「Webコンテンツ を拡充して、自社サービスへの引き合いをもっと増やしたい。」
いざ担当に任されたものの、以下のようなケースに頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。
- 「予算は限られているし、社内でなんとかしないといけない」
- 「サービスの魅力を伝えたいけれど、どこから考え始めればいいのか分からない」
- 「企画やアイデアを出した自分が、そのままコンテンツの中身まで考えなければならない」
最初から制作会社や広告代理店、コピーライターと一緒に進められるという現場は、そう多くはないでしょう。また、こうした解決策は、教わる機会が少ないうえに、なんとなく自己流で乗り切っているという方も多いのではないでしょうか。
本記事では、「コンテンツの魅力を設計する」という考え方に基づいて、今日から実践できる、シンプルな視点と整理の仕方をご紹介します。

「よくある構成」でなんとなく作ってしまっていませんか?
「とりあえずよくありそうな構成で」「なんとなく無難に」と作成したコンテンツが、思ったほど響かず、引き合いにもつながらない…そんな状況に陥ってはいないでしょうか。
まず、「今のコンテンツがどんな状態か」をセルフチェックしてみましょう。ありがちなパターンを見つめ直すことで、見落としていたポイントが浮かび上がってきます。
よくあるつまずきポイント(チェックリスト)
「一見整った構成」と「成果の出る構成/コンテンツ」はイコールではありません。成果につながるコンテンツには、「誰に向けて何をどう伝えるか」が明確に設計されているという共通点があります。
以下のチェックリストに心当たりがある場合、表面的な構成ではなく、「中身をどう設計するか」を見直してもよいでしょう。
コンテンツ状態チェックリスト
- とりあえず競合を参考にして、構成は似せてみた
(サービス概要・機能紹介・導入実績・料金・FAQなどは揃えてみた) - 書いてあることが実は他のサービスでも(競合のサービスでも)いえてしまう一般論になっている
- サービス紹介が機能的な説明に終始している
- 立ち上げたきり、しばらく更新できていない
- FAQも初期のままで放置されている
- 問い合わせフォームが自由記入欄だけになっている
- 思ったより引き合いが伸びていない
いくつか当てはまっても、心配する必要はありません。ここでの目的は、「できていないことを責める」ことではなく、“どこから見直すと効果が出やすいか”を把握するための視点を得ることですから。「伸びしろ」があると前向きに考えるようにしましょう。
魅力を設計するための3つの視点
チェックリストで見えてきたのは、「構成は揃っているけれど、中身に手応えがない」という状態です。中身のコンテンツに共感や納得、気づきを促し、「これは自分に必要だ」と思ってもらえるきっかけを与えてこそコンテンツとして輝く。そんな状態を目指したいですよね。
このコンテンツの魅力は、偶然生まれるものではなく、設計によって作ることができるのです。
魅力を設計するための視点として、以下の3つの視点を紹介します。
- 何をどう語りたいかの整理
- サービスについての整理
- ターゲットについての整理
この3つの視点を通じて、単なる情報提供ではなく、読み手の納得とアクションを引き出すコンテンツ設計を目指していきましょう。
視点① 何をどう語りたいかの整理
魅力的なコンテンツを作るうえで、最初に整理したいのは、「何を、どう語りたいか」という基本の設計です。
何を語るか
- 誰に向けて書くのか(想定している読者はどんな人物なのか)
- 何を伝えたいのか(コンテンツで最も伝えたい部分は何か)
- 読んだあとにどう感じてほしいか(読後の印象や感情はどうあってほしいか)
- どんな行動を取ってもらいたいか(問い合わせ、資料DLなど)
- その行動を阻むハードルは何か(不安、情報不足、費用感など)
どう語るか
- 文章のトーンと難易度(専門的すぎて難しくないか?逆に軽く見られないか?)
- 読み手の知識レベルとのギャップ(誰でも分かる内容か、ある程度知識がある人向けなのか)
- 権威性と親しみやすさのバランス(好感を取りすぎると信頼性は下がるものの、むやみに権威性を高めればよいというものでもない)
「何を/どう語るか」を整理することは、企画や表現を判断する際に立ち戻る場所を作るという点で非常に重要です。
- 「この表現ではやさしすぎる?」
- → 想定読者との乖離が発生していないか?
- 「この構成で伝わる?」
- → 伝えたい主張は明確になっているか?
- 「本当に必要な説明か?」
- → ゴールと照らして意味があるか?
