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潜入!「AI博覧会 Spring 2025」イベントレポート

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日々の業務の中で「あたりまえ」をアップデートできた取り組みを発信しています。

2025年3月27日(木)、28日(金)の2日間、東京・浜松町の産業貿易センター4F・5Fで開かれた「AI博覧会 Spring 2025」にビジネス・アーキテクツ(以下BA)のメンバーが潜入!加速するAI技術の最先端をレポートします!

潜入!「AI博覧会 Spring 2025」イベントレポート

イベント概要

  • 展示会名:
    • AI博覧会 Spring 2025
  • 開催日:
    • 2025年3月27日(木)/28日(金)
  • 会場:
    • 東京都立産業貿易センター浜松町館 4F・5F展示室
  • 来場者数:
    • 3月27日(木):3,241名
    • 3月28日(金):3,073名
  • 出展企業数:
    • 85社 約200製品以上
  • 出展対象品目:
    • AIエージェント、生成AI、LLM、RAG構築、ファインチューニング、マルチモーダルAI、ChatGPT連携、ライティング支援、画像生成AI、動画生成AI、議事録作成AI、画像認識、需要予測、アノテーション、AI-OCR、AI受託開発、ボイスボット、バーチャルヒューマン、エッジAI、データ分析、リスキリング、外観検査、顔認証 等
  • 主催:
    • 株式会社アイスマイリー
  • 後援:
    • 一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)
    • 一般社団法人生成AI活用普及協会(GUGA)
    • 一般社団法人Generative AI Japan(GenAI)
    • 一般社団法人金融データ活用推進協会(FDUA)
    • 一般社団法人リテールAI研究会
    • 一般社団法人データサイエンティスト協会
  • 公式サイト:

「AI博覧会 Spring 2025」会場風景

注目ブース

最新のAI技術や製品に焦点を当てた展示会には、約80社・200製品以上が出展。その中からBAメンバーが注目したブースをピックアップしてご紹介します。

「PKSHA AIヘルプデスク」/株式会社PKSHA Workplace

「PKSHA AIヘルプデスク」のブース

サービス概要
社内のバックオフィス向けFAQソリューションを提供。ポイントはRAGを使うことで、社内のドキュメントからAIが回答文章を生成できる点にあります。RAGや問い合わせログを貯めれば貯めるほど、生成AIによる回答精度が高められるとともに、新たにFAQを自動生成することもでき自己解決力がアップしつづける仕組みが構築できます。社内に散在するナレッジを蓄積、管理、活用するフローにより有人対応の負荷を軽減することができます。

▼サービスサイト
https://aisaas.pkshatech.com/aihelpdesk/

取材担当者の感想

このツールは、バックオフィス向けに問い合わせ対応の工数軽減が期待できると思います。企業規模が大きくなればなるほど、総務や情報システム部門などバックオフィスへの問い合わせ数は増えていきます。特に同じ質問と回答を何度も繰り返したり、過去にどういう対応をしたのか調べたりするのは、バックオフィス担当者としてはもはやストレスの原因でしかないと思います。RAGを使って社内に散らばった情報を集約し、独自の社内FAQを育てていくのは、社内工数の軽減という点では必要なソリューションではないかと感じました。

「AI Tuber」/株式会社Pictoria

「AITuber」のブース

サービス概要
デジタルサイネージなどを使って「紡ネン(つむぎねん)」をはじめとするAIキャラクターが、人の代わりにPRや接客を行ってくれます。例えば、アルバイトがいない時間帯でも店頭のサイネージで人を認識して客の呼び込みをしたり、接客の待ち時間にキャラクターが音声で商品案内をしたりといった導入事例があります。1問1答形式の従来型のチャットボットに比べ、AIキャラクターが回答を考え会話するように返答してくれるため、顧客体験の付加価値向上につながっているそうです。「人の代替としてのAI」ではなく「人が届かないところを埋めるAI」という、他社とは視点の異なるAIの活用法を提案しています。

