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【書評レビュー】大学4年間のマーケティング見るだけノート

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清水フロントエンドエンジニア(ビジネス・アーキテクツ)

接客、オフィスの内装設計・営業、ラジオ番組のWeb制作などを経験し、2018年にBA入社。現在はフロントエンドエンジニアとして学校や企業サイトの運用、構築、ガイドライン策定等に従事している。音楽とインターネットと効率化が好き。

BAsixs参画企業である、ビジネス・アーキテクツ(以下、BAと称する)のフロントエンドエンジニア、清水です。

今回は「大学4年間のマーケティング見るだけノート」の書評記事を書いてみようと思います。

大学4年間のマーケティング見るだけノート

サクッと体系的に世の中のことを知りたくて選んだ本

今わたしは社会人歴がおそらく10年くらいになろうとしているのですが、どうしてそんな人間が今更「大学4年間の」マーケティングを学んでみようと思ったのか……。

それはズバリ、「世の中を流れるお金のことや、会社やビジネスの仕組みのことを、全然知らないから」でした。

昔から「好きなこと」以外にはあんまり興味がなくて、わたしが好きなことは比較的自分の周りの小さな世界に収まっているので、広い世の中がどんな風にまわっているか的なことをよく知らないまま大人になってしまったんですよね。

政治や経済や経営について、今はよくわかってないけど大人として・社会人として・ビジネスパーソンとして、お客さまや周りの人と同じレベルの言語で話せるように知識をつけなくては……というのがここ何年か頭の中にあり、わたしはそれを「無知コンプレックス」と呼んでいました。

そして、知らない「世の中のこと」が幅広すぎて、どこから手を付ければいいかよくわからないまま時間だけが過ぎてしまっていたのですが、業務の中でマーケティング関連の用語やフレームワークに多く触れる機会があり、まずは身近な「マーケティング」の勉強から手を付けてみることにしました。

たくさんある書籍の中からこの本を選んだのは「2時間で頭に入る!」というコピーを見て「サクッと読めそう」と思ったこと、そして「大学4年間の」と書いてあったので「マーケティングの基本的なことが体系的にわかりそうだな」と感じたことが大きな理由です。

この本を読んでみたら、マーケティングという概念の輪郭がつかめてきた

それでは本題の、書評に入っていこうと思います。

「2時間で頭に入る!」はさすがにちょっと難しいかも……と思いましたが、3時間かけて読んでみて、これまで断片的に手に入れてきた「マーケティング」という概念の欠片がつながって、輪郭が見えたように感じました。

「大学4年間のマーケティング見るだけノート」は以下の9つのチャプターで構成されています。

  • chapter.01 マーケティングは何のためにある?
  • chapter.02 マーケティングの基本
  • chapter.03 さまざまなマーケティングの戦略と考え方
  • chapter.04 消費者の心をつかむマーケティング理論
  • chapter.05 最新マーケティング理論
  • chapter.06 強い企業から学ぶビジネスモデル(1)
  • chapter.07 IT/ソーシャルメディア・マーケティング
  • chapter.08 強い企業から学ぶビジネスモデル(2)
  • chapter.09 サービス・マーケティングとダイレクト・マーケティング

順に読んでいくと、マーケティングとは何なのかという概論から、基礎知識や戦略・考え方などのセオリー的な部分、さらに近代から現代への時代の変遷とともに変化してきたマーケティングの理論や考え方、具体的な事例……というように、内容の詳細度が徐々に深まっていく構成となっています。

この記事を読んでいる方も日々「マーケティングの欠片」には触れているけど「じゃあ、マーケティングってなんなのか説明してみて」って言われると、どこから何を説明すべきか悩んでしまうような方が多いのではないかと思いますが、そんな方にもおすすめできる本です。

監修を務める平野敦士カールさんは多くの企業のアドバイザーを務める経営のプロ!

