会社の採用サイトをリニューアルする際、どういった注意点があるのか?
求職者から見て魅力的な採用サイトとはどんな採用サイトなのか?
過去80社近くの採用サイトに関わった私が、経験に基づき、注意すべきことと、考えるべきことについて解説します。
BAsixs参画企業のビジネス・アーキテクツ(以下、BA)では、Webサイト制作から運用の豊富な実績・知見があります。採用サイトに関わる戦略立案からお手伝いさせていただく事で、中長期的なビジネスや求職者に合わせたコミュニケーション設計が可能です。
採用サイトに関してお困りでしたらお気軽にご相談下さい。
採用における課題を整理する
採用の担当者様から下記の3つの問題をよくご相談いただきます。
- 応募が増えない
- 求める人材がこない
- 入社しても会社に定着しない
このような問題を解決するために、採用サイトの改善が効果的です。3つの問題に繋がる採用サイトの課題を時系列に並べると以下の通りです。
3つの問題に繋がる採用サイトの課題
- 「応募が増えない」採用サイトの課題
・採用サイトの役割を正しく理解する
・求人媒体と採用サイトを上手く連携する(流入施策を行う)
・求人媒体と採用サイトの情報に一貫性をもつ
・応募するかを判断するために必要な情報を充足させる(同僚の人柄、実際の業務内容、裁量権、キャリアパスなど)
・自社の魅力を客観的に見直し、コンテンツに反映する
・入社後の働くイメージを伝える
・応募への導線を適切に設計する - 「求める人材がこない」採用サイトの原因
・採用ターゲットを正しく設定する
・採用ターゲットが求める情報を発信する
・他、1.の課題と同様 - 「入社しても会社に定着しない」採用サイトの原因
・入社前と入社後のギャップを埋める
・入社前に業務理解度を高める
・入社後の働くイメージを伝える
まずは、採用サイトからの応募を増やすために「採用サイトが担う役割」を理解し、求人媒体(外部サイト)との連携を上手く行う必要があります。
採用サイトが担う役割とは
採用サイトの役割は、求人媒体だけでは伝えきれない魅力を伝え、ターゲットからの応募を増やすことです。
求人媒体は、求職者が仕事を探す際に一般的に利用するサービスであり、社名だけでなく様々な条件を組み合わせた検索機能など、求職者と企業の接点を増やせます。
しかし、求人媒体で掲載できる情報だけでは、数ある企業の中から求職者に優位性を見出してもらうには限界があります。求人媒体によって多少の違いはありますが、テンプレートを使用しなければならない場合や、なかには文字数の制限が設けられている場合があるからです。
採用サイトは、そうした制限はなく独自のコンセプトやデザイン・コンテンツにのせて自社の魅力を自由度高く発信できます。
「社員インタビュー」や「企業方針・ビジョン」など、入社後のイメージをより詳しく伝えるコンテンツを増やすことで、仕事内容やキャリアパスに共感を得た採用ターゲットからの応募を増やせます。
採用サイトと求人媒体は相補関係
【求人媒体】
- 強み:多くの求職者に自社情報を知ってもらえる機会を作れる
情報収集を行う転職潜在層にもアピールできる - 弱み:情報量や表現方法に制限がある(テンプレート・文字数制限)
独自のコンセプトやコンテンツによる魅力の発信がしにくい
「とりあえず応募」が増えてしまうため、採用担当者側の負担が増加してしまう
【採用サイト】
- 強み:制限なく自社情報(魅力)を発信できる
詳細情報や実際のイメージが伝わりやすくミスマッチを防ぎやすい
入社意欲の高い採用ターゲットからの応募が増えやすい - 弱み:採用サイト単体では社名を知らない求職者との接点を作りにくい
また求人媒体だけでなく、コーポレートサイトやインターネット広告、就職・転職フェアサイトの自社情報欄に採用サイトのリンクを設置するなど、外部からの流入経路を設けることも効果的です。
採用サイトの役割・外部サイトとの相補関係を理解しうまく連携することで、相乗効果が高まり、より良い採用活動に繋がります。
「ズレを防ぐ採用サイト」リニューアルで注意すべき点
自社が求める採用ターゲットからの応募を増やすため、また採用ターゲットが求める情報を発信するためには、何に注意するべきでしょうか。
まずは「採用ターゲットを社内で明確にすること」が重要です。
注意1. 温度感のズレが生じやすい「採用ターゲット」を正しく設定する
採用サイトの運営は、会社の採用担当である人事部が担っているケースが多いと思います。
採用した人材が人事部だけでなく他部署に配属になることを考えると、人事部だけではなく他部署と一緒に採用ターゲットを明確にし、今後採用サイトに必要な情報が何なのか検討していく必要があります。
しかし多くの場合、採用ターゲットを設定する過程で、採用サイト担当(人事部)と実際の現場(各部署)の温度感にズレが生じ、明確な採用ターゲット設定ができないという話をよく聞きます。
原因のひとつは、実際の現場サイドはどうしても直近のリソース不足を解決したいので、短期の課題しか見れていないケースが多いからです。
