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大規模プロジェクトにおけるPMの役割と変化、AEM導入のメリット

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BAsixs編集部

BAsixsは、社会課題の解決と新たな価値創出をBAグループ全体で目指すためのサービスブランドです。

Webサイトに求められる機能や役割は、時代の変化とともに変化しています。特に近年Webサイトは、デジタル技術を活用したビジネス課題の解決や、ブランディング施策の中心に位置づけられるようになり、大規模化・多角化が進んでいます。

ビジネス・アーキテクツ(以下、BA)でも、大規模なグローバルサイトの案件が増えています。その際に強力なソリューションとなるのが、エンタープライズCMS(※)の代表格であるAdobe Experience Manager (以下、AEM)です。

大規模サイトの制作を成功に導くには、AEMの機能の熟知だけでなく、適切なプロジェクトマネジメントの経験則や実績が重要になります。

今回の記事では、長年Web制作業界に従事し、さまざまなプロジェクトへの参画経験がある小宮山と柳沢の2名にインタビューを行ないました。近年、プロジェクトマネジメントで変化したポイントとともに、AEMを採用することで発揮される効果について詳しく掘り下げます。

※ CMSとは、Contents Management System(コンテンツ・マネジメント・システム)の略で、Webサイトを構築・運用・管理をするためのツールの一つ。

大規模プロジェクトにおけるPMの役割と変化、AEM導入のメリット

インタビューした人

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富本ディレクター/フロントエンドエンジニア(ビジネス・アーキテクツ)

地元・愛知の印刷会社や広告会社にてWeb制作に携わる。2014年頃、フロントエンドエンジニアとしてBAに入社。現在、ディレクターとして開発・運用の進行管理やWebサイトのガイドライン作成やコンポーネントの設計・作成を担当しています。好きなキャラクターはリラックマ。イタリアとスイスに行きたい。

インタビューを受けた人

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    柳沢 利成第1事業部 マネージャー/シニアディレクター/フロントエンドエンジニア(ビジネス・アーキテクツ)

    1996年よりWeb制作に従事。生産性と品質を両立する全体最適化を意識した「使えるウェブサイト」とすることを心がけている。2003年にBAに参加し、ディレクターやフロントエンドエンジニアとして数々のプロジェクトに参画。2005年にサイト運用や中小規模サイト構築を手がけるグループ会社を立ち上げ、現場責任者として陣頭指揮をとり、スタッフ1人あたり数百万円の営業利益を上げる。その後3年間の流浪を経て2021年にBAに復帰。主にディレクターとしてBAのサービス向上に努める。

  • プロフィールアイコン(イラスト):フロントエンドエンジニア 小宮山
    小宮山フロントエンドエンジニア(ビジネス・アーキテクツ)

    およそ20年フロントエンド実装を専門に活動。一部上場企業のグローバルウェブガバナンス基盤整備を主に手がける。プロジェクトにおいてはテンプレートやコンポーネント開発を中心に担当。ユーザビリティやアクセシビリティ、SEOといったフロントエンド周辺技術に関する造詣も深い。

時代の変化にともないデジタル戦略が大規模化・多角化

ビジネス課題を能動的に解決したいニーズと管理対象のグローバル化

AEM(Adobe Experience Manager)の導入支援の案件が増えている背景には、Webサイトの役割や求められる機能の変化があると伺っています。

小宮山:ひと昔前まで、Webサイトに求められる機能はそれほど多くありませんでした。例えば企業のホームページであれば、理念やサービスの紹介、会社情報の公開などがおもな目的だったと思います。

しかし時代の変化にともない、Webサイトにはユーザーとのコミュニケーションやビジネス課題の解決、ブランディングなどさまざまな役割が求められるようになってきました。

このようなユーザーとのコミュニケーションやビジネス上の課題解決を、Webサイトを活用して包括的に行なおうとすると、多くの機能を実装する必要があり必然的に案件が複雑化します。

AEMはこうした課題解決のために役立つ機能を備えているため、導入案件が増えているという流れです。

柳沢:今まで管理対象となるコンテンツは、日本語のコーポレートサイト1つというケースが大半でした。それが近年では、管理対象が世界各国の現地法人のWebサイトを含むサイト群まで拡大していることも、AEMが着目される理由の一つです。

グローバル企業ではWebガバナンスを強化する流れ

AEMの導入増加には、Webガバナンス強化の潮流も影響しているのでしょうか?

