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人間中心設計の考えを活かして、ユーザーや企業に価値ある体験を

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BAsixs編集部

BAsixsは、社会課題の解決と新たな価値創出をBAグループ全体で目指すためのサービスブランドです。

人間中心設計=(Human Centered Design、HCDと略す)とは、国際規格 ISO 9241-210:2010 によって定義され、人間を中心としたモノ作りに重点を置いた考え方です。「ユーザーが何を必要としていて、それにどうやって応えるか」を軸に、ユーザーに合わせた使いやすいデザインや機能を提供することを目指しています。

今回は株式会社ビジネス・アーキテクツ(以下、BA) のデザイン&クリエイティブチーム所属し、人間中心設計スペシャリストの資格をもつ森、水戸の2人にインタビューを行ないました。人間中心設計の考えを活かしたプロジェクト経験も豊富な2人に、その考え方や実践して得られる効果、お客さまにとってのメリットなどについて詳しく話を伺いました。

人間中心設計の考えを活かして、ユーザーや企業に価値ある体験を

インタビューした人

プロフィールアイコン(イラスト):ディレクター/フロントエンドエンジニア 富本
富本ディレクター/フロントエンドエンジニア(ビジネス・アーキテクツ)

地元・愛知の印刷会社や広告会社にてWeb制作に携わる。2014年頃、フロントエンドエンジニアとしてBAに入社。現在、ディレクターとして開発・運用の進行管理やWebサイトのガイドライン作成やコンポーネントの設計・作成を担当しています。好きなキャラクターはリラックマ。イタリアとスイスに行きたい。

インタビューを受けた人

  • プロフィールアイコン(写真):ゼネラルマネージャー/CDO(Chief Design Officer)/人間中心設計スペシャリスト 森 太輔
    森 太輔ゼネラルマネージャー/CDO(Chief Design Officer)/人間中心設計スペシャリスト(ビジネス・アーキテクツ)

    2008年、企業の情報コミュニケーション戦略を実現するプロジェクトを中心に、アートディレクター及びリードデザイナーとしてビジネス・アーキテクツに入社。特に日本の製造業のグローバル展開プロジェクトに長年関わっている。現在はデザイン部門の責任者も務める。

  • プロフィールアイコン(写真):第3事業部 マネージャー/デザイナー 水戸
    水戸第3事業部 マネージャー/デザイナー(ビジネス・アーキテクツ)

    Web制作会社数社でのデザイン経験を経て、2017年にBA入社。入社後はLP〜大規模な案件まで複数案件の情報設計・デザインに携わり、現在はUX開発を手掛けるUIデザイナーとして客先常駐中。気がついたら入社して5年経っていた。2020年にUD検定初級を取得。人に恵まれていることに感謝しつつ、毎日やりがいと面白さを感じながら、課題解決のために日々奮闘しています。

人間中心設計の考え方や背景

人間中心設計とは?

はじめに、人間中心設計の考え方について教えてください。

森:人間中心設計とは、名前のとおり人間(ユーザー)を中心としたものづくりのことです。

人間中心設計では、「ユーザー把握→デザイン→評価→改善」を反復的に実施します。より魅力的な製品やサービスを開発するためにユーザーの特性を理解し、ユーザーからフィードバックをもらうことで改善を繰り返しながら設計を進めていくのです。

図:人間中心設計のプロセス

人間中心設計に基づいた開発アプローチは、人間の特性を踏まえ、ユーザーが「いかなる状況でも問題なく使えること」や「簡単に操作手順を覚えられること」を重要視します。

ヒトが関わるデザイン分野の共通の基盤となっているため、近年は製品、システム、サービスなどさまざまな分野で、人間中心設計の考え方が積極的に取り入れられていますね。

水戸:人間中心設計では、ユーザーの本当の要求を探し出すことに、全力を尽くす必要があります。
単なる見た目の美しさや作り手側の都合を優先して設計するのではなく、使う人のことを理解し、使う人にとっての利便性を第一に考えることが重要です。

