顧客管理
- 個人情報漏洩のリスクを軽減
- メール配信
名刺管理ツールは、会社の資産である名刺情報をメンバー間で共有することを目的としています。顧客や会社に、営業履歴を記録して簡易SFAのように使う場合もあります。
もしメール配信に力を入れたい場合、メール配信システムが効果を発揮します。
メール配信システムの目的は、メールキャンペーンに特化した施策を実施すること
メール配信システムの代表的な5つの機能
- 顧客管理
- 顧客情報によるセグメント分け
- 効果測定
- シナリオ配信
- 大量のメールを同時に送る
マーケティング施策としてメール配信だけ出来ればよい場合や、既存顧客を囲い込みアップセル・クロスセルを狙いたい場合に有効です。
メールマーケティングだけでなくオンライン・オフラインでの顧客情報を管理したり、Webサイトとの連携を行いたい場合はMAツールがおすすめです。
MAツールの目的は、サイトへの集客から営業支援、カスタマーサポート支援まで顧客情報を一元管理すること
MAツールは上記のSFAやメール配信システムの機能を含みます。SFAやメール配信システムとMAツールの大きな違いは、Webサイト上での顧客の行動をもとにマーケティング施策を実行できることです。
MAツールの代表的な10つの機能
- 顧客管理(広告、SNS、メール、オフラインイベントなど様々なチャネルでの顧客行動を収集)
- 顧客情報によるセグメント分け
- シナリオ設定
- メール配信
- ランディングページやブログなどの運営
- 問い合わせ・アンケートフォームの設置
- 広告運用
- SNS運用
- キャンペーン管理
- 効果測定
- 顧客アンケート
- スコアリングで受注確度の高い顧客を抽出する
マーケティング部門と営業部門との連携に課題がある場合や、顧客の集客から商談化までのプロセスに課題がある場合、MAツールは有効です。
もし営業部門がMAツールを運用する場合は、最小限の機能に絞られたMAツールをまずは選択するとよいでしょう。
MAとSFA、CRMとの違いは?
よく混同される3つのツールの違いを、ターゲットと役割から紐解いていきます。
MAツールの役割はリードを集客し、見込み顧客を育成すること
MAツールのターゲットは、課題が明確化していない潜在顧客からニーズが顕在化した見込み顧客です。
MAツールの対象の顧客ステージは、リードを獲得して、育成し、見込み顧客に転換するまでです。見込み顧客との商談以降は、SFA(営業支援ツール)の利用が一般的です。
MAツールの代表的な10つの機能
- 顧客管理(オンライン、オフラインでの顧客行動を収集)
- 顧客情報によるセグメント分け
- シナリオ設定
- メール配信
- ランディングページやブログなどの運営
- 問い合わせ・アンケートフォームの設置
- 広告運用
- SNS運用
- キャンペーン管理
- 効果測定
- 顧客アンケート
- スコアリングで受注確度の高い顧客を抽出する
1つのツールで多くの機能を用いて顧客情報を一元管理し分析できるため、マーケティング業務を効率化し営業とデータ共有を行うものです。
次に営業力の強化に重きを置いて、顧客データや案件の履歴を管理・分析することが得意なSFAを説明します。
SFAの役割は商談管理を行うこと
SFAのターゲットはニーズが顕在化した見込み顧客です。自社の商品を検討している顧客の商談開始から成約までを担います。
SFAの代表的な3つの機能
- 進捗状況、顧客とのやり取りを可視化する:営業の活動記録、日報管理、コンタクト情報の管理、取引情報の管理
- 営業メンバーが営業に集中できるようになる:売上予測や活動報告の簡易化
- 営業ノウハウの蓄積:スムーズな引き継ぎやノウハウ共有に役立つ
SFAは、営業活動の効率化に貢献するツールです。優秀な営業担当者の手法を社内で横展開するナレッジの共有にも役立ちます。
ただし、営業活動の効率化は、ある程度で頭打ちになります。なぜなら商談の100%受注ということは不可能で、営業部門の規模が大きくなるほど再現性を高めにくいためです。そのため、MAツールと組み合わせて営業に渡す見込み顧客数を増やすことが重要です。
次に、顧客のデータ管理や顧客サポートに特化したCRMについて説明します。
