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最速・安心!XServer VPSで始めるDify×RAG環境構築ガイド

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長澤マーケティング&セールスグループ(ビジネス・アーキテクツ)

業務アプリケーションの開発会社でプログラマーとしてキャリアをスタートし、SE・PMの経験を積みました。2007年に大手Web制作会社へ転職し、グループ会社横断で利用する基幹システムの設計・開発および周辺システム連携のプロジェクトを推進しました。2018年にビジネス・アーキテクツへ転職し、エンジニア部門や情報システム部門の責任者を務め、現在はセールス&マーケティンググループに所属しています。

ChatGPTをはじめとする生成AIの活用が進む中、企業や個人が自社データを活かしたAIチャットボットの導入を検討する機会が増えています。中でも注目を集めているのが、外部データを活用してより正確な回答を生成できる「RAG(Retrieval-Augmented Generation)」の仕組みです。

本記事では、オープンソースの生成AIアプリケーション開発基盤「Dify」と、コスパと導入スピードに優れた「XServer VPS」を組み合わせ、最短・安全にRAG環境を構築する方法を解説します。

最速・安心!XServer VPSで始めるDify×RAG環境構築ガイド

RAGとは?なぜ今注目されているのか

RAG(Retrieval-Augmented Generation)は、生成AIに外部のナレッジデータを組み合わせて、より信頼性の高い回答を出力する手法です。具体的には、ユーザーの質問に対し、まず関連する情報を検索(Retrieval)し、その情報をもとにAIが自然な文章を生成(Generation)します。

ユーザーがAIチャットに質問を送信し、外部のナレッジデータベースと大規模言語モデル(LLM)を通じて回答が生成されるプロセスを示す概念図。プロセスは以下のステップで構成されています:1.ユーザーからAIチャットへの質問、2.外部ナレッジデータへの検索、3.検索結果の取得、4.質問と検索結果をLLMに送信、5.LLMによる回答生成、6.ユーザーへの回答提供。

上記概念図に示す通り、このプロセスにより、社内FAQやマニュアル、製品仕様書といった独自文書をRAGの外部ナレッジデータとして活用することで、社内向けチャットボットやカスタマーサポートAIがより的確な応答を行えるようになります。

Difyとは?ノーコードで使える生成AIプラットフォーム

Difyは、ノーコードでチャットボットやAIアプリケーションを構築できるオープンソースのプラットフォームです。特徴は次の通りです。

  • ノーコードで直感的なチャットボット構築が可能
  • 外部APIや検索エンジンとの統合が容易
  • PDF、Word、CSVなどさまざまな形式のドキュメントをデータソースとして利用可能
  • オープンソースなのでカスタマイズ性が高い

GUIベースの管理画面から学習データの登録やチャットボットの設定ができるため、エンジニアでなくても操作可能です。

Difyの構築において「XServer VPS」を選ぶ理由

セキュリティポリシーがしっかりしている企業では、そもそもクラウド版の導入ができないことも多いと聞きますが、自社のポリシーに則った環境を安価で構築できます。
サーバの初期設定も、簡単なステップで完了できる仕組みとマニュアルが用意されており、もし躓いてしまっても、Xserverの公式サポートに問い合わせれば丁寧に対応してくれます。実際に何度か問い合わせをしましたが、解決するまで親身になって対応をしてもらえました。
「試してみたいけどクラウド版の無料Sandboxプランでは十分な検証ができない」「セキュリティ設定が心配で踏み切れない」などでお悩みの方にも、XServer VPS版はおすすめです。
以下のXServer VPSの特長も、Difyの構築において重要な理由となります。

● コストパフォーマンスの良さ

XServer VPSは国内データセンターを使用しており、低価格で高性能な環境を提供しています。特に月額1,000円台から使えるプランでもDifyを動作させることが可能です。

● 専用アプリイメージの存在

XServerはDify専用テンプレート(アプリイメージ)を提供しており、GUI操作だけで簡単に環境構築が可能です。初心者でも迷わず設定できます。

● 公式サポートによる安心感

2024年からXServer公式が「Dify構築支援アプリ」をVPSに標準搭載し、誰でも簡単に構築できるようになりました。

● 自由度の高いroot権限付き環境

VPSではroot権限を持てるため、Dockerのインストールやポート設定など自由に行えます。これはDifyのようなDockerベースのアプリケーションには非常に重要なことです。

