BAsixs(ベーシックス)

BAsixsは、ビジネス・アーキテクツが運営する
「あたりまえ」をアップデートしつづけるメディアです。

戦略と実装をつなぐ人材をどう育てるか―BAの社内分科会で実践した6つのテーマ

読了目安 : 15分

  • 投稿日 :
  • 最終更新日 :

この記事を書いた人

プロフィールアイコン(イラスト):マーケター 山本
山本セールス&マーケティンググループ/マーケター(ビジネス・アーキテクツ)

South Carolina州 Winthrop University 卒業(心理学)。 広告代理店にて自動車メーカーの商品広告・マーケティング業務に携わった後、インターネットベンチャー、CRM・DRMエージェンシーにて、化粧品、マンション販売・管理、銀行、IT事業会社など様々な企業のCRM戦略策定やサイト/アプリ/メール/DMなどお客さま接点全体のコミュニケーションの最適化など、マーケティングコミュニケーション×テクノロジー×クリエイエティブ三位一体の実践的マーケティングにこだわり、多岐に渡る業務に従事する。

「マーケティングツールを導入したが、社内で十分に活用できず形骸化している」
「コンサルティング会社から戦略提案を受けたものの、いざ開発フェーズに入るとうまく実装につながらない」
「Webサイトのリニューアルプロジェクトが遅延し、予算や現場の負担が膨らんでいる」

デジタルマーケティングやDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進する中で、このような課題に直面している経営層やマーケティング責任者の方も少なくありません。

その背景の1つに、プロジェクト上流の「戦略」と、下流の「実装・プロジェクトマネジメント(PM)」がうまくつながっていないことがあげられます。戦略を考える側と、開発やディレクションを行う現場とで認識にずれが生じ、そのずれがプロジェクトの進行とともに大きくなってしまうケースは、決して珍しくありません。結果として、手戻りや方向性のずれが生じ、期待していた成果につながりにくくなることもあります。

では、戦略と実装をつなぎながらプロジェクトを成功へと導くためには、どのような視点や能力が必要でしょうか。パートナー企業のメンバーに、どのような基準を求めればよいのでしょうか。

本コラムでは、戦略と実装の両方を理解してプロジェクトに関わる人材(次世代コンサルタント)に求められる能力やスキルセットを整理するとともに、私たちBusiness Architects(ビジネス・アーキテクツ、以下BA)が社内分科会を通じて取り組んでいる人材育成についてご紹介します。

全6回の分科会でどのようなテーマを扱い、それを日々の実務につなげようとしているのかを見ていきましょう。

戦略と実装をつなぐ人材をどう育てるか―BAの社内分科会で実践した6つのテーマ

なぜ、プロジェクトで「戦略と実装」が分断してしまうのか?

デジタルマーケティングを進めるためには、非常に多くのステップが必要です。市場をリサーチし、顧客ターゲットを定め、コミュニケーションシナリオを描き、見積もりを作成し、タスクを分解してWBS(作業分解構成図)に落とし込み、開発・制作を管理して運用につなげていきます。

しかし実際のプロジェクトでは、これらの工程が複数のベンダーや社内の担当部門にまたがることも少なくありません。それぞれの役割や専門領域が分かれていることで、工程を引き継ぐなかで認識にずれが生じることがあります。

プロジェクトで起こりやすい「3つの分断シナリオ」

  • 【戦略と現場の分断】
    コンサルタントが描いた「理想の顧客体験」が、現場で使うツールの仕様や実装上の制約に合わず、そのままでは実現できない。
  • 【見積もりと実務の分断】
    初期の見積もりで想定していなかった作業が、開発フェーズに入って明らかになり、追加費用の発生や、当初想定していた品質・範囲の見直しが必要になる。
  • 【スケジュールと実行の分断】
    サイトリニューアルなど、複数のタスクが絡み合うプロジェクトにおいて、WBSが実態に合わなくなり、手戻りが発生し納期の遅延につながる。

こうしたずれを減らすためには、自分の担当領域だけでなく、その前後の工程や、他の職種がどのような視点でプロジェクトに関わっているのかを理解することが重要です。プロジェクトの各フェーズを「点」としてではなく、「線」として捉える視点が求められます。