BAの考えるデザインの詳細については以下をご覧ください。 BAの考えるデザイン | BAsixs(ベーシックス)

人間中心設計が導入されるようになった背景

企業や制作現場において、人間中心設計の導入が必要となった背景は何でしょうか。

水戸:ユーザーニーズの多様化や、顧客満足度の重要性の高まりなどが背景にあると思われます。近年、技術の進歩により、近年は製品やサービスにユーザーが求めること・期待することも多様化してきています。
そのため、単に機能を提供するだけでなく、ユーザーが使いやすく満足できることがより求められるようになっているのが現状です。
そういった背景から、ユーザーのニーズを正確に理解し、それに応える製品やサービスを提供することで、信頼を築き、顧客満足度を高め長期的な関係を保つことを目指す企業が増えてきているのではないでしょうか。

森:ユーザーニーズの多様化という点では、近年ユーザーの興味が単なる「モノ」から、モノを手にしたあとの体験や感情を満たす「コト」に変わってきていますね。

開発側はただサービスを作るのではなく、よりリアルなユーザーの意図や感情をプロダクトやサービスに反映することが求められるようになりました。

「作る人」と「使う人」のギャップを埋める作業が重要になったのです。そして、それを実現する手法が、まさに人間中心設計の考え方なので、導入する企業が増えているのだと思います。

写真:森が話している様子

デザイン思考やUXデザインとの違い

続いて「デザイン思考」について教えてください。

森:デザイン思考とは、ビジネスやテクノロジーの視点から、ユーザーが潜在的に「何を求めているのか」「何を解決したいのか」について考えることです。

デザイン思考は応用できる範囲が広いため、デザインの世界だけでなく、さまざまなビジネス領域で取り入れられています。

水戸: デザイン思考には「ユーザー起点の課題解決」「本質的な問いの設定」「共創型のプロセス」が組み込まれています。企業にとってデザイン思考の導入は、ユーザーのニーズに沿ったプロダクトの開発に活かせるだけでなく、「チーム力の強化」「多様な意見を受容するスタンスが広がる」「新しいアイデアが生まれやすくなる」などのメリットもありますね。

図:デザイン思考

「UXデザイン」について教えてください。

水戸:まず、UXとは「ユーザーエクスペリエンス(User Experience)」の略で、製品やサービスを使うユーザーが感じる全体的な体験のことを指します。この「体験」には、使いやすさや効率性、感情的な反応などが含まれます。

例えば、アプリやWebサイトを操作していて好印象を抱いたり、「面白い」「楽しい」「ワクワクする」といった感情が掻き立てられることはないでしょうか。
UXデザインとは、そういった体験をより良いものにするための設計を指し、ユーザーにとって使いやすく、満足度の高い体験を提供することを目指すものです。

森: UXデザインには、「戦略・要件・構造・骨格・表層」の5段階があります。

ユーザーが何を課題としているか、本質的なユーザーニーズに焦点を当てることが、UXデザインのポイントです。

図:UXデザインの5段階モデル

人間中心設計とデザイン思考は似ているように感じますが、違いは何でしょうか。

森:人間中心設計とデザイン思考は、確かに似ていますよね。実際、ユーザーの立場で考えて設計するという点では同じと言えます。

ただし、人間中心設計の特徴は、ユーザーニーズを正確に把握したうえで設計し、ユーザーからのフィードバックを集めながら改善を継続的に行なうことです。

それに対して、デザイン思考は、今までにないアイデアでイノベーションを起こすことで問題を打破する、という特徴があります。

人間中心設計とUXデザインの違いについても教えてください。

水戸:人間中心設計とUXデザインは、「ユーザーのニーズや要求に焦点を当てる」「ユーザーの体験を向上させる」という点では共通しています。

ただし、そのアプローチ方法が両者では異なります。

人間中心設計(HCD)は、製品やサービスの開発プロセス全体を通じて、ユーザーの視点を取り入れる手法です。
具体的には、開発の初期段階からユーザーの意見やフィードバックを収集し、これに基づいて設計を繰り返し改善していきます。
ユーザーが何を求め、どんな問題に直面しているのかを理解し、それに対応する形でデザインを進めるのが特徴です。

