新型コロナウイルスの感染拡大からテレワークが推奨されていますが、緊急事態宣言解除後も「新しい生活様式」の提言にともない、その要請はさらに継続しそうです。
"今後のWeb業界で求められるスキルとは何か?"を、BAsixs参画会社、ビジネス・アーキテクツ(以下、BAと称する)は考えてきました。今回は、テレワークが急速に普及し、顔が見えない関係の中で鈍化すると言われているコミュニケーションについて、メンバーがどんな 意識で業務に取り組んでいるか、さらにはそこで必要とされるスキルをご紹介したいと思います。
なお、このコラムは全2回に渡って展開しています。第1回目の今回はテレワークで求められるコミュニケーションスキルについて、第2回目ではテレワークに向けて準備したい作業環境について紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
インタビューを受けた人
- 秋山 朋三シニアデザイナー(ビジネス・アーキテクツ)
2002年よりビジネス・アーキテクツに参加。シニアデザイナー。大規模なグローバルサイトやコーポレートサイトの構築および、ガバナンス強化・運用効率化のためのガイドライン作成とその後の運用まで、UIデザイナー/アートディレクターとして幅広く参画。品質を保ちながら効率的な開発および運用を可能にするコンポーネントベースのデザインメソッドを早期より実用化。利便性重視のポータルサイト、閲覧性重視のニュースサイト、コンバージョン重視のECサイト・マーケティングサイト等、目的や特性に応じた柔軟なデザイン設計に長ける。最適なユーザー体験の定義、実現のための施策の立案・実施、プロトタイピングによるテスト〜改善まで、UX観点を持って包括的に携わる。自社CIの開発・浸透施策など、ブランディング施策も手がけている。
- 三好 研第2事業部 事業部長/シニアディレクター(ビジネス・アーキテクツ)
複数の制作会社でデザインから実装、ディレクションまで幅広く担当したのち、2011年からBAに参画。オンサイトでナショナルクライアントのWebマーケティングを長期間に渡り支援している。現在は、第二事業部で12名ほどのオンサイトチームを率いながら、主にアカウントの管理と事業部の運営に注力している。
- 湯澤シニアエンジニア(ビジネス・アーキテクツ)
新卒でIT大手企業に入るも、大企業ならではの見通しの悪さや動きの遅さに我慢ができず転職。ちょうどインターネットが出てきた時代(1994年)だったので、かかわる仕事がしたいと思い出版社(音楽、コンピューター関連)に転職。インターネットの初めてをいろ いろ担当。日本最初のメルマガ、日本最初のストリーミング放送、日本最初のカートシステム等。その後、EコマースASP会社(日商1億程度)のCTOを経て、ビジネス・アーキテクツに転職。エンジニア、パートナー開発を経て現在は主にインフラエンジニア、サーバーエンジニアを担当。プロジェクトによってはディレクターも兼務する。
「スキルで言えば、マーケティングやプランニングの領域」デザイナー・秋山さんの場合
秋山さんは主に証券会社のWebサイトを手掛けています。クライアントとのコミュニケーションは、テレワーク以前と変わりましたか?
秋山さん:クライアントのオフィスには、BAのスタッフがチームで常駐しているため、これまでは重要な会議のときだけ呼ばれていました。Web会議では移動の手間が省け、数クリックで次の会議を始められることから、クライアントの方々は会議の機会が増えているようです。私たちも細かい会議にも呼んでいただけるようになり、以前よりコミュニケーションの機会は増えています。
会議の回数が増えたことで、クライアントとの関係に変化はありましたか?
秋山さん:クライアントが我々に重要な決定事項を話す前に、どのような部署に、どのようなフローで調整していたのか。さらには、会議に参加している方々の立ち位置まで、クライアントの一歩踏み込んだ内情を知ることができました。常駐しているメンバーが、どのような環境の中で仕事をしているのかを知り、それを見越した動きができるようにもなりましたね。
対面での会議とは違い、Web会議では相手のバストショットしか表示されず、全員の表情を見渡すことも困難です。回数が増えた一方で、見逃している情報もあるのではないでしょうか?
秋山さん:あると思います。メラビアンの法則によると、人は視覚から最も多くの情報を得ているそうです。相手がちゃんと聞いているか、どういう反応をしているか、話し方や身振りが見えるかどうかは、意思の疎通に影響していますね。最近ではよりいっそう相手の様子を伺うように、日ごろから気を付けています。)
今後テレワークが進む中で、デザイナーに求められるコミュニケーションスキルとは何でしょうか?
