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CMS比較する前に知っておくべき社内事情

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プロフィールアイコン(イラスト):デザイン&コミュニケーションサービス事業部 事業部長 小山
小山デザイン&コミュニケーションサービス事業部/事業部長(ビジネス・アーキテクツ)

toCサービス、toBサービス拠点マネジメントを通してサービスの複数拠点の運営管理を担当。またtoBサービスの企画立案などで企業向けサービスの企画・開発を行う。Business Architectsには2019年にジョイン。大規模サイトのアカウントマネジメントや金融系サイトのプロジェクトマネジメントなど多くのプロジェクトを手掛ける。

CMSを比較するたびに、どれも一長一短に見えて決めきれない。
そんな迷いの裏には、実は自社の運用実態が曖昧なままという課題が潜んでいることがあります。

  • 更新の流れはどうか?
  • 誰が関わるのか?
  • どこまで自前でできるのか?

自社の体制や制約を整理せずに製品比較だけを進めても、最適なCMSには辿り着けません。
特に「初期費用が安いから」とCMSを選んだ結果、プラグイン依存や保守負担で総コストが想定以上に膨らむというのはよくある話です。

CMSの成否を分けるのは、製品スペックや初期費用よりも「自社との相性」。

本記事では、CMS選定を始める前に整理しておくべき社内事情について、具体的なチェックポイントとともに解説します。

CMS比較する前に知っておくべき社内事情

CMS比較は「価格」 「機能」 「UI」 「サポート」などが焦点

CMSを選ぶ際、多くの担当者がまず注目するのが、「価格」 「機能」 「UI(編集者が使いやすいか)」 「サポート体制」などの製品スペックの比較です。
実際、ベンダーからの提案書や比較表も、こうした軸で並べられていることがほとんどでしょう。

  • コスト感(初期・月額・保守費用など)
  • 標準機能や拡張性
  • コンテンツ編集のしやすさ
  • 問い合わせ対応やトラブルサポートの範囲

これらはもちろん重要な観点であり、検討すべき要素です。
ただし、それだけで比較を終えてしまうと、導入後に想定外の課題に直面するリスクもあります。

CMS比較の対象CMSや比較項目のイメージ

社内事情を無視したCMS導入は大きなリスク

実際の導入現場では、「想定より使いづらい」「ワークフローが回らない」「運用できる人がいない」といったトラブルが起きることがあります。
こうした失敗は、製品そのものの問題というより、自社の事情とのミスマッチに原因があることがほとんどです。

たとえば

  • 更新を担うチームのリテラシーに合っていない
  • 社内の承認フローとCMSの仕様が噛み合わない
  • 複数部署での編集や公開が想定より複雑だった
  • 内製を想定していたのに、運用がエンジニア前提だった

CMSはただの「道具」です。
その道具が自社で活かされるかどうかは、体制やフロー、スキル、文化といった内側の条件に大きく依存します。

CMS比較の前に整理すべき社内事情チェックリスト

CMSを比較検討する際、「どのCMSが優れているか」という視点に偏ると、最終的に「どれも帯に短し襷に長し」で決め手を欠くことになります。

本質的な問題は、CMSが合わないのではなく、使いこなせないこと。
そしてその原因の多くは、「自社の運用や体制に起因する前提条件」が整理されていないことにあります。

ここでは、CMS比較に入る前に必ずチェックしておきたい社内事情の観点を紹介します。

組織体制・スキルセット

CMSを扱うチームのスキルセットや組織体制は、運用設計の前提となる重要な要素です。

  • HTML/CSS/JSの基礎知識があるメンバーはいるか?
  • デザインやUXを専門に担当する部署・担当者は社内に存在しているか?
  • 編集・公開に関わるガバナンスや承認フローはどのような形か?

これらを整理せずにCMSを導入すると、「設定変更ひとつできない」「承認が詰まって更新が進まない」など、本来不要な混乱が日常化するリスクがあります。

更新頻度・運用スタイル

CMSの運用効率を大きく左右するのが、更新頻度と運用のスタイルです。

  • どのくらいの頻度で、誰が、どのようなコンテンツを更新しているか?
  • 複数部署/多言語サイトなど、運用範囲が広がる可能性はあるか?
  • 社内リソースだけで回すのか?外注と併用するのか?

「高機能なCMS」を導入したのに、実は月1回しか更新しないサイトだった、というギャップは少なくありません。
リアルな運用像に合ったCMS設計が、ストレスのない運用につながります。

セキュリティ・インフラ要件

CMSは社内外のシステムと関わるため、セキュリティやインフラの制約も無視できません。

  • オンプレミス前提/クラウド不可など、自社のインフラ制約はあるか?
  • 情報システム部門が定めたセキュリティ基準や運用ルールは何か?
  • シングルサインオンやIP制限、ログ取得要件などの対応範囲は?

セキュリティ要件を後回しにして選定を進めると、「情シスの審査で止まる」といった事態にもなりかねません。

システム連携

CMSは独立した存在ではなく、他のシステムとの連携で力を発揮します。

  • 社内の基幹系や認証システム、PIM、CDN、マーケティングツール等との連携は必要か?
  • API連携の実装余地と、連携における制約は何か?
  • 既存ワークフローや運用ツールとの整合性はとれているか?

単体で完結するCMSはほとんどありません。
自社のシステム構成全体を見ながら、どのような接続性が必要かを検討しておく必要があります。

拡張性(将来的な運用想定)

目先の要件だけでCMSを選ぶと、数年後に再構築せざるを得なくなるケースもあります。

  • 多言語化やマルチブランド展開の可能性は?
  • CMS上に溜まるコンテンツ資産を、将来的にどう利活用したいか?
  • 複数のWebサイト管理や、ヘッドレス運用などの方針転換に対応できるか?

CMSは一度入れると5年単位で使うケースが多いため、将来を見据えた拡張の余地は早期に検討しておくべきポイントです。

CMS比較の前に整理すべき社内事情チェックリスト

まとめ:最適なCMSは「一番優れているCMS」ではなく「一番自社に合っているCMS」

CMS導入を成功させるカギは、「どれだけ多機能か」「UIが優れているか」といった製品側のスペック競争ではありません。

むしろ重要なのは、自社の体制・スキル・業務フロー・文化といった内側の条件とフィットするかどうかです。

どんなに機能が充実していても、それを活かす環境が整っていなければ意味がありません。
逆に、シンプルなCMSでも、運用スタイルやスキルセットにマッチしていれば、十分に価値を発揮します。

CMSは、導入して終わりではなく、「誰が」「どのように」使い続けていくかが問われるツールです。
その意味で、最適なCMSとは、一番使いこなせるCMSであり、自社にとってちょうどよいCMSなのです。

比較表をつくる前に、まずは自社の輪郭を明確にする。
それが、CMS導入・リニューアルを成功に導くための第一歩になります。

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