誰もが求める「その問題を解決できる人」の3大能力

戦略と実装をつなぎながらプロジェクトを進める人材(=私たちが定義する「次世代コンサルタント」)には、どのような視点や能力が必要なのでしょうか。BAでは、今回の分科会で扱った内容を整理すると、大きく次の3つの力が重要だと考えています。

①顧客ステージから逆算する「戦略設計力」

「今ある商品・サービスをどう売るか」だけではなく、顧客の状況や心理を捉え、次の行動につなげるための情報やコミュニケーションを設計する力です。

顧客を「潜在層」「見込み層」「顧客」などのステージで捉え、それぞれの段階で行動を阻んでいる不安や疑問などの「心理的障壁」を整理します。そのうえで、必要な情報やコンテンツを考え、広告やWebサイト、MA(マーケティングオートメーション)のシナリオなど、具体的な施策へと落とし込んでいきます。

②クライアントに納得感を与える「適正な管理力」

戦略を考えるだけでなく、プロジェクトに必要なコストや工数を把握し、適切に管理する視点も重要です。

「なぜこの金額になるのか」を説明するために、作業内容を細分化し、タスクごとの工数やその根拠を明確にしたうえで、クライアントにも分かる形で伝えられる見積もりを設計します。これにより、「何にどれだけの費用がかかり、それがどのような作業や成果につながるのか」を共有し、見積もりへの納得感を高めることができます。

③手戻りを防ぎ完遂する「プロジェクト実行力」

どれほどよい戦略や見積もりをつくっても、それを実行に移し、プロジェクトを最後まで進めていく力がなければ成果にはつながりません。

そのためには、要件が必要以上に広がらないようにする「スコープ管理」や、状況に応じた「進捗管理」が重要です。特にWebサイトのリニューアルなど、多くのタスクが関係するプロジェクトでは、「担当者」「成果物」「前提となるタスク」まで整理したWBS(作業分解構成図)を作成し、状況に合わせて更新しながら運用することで、手戻りを抑え、納期や品質を管理していきます。

戦略と実装をつなぐ「3つの能力」を学ぶ、全6回の実践カリキュラム

こうした「上流から下流までをつなぐ能力」を身につけるため、BAでは『次世代コンサルタント育成分科会』を実施しています。全6回のカリキュラムでは、マーケティングの基本から戦略設計、見積もり、プロジェクトマネジメント、WBSまで、実際のプロジェクトに関わる幅広いテーマを取り上げています。

単に理論を学ぶだけでなく、実務で使われている各種テンプレートや分析フレームワークをどのように活用するかまで扱い、それぞれが自分の担当案件に置き換えて考えられる内容としています。

それでは、全6回でどのようなテーマを扱ったのか、順番に見ていきましょう。

第1回:初心者向けマーケティング講座―「顧客視点」の本質と販促との違い

マーケティングの基本となる「顧客視点」について、販促との違いも含めて学びます。

  • マーケティングと「販促」の決定的な違い:
    短期的な成果を目指す「販促(プロモーション)」と、顧客との関係を中長期的に考える「マーケティング」の違いを整理します。
  • 顧客ステージの引き上げ思想:
    顧客を「潜在層」「見込み層」「現客」「ファン」などのステージで捉え、それぞれの段階で「次に進むためにどのような情報や体験が必要か」を考える視点を学びます。

マーケティングと販売促進の違いを、目的や視点などの項目で比較した表。

第2回:コミュニケーション企画と設計アプローチ―「戦略マップ」と「MA」の連動

第1回で学んだ顧客視点を、具体的なデジタル施策に落とし込むための実践的な手法を学びます。

  • 「戦略マップ」の設計:
    横軸に顧客ステージ、縦軸に企業の取り組み項目(KPI、コミュニケーション、技術など)をマトリクス状に整理し、個別の施策を一連の流れとして捉えるための全体設計図の作り方を学びます。
  • 顧客の「心理的障壁(動かない理由)」の特定:
    顧客が行動を起こさない理由となる不安やリスクを整理し、それを解消するコンテンツ(同業種の事例や稟議テンプレートなど)を設計するアプローチを学びます。
  • MAツールによる実装とPDCA:
    顧客の行動ログをシグナルとしてスコアリングし、行動や状況に応じて情報を届ける自動化シナリオの構築や、データをもとに改善する方法を学びます。