CRMの役割は顧客データを管理すること
CRMのターゲットは見込み顧客や既存顧客です。SFAと同様に商談化以降の顧客を管理することが多いです。SFAは営業起点で情報を精査しているのに対し、CRMは顧客起点で情報を精査していることが一番大きな違いです。
CRMの代表的な4つの機能
- 顧客情報の管理、属性情報、興味・関心、購買履歴など
- 顧客リストの管理
- 問い合わせ管理
- 分析機能
部門をまたいだ社内全体で顧客の情報を共有し、顧客満足度や顧客ロイヤリティの向上を目的に利用します。顧客のニーズをくみ取り、サービス改善に役立てられます。
MA・SFA・CRMの3つのツールは、ターゲットの守備範囲や役割がそれぞれ違います。自社がいま優先的に取り組みたい施策に合ったツールを選択しましょう。
より多角的な戦略を検討するために、CRMやSFAを連携したり、SFAやMAにCRMが組み込まれているプラットフォーム型ツールを選択することも1つの手です。
次に、MAツールを導入する3つのメリットと2つの課題を説明します。
MAツールを導入する3つのメリット
MAツールは営業・マーケティング活動の効率化が目的、とよくうたわれています。複雑な顧客ニーズや多岐にわたる顧客接点など、営業担当者が全て人手で管理・把握し、最適なアプローチを行うことは容易ではないからです。
ただしMAツールを導入するメリットは業務の効率化だけではありません。
MAツールを導入する3つのメリット
- 顧客ニーズの変化に合わせたマーケティングのPDCAを回しやすい
- 人件費を削減
- 人的ミスによるリスク回避ができる
MAツールを使って顧客情報を収集・可視化すると、過去の閲覧状況から興味関心の傾向、検討度合いを推測できるため、顧客のニーズ変化に合わせてマーケティングのPDCAを回しやすくなります。顧客の検討ステージ毎に施策成果を俯瞰してみることで、ボトルネックを見つけ、優先的に改善できます。
予約機能や一部の業務プロセス自動化機能を活用することで、人件費を削減、マーケティングプロセスの可視化、ノウハウの属人化の解消にも役立ちます。担当者が休暇をとったり異動したりしても、問題ない仕組みを構築できます。
たとえば顧客リストの精査で、退職などの理由でメール不達の過去の顧客を除外したり、重複した連絡先をマージしたり、同業他社・パートナー企業をメール配信リストから削除するなど、誰がやっても同じように顧客リストを管理できます。
MAツールで収集し分析した情報をもとに、次の営業・マーケティング施策を立案できるので、顧客との関係構築や向上、社内間の連携強化も期待できます。
MAツールを導入する上で知っておきたい2つの課題と解決策
導入を検討している方に知っておいて欲しい課題と解決策を紹介します。
MAツールを導入する上で知っておきたい2つの課題
- 費用・機能を基準にMAツールを比較してしまう
- 他部門でMAツールを使ってくれない
MAツール選定時は、導入・運用コストと機能自体の優劣に目が行ってしまいがちです。
しかし、導入することで自社にどのような変化をもたらし、どのような目標を達成したいのか、組織の目的に合っていることが最も重要です。
そのため、顧客情報の分析をもとにPDCAを回し、初期設定後も設定を調整し続け、自社の顧客のニーズに合わせる努力が大切です。
さらに、MAツールを効果的に取り入れるためには、営業部門やCS部門を中心とした他部門との連携が必要不可欠です。メリットに共感してMAツールを当たり前に使ってもらえるために、まずは週次定例ミーティングで利用するなど、既存の業務フローにMAツールを組み込むことが必要です。
当然、そもそもコンテンツの量と質が伴っていなければMAツールを導入したところで、すぐに効果を出すことは難しいでしょう。顧客の要望に応えられるクオリティのコンテンツを作り続けることが最重要と言えます。
MAツールがBtoCでも必要な理由
リードの情報管理やマーケティング施策の管理は、BtoCでも必要な現場が多いです。BtoBと、BtoCでMAツールの活用モデルにどのような違いがあるのか説明します。
BtoBの場合のMAツール活用モデル
まずはBtoB企業の場合の解決できる課題から見ていきましょう。