▼サービスサイト
https://www.pictoria.co.jp/

取材担当者の感想

同社の「紡ネン」はチャンネル登録者数10万人以上を誇る「AITuber」として人気のキャラクターです。「AITuber」の開発はまだまだ「個人で作って楽しむ」のが主流ですが、企業が活用するメリットは大きい。例えば「炎上リスクをコントロールできる」「キャラクターのビジュアル、音声、話し方を自由にカスタマイズできる」「時間にとらわれず活動できる」など、AIならではの強みを生かすことができます。2016年12月に「キズナアイ」が登場して急速に拡大してきたVTuber市場ですが、すでにAITuberへの世代交代は始まっているのかもしれません。

「TACT SEO」/株式会社ウィルゲート

「tactseo」のブース

サービス概要
生成AIを使ってSEOの課題抽出や競合分析、記事作成などができるツール。AIによる記事作成においては、新規作成時の43%でトップ10を獲得、リライト時では55%がトップ10にランクインするなど上位化の実績もあり、6,200社以上の導入実績を誇る国産SEOツールとして支持を集めています。

▼サービスサイト
https://tact-seo.com/

取材担当者の感想

AIを使い短時間で記事を作ることができるのは魅力ですが、一方で「低品質」なコンテンツにならないように注意が必要です。AI記事では一次情報を盛り込むことができず、「独自性」という点では限界がありますから、出来上がった記事にしっかりと人の手を加えることが重要だと感じました。そうした欠点も十分理解した上で、記事構成の作成やキーワード選定などに使い、記事作成時の効率をアップさせ、リソースを低減させる活用がAI時代のSEO対策のポイントであると思います。

注目カンファレンス

開催期間中、2日間にわたり39本のカンファレンスが開かれました。その中から興味深かったテーマのカンファレンスについて、その概要をレポートします。

生成AIが変える検索の未来!

■登壇者

  • 堀江 康太郎(Sparticle株式会社)

■概要
AI検索エンジン「Felo」の開発を手がけるSparticle社が語るAI検索の未来について、カンファレンスの内容を一部要約して編集しレポートします。

まず生成AI検索とは何かを検索の歴史からひもときます。
検索の歴史は「キーワード検索」から始まりました。検索対象にキーワードの一部が含まれている場合にヒットしますが、同義語や多義語への対応が難しく曖昧な検索に弱いという弱点がありました。
その後、2018年頃にGoogleが開発したBERTなどのTransformer型自然言語処理モデル(NLP)が登場し「簡易セマンティック検索」が可能に。セマンティック検索とは、調べたい言葉の前後の並びからその意味を理解することで検索意図を把握し、最適な検索結果を表示する技術です。ただ、これにも弱点があり、新しい言葉やリアルタイムな情報、検索クエリの複雑化には対応できませんでした。
そして、2023年に登場したのがChatGPTをはじめとするLLMモデル。これにより検索は「生成AIによるRAG検索時代」へと突入しました。RAG検索では、社内外のデータソースから動的に情報を取得し、最新情報やドメイン固有の情報に基づいて回答を出すことが可能になりました。

堀江氏によると、こうした生成AIによる検索の特長は大きく2つあると言います。
1つ目は、「個別検索」から「クロスボーダー検索」に変わること。
これまでの検索は各データソースを個別に検索する「個別検索」であり、各データソースの検索機能にも依存していました。それが、今後は「クロスボーダー検索」になるといいます。生成AIがAPIを通じてWebだけでなくドキュメントやデータベース、ローカル端末にある内部情報まで横断的に検索できるようになります。私たちがすべきことはたった1つ。検索専用のAIエージェントに質問を投げかけるだけ。そんな時代がすぐそこまで来ているのだと堀江氏は語ります。

そして2つ目は、AIが人間に代わり検索クエリを思考すること。
従来は、必要な情報にたどり着くために検索クエリを工夫する必要がありました。例えば「ECサイト 売上 あげる方法」などのように、複数のクエリをどのように組み合わせれば良い検索結果が得られるかは、個人のスキルに頼る部分が大きかった。
しかし、これからはAIが調べるべきことを自立的に考え、時には逆質問をしながら実行する時代になるのだと言います。例えば「ECサイトの売上をあげたいです。どうすればいいですか?」というユーザーの問いに対し、「特に課題に感じている指標は?アクセス数、離脱率、リピート率など」と逆質問を交えつつ、AIが検索クエリを生成。それはまるで人間のコンサルタントに相談しているような体験に近いのではと語ります。

