IT業界は、優秀な人材の不足による納期遅延・品質低下が大きな課題の一つとなっています。Web開発の委託先の選定において、制作会社が良質な人的リソースを十分に保有しているか、安定した開発体制を維持できるかといった点は、外せない選定要素です。
そんな課題を解決するため、株 式会社ビジネス・アーキテクツ(以下、BA)と株式会社LULL(以下、LULL)では、常に高いバリューを提供するための開発体制を協業で構築する取り組みを行っています。
今回は、2社による取り組みの具体的な内容について、BAのゼネラルマネージャー小山とLULLの執行役員の西田 達也氏に話を伺います。
インタビューを受けた人
- 西田 達也様デジタルクリエーション事業部 執行役員(株式会社LULL)
宮崎県出身。広告代理業、不動産業、WEB開発事業、海外進出支援事業など複数社のIT事業立ち上げを経験。各社の代表や取締役を歴任。今後のIT人材不足の社会課題解決に着目し、IT人材教育および派遣事業の立ち上げを行うため株式会社LULLの創業に参画。現在はWEB開発事業とSES事業の責任者を務める。
- 小山第1事業部 事業部長(ビジネス・アーキテクツ)
BPOの会社でのなんでも屋を経て、2019年からBAへジョインしました。第1事業部で責任者をしております。
BAとLULL、開発体制の構築でタッグを組む!
現在、LULLが育成した人材がBAの現場に参加する、という取り組みが進められています。このプロジェクトの目標と、BAとLULLそれぞれの役割について聞いていきます。
BAとLULLによる開発プロジェクトの目的と目標
BAとLULLは、それぞれどのような目的・目標を持って開発プロジェクトに取り組まれていますか。
西田氏:LULLとしては、自社で育成した人材をBAさんに紹介することで、現場を経験させる目的があります。もちろん、BAさんのプロジェクトへの貢献が大前提ですが、弊社メンバーのスキル・人間性・仕事への取り組み方などを知っていただき、今後の仕事でも良い関係を築ければという想いがあります。
小山:プロジェクトの目標はPMBOK(Project Management Body Of Knowledge/プロジェクトマネジメントの知識体系)などの基本をふまえて管理しています。プロジェクトマネージャーとして、お客さまがWinになるのは当然として、BAと社員、プロジェクトに関わる人たちの全方位がWinになるようにという視点を持っていたいですね。
BAとLULL、それぞれの役割
LULLの人材がBAのプロジェクトに参加する際の流れと、2社の役割を教えてください。
西田氏:まずBAさんからのオファーを受けて、プロジェクトの内容や必要な役割のすり合わせを行い、適材適所でメンバーをアサインします。各メンバーのポジションはプロジェクトごとに異なりますが、プロジェクトマネージャーから、ディレクター、デザイナー、エンジニアまで、幅広く活躍の場をいただいています。
ちなみに、プロジェクトメンバーとして一度参加したあとは、BAさん、LULLどちらに所属しているかは重要ではありません。同じ目標に向かって進む1つのチームという考えで、限定的な役割を請け負うようなことはありません。
小山:BAの役割は、プロジェクトを成功させるために最適なメンバーを集めることです。ただ西田さんもおっしゃったように、プロジェクトを進めるうえでは、BAとLULLさんの明確な役割分担などは特にありません。なかには、メンバーのスキルや適性などを考慮して、あえてLULLさん所属の方にリードをとってもらう案件もあります。お客さまの満足や成果物の品質を担保できるのであれば、柔軟に対応してよいのではないかと考えています。
BAとLULLの開発体制がうまくいく理由
BAとLULLは試行錯誤を経て、お客さまに価値を提供できる開発体制を築き上げてきました。別会社であることで、やりづらさや課題はないのでしょうか。
BAとLULLだから成果を最大化できる
BAとLULLで成功させたプロジェクトと成功の要因について教えてください。
西田氏:記憶に残っているものを1つ挙げるなら、私自身が参画したあるWebサイト運用の案件です。課題感が多いプロジェクトで、ワークフローから見直し、夜遅くまで議論することも度々ありました。正直、結構大変なプロジェクトでしたが、BAさんのメンバーとも一体感が出てきたおかげで最終的には納期よりも早く対応でき、良い結果でおわりました。
小山:あれはなかなか大変でしたね。西田さんが入ってくれたので心強かったのですが、いつトラブルが起きてもおかしくない状態でした。それでもなんとか成功させられたのは、会社の垣根を超えてメンバーが遠慮なく意見を言い合っていたからだと思います。ビジネスを一緒にやるうえで重要なのは信頼関係です。BAとLULLさんは、普段からの協業関係のおかげもあり、ビジネスに関してある程度の共通認識を持てています。ビジョンを共有している関係だからこそお互いに信頼でき、プロジェクトがうまくいったのではと考えています。
