「アイスクリームの売上が増えると、水難事故が増える」データ分析の世界ではよく知られている相関関係にまつわる例え話の1つです。もし仮にそのようなデータがあったとしても、「アイスを食べると溺れやすくなるんだ!」と結論づける人はいませんよね。
しかしビジネスの現場では、これほど分かりやすいデータばかりではありません。Webサイトやデジタルマーケティングの改善をしようとすると、PV、CTR、CVR、問い合わせ数など、複数の数値を見ながら施策の効果を判断することになります。その際、「Aが増えるとBも増える」という関係を、施策の成果としてそのまま受け取ってしまって良いのでしょうか?
データに基づく意思決定をするためには、相関関係と因果関係の違いを理解しておく必要があります。この記事では、相関関係や因果関係についての基礎的な内容を押さえながら、デ ータにだまされないポイントを解説していきます。

相関関係と因果関係は「まぜるな危険!」
データを読み解く上で、まず覚えておきたい重要な原則があります。それは「相関は因果を意味しない」ということです。
たとえAとBに強い相関関係があったとしても、「Aが原因でBが増えている」とは言い切れないのです。2つの数字が同じように動いていることと、一方がもう一方を引き起こしていることは、分けて考える必要があります。
この原則を忘れず、まずは相関関係と因果関係の違いを見ていきましょう。
相関関係とは
相関関係とは、一方が変化すると、もう一方も一定の傾向で変化するという関係のことです。
たとえば、身長と体重の関係を考えると、背の高い人ほど体重が重い傾向があります。ただし、これはあくまで2つの数字が連動している傾向を示しているだけで、必ずしも一方がもう一方の原因になっているとは言い切れません。
因果関係とは
因果関係とは、ある事象が原因となって、別の事象を引き起こす関係のことです。
「相関関係」とは別物になります。相関関係が「2つの数値が連動している傾向」を示すのに対し、因果関係は「一方がもう一方を引き起こしている関係」を示します。たとえば、気温が上がるとアイスクリームの売上が増えることがあります。この場合、気温の上昇がアイスクリームの売上に影響しているとは考えられますが、アイスクリームの売上が増えたから気温が上がるわけではありません。
そのため、2つの数値が連動しているように見えても、「どちらがどちらに影響しているのか」まで確認しなければ、因果関係があるとは言いきれないのです。
3つの相関関係
相関関係には、大きく分けて「正の相関」「負の相関」「無相関」の3つがあります。ここでは、それぞれの特徴を散布図のイメージとあわせて見ていきます。
正の相関
正の相関とは、一方が増えると、もう一方も増える傾向がある関係のことです。
たとえば、身長と体重の関係では、身長が高い人ほど体重も重い傾向があります。Webサイトのデータでいえば、検索結果での表示回数が増えると、クリック数も増える傾向が見られます。
ただし、正の相関があるからといって、一方がもう一方の原因であるとは限りません。あくまで、2つの数値が同じ方向に動く傾向がある、という見方にとどめる必要があります。

負の相関
負の相関とは、一方が増えると、もう一方は減る傾向のある関係のことです。
たとえば、運動量と体脂肪率、商品価格と販売数量などは、負の相関が見られることがあります。Webサイトのデータでは、検索結果での平均掲載順位とCTRの関係が例として挙げられます。平均掲載順位は1位に近いほど上位に表示されている状態を表すため、順位の数値が大きくなる(下位に表示される)ほどCTRは下がりやすい傾向があります。
CTRは順位だけで決まるものではありませんし、タイトルやディスクリプション、検索意図との一致度など、ほかの要因も影響しますが、一般的な傾向として掲載順位が下位になればCTRは下がっていきます。

無相関
無相関とは、2つの変数の間に明確な傾向が見られない状態のことです。
たとえば、靴のサイズと知能指数を散布図にしても、おそらく明確な傾向は見られないでしょう。Webサイトのデータでは、記事の文字数とPVを比較しても、文字数が多い記事ほど多く読まれるとは限りません。短い記事でも検索ニーズに合っていれば多く読まれることがありますし、長い記事でもテーマの需要が小さければPVは伸びにくくなります。
このように、2つの数値を並べても一定の傾向が見られない場合は、無相関と考えられます。

相関の強さを数値で見る「相関係数」
上記のような散布図で2つの変数の間に傾向が見えたとき、「2つの変数はどの程度強い相関関係があるのか?」を確認する指標として使われるのが、相関係数です。
代表的なものに「ピアソンの相関係数」があります。値は-1.0~1.0の間を取り、1.0に近づくほど強い正の相関、0に近いほど無相関、-1.0に近づくほど強い負の相関を表します。
繰り替えにしなりますが、相関係数はあくまで2つの変数の関係の強さを数値で表すものです。値が高いからといって、因果関係があるとは限らない点に注意が必要です。

