BAsixs(ベーシックス)

「あたりまえ」をアップデートしつづける

インナーブランディングは社員がつくる。立ち上げから啓蒙までを紹介

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(ビジネス・アーキテクツ)
クリエイティブUNIT(ビジネス・アーキテクツ)

大手を中心とした企業のWebサイトのデザインのためのリサーチ、コンセプト立案、デザインシステム開発、各種ページやコンポーネント、グラフィック制作などを主に担い、自社のブランディング施策にも取り組んでいるUNIT。

BAsixs参画企業、ビジネス・アーキテクツ(以下、BAと称する)では2018年夏からCI(コーポレートアイデンティティ)プロジェクトチームを発足、ロゴデザインや行動指針などを社員自らの手で刷新しました。どんなチームがどんな思いでプロジェクトに関わったのか、デザイナー2人にお聞きしました。

インタビューを受けた人

  • プロフィールアイコン(写真):シニアデザイナー 秋山
    秋山 朋三シニアデザイナー(ビジネス・アーキテクツ)

    2002年よりビジネス・アーキテクツに参加。シニアデザイナー。大規模なグローバルサイトやコーポレートサイトの構築および、ガバナンス強化・運用効率化のためのガイドライン作成とその後の運用まで、UIデザイナー/アートディレクターとして幅広く参画。品質を保ちながら効率的な開発および運用を可能にするコンポーネントベースのデザインメソッドを早期より実用化。利便性重視のポータルサイト、閲覧性重視のニュースサイト、コンバージョン重視のECサイト・マーケティングサイト等、目的や特性に応じた柔軟なデザイン設計に長ける。最適なユーザー体験の定義、実現のための施策の立案・実施、プロトタイピングによるテスト〜改善まで、UX観点を持って包括的に携わる。自社CIの開発・浸透施策など、ブランディング施策も手がけている。

  • プロフィールアイコン��(写真):デザイナー 君塚
    君塚 伴子デザイナー(ビジネス・アーキテクツ)

    ゲーム業界でのデザイナーを経て、2000年にウェブ制作会社に入社。運用から構築まで得意分野は幅広く、多くの大規模プロジェクトに関わる。インタラクティブコンテンツのアートディレクター。2018年よりビジネス・アーキテクツに入社し、UI/UXデザイナーとして奮闘中。

「BAらしさとは?」を模索し続けたプロジェクト1年目

CIプロジェクトチームが立ち上がったのは、2018年の夏。社長が交代したタイミングで、BAの想いも一新しようということでスタートしました。

クリエイティブUNITの森をリーダーに、私と水戸の3名+社長でチームを作り、まずロゴの制作にとりかかりました。制作にあたって最初に行ったことは、社員へのヒアリングです。これまで何となく「BAってこういうことが得意だよね」ということはわかっていたのですが、誰も言葉に出したり、形にしたりしたことがありませんでした。

そこで、いろいろな立場の社員にインタビューを実施。「BAのビジョンって何だと思う?」「課題に感じていることは?」「BAをキャラクターにたとえると?」……と聞いて回ったところ、BAに対して真面目なイメージを持っている社員が多いという結果に。「コツコツ積み上げるのが得意」という意見もありました。

こうしたさまざまな意見を集めて3名のデザイナーが各自思いを込めてデザインを作り、コンペ形式で最終的に選ばれたのが現在のロゴです。

ビジネス・アーキテクツ

君塚 : 無から有を作り出す作業だったので、いま思い出しても本当に大変でした。「これが“産みの苦しみ”か!」と。考えれば考えるほど悩んでしまって、日頃のクライアントワークでもこんなに大変な思いをしたことはないかもしれません(笑)。選ばれなかった2案も含めて3つのロゴを入れたTシャツを記念に作り、とてもいい思い出になりましたね。

ロゴができたら、次は普及活動です。まず、ロゴを自社のサイトに反映し、名刺や封筒などのステーショナリーを制作。それから、スローガンづくりに取りかかりました。BAの社員として、こういうことを大事にしていこう、ここに向かっていこうという宣言です。

このとき決まったスローガンは「Be Aggressive」。この言葉には「スタッフ一人ひとりが、自主性・主体性を持ち、妥協せず、さまざまなことに積極的にチャレンジし続けていく姿勢」という意味が込められています。これをステッカーにしたりステーショナリーに印刷したりして、CIプロジェクトチームの熱い思いと共に、みんなに伝えました。