2社で取り組むメリット・デメリット
2社で取り組むことに、どのようなメリットを感じていますか。
西田氏:BAさんには新規開発から運用まで、幅広い領域の案件が豊富にあります。若手が経験を積む場としては最高の環境であることが、LULLとしては大きなメリットですね。
小山:LULLさんの若手メンバーと関係を築くなかで、BAのメンバーが刺激を受けさらなる成長につながっていることがあり、これは大きなメリットだと感じています。BAにはジェンダーも社歴も国籍も関係なく、誰とでもフラットに議論できる文化があります。LULLさんにはスキルが高いうえ、面白い視点を持ったメンバーが多く、そんなメンバーと定期的に議論を交わすことで、とても刺激になるんです。
逆にデメリットを感じる部分はありますか。
西田氏:セキュリティリスクに配慮して、LULLメンバーはLULL用とBAさん用でPCを2台使い分ける必要があるなど、作業環境が複雑になりがちな点は少しだけ不便ですね。ただ、インシデント(重大な事故や事件が起こる環境にある状況)を防ぐ観点でも高いセキュリティ意識は非常に重要なことですし、デメリットと感じているメンバーはいません。我々の不用意な行動の一つが大きなビジネスリスクになりうることを自覚し、セキュリティ対策を徹底することは当然のことなので。
小山:BAとしても、今のところデメリットを感じる部分はないですね。セキュリティ面は譲れない部分なので、LULLさんには不便をかけますが守っていただいています。また、ISMS(注1)に準じるために、LULLのみなさんにはセキュリティに関する定期テストも受けていただいていますが、成績も優秀でルールを厳守していただけるので助かっています。
注1 ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム):
情報セキュリティを管理するための規格。認証機関の厳しい審査をクリアした企業のみISMS認証を取得できる。株式会社ビジネス・アーキテクツはISMSの国際規格である「ISO/IEC 27001」の認証を取得しています。
BAとLULLの開発プロジェクトの強み
BAとLULLの開発プロジェクトの強みについて、技術力、開発環境、パフォーマンスの最適化、リスク管理の視点で掘り下げていきます。
卓越した技術力、充実した開発環境
開発プロジェクトの要となる技術力と開発環境について教えてください。
西田氏:LULLではプロジェクトごとにさまざまなCMSを扱う機会があるので、経験とナレッジが日に日に蓄積されています。また、品質チェックはBAさんのベテランエンジニアにしていただいており、そのフィードバックをLULL側で活かす体制ができています。結果として弊社の技術力がさらにブラッシュアップされ、人材育成にもつながっています。
小山:開発環境としては、近年ではAEM、PowerCMSなどのCMS(注2)が開発の主流ですね。実際の現場では、CMSエンジニアはBA、フロントエンドをLULLさんとなるケースが多くなっています。また、西田さんがおっしゃっている通り、どの工程においても最終的な品質管理はBAの責任で行っています。もちろんLULLさん側でもBAの基準を用いて検証してもらいますが、お客さまへの納品前にBAが必ず最終チェックする体制です。最終的な品質担保と今後のお互いの成長をふまえると、これは崩してはいけない工程だと考えています。
注2 CMS:
Contents Management System(コンテンツ・マネジメント・システム)の略。Webサイトのコンテンツを構成するテキストや画像、デザイン・レイアウト情報(テンプレート)などを一元的に保存・管理するシステムのこと。
パフォーマンスを最適化するマネジメント
プロジェクトのパフォーマンスを最適化するためには、何が必要でしょうか。
西田氏:チーム内で健全なコミュニケーションがとれて、適切に状況把握できることが必須です。一見仕事に関係ないように思えますが、懇親会などプロジェクト外で両社のメンバーが親しい関係を築いていることも、パフォーマンスを高めている要因だと考えています。
小山:やはり、プロジェクト内で会社の垣根なくフラットに付き合えることが大事ですね。プロジェクトの役割分担は、上下関係ではありません。立場や経験年数に関係なく、それぞれがプロとしてプロジェクトに向き合うことで、必要なときにテリトリーを越えて動けるようになり、チーム全体のパフォーマンスが最適化されます。
未然にトラブルの芽を摘むリスク管理
適切なリスク管理を機能させるために必要なことは何でしょうか?
