BAsixs参画企業のビジネス・アーキテクツ(以下、BA)はこの度、ブランド浸透施策の一環として、株式会社ナナメ(以下、ナナメ)と協業しブランドムービーを制作しました。
本記事では企業がなぜブランディングに取り組むのか、近年よくご相談いただくブランディングの話、動画とブランディングの親和性についてお伝えします。
これからブランディングに取り組みたい方や、ブランドムービーに興味がある方は、お気軽にご相談ください。貴社の目的や考え方に合わせて最適な手法をご提案いたします。
インタビューを受けた人
- 宮入取締役/ディレクター(株式会社ナナメ)
映像制作会社でモーショングラフフィックスのキャリアをスタートし、後にフリーランス。2015年(株)ナナメ設立。モーショングラフィックスを中心とした企業ブランドムービーのディレクション・制作に多数携わる。 BAsixsブランドムービーのディレクションを担当。
- 笈川プロデューサー(株式会社ナナメ)
広告制作会社でSPツールの営業を経験後、映像業界に興味を持ち、2021年(株)ナナメ入社。 BAsixsブランドムービーの制作進行を担当。
- 森 太輔ゼネラルマネージャー/CDO(Chief Design Officer)/人間中心設計スペシャリスト(ビジネス・アーキテクツ)
2008年、企業の情報コミュニケーション戦略を実現するプロジェクトを中心に、アートディレクター及びリードデザイナーとしてビジネス・アーキテクツに入社。特に日本の製造業のグローバル展開プロジェクトに長年関わっている。現在はデザイン部門の責任者も務める。
- 正木UI/UXデザイナー(ビジネス・アーキテクツ)
2020年BA入社。マーケティングの知見を持つデザイナーとして、クライアントの課題解決提案・WebサイトのUIUX設計・CIVI制作など、幅広いデザインワークに従事。趣味は絵を描く事と業務の効率化。
前編のおさらい
前編では、なぜBAsixsのブランドムービーを作ったのか、どんな流れで作ったのかについて、BAのブランド浸透チームとナナメの4人に詳しく聞いてみました。
ブランドや想いをムービーで伝えられますか?(前編)ナナメ×BAのムービー制作プロセスを公開します | BAsixs(ベーシックス)
後編ではもう少し俯瞰して、ブランディングについて普段考えていること、感じていることを深掘りします。
ブランディングの最初の1歩は社内への浸透
自分たちの存在意義を再定義して、メッセージを伝えたい企業は増えている
ブランドムービーの需要は増えていますか?
宮入:はい、最近ご相談が増えてきています。
BAsixsのブランドムービーがきっかけとなり、ご相談頂いた事例もあります。「これはまさにうちが作りたかったものだ!」とご感想を頂きました。
BAsixsのブランドムービーは抽象的なのにすごく分かりやすいですからね。
正木:ブランドらしさと同じくらい「分かりやすさ」を大事にしつづけたからかと思います。
抽象的な表現と分かりやすさって対極にいるんですが、それが絶妙なバランスだから、他社様からも評価いただいているんだと思いますね。本当にナナメと一緒に作れてよかったなと思いますね。
森:分かりやすさを追及しすぎると説明的、かつ限定的になる懸念もありますよね。その一方で抽象度を上げるとぼんやりしすぎる。そのバランスの取り方が、最も難しいと感じます。今回の制作でも悩みましたよね。
笈川:BA代表の大日さんに伺ったブランドに込めた背景を、ギュッと凝縮してまとめた感じですからね(笑)。
お二人は大日さんと直接お話をする機会が多いと思いますが、リモート勤務で直接会えない人にも会社や代表の言葉を届けるためには動画という形が最適だと思いますね。
森:ちなみに、ブランドムービーの依頼って社外向けが多いですか?
