今回は、最近注目されているメソッドOODAについて解説します。
OODAは、目標達成までに必要な要素の4つの頭文字をとった言葉で、もとは航空戦での戦略として編み出されたものですが、その戦略術がビジネスシーンでも生かせるのではないかと注目を集めています。
よく比較されるPDCAとの違いや、使い分けのポイントなどについてもご紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
OODAとは:状況をみて判断・行動すること
OODAとは、目標達成までに必要な要素Observe (観察)、Orient (状況判断)、 Decide(意思決定)、Act (実行)の頭文字をとった考え方を意味する言葉です。
アメリカの空軍出身のジョン・ボイドが航空戦に挑む戦略術として考案し、イラク戦争時にその有用性が実証され、世界中から大きな注目を集めました。
今ではビジネスシーンやスポーツでもその考え方が多く取り入れられるようになっています。
Observe:観察
Observe(観察)は相手や周囲の状況をよく観察する段階です。自分の思い込みや計画を捨て、客観的かつ冷静に相手をしっかりと観察してどういった動きに出るのか伺い、多くのデータを収集します。
ここでいう“相手”とは、ビジネスシーンにおいては市場や顧客のことを指します。
Orient:状況判断
相手の動きを把握し、データが集まったところで“現時点で何が起きているのか”を理解することに徹することを指します。
ここでは集まったデータが何を表しているのかを理解して状況判断を行います。
つまり、ここでObserve (観察)で得たデータを価値判断に使用できる情報に変換させるのです。
Decide:意思決定
Orient(状況判断)で把握した状況に対してどのような計画を立てて実行していくのかを決定します。
「最終的にどのような状態でありたいか」という目標やビジョンを明確にして、そこに最も速く到達できる方法を選択します。
Act:実行
最後に、Decide(意思決定)で決めた計画を実行します。その後、再びObserve (観察)に戻ってOODAループを繰り返します。
OODAループとは、実行を1回で終わらせるのではなく、調整を重ねて何度も繰り返し行うことです。
Act(実行)が終わればすぐObserve (観察)に戻ることで、相手よりも優位な立場をとることができるという戦略になっています。
PDCAとは:計画を立ててから行動する
PDCAとは、継続的に業務を改善することを目的としたPlan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(行動・改善)の頭文字をとった言葉です。
Plan:計画
Plan(計画)は、目標を設定し計画を練る段階です。ここで設定する目標と計画はPDCAを行う上でベースになってくるものなので、できるだけ詳細に、誰にでもわかりやすく設定することが大切です。そのためには、5W2Hを意識して検討をしてみましょう。
5W2Hとは、以下の項目を指します。
- 誰が(Who)
- いつ(When)
- どこで(Where)
- 何を(What)
- なぜ(Why)
- どのように(How)
- いくらで(How much)
Do:実行
Plan(計画)で立てた計画を実行します。
ここで行うことは、「計画を実行した結果、その計画は有効だったのか」「ほかにできそうな方法はあるのか」などを考えることです。
そのため、一度にすべての工程を行わず、あくまで試行として少しずつ行うことがポイントです。
また、進捗や結果を記録に残すこと、時間を図って数値的結果を残すこと、などを行っておくと、次のCheck(評価)に活かせます。
Check:評価
Check(評価)では、設定した目標や計画が達成できたか、計画通りに実行できたかなどを振り返ります。計画通りに行かなかった場合は、失敗要因を洗い出します。また、計画通りだったときも成功要因を洗い出して、記録に残します。
Action:改善
Action(改善)では、Check(評価)で洗い出した課題や分析を踏まえて改善策を練ります。
このとき、「計画をそのまま実行するのか」、「いくつかのポイントを改善して進めるのか」、「計画を中止・延期にするのか」などの選択肢を持って検討することが大切です。
OODAとPDCAの違いとは
OODAはまず現場を観察してから動き始めるのに対して、PDCAは計画を練ってから動き始めるという点が異なっています。
そのため、OODAの方がより現場の動きに合わせて柔軟に対応できるといわれています。ここでは、より詳細なPDCAとOODAの違いを3つに分けて解説します。
1.適用領域が違う
OODAとPDCAには適用領域に違いがみられます。