小宮山:大きく影響していると思います。一貫した企業のブランディングを行なうには、複数のサイト群でのトンマナやビジュアル表現の統一が重要です。また、ユーザビリティの面でもメリットがあります。

その点で柔軟なワークフロー機能が備わっているAEMは、Webガバナンスを利かせるための強力なソリューションといえますね。

柳沢:きめ細かい権限設定ができる点も、AEMを導入するメリットです。1つのAEMで数十、数百のWebサイトを作成でき、それぞれに権限の紐づけができます。

例えば、世界各国に支社がある場合、基本的に海外現地サイトの編集権限はその国の支社のみに付与し、日本本社だけは全支社のWebサイトを編集できる、といった設定が可能です。

このような権限設定によって、トンマナやビジュアルの統一が図りやすくなりますし、ノウハウが蓄積すれば、現地法人にWebサイトの管理者を設置しなくても本社側で包括的に更新・管理できるようにもなります。

AEM導入によるグローバルサイトの課題解決については、以下の記事でも解説しています。

AEM (Adobe Experience Manager) 導入で解決するグローバルサイトの課題 | BAsixs(ベーシックス)

リリース後の運用までを見据えた体制の再構築が重要

リリース後の運用まで相談を受ける機会が増えていると伺っています。お客さまの運用面での課題を教えてください。

小宮山:よくあるのは、最初に考えていたビジュアル表現との乖離や、「べからず集」で禁止していた事項が運用段階で守られなくなることです。担当者が増えるにつれ、管理が徹底できなくなり、運用していくうちに管理があいまいになってしまうんです。

また、新製品のPRの際に、言語の問題で国によってメッセージが変わってしまう、というお悩みも聞きます。写真や素材を容易に共有できないことも、効率の悪化を招く要因の一つです。その点、AEMにはコピー機能やアセット管理の機能があるので、各国の支社でアセットを個別に用意する必要がありません。

柳沢:現地法人によってはそもそもWebサイトの運用体制が整っておらず、リリース後の更新が滞っていることもあります。そのような企業様の場合はWebリニューアルの時点で、AEMの機能を踏まえた体制の再構築を提案しています。

AEMのアセット管理機能については、以下の記事で詳しく解説しています。

海外の現地サイトを効率よく管理・運用するためのサイト設計 | BAsixs(ベーシックス)

大規模Webサイトのプロジェクトマネジメントの要諦

大規模プロジェクトでは社内外のステークホルダーが増加

大規模サイト特有のプロジェクトマネジメントの難しさがあれば教えてください。

柳沢:プロジェクトが大規模になればなるほどステークホルダーは多くなり、相対的に担当者一人あたりの裁量は小さくなります。その結果、社内外含めて認識の齟齬が生まれやすくなるのが、大規模サイトならではの難しい部分です。

正しい認識が共有できていないと、単純にプロジェクトの進行が滞りますし、ある程度進めた段階で「想定と違う状態になっている」と気づいたときには、リソースを大きくロスしてしまいます。

BAでは、決まった事項をドキュメント化して逐一共有することで、認識のズレを防止しています。

小宮山:大規模プロジェクトでは、プロジェクトマネジメント側に決済権限をいただけないケースもあります。こうなると、都度お客さまに決裁を仰がなければならないので、プロジェクトが滞りがちです。

理想は、ある程度の決裁権限がプロジェクトマネジメント側に与えられることです。そのためには、こちらも相応の役職者をプロジェクトに参画させる必要があります。

例えば、ECサイト構築における物流担当者やバックヤード担当者など、各分野の専門家が参画したチームをつくることでお客さまからも信頼を得られ、権限を与えられるようにしています。

コスト(利益)のマネジメントにはタスクの可視化や情報共有が重要

ステークホルダーが増加すると機能要望も増えて、コスト管理も難しくなります。管理のための手法や考え方を教えてください。

小宮山:最初のチーム形成がうまくいき、プロジェクトマネジメントに決裁権限が与えられると、途中で追加の機能要望が発生しても、こちらで「やる・やらない」の判断ができるのでコスト管理もしやすくなります。だからこそ、繰り返しにはなりますが、特にステークホルダーが多い大規模プロジェクトでは、役職者の参画は実現したいポイントです。

また、タスク管理ツールの導入やドキュメントの共有で可視化することによって、関係者がリアルタイムで各タスクのスケジュールやアサイン状況を確認できるようにしています。

柳沢:大規模プロジェクトでは、工数の予実管理の重要性もより大きくなります。予定に対して実際の工数が超過しそうなときは、すぐにお客さまを含めたチーム全体に状況を共有します。