宮入:社内・社外どちらにも向けたムービーのご依頼が多いですね。ブランドムービーは目指すべきゴールや自分たちの価値観をすり合わせるために必要なものなので、社外向けとは限らないと思います。
社外に向けてPRすることは勿論大事ですが、社内へ浸透させる方が実は肝になるのではないのかと。
森:確かに社内への浸透は肝かもしれませんね。
社内の求心力を高めることで、社員一人一人の行動が自発的に取れるようになります。その結果、社員が一丸となって社外に向けたブランディングを推進することに繋がりますよね。
最近は企業経営やブランディングなどの観点から、「パーパス(purpose)」ってキーワードを良く耳にしますよね。自分たちの存在意義を見つめなおす、メッセージとして発信したいという需要が増えているのかなと思っています。
宮入:そうですね。そういう需要も多い気がします。
リモート勤務も増えているので、会社に意識を向けてほしいと想う経営者が増えてきているのかもしれないですね。
例えば、オフィスを構える理由って、コミュニケーションが取りやすいので、社員の共通認識や社内風土をつくったり、士気を上げていくのに適しているからじゃないですか。そこを補う役割も担ってきている気がします。
正木:そのお話を聞くと、せっかくオフィスがあるのなら有効活用しなきゃって思いました。三田オフィスの壁を、BAsixsカラーで塗っちゃいます?(笑)
森:それ、面白いアイデアっ!オフィスのありかたや意義もアップデートしていく必要がありそうですね。
笈川:自分たちの存在意義を言語化して出すニーズは本当に増えていると思います。コストパフォーマンスの面でも価値があるんですよね。
例えば、人材採用でもブランディングがしっかりしていてどんな会社かわかれば、マッチする人が応募してきますし、入社後のギャップも減らせますよね。採用のコストや離職率も減らせるわけです。ただ、注意したいのは会社の掲げるビジョンと実際の業務が乖離しすぎていると逆効果になってしまいます。そういう意味でも社内に浸透させるのは大事ですね。
森:ブランドムービーは、経営層が伝えきれていない会社のメッセージを伝達するには、よい手法かもしれないですね。ムービーがあることで、ブランディングを目的とした制作物や社内説明会にも説得力が出たように思います。
宮入:BAsixsのブランドムービーは、大日さんの強い想いをBAのブランディングチームで具現化して頂いたので、色んな人に伝わりやすくなったと思います。
企業はなぜブランディングに取り組むのか?
先ほど、「直接会えない人にも会社や代表の言葉を届ける役割もある」「人材採用でコストパフォーマンスが良い」など気になるワードがいくつか出てきました。
改めて、企業はなぜブランディングする必要があるのでしょうか?ブランディングに成功すると、どんなメリットがありますか?
森:ブランディングとは「ブランド・アイデンティティとブランド・イメージを一致させる活動」です。
ブランド・アイデンティティとは、商品やサービス、あるいは企業そのものの価値のこと。ブランド・イメージとは、顧客が思い描いている商品やサービス、企業に対するイメージです。
そして企業がブランディングに取り組むメリットは価格競争を避けたり、優秀な人材とのマッチング、競合他社との差別など、会社運営の包括的なコスト削減になるかと思います。
ブランディングに取り組む意義は、ターゲットごとに大きく3つの軸があると思います。
- 企業:価格競争の回避、優秀人材の確保
- 社員:モチベーション向上、会社に誇りを持てる
- 顧客:認知度の向上、ファン化
正木:そうですね、この中では特に「価格競争の回避」が大切ではないかと私は思います。今の時代、ユーザーは「意味」に価値を見出す時代だと考えるからです。
「安い」「便利」などといった企業イメージだけでなく、企業に対し「好き」「共感」といった自分の価値観に近いかどうかをユーザーが購買の判断軸として持ちます。そのため、企業が大切にすることをブランディング施策を通して社会に発信することは、企業とユーザーを繋げる上で必要なんじゃないかなと思います。
森:顧客目線だとそうですね。社内に目を向けると、現在企業に所属している人たちにとっても、企業に対し「好き」「共感」といった感情を持ってもらうことが大事だと思います。
社員と企業の向かうべき方向性が揃っていると、社員は高いモチベーションを維持でき、業務での成果を出しやすく、会社への貢献にもつながります。さらに社員が成長するという好循環が生まれます。
また企業が正しく情報発信して、それを見て新しく入社する人は、企業の価値観や方向性に共感して集まってきます。すると企業の成長が加速し、より企業の魅力が上がります。企業のファンが増えて、認知度も上がり、価格競争の回避にもつながるというように、良い方向に循環すると考えます。
ブランディング施策において、「ブランドの想いや考えを発信する」「ユーザーに伝えたいことを正しく伝える」「ユーザーが共感しファンになる」は、簡単ではないと思います。成功の肝は何だと考えますか?
