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「なんとなく良い」から抜け出す。上司に伝わる“デザインの言語化”とは?

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プロフィールアイコン(写真):CDO(Chief Design Officer)、人間中心設計スペシャリスト 森
クリエイティブグループ/マネージャー、CDO(Chief Design Officer)、人間中心設計スペシャリスト(ビジネス・アーキテクツ)

2008年、企業の情報コミュニケーション戦略を実現するプロジェクトを中心に、アートディレクター及びリードデザイナーとしてビジネス・アーキテクツに入社。特に日本の製造業のグローバル展開プロジェクトに長年関わっている。現在はデザイン部門の責任者も務める。

Webサイトのリニューアルや改善提案の場で、「なんとなく良い」「もっと派手に」といった感覚的なやりとりに終始し、社内調整が進まない経験はありませんか。
デザインを成果につなげるには、“言語化”が欠かせません。

本記事では、上司や関係者を説得し、合意形成をスムーズにするための「デザインの言語化」のポイントと、明日から使える具体例を紹介します。

「なんとなく良い」から抜け出す。上司に伝わる“デザインの言語化”とは?

なぜデザインの議論は“感覚”で終わってしまうのか

会議やレビューの場で、こんなやりとりを聞いたことはありませんか。

担当者:「このデザインの方がユーザーに分かりやすいと思います」
上司:「でも、こっちの方が見た目が好みだな」

結局、どっちが良いかという感覚的な議論で止まり、結論が出ない。
翌週には別の意見が出て、再びデザインが振り出しに戻る。
そんなデザイン迷子の会議、誰もが一度は経験しているはずです。

原因の多くは、なぜ良いのか、なぜ悪いのかを言葉で説明できていないこと。
“なんとなく良い”という感覚は共有できても、その良さの理由までは共有できない。
結果として、上司や関係者は好みで判断せざるを得なくなります。

デザインは、見た目の美しさだけでなく、ユーザーの行動や理解を支える設計そのもの。
その意図を言語化できなければ、せっかくの提案も説得力を持ちません。
プロジェクトを前に進める鍵は、センスではなく言葉にあるのです。

言語化できないと何が起こるか

デザインの意図を言葉にできないまま進めると、プロジェクトの至る所ですれ違いが起きます。

まず、決裁者に伝わらない。
デザインの背景や目的が共有されていないため、なぜこの変更が必要なのかが理解されず、承認に時間がかかります。

次に、関係者との認識がズレる。
制作会社や関係部署との間で、思っていたものと違う、なんか伝わってないという状況が発生。結果、修正を繰り返し、スケジュールもコストも膨らんでいきます。

そして何より、担当者自身の自信が揺らぎます。
自分の考えをうまく伝えられない、結局、好みで決まってしまう。
そう感じるたびに、提案への意欲や責任感が薄れてしまう。

本来、デザインは成果を生むための手段のはずです。それが説明できないものになってしまうと、社内の信頼も、プロジェクトの推進力も失われてしまいます。

Business Architects(ビジネス・アーキテクツ、以下BA)では、社内調整を説得ではなく設計として捉えています。デザインの言語化とは、相手を納得させるための話術ではなく、誰もが判断できる構造を描くための手法です。その構造を共有できたとき、会議やレビューの時間は好みの議論から合意の場へと変わっていきます。

なぜデザインを言語化するのか

デザインの言語化とは、見た目を説明することではありません。
それは、プロジェクトを前に進めるための“共通言語”をつくることです。

たとえば、同じデザインでも、デザイナーは情報の整理や視線誘導を意識して提案します。一方で上司や他部署のメンバーは、印象や企業イメージを基準に見ています。どちらも間違いではありませんが、判断の軸が違うままでは議論がかみ合いません。

言語化=共通言語の橋

このズレを埋めるのが言語化です。根拠や意図を言葉で共有することで、感覚の違いが整理され、デザイナーと非デザイナーが“同じ地図”を見ながら会話できるようになります。

また、言語化はプロジェクト推進のスピードを上げる力にもなります。なぜこのレイアウトなのか、なぜこの色を選ぶのかを説明できれば、意思決定は感覚ではなく目的にもとづいて行われ、合意形成が早まります。

さらに、言語化は自分自身の思考を整理するプロセスでもあります。本当にこれが最適か?、他の選択肢はないか?と自問する中で、判断が明確になり、説得力のある提案へとつながっていきます。

つまりデザインの言語化は、チームの共通認識をつくり、意思決定を早め、自分の考えを磨くための道具です。伝えるための言葉ではなく、進めるための言葉なのです。
言語化された説明はそのまま上司や関係部署への説明資料として転用できます。
意図を言葉にし共有することで、意思決定が早まり、提案が前に進みやすくなります。

デザインを言語化する3つの観点

デザインの意図を言葉にすると言っても、どこから話せばよいのか分からない。
そんなときに意識したいのが、以下の3つの観点です。

  • 判断軸
  • メリット・デメリット
  • ユーザー行動

これは、社内の上司や決裁者、関係部署に説明するときにも非常に効果的です。

デザインを言語化する3つの観点

① 判断軸を明確にする|“どの観点の話をしているか”を伝える

議論がかみ合わない原因の多くは、どの観点で話しているのかが共有されていないことです。たとえば、あなたが情報設計の観点で説明しているのに、上司はブランドイメージの観点で判断している、そんなすれ違いが起きていませんか?