追加要望が発生した際も、無条件に対応せずに優先度をつけることや、対応する上限を設けることでコストの最適化を図っています。

対談風景:柳沢が話している様子1

お客さまの協力と冷静に話し合える関係づくりが鍵

大規模案件ではスケジュールの変動要因も多いかと思います。円滑なプロジェクトの進行のために心がけていることを教えてください。

小宮山:柳沢が先ほど申し上げたように、タスクの予実に差異が発生した場合、その理由をお客さまと早めに共有することを心がけています。

「このままだと納期に間に合いません」「〇〇機能の実装を省略すれば間に合います」といったリカバリー策を話し合い、小さなタスクの遅延を調整して全体へのインパクトを最小化することが基本です。

私たち制作側はプロジェクトを管理する義務がある一方、お客さまにも当事者意識を持って協力してもらう必要があります。普段からコミュニケーションをマメに取り良好な関係を構築しておくことで、スケジュールに変動がありそうな際にもお互いに冷静に話し合えるようになると考えています。

柳沢:私の場合、お客さま側のタスクのスケジュールを早い段階で把握することを心がけています。スケジュール全体を管理するのは我々ですが、その中には社内承認やUAT(受入テスト)など、お客さま側のタスクもあります。我々に決裁権がないタスクは管理がしにくい部分なので、特に気を配っています。

また、遅延が発生した場合の対応方針やマイルストーンについて、あらかじめ決めておくことも大事です。例えば、Webサイトの公開1ヵ月前を過ぎた場合は大きな変更はしない、公開1週間前からは小さな変更もNGなど、後戻りできないタイミングを決めておくことです。

運用業務で必要な仕組みを用意することは制作会社の責務

リリース後の運用を見据えた際に、プロジェクトマネジメントで特に重視している部分を教えてください。

小宮山:リリース後の業務や恒久的な運用を想像しながら、受け皿として必要な仕組みを設計することです。

実際に運用するまで外部の我々からは見えない部分もあるので、関連部署の方々にお声がけして、運用時は実際にどのような体制で動かし、どのような機能が必要なのかご意見をいただくようにしています。

例えば、リリース後のWebサイトの更新はリニューアルを実施した部門ではなく、サポート部門が行なう場合があります。そうした内部の事情を把握できていないと、予定していなかった方向の改修が発生する可能性があるんです。

実際の運用業務を想定して必要な仕組みを用意することは、制作会社の責務と考えています。

柳沢:運用時にお客さま側で対応していただく部分と、BAがご支援できる範囲を明確にしておくことも重要です。

ただ提案依頼書(RFP)の時点では、お客さまもCMSで実際に何ができるのかイメージが湧いていないことも多いため、ある程度プロジェクトが進んだ段階でお互いの運用範囲を話し合います。

そして、公開の数ヵ月前にはそれぞれの運用範囲について合意を取り、実際の運用を想定したテストを行ないます。

AEMでWebサイトを構築するメリットと効果

リアルタイムのプレビュー機能は確認作業に大きな差を生む

AEMで大規模サイトを構築することのメリットや効果をお聞かせください。

小宮山:AEMはコーディングなしでも迅速な編集が可能です。そのおかげで、お客さまから仕様変更の要望があった際も、速いレスポンスで対応できる点は大きなメリットだと感じています。

また、ほかのCMSの場合はステージング環境で修正・保存してから、お客さまに確認いただくという流れが一般的です。一方、AEMはまだ保存していない修正中の状態でもお客さまにご確認いただけます。例えば、AEMの編集画面でエンジニアが修正している最中も、リアルタイムでお客さまが閲覧できるのです。

柳沢:編集中であっても、本番環境と完全に同じレイアウトでプレビューできることで、プロジェクトの進行スピードに大きな差が生まれます。また、ほかのCMSでは複数の人が同時編集をした場合、パフォーマンス上の問題が生じます。しかしAEMは、10人同時に編集しても問題が起きないため、大規模プロジェクトにまさに最適なCMSです。

AEMには運用後も必要となる機能が一式そろっている

AEMには、大規模なWebサイト運用に必要な機能がそろっていると聞きます。プレビュー機能以外にはどのような機能をよく使用されますか?