森:自社が社会に提供できる価値は何か、そのために何が必要で、何を大切にしていくのか、企業理念や会社の在り方を改めて定義することが大切なのかなと思いました。
そして定義したうえで、どんな会社なのか消費者に正しく知ってもらうことが重要な気がしますね。
正木:定義しているつもりでも、案外ふわっとしていることは多いと思います。実際にBAsixsも立ち上げ当初はそうでした。ふわっとした定義は、ユーザーにはさらにふわっとしか伝わらなくなるので、伝えるべきメッセージを細く鋭くしていく必要があるのかなと思いますね。
宮入:そうですね、お客様と直接やり取りをするのは社員の方ですからね。
森:まずは自分たちのやっている事業を社員が「ズレなく」理解して、お客様に正しく伝えることが大切ではないでしょうか。認識のズレを無くすことで、社員全員が一丸となってアウターブランディングを推進できるようになれるといいですよね。
経営層に説明するために、「ブランディングの成果が出ているのか」をどのように計測・説明すればよいでしょう?
森:ブランディングの成果の測定は難しいと思うのですが、他の企業ではどういう方法で成果を評価していらっしゃいますか?
笈川:そうですね。全社員へのお披露目の感想、クライアントからの感想、社長からの感想などを頂いております。「つくって良かった。」とポジティブな意見を頂くことが多いです。
ある企業では「会社の社員であることに自信を持てる」動画にしたいと社長がおっしゃられて、会社の歴史を扱ったブランドムービーを制作しました。
株主総会前で疲れていた社長に動画を見せたら機嫌よく帰っていったと、担当者から感謝の言葉を頂きました(笑)。さらに社員の方からも「見終わった後ぐっときた。自分の会社に自信を持てる。」と感想をもらいましたね。
正木:弊社代表も同じでしたよね。ナナメとの打ち合わせの後は、すごいご機嫌でニコニコでした。
森:そうだね。チームとして一緒にブランドを構築している感があったね(笑)。
宮入:目に見えない事業が視覚化されて伝わりやすくなったことに対して、経営者のみなさんは喜びを感じるのかもしれないです。
事業ってハッキリ分かりやすいものではないですからね。
正木:なるほど。自分の所属する会社に自信を持つことって数字には表れないですけど、すごい大事なことですよね。取り組み方や会社への向き合い方も変わるので、出せるパフォーマンス、ひいては結果もきっと変わるだろうし、リアルな話では離職率にも影響しそうですね。
笈川:数値化は難しいと思いますが、モチベーションクラウドなどのサービスを使い、年間で社員のモチベーションや企業スコアを数値化して成果を測定している企業もありますね。どの企業もブランディングの成果測定は、試行錯誤している段階だと感じます。
ブランディングとムービーの親和性
ブランディング施策の一つとして、動画を選択するメリットは何ですか?
宮入:視覚と聴覚からのアプローチで、直観的にわかりやすく伝えられるのがメリットですね。
例えば、商品の特長や利用シーンといった具体的な内容だけでなく、企業の理念やビジョン、ブランドの世界観などの抽象的な内容も短い時間で、大枠の全体像を掴んでもらうことが出来ると思います。
逆に動画のデメリットや、苦手なことは何でしょう?
宮入:ブランディング全般にも言えると思いますが、ブランドムービーの制作はかなり時間とコストがかかります。デザインやモーションなどの本制作だけで言うと2~3か月あれば大抵納品出来るのですが、骨子の制作やコンテなどの動画の設計図づくりが一番時間がかかりますね。ご相談の段階でどこまで決定しているかで全然違います。数週間で本制作に入れる場合もありますし、半年かかってしまう場合もあります。
さらに成果が出るまでに時間がかかるため、動画を作る価値を感じてもらうのが難しい所かなと思いますね。
社員に理念や働き方が浸透して、個々と組織のトライ&エラーを繰り返すことで、徐々に売り上げなどの具体的な成果が出ることになるので。
森:本当にそうですね。ブランディングって積み重ねなので、ポンっと1日でできるものではないですから。
あとは当たり前だけど、プロジェクトの目的と目標のすり合わせが肝だと思います。
コストをかけてブランディングに取り組んでも、最初の目的・目標設定ができていないと、上手く進めづらいのかなと思いました。
正木:何をもって、ブランディングが成功したというのか?ってところですね。
「新入社員がブランドムービーを見て感動したっていう状態」なのか、「売上を上げる」までを成功と取るのか。後者だと成果が分かるまでの道のりが長すぎるので、別の方法がいいんじゃないかと思いました。
宮入:ブランディングは、会社の考えを深く理解している人が推進し、経営層の考えが社内外に正しく伝われば、ひとまず成功だと思いますけどね。
笈川:ただ、BAsixsの動画と同じことを違う会社でやっても成功するとは限らないですよね。会社の考え方に合ったブランディングにしていかないと時間とお金を無駄にしてしまいそうですね。
正木:そうですね。もっと抽象的に伝える方が刺さる会社もあれば、もっと具体的にこういうことをしましょうと伝えた方が刺さる会社もありますよね。
BAとナナメが協業する価値とは?
