BtoB企業において、コンテンツマーケティングはもはや特別な施策ではなくなりました。コンテンツマーケと呼ばずとも、定期的に記事を投稿したり、ホワイトペーパーを通じて情報発信を続けたりする活動は当たり前になっています。
一方で、「記事は増えているが成果が見えない」「更新が減ってしまった(止めてしまった)」「商談や問い合わせにつながらない」といった悩みを抱えるケースも多く見られます。
こうした課題の背景には、記事そのものではなく、コンテンツマーケティングをどう運用し、どう成果につなげるかという『設計』の問題が潜んでいることが少なくありません。
誰に向けて何を届け、最終的に何を狙うのか。さらに、公開後の改善や次のアクションまで含めた仕組みが整理されないまま、運用が続いてしまっているケースが多いのです。
本記事では、Business Architects(ビジネス・アーキテクツ、以下BA)でクライアントのデジタルマーケティング支援を行うコンサルタント新山と、自社オウンドメディア「BAsixs」の運営を担当する富本が対談形式でコンテンツマーケティングについて語ります。
BtoB企業のコンテンツマーケティングで実際に起きがちな課題やBAでの試行錯誤をもとに、「続ける」だけで終わらせず、日々の業務の中で少しずつ成果につなげていくための考え方を、実務の視点から整理していきます。

インタビューを受けた人
![プロフィールアイコン(写真):エクスペリエンス事業部/事業部長(ビジネス・アーキテクツ) 新山 佳世子]()
- 新山 佳世子エクスペリエンス事業部/事業部長(ビジネス・アーキテクツ)
事業会社にてWeb部門立ち上げ、Webサイト制作会社にてインフォメーションアーキテクトを経験。国内大企業、グローバル企業の大規模プロジェクトを手がけた後、エクスペリエンスへ入社。チーフコンサルタント、プロジェクトマネージャーとして、プロジェクト全体を牽引。2020年、マネージャーを経て取締役就任。2025年ビジネス・アーキテクツへジョイン。
![プロフィールアイコン(イラスト):ディレクター 富本]()
- 富本セールス&マーケティンググループ/ディレクター(ビジネス・アーキテクツ)
地元・愛知の印刷会社や広告会社にてディレクター・フロ ントエンドエンジニアとしてWeb制作に携わる。2014年頃、フロントエンドエンジニアとしてBAに入社。現在、自社コーポレートサイトやオウンドメディアのマーケティングに携わっている。また、長期にわたりウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)のWG4への参加も。好きなキャラクターはリラックマ。
コンサル × 運用に聞く|BtoB企業の現場で本当に起きていること
実際にクライアント支援や自社メディアの運営に関わる中で、まず感じるのはどのような課題でしょうか。
新山:日々クライアントさまと向き合っていると、コンテンツマーケティングに取り組んでいない企業は本当に少なくなったと感じます。ただ、「成果が出ている」と言える状態まで持っていけている企業は、決して多くはありません。
なかでも、記事制作や施策は進めているものの、何につながっているのかを説明できない状況に陥っているクライアントさまが多い印象を受けますね。オウンドメディアを立ち上げ、記事を公開し続けているものの、「この取り組みを通じて何を得たいのか」「どこまでいけば成功なのか」が曖昧なまま進んでしまっているケースはよく見かけます。
富本:BAsixsの運営でも、似たような感覚があります。テーマや書きたいこと自体はあるのに、日々の業務に追われて執筆の優先度が下がり、気づけば更新が止まってしまう。あるいは、一定量の記事はあるものの、「これって何につながっているんだっけ?」と立ち止まってしまう。現場レベルで、判断に迷う(から進められない)という状況が起きがちだと感じています。
今、挙がったような課題は、BtoB企業では“あるある”だと思います。さらに踏み込んでもう少し実際のケースについて教えてもらえますか。
新山:支援の現場で多いのは、外部の支援が入っている間は回るのに、自走フェーズに入ると一気に止まってしまうケースです。