小山:リスクをキャッチアップする仕組みは必要ですね。BAとLULLさんの間でも、一度進捗状況の把握がうまくいかなかったプロジェクトがあり、それ以降は遅延や品質のリスクを共有する仕組みを設けました。
西田氏:小山さんが挙げた案件では、LULLと私自身も大きな教訓を得ました。コミュニケーションが重要とは言いましたが、もちろんすべての情報を伝えられるわけではありませんし、メンバーそれぞれがタスクを抱えるなかで伝達漏れなども発生する可能性があります。コミュニケーションのみに頼ってリスクを見過ごさないよう、仕組みとしてリスクを検証する視点を取り入れていく必要があると考えています。
BAとLULLの取り組み、今後の課題と実現したいこと
BAとLULLのプロジェクトでは、各メンバーがプロフェッショナルとして会社の垣根を越え、お客さまが求める価値の提供を目指しています。
最後に、今後の課題や実現したいことについて聞きました。
BAとLULLの取り組みにおいて、今後の課題として考えていることはありますか。
小山:現在はエンジニアリング領域がメインですが、徐々にプロジェクトマネジメントやアカウントセールスといった上流工程にまで領域を広げていきたいですね。BA、LULLさんお互いの得意な領域を活かしつつ、お客さまにより良い価値を提供できる取り組みにしていきたいです。
西田氏:BAさんのメンバーと本当の意味で対等な存在へと成長することが、今後の課題です。弊社メンバーとも分け隔てなくコミュニケーションを交わしながら、プロジェクトを進めていると言ってくださいましたが、実際多くの場合はBAさんのフォローありきで成立しています。弊社からの参加メンバーは若手とはいっても、プロフェッショナルとしての業務遂行が求められるのが当然です。弊社メンバーが成長し、スキルや経験の面でもBAさんのメンバーとより対等になれば、この取り組みをより良い共創へとアップデートできると思います。
最後に、この取り組みを通してどんなことを実現したいと考えていますか。
西田氏:BAさんのプロジェクトを支えるとともに、IT業界内でLULLのポジションを確立したいと考えています。IT人材の育成力だけではなく開発力も高い会社として認知され、企業としてより大きく成長したいですね。LULLが成長すれば、さらに高レベルの人材創出や育成も可能になり、BAさんの事業拡大にも貢献できるようになると思います。
小山:この取り組みを通して、IT人材の価値をより高めて、頑張っている人がきちんと報われる流れを業界全体で作れればと考えています。未経験からプロジェクトに参画したメンバーでも、努力してお客さまの期待を越える貢献ができれば、自身の報酬という結果はもちろん、プロジェクトを通した大きな成長が得られます。そんな取り組みでクライアント、LULLさん、BA、働く人々全てがWinな関係になると素敵ですよね。