一方でUXデザインでは、製品やサービスを使う人の利用前から利用後まで含めた体験全体をデザインすることに重点を置きます。リリース前に綿密なユーザーリサーチやプロトタイピングを行ない、ユーザーがどのように製品やサービスを使うかを深く理解します。そして、リリース後もユーザーからのデータを収集・分析し、長期的な視点で継続的に改善を図ります。

まとめると、人間中心設計は開発プロセス全体でユーザーの視点を取り入れながら進める手法で、UXデザインはユーザーのサービス利用前から利用後まで含めた体験全体を向上させ、リリース後も長期的に改善を続ける手法です。

UXデザインにおいては、人間中心設計で重点を置いているユーザー視点に加え、マーケティング戦略や品質、時間など、ユーザー体験に関わる様々な要素も広く考慮されるという点から、UXデザイン=人間中心設計の考え方がベースになっていると言うことができます。

図:HCDとは

人間中心設計の実践と効果

人間中心設計を導入したモデルケースと効果

人間中心設計に基づいたプロセスについて教えてください。

森:人間中心設計の具体的なプロセスは「調査・分析・設計・評価」の4つに分けられます。この4つを繰り返すことで、使いやすく、魅力的な製品・サービスの開発が可能です。

開発手法には、大きく分けてウォーターフォール型とアジャイル型があります。BAでは、開発プロセス全体に導入するウォーターフォール型のプロジェクトが多いです。要件定義や設計など、各フェーズで人間中心設計のプロセスを回し、改善を繰り返します。

図:ウォーターフォール型開発でのHCD

水戸:開発時には、段階ごとにそれぞれ成果物があります。
例えば、調査段階ならユーザーインタビューの記録、分析段階ならカスタマージャーニーマップ、設計段階ならワイヤーフレーム・デザイン、評価段階ならユーザビリティテストの結果などです。
人間中心設計では、各段階の成果物においてユーザー視点を取り入れながら改善を施していきます。

改善を経た成果物は、ユーザーニーズに沿ったものになるだけでなく、お客さまをさまはじめプロジェクトチーム全体のエビデンスとしても活用できますし、チーム間での成果物イメージのずれがないように共通のモノサシとしても使えます。

そのため、開発途中段階での大きな手戻りを防ぐことが可能です。

Webサイト制作において、どのように人間中心設計を活用していますか?また、実際に活用して得られた効果についても教えてください。

水戸:以前、リリースまで時間がなく、急ピッチで開発を進める必要があったプロジェクトに携わったことがあります。時間がないからといって強引にプロジェクトを進めてしまうとユーザーのニーズに沿ったプロダクトが作れず、成果物が中途半端なものになるリスクがありました。そのような状況下に置かれることで、メンバーのモチベーション低下も課題になっていました。

そこで取り入れたのが、人間中心設計の分析フェーズのペルソナ、カスタマージャーニーマップと、ユーザーのサービス利用を通じた成長を段階的に表現したオリジナルフレームワークです。

その成果物をプロジェクトチーム内で共有することで、メンバー全員が「サービスのあるべき姿」について共通認識をもてるようにしたいと考えたのです。

結果として、メンバーのモチベーション向上や、その後のスムーズなプロジェクト進行にもつながりました。

森:制作に集中していると、つい自分たちの視点だけで物事を考えてしまいがちです。しかし、人間中心設計の調査・分析フェーズでは、ターゲットに近いユーザーの方に直接触れてもらうユーザーテストを実施することで、新たな気づきを得られます。そうした気づきを即座に反映させ、品質を向上させていくのです。

また、お客さまとの認識のずれが制作を進める際に起こらないようにするために、調査・分析フェーズでは特に人間中心設計を重視しています。

人間中心設計の導入によってお客さまが得られるメリット

人間中心設計の導入によって、お客さまにどのようなメリットがあるのでしょうか?