検索の未来は、生成AIおよびRAG検索の活用によりさまざまな業務が劇的に効率化していくだろうと堀江氏は予測します。

生成AIと構造化データを組み合わせた分析の自動化

■登壇者

  • 山縣 一慶(日清食品ホールディングス株式会社)
  • 金牧 伸弥(株式会社soda)

■概要
約40分間のカンファレンスの中で、山縣氏が話す「日清食品グループのデータ統合戦略」と「生成AIとデータを掛け合わせた活用」に焦点を当てて一部編集を加えてレポートします。

日清食品グループでは、2019年に「DIGITIZE YOUR ARMS(デジタルを武装せよ)」をスローガンに掲げ、2030年に向けた中長期戦略を策定。その中で強化すべき5つの柱として以下を掲げました。

  1. サイバーセキュリティ
  2. グローバルITガバナンス
  3. 現場部門主導のデジタル活用
  4. 先進ネットワーク/モバイルデバイスの活用
  5. “データドリブン”経営に寄与する基盤の整備

マイルストーンとして「2025年までにデータドリブン企業としてのスタートラインに立つことを目指す」としたが、5番目の「“データドリブン”経営に寄与する基盤の整備」が大きな課題だったそうです。

社内には、出荷や販売などビジネスプロセスごとにさまざまなデータが散在し、データを扱うツールもバラバラ。その結果、データがサイロ化され業務効率の低下を招いていたそうです。そこで着手したのが、全社統合データベースの構築でした。ビジネスプロセス横断でデータを集約し、用途に応じて整備。最終的にBIツールなどにアウトプットすることで、社内のコミュニケーションが円滑になったそうです。

その上で、生成AIの活用に進みました。2023年4月1日にプロジェクトを立ち上げ、約4週間で日清食品グループ専用のChatGPT環境「NISSIN AI-chat」をリリース。機能追加やChatGPTのモデル変更などを繰り返し、ツールは成長しつづけていると言います。

アプリの利用状況をPowerBIで可視化しながら、データの自動分析とBIツールを活用した分析業務のサポートに活用するための検証も欠かしません。統合されたデータベースに生成AIを連係させたことで、データに隠れたインサイトをAIが提示し、データの利活用を加速させることができているそうです。

ただ、生成AIならではの課題もありました。誤った情報を生成してしまう「ハルシネーション」です。その課題を解決するためには、生成AIが解釈しやすいデータを準備する必要があり、3つのステップで取り組んだそうです。

  1. ノイズを除去
  2. 解釈させる範囲を限定したり、サマリー情報を追加したりする
  3. AIが読みやすいデータ構造に置き換える

その結果、「適切なアウトプットにはデータ整備が重要だ」という気付きを得ることができたと言います。そうして得られたデータはPowerBIで可視化され、そのレポートにはAIが注目すべき商品やその理由をアウトプット。レポート出力には、2つの重要なポイントがあるそうです。

  1. データを観察し分析要件に適した設計にすること
  2. 業務ニーズを満たす出力内容の定義とビジネスアクションのイメージをもつこと

それに加えて「ビジネスとIT、両面のナレッジを補完できる体制作り」がプロジェクト推進のキーポイントだと言います。

最後に、現在はAIを使ったデータ分析が中心ですが、今後はAIから知見を得ながら、どのようにインサイトを発掘して提供していくか、ユースケースを見据えた上で技術を使っていきたいと締めくくりました。

編集後記

両日合わせて6,000名を超える来場者で賑わった今回のAI博覧会。トピックキーワードとしては「AIエージェント」と「RAG」が多く聞かれ、出展企業が話す導入事例に熱心に耳を傾ける来場者の姿が見られました。今回の取材で強く感じたのは、AIを活用している企業とそうでない企業とで、すでに大きく差が開いているということです。カンファレンスで登壇した企業の話では、すでになくてはならないツールとして数多くの成果をあげていました。

AIの活用領域としては、今はまだバックオフィスやマーケティングの効率化、生産性向上などが主流ですが、AIの利活用は急速に拡大しています。今後は企業だけでなく個人としてもAIのリテラシーが必須になることは間違いないと確信しました。

BAでは、生成AIを活用したマーケティングを進めています。お客さまの課題に合わせたAIの活用法のご提案やデータ分析など、ぜひご興味がありましたらお問い合わせください。