宮入:弊社は動画制作会社なので、オーダーに対して演出・デザイン・モーションでより良い形にするのが得意領域です。
基本的にスポットでの受注が中心なので、お客様と長い期間をかけて関係値を築いたり、社内風土までを理解してサービスをご提供するのが難しい側面があります。そのため、ブランド施策の提案まで踏み込めないのがネックでした。動画の制作期間の数カ月の関係でしかない弊社から、企業の在り方やメッセージの伝え方をご提案をするのはあまり相応しくないと思っています。
ですが、BAと協業することでお客様にベストなサービスをご提供出来ると考えています。
BAはお客様と年間契約による継続した取引なので、二人三脚による長い関係値づくりが出来ています。企業理念や社内風土まで理解した担当者がBA内にいるので、企業の在り方やメッセージを深く理解した上でのブランド施策の提案が可能だと考えています。各企業担当者を中心としたBAチームに骨子の作成と合意をとって頂き、ナナメは動画制作部隊として役割を分担出来るといいなと思っています。
正木:最初のヒアリングの段階で、中に入り込めるかって大きいですよね。関係者が何人いるか、誰・どの部門が一番ブランドのコアの部分を理解しているのか、何を大切にしているのか、さらに意思決定のプロセスなどを理解していないと、うまく進められないです。
ブランド施策は関係者が多い可能性があるので、注意が必要ですね。
笈川:担当者様のブランディングの捉え方が、社長や経営層の方とズレがないことも重要ですよね。お客様の社内で認識にズレがあると、どうしても出来上がった動画を見て「思っていたイメージと違うな」といった感想が出てきてしまいます。
BAsixsブランドムービーでは、ブランド浸透チームの正木さんが大日さんと認識をすり合わせて骨子を進めたように、決裁者と認識をすり合せて軸を定めることが重要だと思いますね。軸があれば判断が適格になっていくので、計画通り進みやすいですよね。
森:そうですね。軸さえ決まれば、手戻りを減らせるので、無駄な工数が膨らまないですからね。先ほど正木さんからもありましたが、ステークホルダーや関係者の把握と連携は必須ですね。
今後の展開
今後はナナメとBAと一緒に、お客様のブランディングをサポートしたいと考えていますが、ナナメはいかがお考えでしょうか?
宮入:ブランドムービーに限らず、動画でお手伝い出来ることがあれば是非ご相談ください。実現に向けてお客様とも綿密に連携した制作体制を整えていけると嬉しいです。
正木:そうですね。「目的達成のためには、どうあるべきか、どの手段がいいのか」といったプロジェクトの戦略策定フェーズから、お客様と一緒に検討出来ることが重要と捉えています。
笈川:私たちからの提案を一緒に考え推敲してくださるお客様であれば、きっとブランディンは上手くいくと思います。
正木:既存顧客は勿論、社会全体とのコミュニケーションを強化したいと考えるお客様がいらっしゃれば、是非ご一緒したいです!
森:今後もお客様の期待を超え続けるために、ナナメとBAのお互いの強みを活かすことで提案力をより強化し、幅広くブランディングのご支援をしていきたいです。ナナメの皆様、今後ともよろしくお願いいたします!
編集後記
後編では、ブランディングに関して考えていることを中心にお伝えしました。ナナメの「リモート勤務で直接会えない人にも会社や代表の言葉を届けるためには動画という形が最適」という言葉を聞いて、なるほどなぁと思いました。働き方の幅が広がっている今、需要はもっと伸びていきそうですね。
前編では当ブランドの動画制作の裏側の話を赤裸々に紹介しています。まだご覧いただいていない方は、ぜひ合わせてご覧ください。
ブランドや想いをムービーで伝えられますか?(前編)ナナメ×BAのムービー制作プロセスを公開します | BAsixs(ベーシックス)
BAsixsはWebサイト制作だけでなくブランディングについても、戦略立案フェーズから制作、運用まで一気通貫でお任せいただいています。どこから手を付けたらいいのか分からない方、ブランドムービーに興味がある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。