こうした問いへの答えを設計ベースで判断できるようになるわけです。さらに、この部分が整理されていると、社内レビューや制作会社へのフィードバック、クライアントへの説明も的確になります。「なんとなく違うけど、言葉にできない」と感じる場面でも、「ターゲットに対して、ここが分かりにくいかもしれない」と設計視点で伝えることができるようになるわけです。
視点② サービスについての整理
魅力的なコンテンツを作るには、語る側がそのサービスの本質をよく理解している必要があります。
「このサービスは〇〇が特長です」といった説明はできても、なぜそれが価値なのか、なぜ他社と違うのか、なぜ今それを選ぶべきなのか。そうした「なぜ」に答えられない状態では、伝わるコンテンツにはなりにくいのです。
とはいえ、頭の中でモヤモヤと整理しようとしても限界があります。そんな時に役立つのが、フレームワークを活用した構造的な整理です。
活用できる代表的なフレームワークの概要と使いどころ
- 3C分析(市場・競合・自社)
- 顧客視点と競合視点の中で、自社の立ち位置を明確にする
- SWOT分析(強み・弱み・機会・脅威)
- 内部と外部の状況を俯瞰して、自社の訴求ポイントを見極める
- STP分析(セグメント・ターゲティング・ポジショニング)
- 誰に向けて/どんな切り口で訴求すべきかを整理する
- ビジネスモデルキャンバス
- 自社サービスの全体像(価値、チャネル、収益構造など)を一枚で俯瞰できる
- PEST分析/5F分析
- 外部環境や業界構造を理解し、サービスの存在意義を再確認する
- 4P(製品・価格・流通・販促)
- 提供手段やプロモーション施策までを含めたマーケティング視点での整理に使える
これらのフレームワークは、「正解を出すための道具」ではありません。自社サービスを多面的に捉えるための思考の補助として活用すると割り切ることがポイントです。
「フレームワークって、使う意味ある?」と感じる人へ
少し逸れますが、「また3C?」「フレームワークって結局どれも同じじゃない?」そんなふうに、フレームワークに対して懐疑的な方もいらっしゃるでしょう。
実際、「現場のリアルな課題には当てはまらない」「机上の空論っぽい」といった声を聞くこともあります。その感覚は、分からないではありません。
では、チームで企画を練る場面を想像してみてください。
- メンバーがそれぞれ違う観点やレベル感で意見を出していて、うまくかみ合わないまま時間だけが過ぎていく。
- 何から話すべきかが定まらず、みんなが白紙のキャンバスに思い思いの絵を描き始めてしまう。
そんな状況を共通のテンプレートで整理し会話を前に進めさせる。これが、フレームワークを使う最大の価値です。いうなれば、フレームワークとは、思考を狭めるものではなく、整えるための型とも言えるでしょう。
「フレームワークはちょっと苦手なんだよな」と思っていらっしゃる方も一度取り組んでみることをお勧めします。
視点③ ターゲットについての整理
最後の視点は、ターゲットについての視点です。コンテンツは誰かに向けて届けるものである以上、「誰にとっての価値か」を設計しないままでは、どんなに情報を盛り込んでも響きません。
特にBtoBの情報は、ともするとサービスの説明が“機能”や“できること”ばかりを並べてしまいがちです。「自動化ができます」「高速に処理できます」「こんな機能があります」といった語り口はよく見かけますよね。
たとえば、「当社のシステムは、○○という処理エンジンを搭載しています。」といった説明は、機能の説明としては正しいのです。ただし、読み手が知りたいのは、「それが自分にとってどう役立つのか?」「ほかのエンジンと比べてどちらが自社に向いているのか」という部分です。ここに乖離が生じているコンテンツが結構多いのです。ここで大事になってくるのが「ベネフィット」という考え方です。
- 機能(Features)
- 内容:できること・仕様
- 例:データ処理を自動化できる
- メリット(Merits)
- 内容:得られる効果・効率化
- 例:月間作業時間を30%削減できる
- ベネフィット(Benefits)
- 内容:より良い未来・意味づけ
- 例:浮いた時間で新規営業活動に集中できるようになる
機能の説明自体を否定するわけではありませんし、ダイレクトに機能が刺さることもあるでしょう。しかし、その情報が読み手にとって意味があることとして受け取られる可能性は、ベネフィットのほうが高まるのではないでしょうか。
読み手が本当に知りたいのは、それによって自分がどうなるのか、どう変われるかという未来の姿です。
「機能を伝える」だけでなく、どんな効果(メリット)をもたらし、どんな良い未来(ベネフィット)につながるかまでを届けてはじめて、読み手の心に残るコンテンツになります。
先ほどの例、「データ処理が高速になる」ことや、その結果として「分析時間が短縮されて別の業務に集中できる」まで伝えられた方が、読み手は自分ごととして価値を実感できるのではないでしょうか。
また、読み手が置かれている状況を理解せずに書かれた文章は、どんなに洗練されていても、どこか空虚に見えてしまいます。「この人は、私たちの状況を正しく理解していないかも…」と感じさせてしまえば、どんなに優れたサービスも届くことはありません。
コンテンツを作る前に一度立ち止まって、「この文章は誰に向けているのか」「その人が抱えている課題は何か」「その課題にこのサービスがどう効くのか」をきちんと整理しておくこと。それが、読み手のアクションを引き出すための設計上のカギになります。
まとめ:3つの視点を通じて、読み手の納得とアクションを引き出すコンテンツ設計を目指そう
前編では、Webコンテンツを魅力的にする3つの考え方を中心に説明をしてまいりました。次の後編では、前編でご紹介した視点を使う際に気を付けたいポイントについて、実践的なお話をさせていただきます。あわせてお読みいただければと思います。
- 今日からできる Webコンテンツを魅力的にする3つの考え方(前編)(本記事)
- 今日からできる Webコンテンツを魅力的にする3つの考え方(後編)
Business Architects(ビジネス・アーキテクツ)では、自社と競合の表現や打ち出し方を比較・診断し、「誰に」「何が」「どう伝わっているか」を整理することで、“選ばれる”コンテンツに再設計するサポートも行っています。
今のコンテンツに少しでも違和感がある、もっと引き合いにつながる表現にしたい、という方は、ぜひお気軽にご相談ください。