その為、採用ターゲットを設定する際は、会社の中期経営計画や各事業部門の事業計画を加味したうえで、将来のマネジメント候補あるいは事業を回す為に直近で必要な人材など、必要なポジションやスキル、不足している人数の認識合わせを行うことが重要です。
また、ペルソナ設計を行うことで自社に必要な人材がどのような人物像なのか、ポジションやスキル、年齢だけではなく、より詳細なイメージを固めることできます。ペルソナは、それと全く同じ求職者を探す為のものではありません。人物像を詳細にイメージすることで、より他部署との認識のズレを防ぎ、今後の掲載情報を検討する上で重要な軸となります。
ペルソナ設計の項目例
氏名/性別/年齢/学校/部活/趣味/性格/企業に求める条件/スキル(入社後に身につけたいスキル)/キャリアプラン
部署ごとに新卒や未経験者、即戦力中途、管理職など複数の採用が必要な場合は、可能な限りその採用ポジションごとのペルソナ設計を行うことが望ましいです。
最低限1部署・1職種につき1人の人物像を設定し、必須条件や可能であれば優先したい条件、なかには外してほしい条件などを、ポジションによって条件の優先順位を洗い出しておくと良いです。
注意2. 求職者目線で採用ターゲットが「求めている情報」を知る
採用ターゲットを明確にしたあとは、そのターゲットがどのような条件(情報)を求めているのか、検討していく必要があります。
しかし、企業側はどうしても自分たちのストロングポイントの情報掲載を行い、求職者に対して一方通行の発信になってしまいがちです。その原因のひとつとして、求職者目線あるいは第三者の目線を取り入れられていないことが挙げられます。
その業界や自社では当たり前と思っていることが、外部の人にとって魅力的に感じるケースも少なくありません。
採用に関わるメンバーだけで自社の魅力や掲載情報を考えるのではなく、これまでの人事データの活用や、入社して間もない社員、他業界から転職した社員へのアンケートやヒアリングを行いましょう。
ヒアリング事項の例
- なぜこの業種・職種を選んだか
- なぜ自社を選んだか(決め手となったポイント)
- 入社前に自社に対して魅力と感じたこと
- 入社後に新たに感じた魅力(入社前は重要視していなかったポイント)
- 入社前と入社後で感じたギャップ(良い点・悪い点)
- 他社を受けた(あるいは他社に在職していた)際に感じた魅力や自社との違い
- 現採用サイトに不足していると思った情報
- 今の仕事内容でのやりがい
- 自社に応募しようか迷っている求職者におすすめしたいポイント
ペルソナと状況が近い社員の意見を聞くことで、ペルソナが本当にほしい情報を優先的に発信できます。
注意3. 求職者を主語とした「共感できる」魅力を発信をする
採用ターゲットが求めている情報を洗い出すことが出来れば、次はそれに対して自分たちがどのような魅力をどのように発信するべきか検討していく必要があります。
先述した通り、採用サイトの役割とは、求人媒体だけでは伝えきれない魅力を伝え、ターゲットからの応募を増やすことです。ターゲットに応募をしてもらう為には、魅力を伝えるだけではなく、ターゲットに共感してもらい自社のファンになってもらうことが重要です。
例えば、メーカー企業の場合、自社製品の優れている点や「どれだけ売れているか」を求職者にアピールすることは大事なファーストインプレッションとなりますが、より共感してもらいファンになってもらう為には、求職者を主語とした魅力の伝え方に変換することが大切です。
「求職者を主語とする」とは、求職者が「自分事」として会社やその製品に携わる入社後のイメージを持てるように、求職者目線で伝えるということです。
「求職者を主語としやすい」コンテンツ例
- 社員インタビュー(新卒・中途社員・管理職・経営層)
- 対談インタビュー(新卒・中途社員・管理職・経営層)
- 座談会(新卒・中途社員・管理職・経営層)
- 1日の流れ(新卒・中途社員)
- プライベートの過ごし方
- 社内の雰囲気
- 企業、事業ヒストリー
- 今後の企業、各事業のビジョン
- 採用メッセージ
- キャリアパス
求職者にとっては、自分が入社したら「こんなことができるのでは?」「こんなスキルが活かせる・身につくのでは?」と自分の未来のストーリーを描けることが企業を選ぶ上でとても重要なことです。
そのためには「どれだけ売れているか」だけでなく、どんな目的で製品を作っているのか、その製品を開発するまでにどれぐらいの苦労があり乗り越えてきたのかなど、企業側の過去から未来までのストーリーを、採用ターゲットに伝わりやすいコンテンツで発信していくことが共感を得ることに繋がります。
[注意1]で設定したターゲット像を軸に、[注意2]で洗い出した自社の魅力やターゲットが求めている情報を、どのようなコンテンツで伝えればターゲットに共感してもらいやすいかを、注意しながら採用サイトのリニューアルを進めましょう。
参考事例:自社の魅力をより伝えるためには(運輸業界)
採用ターゲットを設定する上で、社内の「ズレ」を解消し、ターゲット像を明確にする必要があると先述しましたが、採用ターゲットから見た自社に対するイメージに「ズレ」が生じるケースも少なくはありません。
以前、弊社に採用サイトのご依頼を頂いた物流会社のお客様を例としてあげます。