小宮山:個人的によく使うのは、画像名やファイル名の変更時に、自動的にリンクも変わってくれる機能です。

例えば「α(アルファ)」という製品名が翌年から「β(ベータ)」へ変更になった場合、通常のCMSではページの名前を変えると、リンクを張っているページをすべて見直す必要があります。それがAEMでは自動的にリンクが変わるため、コストを大幅に削減可能です。

ページのファイル名だけでなく、ディレクトリごと変更したとしても、全部自動でリンクも変わるので管理しやすいですね。

このように、AEMは構造の変化に対する柔軟性が優れています。ITに詳しくない専門領域外の担当者が増えても、Webサイトに問題が発生しない仕組みになっている点は、運用の観点でも大きな強みだと思います。

柳沢:私はブランチ(AEMの名称はローンチ)機能を挙げたいと思います。ブランチ機能は日々の小規模な更新と、数ヵ月先の大規模な更新という複数のバージョンを同時に管理できる機能です。数ヵ月後の更新を正としてバージョン管理することで、先行する更新も同期されて反映するため、整合性を保った更新作業ができます。

小宮山:AEMのクラウド版の場合、本体とプロジェクトが分離しているので、本体のアップデートによる影響は限りなく小さく済みます。

例えばWordPressでは、アップデートによってページの表示が崩れた、特定のボタンが動かなくなった、といった事象が発生しますが、AEMではこのような心配を抑えることが可能です。AEMの仕組みは、制作側にとっても安心できるものです。

AEMを採用することでコストメリットが高まり、更新も迅速に

とはいえ、AEMは費用面でほかのCMSより高額です。AEMを採用するメリット(コスト、納期)を教えてください。

小宮山:AEMは柔軟かつ高機能なCMSですので、Web担当者のレベルで可能な更新作業の幅が広いという点が挙げられます。

大きな機能としてはコピー機能があります。コピー機能はサイト単位で使用できるため、グループ会社が新設された際に「グループ会社テンプレート」を事前に用意しておくことで、すぐさま新しいWebサイトを立ち上げることができます。

柳沢:コピーでのWebサイト新設に加えて、ページ単位の更新を自動で反映できる点もメリットです。例えば30ヵ国分のWebサイトがある場合でも、起点となるサイトに加えた更新を30ヵ国のサイトすべてにいき渡せるような設計も可能です。

AEMを導入した大規模プロジェクトをご検討のお客さまへ

最後に、AEMによるWebサイト構築をご検討の読者に、BAの強みや他社と比較したときの優位性についてコメントをお願いします。

小宮山:制作会社の本質的な役割は、企業が抱える課題を解決することです。BAの強みは、お客さまの課題を抽象化し、そこから本当の課題解決策を考えられる、という点だと考えています。

例えば、お客さまからの「採用サイトをつくってほしい」という依頼に対して、我々は「なぜ新しく人材がほしいのですか?」「なぜ人材が集まらないのですか?」と問いかけます。抽象化して課題の根幹を考えて、適切なソリューションを提案できることはBAの強みです。そして、我々の提案を力強く後押ししてくれるのがAEMだと思っています。

本質的な課題を解決する力があるBAが、柔軟かつ高機能なAEMを活用することで解決できる企業課題はまだまだあります。AEMの導入をご検討されている企業は、ぜひBAにお声がけいただきたいと思います。

柳沢:AEMはページを構成する要素を「部品」として捉える「コンポーネント」の概念があります。実はBAも20年以上前から、大規模サイトの構築にコンポーネントの概念を確立しており、幾多の実績や知見を有しています。

また、構築だけでなく長年の運用で培ったさまざまな知見も、BAにはあります。このように単にAEMが強力なCMSというだけではなく、BAがAEMを使うという点に他社さんにはない強みがあると思います。

BAとAEMの相性の良さも、AEMの構築パートナーとしてBAをお選びいただく大きなポイントの一つだと自負しています。

対談風景:柳沢が話している様子2

まとめ:BAの長年の経験則とAEMの設計思想は親和性が高い

Webサイトの制作は、時代とともに大規模化・多角化してきています。今回、近年増加している大規模プロジェクトにおけるプロジェクトマネジメントについて、2人の熟達したエンジニアにお聞きしました。

大規模プロジェクトでは、ステークホルダーの増加、Webガバナンス、運用上の課題などを背景に特有の難しさが内在しています。

BAでは、大規模サイトの構築や運用に必要な機能を有しているAEMを採用しており、お客さまを本質的な課題解決に導く力があります。

AEMで大規模サイトを構築・運用できるパートナー企業をお探しのお客さまは、ぜひBAにご相談ください。