最初に「この改善はUI(操作性)の観点から見ています」や「このレイアウトはブランドトーンを意識しています」と前置きするだけで、相手はいま何の話をしているのかを理解できます。

観点を明示する=議論の地図を示すこと。これだけで、会話のズレやなんか違うという感覚的な衝突を減らせます。

② メリットとデメリットをセットで伝える|“説得”ではなく“納得”をつくる

提案の説得力を上げたいときほど、片側だけの説明を避けることが大切です。
「この改善を行うと、Aの効果があります」だけでなく、
「ただし、Bのリスクもあります」と添えると、決裁者の信頼を得やすくなります。

たとえば、
「ボタンの色を変更することで、クリック率の改善が見込めます。ただし既存ユーザーが一時的に戸惑う可能性もあるため、段階的なテスト導入を検討しています。」

このように効果とリスクの両面を提示することで、
一緒に判断してもらうスタンスを築けます。
会議が押し問答から共に考える場へと変わるのです。

③ ユーザー行動に置き換える|“成果に直結する言葉”で語る

デザインを伝える最も強い言葉は、見た目ではなく行動です。

  • 3クリック必要で離脱しやすい
  • 送信完了率が下がっている
  • スクロールが深すぎて情報に届かない

こうしたユーザーの動きを基準に説明すると、非デザイナーの上司や関係部署も一気に理解が進みます。相手にとっての判断の物差しは、見た目ではなく成果です。見た目の話から行動の話に変えるだけで、会議の空気が前向きになります。

この3つの観点を意識すると、感覚的な好みから論理的な合意へと会話の質が変わります。デザインの言語化とは、相手を説得するためではなく、チーム全員が同じ方向を向くための翻訳作業なのです。

具体事例:感覚的な表現を“成果につながる説明”に変える

ここでは、前章で紹介した3つの観点をもとに、感覚的な表現を成果につながる説明に変える例を紹介します。どれも日常の打ち合わせやレビューでよくあるシーンばかりです。少しの言葉の工夫で、会話の温度と理解度は大きく変わります。

事例1 フォームの送信ボタン(観点:ユーザー行動)

  • 感覚的な説明の例
    「このボタン、もっと目立たせましょう」
  • 言語化した説明の例
    「現状のボタンは周囲と同じ色なので視認されにくく、送信完了率が下がる恐れがあります。ブランドカラーの中でコントラストを強めることで、クリック率の向上が期待できます。」
  • ポイント
    デザインの印象ではなく、ユーザー行動の変化を軸に説明する。
    見た目の議論から一歩抜け出し、成果に基づいた提案に変わります。

事例2 ナビゲーション階層(観点:判断軸 × ユーザー行動)

  • 感覚的な説明の例
    「このメニューは分かりづらいです」
  • 言語化した説明の例
    「ユーザーが目的の製品情報にたどり着くまで3クリック必要になっています。
    2クリックで到達できるよう階層を整理すれば、離脱率を下げられる見込みがあります。」
  • ポイント
    分かりづらいを具体的な行動コストに言い換える。
    決裁者にとっての判断材料が感覚から数値に変わります。

事例3 トップページのビジュアル(観点:判断軸 × メリット/デメリット)

  • 感覚的な説明の例
    「この画像、もっと派手にした方が良いと思います」
  • 言語化した説明の例
    「現状のビジュアルでは、メッセージが背景と一体化してしまい訴求内容が伝わりにくくなっています。主要コピーを中心に据え直すことで、ファーストビューでの理解率が上がる可能性があります。
    一方でブランドの静的な印象が薄まる懸念もあるため、全体トーンでバランスを見て調整します。」
  • ポイント
    メリットとデメリットをセットで伝えることで、提案の押しつけ感をなくし、共に判断できる関係を築く。

事例4 コンテンツの文章表現(観点:ユーザー行動 × 判断軸)

  • 感覚的な説明の例
    「この説明文、なんか分かりにくいです」
  • 言語化した説明の例
    「専門用語が多く、初めて訪れるユーザーには理解が難しいです。
    業界外の人にも伝わる表現に置き換えることで、ページ滞在時間や資料請求率の改善が見込めます。」
  • ポイント
    分かりにくいを誰に、どのように影響しているかに変換する。
    相手が「なるほど、それなら直そう」と納得できる構造になります。

このように、少し言葉を置き換えるだけで、同じ提案でも相手の理解度や受け取り方が変わります。

感覚的な表現を根拠ある説明に変えることは、デザインを好みの話から成果の話に変える第一歩です。それは、デザインの価値を守るだけでなく、社内の信頼を築く力にもなります。

BAでは、UI/UX改善提案やリニューアル支援の際に、デザインの言語化まで含めた合意形成プロセスを設計しています。
単なる見た目の提案ではなく、社内説明や決裁を通すための根拠づくりまで伴走します。

まとめ:言語化は、社内を動かす力になる

デザインの言語化は、チームの理解をそろえ、プロジェクトを前に進めるための社内コミュニケーションの技術です。

なぜこのデザインなのかを自分の言葉で伝えられるようになると、会議の空気は変わります。感覚的なやりとりが、目的と根拠をもとにした建設的な議論に変わり、上司や関係者との対話が“通じ合う時間”になります。

そしてこのスキルは、担当者自身の業務を前に進める力にもなります。
判断の理由を整理し、根拠をもって説明できるようになることで、以下のような“実務の負荷”が確実に減っていきます。

  • 曖昧なフィードバックに振り回されない
  • 自分の提案に納得感を持たせられる
  • 社内調整が短時間で済む

見た目や感覚で語られがちなデザインを、 成果を生む戦略として社内に伝えていくこと。
その第一歩が、デザインの言語化です。今日の会議で、このデザインはなぜ良いのかをひとこと、根拠を添えて話してみてください。

上司への説明が不安、社内調整が難しいと感じている場合は、こうしたデザインの言語化や合意形成の設計からご相談ください。

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