MAツールが解決できる3つのこと
- 優先的に対応すべき優良顧客を抽出し、営業に引き渡す
自社が狙うべき企業や、購買意欲が高い顧客を自動で抽出します。限られた営業リソースでも少ない顧客に集中対応するので、受注率向上に貢献できます。 - 長期にわたる顧客とよい関係を保つ
BtoCに比べると関わる人や承認プロセスが多く、購入の意思決定には時間がかかります。
一度失注しても定期的なコミュニケーションを通して信頼関係を築き続けることで、再度検討するときに思い出してもらい購入先候補に入る可能性が高まります。
さらに受注後も顧客の成功を後押しすることでロイヤリティを高めます。例えばカスタマーサポートやコンサルティング、学習コンテンツなどを提供します。ロイヤリティを高めた結果、アップセル・クロスセルへ進みLTVが向上します。 - 定期的に顧客からフィードバックをもらうことで、サービス改善に役立てる
既存顧客の生の意見を集めると改善すべき点や自社ブランドの強みを発見できます。サービス改善はリピーターやロイヤルカスタマー、口コミや紹介の増加に貢献し、ビジネスの成長にもつながります。
BtoBと比較して、BtoCではどのようにMAツールを活用するか説明します。
BtoCの場合のMAツール活用モデル
BtoBとセールスの型が同じ場合、基本的な流れはBtoBとBtoCは同じです。ただし以下のケースでは、BtoCならではの活用モデルがあります。
MAツールを使って以下の2つの課題を解決したいケース
- 大量のリード数(メールアドレス数)を管理したい
- ECサイトと連携したone to oneでの施策したい
MAツールを運用して効果が見込めるのは、売上の数%~10%程度と言われています。
以下の3つのいずれかに当てはまる場合は、導入に向いています。
MAツール導入に向いている企業の特徴
- すでに1万人以上の会員を獲得できている
- 売上単価が高く、購入プロセスが長い
- 月商が数千万円規模のサイト
それでは、BtoCでMAツールをどのように活用すると効果的なのでしょうか。
MAツールの機能の具体的な利用例を2つ紹介します。
外部ツールとの連携
- リアル店舗での購買行動やコールセンターへのお問い合わせ状況を顧客情報に集約し、一元管理する
- Web会議システムでセミナーを開催する
- LINEなどのチャットツールへセール情報やクーポンを配信する
顧客行動に応じてあらかじめ設定した内容を送り分ける「シナリオメール」
- カテゴリなどを基準にシナリオを分岐させ膨大な数のコンテンツを設定する
- 会員登録後、商品購入に至っていない顧客に、おすすめ商品の案内メールを自動送信する
- 一年のうちに複数回購入した顧客をロイヤルカスタマーと認定し、限定クーポンをメールで配布したりECサイト上に表示する
- 商品詳細ページを閲覧したもののECサイトを離れてしまった顧客に対し、リマインドメールや、サイト再訪問時に関連商品をポップアップ表示する
- カートに入ったまま決済されていない商品をお知らせし、再訪問を促す「カゴ落ち施策」
メール配信ツールでも対応できますが、MAツールであればSNSなどの外部ツールと連携したお知らせが可能です。
まとめ:自社の目的や達成したい事に合ったMAツールを選択し、マーケティング施策のPDCAを高速に回そう
MAツールはインターネットが普及した現代には必須のツールと言っても過言ではありません。
しかし、MAツールを導入することが最終目標となってしまい、うまく使いこなせていない企業が一定数あることも事実です。ただ導入するだけでは効果を出すことはできません。
ビジネスの目的・達成したい事に合わせてMAツールを選択することが重要です。
MAツールで収集し可視化したデータを分析し、仮説を立て、マーケティング施策を立案し、効果検証する。このPDCAを繰り返し、施策の精度を上げることが、顧客の増加ひいては売上に繋がります。
もしMAツールの導入を検討している方、MAツールの運用にお困りの方、MAツールに興味がある方はBAsixsへご相談ください。ビジネスの目的や課題の整理からMAツール選定・導入、施策立案・運用まで先導しサポートいたします。お気軽にお問い合わせください。