横軸に顧客ステージ、縦軸にKPIやコミュニケーション施策などを配置した「戦略マップ」の構成例。

第3回:初動で優位に立つ準備の仕方―潜在的課題を見抜くリサーチと仮説構築

プロジェクトを進めるうえで重要となる「キックオフ前の初動」について、事前のリサーチや仮説構築の進め方を学びます。

  • マクロとミクロのハイブリッドリサーチ:
    3C分析などのマクロ調査に加え、GA4のログ(定量データ)やユーザーテスト(定性情報)を組み合わせ、理想と現実の「ギャップ」から本質的な課題を見つけ出す方法を学びます。
  • 提案活動における仮説構築力:
    単なる現状報告に留まらず、「なぜこの問題が起きているのか」「どこを改善すればゴールに近づけるのか」といった仮説を組み立て、提案につなげる方法を学びます。

クライアント企業、ビジネス環境、マーケティング分析、顧客・市場の評価という、初動リサーチで確認する4つの視点を整理した表。

第4回:利益の基本と納得感のある見積もりのつくり方―コスト構造の理解と見積もり設計

プロジェクトを進めるうえで必要となる、コストや利益、見積もりの基本的な考え方を学びます。

  • プロジェクトのコスト構造と利益計算:
    メンバーの単価や工数からプロジェクトのコストを算出し、適切な利益を確保する考え方を学びます。あわせて、工数や作業内容を踏まえて見積もりを組み立てる重要性を理解します。
  • 納得感のある見積もりの設計:
    作業内容をタスクレベル(WBS)まで細分化し、それぞれの工数や根拠を明確にすることで、クライアントが「何にどれだけの費用がかかり、それがどのような作業や成果につながるのか」を理解できる見積もりの作り方を学びます。

企画、プロジェクトマネジメント、要件定義、設計、制作、検証の6フェーズと、見積もりの根拠となるタスク分解の例を示した図。

第5回:WebディレクションとPM管理項目、案件概要確認点―複雑なプロジェクトの統制手法

大規模構築やシステム連携を伴う複雑な案件を進めるために必要な、プロジェクトマネジメントの基本的な管理項目や確認ポイントを学びます。

  • PMBOKに基づく主要管理項目:
    「スコープ管理(要件の肥大化防止)」「スケジュール管理(クリティカルパスの特定)」「コミュニケーション管理(関係者間の情報伝達)」など、プロジェクトを進めるうえで必要な管理項目と、実務での考え方を学びます。
  • 検討漏れを防ぐ「案件概要確認点」:
    プロジェクトの初期段階で確認しておくべき項目をチェックリストで整理し、関係者間の認識のずれや検討漏れを減らすための進め方を学びます。

Structure(組織)、Cost(費用)、Time(時間)の3つのプロジェクトマネジメント管理項目が相互に関係することを示した図。

Scope(目的)、Communication(伝達)、Risk(危険)、Quality(品質)、Procurement(調達)の5つのプロジェクトマネジメント管理項目を示した図。

第6回:サイトリニューアルのタスク構造とWBSの理解―手戻りを防ぐロードマップ

Webサイトリニューアルをテーマに、さまざまな工程やタスクの関係を整理し、長期にわたるプロジェクトを進めるためのWBSの作成・運用方法を学びます。

  • リニューアルのタスク構造の把握:
    要件定義、IA設計、デザイン、実装、テスト、データ移行など、サイトリニューアルに必要なタスクと、それぞれの依存関係(前提条件)を整理して理解します。
  • WBSの作成と運用:
    「担当者」「開始・終了日」「成果物」を明確にしたWBSを作成し、進捗に応じた更新やリスケジュールの判断など、実際のプロジェクトでWBSを運用するための方法を学びます。