このお客様は、物流における拠点設計を担うポジションの募集を積極的に行っていました。
しかし、運輸業界であることからドライバー募集のイメージが強く、求めているスキル・経験を持つ求職者からの応募が望んでいたほど集まらず、採用サイトリニューアルをすることとなりました。
物流拠点設計とは、「供給リードタイム短縮」「物流運営コスト最小化」「在庫量最適化」という要素を満たすため、総合的に物流の仕組みを設計するという重要な役割がありますが、そもそも物流拠点設計という業務を知ってもらうことと、この仕事に対するやりがいや魅力を伝えることが課題にあがりました。
そのため、採用ターゲットの設定では同業他社からの転職だけでなく、他業界からの転職も含めました。転職の幅を広げることや他業界で得たスキルを活かし活躍出来るイメージを伝えることで、応募数を増やすことを目指しました。
海外からの美術品輸送などグローバルに関わるプロジェクトの紹介や、業務の奥深さを伝えるドキュメンタリー風コンテンツで仕事のロマンを伝え、また未経験職種で挑戦した先輩社員のインタビューなどを取り入れた採用サイトにリニューアルしました。
リニューアル後は社内外からも評判を呼び、結果としてターゲットからの応募数の増加に加えて、入社後のモチベーションの向上や業務理解度の向上にも繋がりました。
意外と多い!採用サイトの残念なポイント6選
ここまで、採用サイトをリニューアルする際の注意点を解説しましたが、おさらいもかねて求職者に対してマイナスとなるポイントを、6つご紹介します。
- 実際に働く人の姿をイメージできる情報が不足している
求人媒体では、採用応募に必要な基本的な項目は網羅されていますが、求職者が企業の考え方をより深く理解し共感するためには情報が不足しています。
採用サイトは、求職者により詳しい情報や独自の魅力・社風や実際に働く社員の雰囲気など、より実態に近い情報を伝えて入社後のイメージをもってもらうことが重要です。 - 掲載情報にストーリー性を感じない
求職者はただ情報が羅列されているだけの文章に魅力を感じません。求職者は企業文化の背景にある物語を読むことで、親しみや共感を感じ、応募というアクティブな行動へと移ります。 - デザインが古臭い印象を与えている
デザインがイケているから良い、応募数が増える、という意味ではありません。
サイトデザインと求職者の持つ企業へのイメージが乖離してしまうと、求職者に違和感を与えてしまいます。
また、写真の使い方やテキストの配置など、サイト全体のデザインが古臭い印象を与えてしまうと、求職者から「新しい考え・意見も通らない企業」と見られてしまい応募を回避されてしまう可能性が高いです。 - フリー素材を多用しすぎると、企業らしさが伝わらない
自社の採用サイトにフリー素材を使用していると、自社の魅力は伝わりにくくなります。特に社員の顔や社内風景にフリー素材が使用されていると、記載されている情報の信頼性を下げてしまう恐れもあります。 - スマートフォン対応をしていない
電車での移動中や休憩中にスマートフォンで求人を探す人は増えています。
スマートフォンに対応してないサイトは、文字が読みづらくなったり、表示崩れが発生しやすく適切に情報が伝わらず、応募につながる可能性を大きく低下させてしまいます。 - 見づらい、操作性が悪い
ユーザー視点で設計されていないサイトは、ユーザーにとって分かりづらい・使いづらいため、離脱されてしまいます。いざ応募しようとしても応募ボタンが見つけづらい、などユーザビリティを考慮されてないサイトも応募につながる可能性を大きく低下させてしまいます。
せっかく採用サイトを運用していても求職者の欲しい情報に辿りつけない・不足している場合、問い合わせをせずに離脱してしまう可能性があります。
上記の6つのポイントの内、1個でも当てはまる場合は、コンテンツの見直しや、採用サイトのリニューアルを検討しましょう。
リニューアルをパートナー企業に依頼する際に、RFP(提案依頼書)を活用すると明確な自社の要望や課題が伝わり、より良い提案を募ることができます。社内で検討を進める際はぜひご活用ください。
伝わる!RFPサンプル(採用サイト編) | BAsixs(ベーシックス)
採用サイトはターゲットと目線を合わせた双方向コミュニケーションが大切
採用サイトをリニューアルするにあたって重要なことは、「誰に・どの情報を・どのような手法で・どういった印象を持たせ・どう行動してもらいたいか」そのために何が必要なのか?を検討し続けることです。
近年の求職者は特に「社員と会社は対等な立場」という意識が強い傾向があります。
採用サイトも求職者と目線を合わせ、求職者を主語としたコンテンツで自社の魅力を伝える事、そして何より共感してもらうことが大切です。
目線が合い、双方向コミュニケーションが成立すれば、企業の理解を促し、ファンを増やすこと(=募集を増やすこと)に繋がります。
BAは、採用サイト制作の豊富な経験と、サイト活用に関する様々な知見を蓄積しています。採用サイトに関わる戦略設計からお客様のお手伝いをさせていただきます。
採用サイトに関してお困りごとがありましたら、是非BAにご相談下さい。