「Be Aggressive」から「Be ____ Basic」へ。あらゆる基本のアップデートを宣言した2年目

「Be Aggressive」というスローガンは、2年目には「Be ____ Basic」になりました。1年目で決めたように、BAのCIコンセプトは常にアップグレードしていく姿勢なので、2年目は2年目にふさわしいスローガンにアップデートしたかたちです。
スローガンを年ごとに変えるというのは、ユニークかもしれませんね。

2019年スローガン:ビーアグレッシブ

2020年スローガン:ビーベーシック

「Be ____ Basic」という言葉には、「あらゆる基本をアップデートする」という思いが込められています。仕事のやり方やスキルなど、あらゆる基本・基礎を社会やクライアントのニーズを見越して更新していこうという決意です。

変化のスピードが速く不確実なことが多い社会の中で、人々が求めるものや価値観はどんどん変化し、多様化しています。企業も提供する商品やサービスを社会のニーズを見越して変えていかなくてはなりません。そうした企業の仕事を請け負う私たちにも、常にアップデートが求められています。

会社がアップデートして世の中のニーズに応えていくためには、まず社員一人ひとりがアップデートしていこう。「Be ____ Basic」には、そんなメッセージを込めました。

「Be ____ Basic」は、正しく言うと「Be ◯◯ Basic」で、◯◯にはさまざまな言葉が入ります。たとえば、「Be my Basic」や「Be 社内環境 Basic」、「Be サービス名 Basic」など。「Be クライアント名 Basic」というのもあるかもしれません。今年一年で「基礎を築く・基本となる」テーマや目標を入れることができます。あえてスペースを空けておくことで、“あなたはここに何を入れますか?”と社員に問いかけています。

BAの行動のらしさ、BA Principle

2年目にようやく「BAらしさ」の3つの柱が揃う

BA Principleについて教えてください。

君塚 : BA Principleというのは、BAパーソンとしての約束ごとです。CIプロジェクト立ち上げ前に、当時のマネージャー中心で作った行動指針を2年目に秋山さんが整理・ブラッシュアップしてPrincipleとしてアップデートしました。秋山さんは考える系の仕事が得意なので、白羽の矢が立ったんです。

秋山 : 1年目にロゴが決まったので、次に「Be____ Basic」のスローガンを考え、それと同じ時期に、「BAの提供価値の約束」を「BA Mission」、「BAパーソンとしての約束」を「BA Principle」、「BA Mission」「BA Principle」の総称をBASICとして定めました。

BA Mission(BAの提供価値の約束):デザインとエンジニアリングの力で安心・安全で豊かな社会づくりに貢献する

BA Principle(BAパーソンとして約束):[自律自走]好奇心を持って自らインプットし徹底的に考え抜き同じ理解を得るまで伝え成果を出すことにチームで協力してトライし続ける

CIは、理念のらしさ (Mind Identity)、行動のらしさ (Behavior Identity)、見え方のらしさ (Visual Identity) の3つの要素から成ります。ロゴは「見え方」のらしさ、BA Missionは「理念のらしさ」、BA Principleは「行動のらしさ」としてBAのあり方を整理し直しました。

秋山 : 当時の行動指針の6色で作った手ぬぐいは好評でしたよね。

君塚 : そうそう。「この行動って具体的にどういうこと?」というのをイメージできるように鳥獣戯画のキャラクターでイラスト化した手ぬぐいを作って、納涼会で全員に配りましたよね。懐かしいなぁ。

写真:鳥獣戯画が描かれた手ぬぐいについて解説している社員

鳥獣戯画が描かれた手拭いの画像:今より良くするために「アイデアや好奇心」を大切にする

BA Principleはいま、7つありますね。

秋山 : はい。「好奇心・インプット・考える・伝える・成果・協力・トライ」の7つです。2年目に「インプット」を足しました。聞こえてくること、見えてくることだけで物事を判断せず、よくきき、みて、自らインプットできる人になろうという意味です。

7つそれぞれにイメージカラーとアイコン、キーワードがあります。たとえば、「協力」は
アチーブメントブルーでキーワードは“冷静・誠実・成功”、「成果」はプロフェッショナルレッドで“使命感・実行力”、「伝える」はハーモニーピンクで「思いやり、協力、調和」です。

BA Principelを作るにあたって苦労した点は?