WBSを作成するメリットとして、「工数見積が可能になる」「進捗管理が可能になる」「スコープが明確になる」の3点と、WBSの作成例を示した図。

「個人任せ」にしない―高いコンサルティング品質を組織的に育てる仕組み

どれほど充実したカリキュラムがあっても、学んだ内容が個人の中だけに留まっていては、組織全体の業務に生かしていくことはできません。

そこでBAでは、この分科会を単なる「聴くだけの座学」にせず、学んだ内容を実務や組織に還元していくための仕組みを取り入れています。

実務直結のアウトプット:学んだ内容を「自分の担当案件」に置き換える

本分科会では、毎回の講義後に「自分が今担当している案件で、この知見をどう活かし、どのような提案ができるか」をアンケートで言語化してもらっています。

「研修用の架空のお題」でその場限りのワークを行うのではなく、学んだ各種テンプレートや分析手法を「目の前のお客さまのためにどう使うか」に置き換えて考えることで、インプットした内容を日々のコンサルティングやディレクションに生かすことを目指しています。

生成AIを活用したナレッジの資産化

分科会で得られた知見や、受講者が考えた活用方法は、個人の中だけに留めず、組織で共有しています。

すべての講義を録画・文字起こしし、Geminiなどの生成AIを活用して要約メモを作成しています。これらを「NotebookLM」などで共有することで、分科会に参加していないメンバーも後から内容を確認し、必要なときに活用できるようにしています。

データドリブンなカリキュラム改善

分科会の内容そのものについても、受講者の声をもとに継続的な改善を行っています。
毎回の講義後には、満足度・難易度・スピード・実務適用性などの定量評価に加え、自由回答によるフィードバックを収集し、次回以降の内容や進め方の見直しに活用しています。

現在、全体の満足度は5点満点中4.17となっており、受講したメンバーからは、

  • 「これまで実務の中でバラバラに存在していたマーケティング、デザイン、PMの知識が、戦略マップとWBSという道具によってつながった」
  • 「顧客の『なぜ動かないのか』という心理を徹底的に掘り下げる重要性を知り、明日からのクライアントワークへの視座が高まった」

といった声も寄せられています。
こうしたフィードバックをもとに、分科会そのものも継続的に見直しています。

満足度や難易度などの定量評価と、自由回答による定性フィードバックを含む、分科会受講者アンケートの構成を示した図。

全社的な品質一貫性:CS担当者も含めた共通理解

この分科会には、直接案件を担当するコンサルタントやディレクターだけでなく、お客さまからの問い合わせに対応するCS(カスタマーサクセス・サポート)担当者も参加しています。

マーケティングや戦略設計、プロジェクトマネジメントなどの考え方を共有することで、自分の担当領域だけでなく、その前後でどのようなことが行われているのかを理解する機会にもなっています。職種を越えて共通の視点や言葉を持ち、お客さまの課題をより広い視点で捉えられるようにすることも、この分科会で目指していることの一つです。

まとめ:戦略と実装をつなぐために、組織で学び続ける

BAでは、戦略から実装までをつなげて考えられる人材を育てるため、職種や担当領域を越えて学ぶ「次世代コンサルタント育成分科会」を実施しています。本記事では、その全6回のカリキュラムと、学んだ内容を実務や組織に還元するための取り組みをご紹介しました。

マーケティングの基本や戦略設計、リサーチ、見積もり、プロジェクトマネジメント、WBSと、それぞれは異なる領域に見えます。しかし実際のプロジェクトでは、これらは互いにつながっています。

顧客の課題を捉えて戦略を考えること、その戦略を実行するための作業やコストを整理すること、さらに多くの関係者と認識を合わせながらプロジェクトを進めること。それぞれの工程だけでなく、その前後のつながりまで理解しておくことで、自分の担当領域だけでは気づきにくかった課題や、次に必要なアクションも見えやすくなります。

こうした知識や考え方を個人だけのものにせず、職種を越えて共有し、実際の案件にどう生かせるかを考える機会をつくることも、BAが大切にしていることの一つです。

「戦略はあるものの、具体的な施策や実装につなげられていない」「プロジェクト管理や見積もりの進め方に課題を感じている」「Webサイトのリニューアルをどのように進めればよいか分からない」といった課題がありましたら、ぜひBusiness Architectsにご相談ください。

戦略の整理から施策の実行、プロジェクトマネジメントまで、課題や状況に合わせてご支援します。