● 安定性とセキュリティ

国内データセンター運営による低遅延・高安定性。SSH接続やファイアウォール設定も可能で、業務用途でも安心して利用できます。

● クラウド版Difyとの比較〜VPS利用のメリット〜

クラウド版Difyも即導入できる点は良いですが、企業で導入することを前提に評価すると、セキュリティ面などいくつかの点で、VPS利用の方がメリットが多いです。

Xserver VPS版とクラウド版Difyの比較。初期費用はXserver VPS版が無料、クラウド版Difyはプラン次第。月額費用はXserver VPS版が1,000円台から、クラウド版Difyは10ドルから100ドル以上。カスタマイズ性はXserver VPS版が高く、クラウド版Difyには制限あり。セキュリティ面ではXserver VPS版が自社管理で優れ、クラウド版Difyは外部依存。導入スピードは両方とも最短即日

Dify × RAG環境の構築4ステップ

RAGに対応したAIチャットアプリなどの開発環境を構築するためのステップを、XServer VPS版のDifyを利用する想定でご紹介します。
環境構築ができてしまえば、あとは生成AIを活用した業務改善のアイデアを形にしていくステップに進めます。

ステップ①:XServer VPS契約とテンプレート選択

  • XServer VPSにアクセスし、「サーバー作成」から「Dify」テンプレートを選択。
  • プランは最低限2GB以上のメモリを推奨。
  • OSは Ubuntu が一般的。

ステップ②:SSH接続と初期設定

  • 管理画面から発行されるIPアドレスと鍵情報を使いSSH接続。
  • 必要に応じてrootパスワード変更やファイアウォール設定。

ステップ③:Dify起動と初期ログイン

  • Dockerコンテナが起動していれば、ブラウザでhttp://[IPアドレス]:portにアクセス。
  • 初期ユーザー登録後、管理画面にログインしてプロジェクト作成開始。

ステップ④:RAG機能の有効化

  • Difyの「データソース」機能を利用し、PDF、CSV、Webページなどから知識ベースを作成。
  • 日本語対応のLLMモデルとAPIキー設定。

公式のマニュアルでは、より詳しく解説されていますので以下も参照ください。

ユースケース紹介:A社の場合

以下のような形でDify × RAGを活用しています。

課題と背景

A社は従業員数500名規模の製造業企業で、多くのシステムを利用しています。これらのシステムに関する利用ルールや操作方法について、情シス部門が4名体制で対応していました。しかし、似たような質問が多く寄せられることでリソースが圧迫され、メンテナンス業務にも支障をきたし始めていました。この状況は軽微なミスの増加にもつながり、悪循環に陥っていました。

解決策

A社はRAG技術を活用したチャットボットを開発し、社内問い合わせの一次回答を自動化することにしました。
チャットボットには、社内マニュアルと過去の問い合わせ履歴(実際の問い合わせとその回答)がナレッジとして組み込まれ、自社独自ルールに基づいた回答が可能となります。

実施プロセス

  • 社内マニュアルや過去の問い合わせ履歴からナレッジベースを作成。
  • チャットボットによる自然言語処理機能を導入。
  • 社員が自然言語で質問すると、自動で関連情報から回答を提示できる仕組みを整備。
  • 試験導入後、フィードバックをもとに改善。

結果と効果

導入後3ヶ月ほどで利用が拡大し、それまで月間200時間ほど掛かっていた問い合わせ対応時間が約半分の100時間程度に減少しました。

その結果、情シス部門は、メンテナンス業務にも十分な時間を割けるようになり軽微なミスが減少、新しい改善施策にも着手できるチームへと変貌しました。
また、情シス業務の質の向上により、一般社員の情シスへの満足度も向上しました。
さらに、ChatGPT API費用を含めても月額5,000円以内で運用できており、大幅なコスト削減を実現しています。

今後の展望

A社では、今後もノーコード運用による情シス部門への負担軽減や社員自身による改善提案・プロンプトチューニングなど、更なる効率化を目指しています。

まとめ:まずは小さく始めてみよう!気軽にご相談ください

本記事では、XServer VPS上にDifyとRAG環境を簡単に構築する方法をご紹介しました。
生成AI導入にはハードルがあるように思われがちですが、適切なツールと手順を踏めば誰でも始められます。

DifyやRAG導入について不安な方もご安心ください。ビジネス・アーキテクツでは、導入前の無料相談から構築代行までサポートしています。「どこから手を付ければよいか分からない」「自社データとの連携方法が知りたい」といったお悩みにも丁寧にお答えします。