Excelで相関係数を計算する方法
実際にExcelを使って相関係数を算出してみましょう。今回はダミーデータとして10日分の「最高気温」と「アイスクリームの売上」を記録したデータを元に算出してみます。
なお、算出にあたって注意点があります。相関係数は「外れ値」の影響を受けやすいため、数値だけを見るのではなく、事前に散布図を作ってデータのばらつきも確認しておくとよいでしょう。
【手順】
- データを準備する。
- Excel関数で「=CORREL(配列1,配列2)」を入力する。
- 配列1に「気温」の列、配列2に「売上」の列を選択します。
- 結果が表示されます。
今回のデータでは、相関係数は「0.998」と1.0に近い値になりました。そのため、このデータにおける「最高気温」と「アイスクリームの売上」には強い正の相関があると見てよいでしょう。


相関関係で注意すべき3つのポイント
相関関係が見られるデータでも、それだけで因果関係があるとは言えないことは繰り返しお伝えしてきました。ここからは、特に注意したい「交絡因子」「逆向きの因果」「偶然の一致」の3つについて解説していきます。
交絡因子
交絡因子とは、2つの変数の両方に作用する「第3の要因」のことです。
冒頭で紹介した「アイスクリームの売上が増えると、水難事故が増える」という例では、「気温」が交絡因子にあたります。暑くなるとアイスクリームが売れやすくなり、同時に海やプールに行く人も増えるため、水難事故も増えやすくなります。
つまり、アイスクリームの売上と水難事故の間に直接の因果関係があるのではなく、両方に影響している「気温」によって、相関があるように見えているのです。このように、実際には直接の因果関係がないにもかかわらず、相関があるように見える状態を疑似相関と呼びます。


逆向きの因果
2つの変数に関係があるように見える場合でも、どちらが原因で、どちらが結果なのかを取り違えてしまうことがあります。
たとえば、、「運動する人は健康だ」という相関があったとしても、運動しているから健康なのか、それとも健康だから運動できているのかは、データを見ただけでは判断できません。
このように、一見すると因果関係がありそうに見えても、原因と結果の関係が逆である可能性があります。相関を見つけたときは、「どちらがどちらに影響しているのか」をあわせて確認することが大切です。
<図>