秋山さん:テレワークによってクライアント側の人間関係が変化し、それが事業に影響を及ぼすことが考えられます。例えば、Webサイトのどこに力を入れようと考えているのか? そうしたクライアントのニーズを理解する必要があるでしょう。なので、スキルで言えば、マーケティングやプランニングの領域になると思います。これは、Web会議における情報収集だけではなく、対面の会議に参加する場合にも重要です。テレワークでコミュニケーションの機会は増えているので、その中で新しい関係を積極的に構築して、今後の業務に活かしていきたいですね。
「Web会議とチャットには、まだまだ落とし穴が多い」エンジニア・湯澤さんの場合
湯澤さんは常時いくつかの案件について責任者として関わっています。クライアントとのコミュニケーションは、テレワーク以前と変わりましたか?
湯澤さん:私が担当している案件では、クライアントの方々のITスキルが高いので、テレワークでのWeb会議など、スムーズに環境を移行できました。今のところ、特に不便さは感じていません。
社内のメンバーとのコミュニケーションはどうですか?
湯澤さん:コミュニケーションの機会は以前よりも増えたと思います。Web業界の人間は言葉を交わすよりも、チャットなど文字で意思疎通するのが得意なことが多いですね。通話だとリアルタイムで対応する必要がありますが、チャットであれば少し置いておいて、ゆっくり考えてから対応できるのも魅力です。
湯澤さんは若手のサポートをする機会が多いようですが、それも顔が見えなくても問題ないと。
湯澤さん:スケジュール管理などは良いのですが、顔色を見て危なそうだとか、遅くまで働きすぎではないかとか、そういう部分は見過ごしているかもしれません。なので、今は1日に1回は『〇〇、調子はどう?』というように、こちらから話しかけて様子を聞き出すようにしています。他にも、Web会議やチャットによるコミュニケーションには、まだまだ落とし穴が多いと思うんですよ。
落とし穴ですか?
湯澤さん:相手の表情が見えない、言葉だけのやり取りでは、あいまいな表現で逃げられてしまうこともあります。例えば、きちんと役割分担したはずの案件でも、『これは誰がやるの?』ということが後から起きてしまいがちです。テレワークに必要なコミュニケーションスキルでは、情報を整理して伝えたり、確認したりすることが重要ではないでしょうか。
「ディレクターにとって重要なのはインプット」ディレクター・三好さんの場合
三好さんはクライアントのオフィスに常駐して7年になりますが、これまでオフィスで行っていた会議などは、すべてWeb会議に移行できたのでしょうか?
三好さん:クライアント側には、イベント運営、コンタクトセンター、オウンドメディアなど、複数のチームがあるのですが、ほぼすべてのチームとの連絡をWeb会議に移行できました。ただ、クライアントの方々は、なかなか画面に顔を出していただけないんですよね。今までは顔色をうかがったり、場の雰囲気で伝わるものもありましたので、そこが難しいと感じています。
クライアントはWeb会議に積極的なのでしょうか?
三好さん:移動などがないため手軽に実施できるので、会議の回数自体は以前よりも増えています。我々のチームは先方に常駐していることもあり、これまで自社で行っているSlackやBacklogといったツールでのコミュニケーションを、既にクライアントとも共有していました。このような環境があったからこそ、テレワークにおいてもタスクの見える化などができているのかなと思います。
これからのテレワーク時代に、ディレクターに求められるコミュニケーションスキルとは何でしょうか?
三好さん:大前提としてディレクターにとって重要なのはインプットだと考えています。よく見て、聞いて、理解する。そのインプットが間違っていると、ディレクターとして正しい方向にプロジェクトを導けません。誰かに仕事を発注するにも、クライアントに納品するにも、ズレが生じてしまいます。そのために必要なのが、クライアントの課題を引き出し、具体的なニーズをすり合わせていくためのヒアリング能力です。テレワークだから場の空気が伝わらない、回線環境の問題から声が聴きづらいといった特有の問題もありますが、そこは絶対に曖昧にしてはいけない部分ですね。
まとめ
今後のテレワーク本格化時代において、クライアントやプロジェクトメンバーとのコミュニケーションの機会が増える一方で、そこで得られる情報量には限りがあることが見えてきました。正しいインプットを行うために、自身のコミュニケーションスキルを今一度見直しておく必要があるでしょう。
その他にも、テレワーク本格化時代に求められるスキルは多岐に渡ります。これについては、第2回のコラムでも紹介しますので、参考にしてみてください。
テレワークに向けて業務スタイルを最適化、そこで必要なスキルとは? | BAsixs(ベーシックス)
※ このインタビューは2020年4月下旬に実施しました。掲載情報などが現在と異なる場合があります。