具体的に説明すると、OODAは広い領域で適用でき、汎用性が高いとされている一方で、PDCAはある程度ルーティン化している工場での生産業務や製品の継続的な改善を目的とした施策に向いている、という違いがあります。
2.手順に違いがある
OODAは、計画よりも先に相手を観察するのに対して、PDCAはまず計画を立てるという点で違いがあります。
OODAは、人間の感情や直感、願望なども反映するので、計画とは違う手順を踏んだり、一部の工程をカットしたりすることがありますが、PDCAでは立てた計画を正確に遂行し、結果を見て少しずつ改善しながら進めていきます。
3.そもそも前提とする状況が違う
OODAでは、想定外の出来事にも対応できることを前提としているのに対して、PDCAは想定内の安定した状況を前提としています。
これは両者それぞれの良さであり、OODAはイレギュラーにも素早く対応できるというメリット、PDCAはやるべきことが明確なので、余計な作業を省くことができるというメリットがあります。
4.どちらが優れているという話ではない
これまでOODAとPDCAの違いについて説明しましたが、どちらが優れていてどちらが劣っているということではありません。なぜなら、OODAとPDCAは場面によって使い分けをするべきだからです。
今OODAループが求められる2つの理由
ひと昔前は、PDCAが注目されていましたが最近ではOODAを推奨する書籍や、実際にOODAを取り入れる企業が増えてきました。
なぜ、今OODAループが求められるのか、主な理由を2つ挙げて解説します。
1.ビジネス環境が変化しているから
今はテクノロジーの発展に伴い、ビジネス環境もめまぐるしく変化を遂げている時代です。
ビジネス環境のめまぐるしい変化の一例としては、近年のバーコード決済の競争の激化が挙げられます。2019年の前半には、バーコード決済サービスはどこの会社が勝利を収めるのか論争が繰り広げられていました。
そして1年足らずで、バーコード決済が登場した初期からあった「Origami Pay」は膨大な赤字で大規模リストラに踏み切ることになり、反対に後から登場した「PayPay」が急拡大するという結果になります。これを見るだけでも、かなり急速に変化する時代であることがわかりますね。
このように、ビジネス環境が素早く変化していく時代では、綿密に計画を練って実行に移していくよりも、その場の状況に合わせて判断することが、生き残れるポイントになる場合も多い、ということから、OODAが注目されるようになりました。
2.AIやSNSが急速に発展しているから
AIやSNSが急速に発展していることもOODAが求められる理由のひとつです。
これからのAIが活躍する時代では、既にわかっているデータをもとにした計画は、人間ではなくAIが行うほうが効率的です。
しかし、AIがその力を発揮する範囲は、過去のデータがある部分だけです。
データのない新たな領域に展開するときは、業界や市場の動きを熟知している人間が、OODAループを駆使して素早く行動していくことで最適化する可能性が高くなってきます。
また、SNSの普及でリアルな顧客の声を収集できるようになり、マーケティングをする上で市場と接触する機会が増えました。
このような機会が増えて、リアルタイムな情報に常に触れられるようになったことで、よりスピード感をもって物事を進めることが求められています。
OODAは急速に変化していくこの時代に適した戦略なのです。
OODAとPDCAをうまく使い分けよう
OODAとPDCAは、場面によってうまく使い分けると効果的です。ここでは、OODAとPDCAの使い分けについて解説します。
先が読めないときはOODA
先が読めない新規事業などでは、OODAを適用するのがおすすめです。
理由としては、先が不透明で予想外の出来事が起こる可能性がある状況でこそ、その場に合わせた柔軟な対応ができるOODAループの良さが発揮されるからです。
継続性が求められるときはPDCA
工場の生産性や安全性の改善を目的とするときは、PDCAを適用するのがおすすめです。
もとからある状況の改善には、実行の結果得たデータをもとにして評価を行い、改善策を練るPDCAが向いているとされています。
まとめ:OODA、PDCA両者の特徴を理解して使い分けることが大切
今回は、OODAについて解説しました。その場の動きに合わせた柔軟な対応がしやすいOODAも、業務をある程度定型化して無駄な動きを省くPDCAも、どちらもビジネスシーンでは役に立つ戦略です。
どちらの方がいいというわけではなく、両者の特徴を押さえてうまく使い分けることが大切です。
BAsixsでは、クライアント業務や社内業務で適切な戦略を使いながらマーケティング活動を行なっています。マーケティングのことをはじめ、どんなことでも御相談ください。