予算がある間は、記事も定期的に公開され、施策も進みます。しかし、体制や予算が変わった途端に、「次に何をやるか」「続けるべきか」を判断できなくなってしまう。これは、やり方の問題というより、意思決定の軸が社内に残っていないことが原因だと感じています。
富本:運営側の視点だと、やはり執筆が業務の影響などで後回しになってしまう問題は大きいですね。コンテンツマーケティングは中長期の取り組みになるので、どうしても短期的な業務が優先されがちです。
結果として更新が止まり、「また再開しよう」と思ったときには、どこから手をつければいいのか分からなくなってしまう。そうしてフェードアウトしてしまうケースは、決して珍しくありません。
なぜ、こうした“あるある”が起きてしまうのでしょうか。
新山:多くのケースで共通しているのは、コンテンツマーケティングの取り組みが「公開して終わり」になってしまっていることです。
企画を立て、記事を書き、校正して、制作して、公開する。ここまでは比較的きちんとやっている企業が多いのですが、その後、効果を測り、フィードバックして改善するところまでを含めた運用フローとして設計されていないことが少なくありません。
「作って終わり」ではなく、改善まで含めて回す前提がない、ということでしょうか。
新山:そうですね。本来は、
- どの記事がどう読まれたのか
- どのあたりで離脱しているのか
- 次のアクションにつながっているのか
といった点を確認し、そこから次の企画や改善につなげていく必要があります。
ですが、この『改善まで含めたサイクル』を前提にした体制がないと、どうしても場当たり的な運用になってしまいます。
なるほど。ノウハウを机上で知っているのと、運営してみて体感しているのは違いますよね。
新山:まさにその通りで、ノウハウだけをお伝えしても、いきなり自社だけで回せるようになるのは正直難しいです。そのため私たちが支援する際は、やり方を説明するだけでなく、2〜3サイクルは実際の運用に並走しながら進めることを大切にしています。
一緒に企画し、実行し、振り返り、改善する。そのプロセスを経験してもらうことで、初めて「自分たちで回せる感覚」が身についていくからです。
さらに、もう一つ重要なのが、過去のいきさつや背景をきちんと理解することです。これまでどんな取り組みをしてきたのか、なぜ今の体制になっているのか、現在どんな制約があるのか。そうした前提を丁寧にヒアリングしたうえで、その企業の実情にフィットしたコンテンツ方針や運用方針を定義する。ここを飛ばしてしまうと、どれだけ正しい手法を持ち込んでも、現場ではうまく機能しません。
富本:運用の立場から見ても、改善まで含めた流れが回り始めると、チームの動き方が変わってくると感じます。「とりあえず書く」状態から、「次はここを直そう」「このテーマは反応が良かった」といった会話が生まれるようになる。そうなると、コンテンツマーケティングが『作業』ではなく、少しずつ『取り組み』として定着していくように感じています。
実際の現場では、その「背景を共有する」部分が一番後回しになりがちですよね。
富本:そうですね。先ほど新山の話にあった「過去のいきさつや背景をきちんと理解すること」ですが、ここは耳が痛いですね。やはり日々の業務に追われてしまい、新しくジョインしたメンバーに過不足なく背景情報や経緯を伝えて共有するのは疎かになってしまいがちです。
前編のまとめ:設計と意思決定が、成果の分かれ道になる
前編では、BtoB企業のコンテンツマーケティングでよく起きがちなつまずきや、その背景にある「設計」や「意思決定の軸」の問題について、コンサルと運用、それぞれの立場から話を聞いてきました。
とはいえ、「考え方は分かったが、では具体的にどう判断し、どう回していけばいいのか」と感じた方も多いのではないでしょうか。
後編では、SEO環境の変化をどう捉えるべきかといった集客の話から、成果が出る企業に共通する考え方、そして運用を続けるための仕組みづくりについて、さらに掘り下げていきます。
- 前編(本記事)
- BtoBのコンテンツマーケティング、どこでつまずく?コンサルと運用担当が語る「設計」と「仕組み」
- 後編