「大学4年間のマーケティング見るだけノート」の監修を務める平野敦士カールさんは経営コンサルタントとして多くの企業でアドバイザーを務める他、日本社会を元気にするべく「100万人に経営学を届けたい」との想いからご自身で経営塾も主催されています。

また、著書も30冊以上あり、その発行部数は23万部を突破していて、海外でも多数翻訳出版されているそうです。

まさに経営のプロ、そして伝道師のような方ですね。

マーケティングって、ロマンチック!?

わたしはこの本を読むまでマーケティングってほとんど「販売促進活動」に近い概念だと思っていました。

マーケティングとは、売りたい「モノ」が先にあって、それを売るためにどうやってアプローチするかを考えることで、「モノ」を考えるのはデザインの領域だと認識していました。

しかしマーケティングの本質は「販売」ではなく、その手前で「世の中や顧客のニーズに沿って商品を考え、提供することにある」と、この本を読んで理解しました。

つまり、マーケティングというのは商品やサービスを、正しく届けたい相手に届けるために、適切な調査や分析を行い、正しくデザインするために必要な考え方である、ということです。

本から引用するとマーケティングで重要なことは以下のようなことだそうです。

「顧客のニーズに合う製品やサービスを作り、それらを必要としているターゲット層にリーチし、彼らにいかに買ってもらい、信頼を得てリピーター(継続購入者)になってもらい、さらに周りの人にそのよさを伝えてもらえるかです」

出典 : 平野 敦士 カール 監修. 大学4年間のマーケティング見るだけノート. 第6版. 宝島社, 2020年, 191p

わたしはこの一節を読んで、「マーケティングは、 商品を通して売り手と買い手をつなぐもので、その媒体は信頼関係である」と理解しました。

買い手から売り手の顔は見えないかもしれない、誰が作っているかなんて興味ないかもしれない、だけど、売り手は買い手のことを考えてプレゼントを贈り続け、お互いの気持ちが通じ合ったときにそのプレゼントを受け取ってもらえる……そう考えると、なんだかマーケティングって、すごくロマンチックなことな気がしました。

デザインにはマーケティングの考え方が必要不可欠

以前、別の記事でBA正木が「デザイナーに必要なマーケティングスキル」についてご紹介していましたが、デザイナーだけでなく、広義でのデザイン、つまりモノをつくることに関わる仕事にはマーケティングの知識や考え方は必要不可欠と考えます。

デザイナーに必要なマーケティングスキルとは | BAsixs(ベーシックス)

調査や分析を実際にどんな役割の人が行うかや、どんな調査や分析を行うかは業界や組織によって変わってくるものと思いますが、その根底に「エビデンスに基づいてニーズに合った商品を提供する」という考え方があるかないかで開発に対する考えの深度には大きな影響があると思います。

たとえばわたしはフロントエンドエンジニアですが、プロジェクトに参加する際、提案書やデザインする上で参考にした他社調査などの資料をインプットすることを心がけています。

もちろん実際の開発に必要なことは「画面の仕様」なのですが、そこに至るまでにどんな経緯を辿ってきているか、自分が作ろうとしている画面にはどんなニーズに対するどんな想いが込められていて、これからどんな風に変化していくことを想定されているのかを理解することも、少なからずデザインレビューやマークアップの精度に影響していると思っているからです。

さいごに:なんとなく使っているマーケティング用語のあらためての見直しにも

この記事では紹介していませんが、具体的なマーケティングのフレームワークや理論、時代の変遷に合わせてマーケティングという分野がどのような変化をしてきたかなどもこちらの本では紹介されています。

「STP」や「4P」「CRM」といった、聞いたことがあるし使っているけど実際にはよくわかっていないマーケティング用語を正しく理解し、ビジネスに活用していくためにも「大学4年間のマーケティング見るだけノート」は有用だと思います。

マーケティングのことを知りたいけど何から手を付けていいかわからないという方はぜひ、手にとって読んでみてください。

参考

  • 平野敦士カール 監修. 大学4年間のマーケティング見るだけノート. 第6版. 宝島社, 2020年, 191p