水戸:使いやすいインターフェースや機能を提供することで、ユーザーの満足度が高いサービスやプロダクトを開発できるのが一番のメリットだと思います。

人間中心設計ならユーザーからのフィードバックを早期に収集することで、製品のデザインや機能を調整しながらの開発が可能です。その結果、開発プロセスの高速化やコスト削減、手戻りの削減ができるメリットもあります。

また、人間中心設計のプロセスを活用することで、プロジェクト参加者全員がユーザーニーズを理解しやすくなり、成果物を通じて共通のモノサシをもつことができます。
デザイナーだけでなく、開発に携わる全員がユーザー視点をもち、製品やサービスの意義や開発目的を理解しやすくなれば、よりユーザーファーストになるものを作れると考えています。

写真:水戸が話している様子

森:製品やサービスをより快適に利用できるように設計することができれば、利用率や満足度は飛躍的に向上します。その結果、製品やサービスが普及すればするほど知名度も上がり、連動して他の製品やサービスの利用率も上昇しやすくなります。

つまり、一つの製品やサービスに人間中心設計を取り入れながら改善することで、企業全体のブランディングに貢献することが可能なのです。

組織に人間中心設計を浸透させるための仕組み

人間中心設計の社内啓発活動

BAでは積極的に人間中心設計の社内啓発活動をしているそうですが、例えばどのような取り組みがあるのでしょうか?

水戸:まずUI/UX開発に関する基礎的なフロー・知識を習得し、UI/UX開発案件を担当できる人材をより増やすため、社内勉強会を開催しています。

具体的には、課題図書を各自が読み込み、気づきや疑問点、自身の担当する業務における参考事例などを共有しています。こうした取り組みによってメンバー全員が人間中心設計の考え方についても理解が深まるよう努めていますね。

森:そうですね。また、過去のプロジェクトの資料を共有しながら進めると、実は人間中心設計に基づいた取り組みを行なっていたことに気づく場合もあります。勉強会に参加し、人間中心設計の考え方にのっとった体験をすることで、「自分ごと」として受け止め、より理解が深まる機会となっています。

人間中心設計の手法の文脈を正しく理解することも重要です。「なぜその手法が必要か、どのような問題を解決するために使われるか」を理解することで、より目的意識をもって実務に取り組んでいけると考えています。

今後の課題と展望

社内浸透における課題や今後の展望について教えてください。

水戸:現在の社内勉強会は、知識を体系的に学びインプットするだけの場となっています。しかし大事なのは、習得した知識を自身のスキルとして昇華し、アウトプットしていくことです。ユーザーへの理解度を上げるデザインプロセスが、さまざまなサービス・プロダクトにかかわる方々の共通言語になってほしいですね。

なかなか実践の機会がないというメンバーでも、プロジェクトを通じて実践の機会が得られるよう、各メンバーを巻き込むような仕組み・機会作りも必要だと考えています。

森:現在行なっている勉強会や啓発活動は、おもにデザイナーを対象としています。しかし将来的には、開発に携わるディレクターやエンジニアも人間中心設計の考えを理解し、プロジェクトに組み込めるようになってほしいと思います。

サービスの領域に対応できる範囲が広がると同時に、多角的な視点で開発を進められるようになれば、自ずとBAが提供するサービスの価値が向上すると思います。

写真:森と水戸が話している様子

まとめ:人間中心設計は顧客満足度の向上やコストの最適化を実現するための重要な手法

BAは、人間中心設計の手法を取り入れながら、デザイン思考とUXデザインをベースに、ユーザーに満足していただけるサービスやプロダクトを開発する力をもっています。

Webサイト制作においても、人間中心設計を導入することで、顧客満足度の向上はもちろん、開発プロセスの高速化やコスト削減、手戻りの削減など、多くのメリットをお客様に提供できます。

Webサイトのリニューアルをご検討中の企業様や、ユーザー体験を重視したWebサイト制作をお求めのWeb担当者様は、ぜひ一度BAにご相談ください。