偶然の一致
さまざまなデータを比較すると、本当はまったく関係のない事柄同士でも偶然高い相関を示してしまうことがあります。
こうした事例を集めたTyler Vigen 氏の「Spurious Correlations」では、「ニコラス・ケイジの年間映画出演本数と水難事故の件数」や「メイン州の離婚率とアメリカ人一人あたりのマーガリンの消費量」「ネイサンズ・ホットドッグ早食い大会の優勝者が食べたホットドッグの数と自動車のリコール総数」など、思わずクスッと笑ってしまう偶然の一致の例が紹介されています。
これらは、数値上は強い相関があるように見えますが、一方がもう一方を引き起こしているとは考えにくい例です。数値上は強い相関があっても、意味のある関係だとすぐに判断しないことが重要です。
<引用>
引用:Hotdogs consumed by Nathan’s Hot Dog Eating Competition Champion correlates with Total number of automotive recalls. tylervigen.com(参照 2026-05-27)
デジタルマーケティングで起こる失敗例
疑似相関は、デジタルマーケティングの現場でも起こり得ます。Webサイトや広告、メール、オウンドメディアなどの施策は数値で成果を確認しやすい一方、その数値が何を表しているのかを誤って解釈してしまうことがあります。
たとえば、弊社のオウンドメディア「BAsixs」のデータを見ると、PVが多い記事はコーポレートサイトへの遷移数も多い傾向が見られます。一見すると、「PVを増やせばサービスページへの送客も増える」と考えたくなります。
しかし、実際には記事のテーマや読者の検討段階、CTAの位置、関連するサービスページのフィット具合など、さまざまな要因が影響します。一般的なノウハウ記事はPVが多くても具体的な相談にはつながりにくい一方で、CMS選定やAEM導入、アクセシビリティ対応など、課題が明確なテーマの記事は、PVが少なくても次の行動につながりやすい傾向が見て取れます。
このように、相関関係は「成果を断定するもの」ではなく、「次に検証すべき仮説を見つける手がかり」として扱うことが重要です。デジタルマーケティングにおける誤解しやすい例を紹介します。
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メルマガ配信や広告費を増やした月の売上が伸びた
メルマガの配信本数や広告費を増やした月に売上が伸びると、その施策が売上に貢献したように見えることがあります。しかし、実際には繁忙期など売れそうな時期に配信本数を増やしたり、キャンペーンなどの広告費を増やしただけかもしれません。配信数や広告費だけで判断せず、時期や対象、流入後の行動もあわせて確認する必要があります。 -
ページ滞在時間が長いページは良いページ
滞在時間が長いほど「よく読まれている」「エンゲージメントが高い」と評価しがちです。しかし、実際には情報が見つけにくく、ユーザーが迷っていただけかもしれません。滞在時間だけで判断せず、スクロール状況、ヒートマップ、離脱率など、ほかの指標とあわせて見ることが大切です。 -
A/Bテストで勝ったパターンが正しい
A/Bテストで一方のパターンが良い結果を出したとしても、サンプルが少なかったり、期間が短かったりすると、偶然の影響を受けている可能性もあります。また、特定のキャンペーン期間や一部のユーザー層で得られた結果を、そのまま全体に当てはめると判断を誤ることがあるので注意が必要です。 -
レビュー評価が高い商品はよく売れる
レビュー評価が高い商品ほど売れているように見える場合でも、「評価が高いから売れている」のか、「よく売れているからレビューが集まりやすい」のかは慎重に見る必要があります。販売数が多い商品ほどレビューの件数も集まりやすいため、逆向きの因果が含まれている可能性があります。 -
クリック率が高いメールは良いメール
メールのクリック率が高いと、ユーザーの関心をつかめたように見えます。しかし、クリックされたとしてもその後のCVや商談には至らないというケースはよく起こることです。クリック率だけでなく、実際のCVや売上にどれだけ貢献しているのかを評価するようにしましょう。
データを読み解くチェックポイント
相関関係を見つけたときは、すぐに施策の成果や原因として判断するのではなく、いくつかの観点からデータを確認することが大切です。ここでは、特に確認しておきたいポイントを整理します。
ポイント1:交絡因子がないか確認する
まずは、2つの変数の両方に影響している別の要因がないかを確認します。
たとえば、「メールを開封したユーザーほど購入率が高い」といったデータがあったとしても、もともとブランドや商品への関心が高いユーザーほど、メールを開封しやすく、購入に至りやすい可能性もあります。
このように、表面的には関係がありそうに見えても、別の要因が両方に影響している場合があります。隠れた要因がないかチェックするようにしましょう。
ポイント2:逆向きの因果に注意
次に、どちらが原因で、どちらが結果なのかを確認します。
たとえば、クリック率が高いメールほどCVにつながりやすいように見える場合でも、メールの内容がよかったからCVが増えたのか、もともと関心の高いユーザーに配信されていたからクリックやCVが増えたのかは、慎重に見る必要があります。
相関があるように見えるときほど、どちらが原因なのかをしっかり見極める「因果関係の向き」に注意が必要です。
ポイント3:外れ値の影響を確認する
相関係数は、外れ値の影響を受けやすい指標です。
たとえば、特定の日だけ大きなキャンペーンを実施して流入やCVが急増した場合、その1日のデータによって全体の相関が強く見えることがあります。
そのため、分析する際には、相関係数だけを見るのではなく、散布図などでデータのばらつきや極端な値がないかを確認しましょう。
ポイント4:疑似相関・偶然の一致がないか確認する
多くの変数を比較していると、実際には関係のないもの同士でも、偶然相関があるように見えることがあります。
相関が見つかったときは、「この比較に意味があるのか」「業務上の説明がつく関係なのか」を確認することが重要です。数値上の関係だけでなく、施策の内容やユーザー行動として説明できるかどうかもあわせて見ていきます。
ポイント5:データの分け方が適切か確認する
全体のデータでは一つの傾向が見えていても、ユーザー属性やデバイス、流入経路などで分けると、異なる傾向が見えることがあります。
たとえば、バナーAとバナーBのCVRを比較したとき、全体ではバナーAのほうが良かったとします。しかし、PCとスマートフォンに分けて見ると、どちらのデバイスでもバナーBのほうが良い結果になることがあります。このように、全体の結果とグループごとの結果で結論が変わる現象を、シンプソンのパラドックスと呼びます。
Webサイトやデジタルマーケティングのデータを見るときは、全体の平均だけで判断せず、必要に応じてデバイス、流入経路、ユーザー層、期間などで分けて確認することが大切です。
まとめ:安易に結論に飛びつかない慎重さを!
相関関係や因果関係を正しく読み解く力は、データに基づいて意思決定を行う上では、欠かせません。PV、CTR、CVR、問い合わせ数など、Webサイトやデジタルマーケティングのデータには、さまざまな関係が見えてくることがあります。
しかし、2つの数値が同じように動いているからといって、一方がもう一方の原因になっているとは限りません。交絡因子や逆向きの因果、外れ値、偶然の一致などを確認しないまま判断すると、施策の評価や次の打ち手を誤ってしまう可能性があります。
相関関係は、成果を断定するためのものではなく、次に検証すべき仮説を見つけるための手がかりです。データを疑うというよりも、データが何を示していて、何を示していないのかを丁寧に見極めることが重要です。
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