秋山 : 「好奇心・インプット・考える・伝える・成果・協力・トライ」というコピーを考えるのが大変でした。1年目にできた行動指針をわかりやすく、伝えやすい一言にするのが思いのほか難しくて。BA Principleは社内に浸透させるだけでなく、社外にも「BAはこういうことを大事にして活動をしています」と伝えるものでもあるので、熟考に熟考を重ねました。

最終的に"今をより良くするために「アイデアや好奇心」を大切にする" を "好奇心"、"問題解決のために地球上で「1番考えている人間」になる" を "考える
……というように、7つの端的なワードを決めました。さらに7つすべてを含む一文を組み立てたのですが、ここまで2ヶ月近くかかりましたね。

試行錯誤の末、ようやく完成したのが「自律自走:好奇心を持って自らインプットし 徹底的に考え抜き 同じ理解を得るまで伝え 成果を出すことに チームで協力してトライし続ける」というBA Principleです。"自律自走" は以前から社員の基本姿勢として謳われていたのですが、BAでいう自律自走を噛み砕いたものとして BA Principle を位置付けたんです。

君塚 : 秋山さんが横で「うーん……」と悩んでいるのを横で見ていて、「がんばって!」といつも心の中で応援していました。

さまざまなシーンで活用し、社内での浸透をはかる

BA Principleに関しては、面白い取り組みをされているそうですね。

君塚 : はい。SlackにPrincipleチャンネルを作っています。7つのPrincipleのスタンプを用意していて、毎朝社員に「今日はどのPrincipleに取り組みますか?」と投げかけ、7つのスタンプで答えてもらいます。

終業時には日報と一緒にチャンネルに取り組みの成果を報告してもらって、みんなでコメントやスタンプでリアクションを行います。たくさんリアクションを返しているのを見ると、「みんな優しいなあ」と思いますね。1日の行動を振り返れるので経験を学びに変えることにつながると思いますし、他の人のコメントを見て新しいアイデアのヒントを得られたという人もいました。もっと習慣化していったらいいなと思います。

Principleコミュニティチャットルーム画像:取り組みの成果を報告し、コメントやスタンプでリアクションを行っている様子

秋山 : BAではピアボーナス(社員同士で感謝・賞賛しポイントを送り合い、報酬に反映される制度)を利用しているんですが、そこでも7つのPrinciple を#(ハッシュタグ)で送っています。

いま社員全員が身につけているネックストラップも2年目に作りました。コーポレートカラーのBAレッドとBAブラック、白の組み合わせで3種類、好きなものが選べます。差し色のレッドが入っているものが人気ですね。ステッカーもいろんなデザインで作り、みんな思い思いの場所に貼ってくれています。

写真:ネックストラップ、Tシャツ、シール、手拭い、カップ

誰もが「BAはこんな会社です」というメッセージを伝えられるように

お二人にとって、CIプロジェクトはどんな経験になりましたか?

君塚 : ロゴ制作やグッズの製作など、いろいろなことが勉強できた楽しい1年でした。反省点としては、少ないメンバーで業務をこなしながらの進行だったので、なかなかスケジュール通りに進まなかったことです。

秋山 : デザイナーが自社のMissionやPrincipleを考えるなんて、なかなかない機会だと思うので、貴重な経験になっています。

君塚 : CIプロジェクトを全社的な取り組みにして、いろいろな人が参加できるようにしたいと思います。みんなが参加してみたいと思うように、もっと楽しいものにしていきたいですね。

秋山 : 2年目で作ったものの成果が出るのはまだこれから。2020年から3年かけてじっくりかたちにし、浸透させることを目標にしています。

会社には、いろんな価値観の人がいて、それはとてもいいこと。でも、同じ職場で働くなら、共通の常識で働いたほうが、うまくお互いの力を発揮することができると思います。その共通の常識・基礎として "BASIC" をみんなで作り上げていくところです。

君塚 : インナーブランディングは、従業員の意識や行動の統一にももちろん役立ちますが、求職者や他の企業に会社を的確かつ魅力的にアピールするためにも必要です。社員の誰に聞いても「BAははこんな会社です」と同じ説明ができるように、時間をかけて “メッセージの統一”をしておくことはとても重要だと思います。