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生成AIで変わる検索行動とコンテンツ評価──ねぎお社長に聞く、今こそ向き合うべきSEOの本質

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BAsixs編集部

日々の業務の中で「あたりまえ」をアップデートできた取り組みを発信しています。

近年、生成AIの普及によりコンテンツ制作やユーザーの検索行動に大きな変化が生じています。AIの普及に歩幅を合わせるように、Google検索品質評価ガイドライン(以下、品質評価ガイドライン)は段階的にアップデートされています。

今回は、品質評価ガイドラインとの向き合い方、そして生成AIでコンテンツマーケティングがどう変わるのかについて、SEOを中心とするWebマーケティングの専門家サクラサクマーケティング株式会社の根岸雅之社長(以下、ねぎお社長)に、Business Architectsのデザイン&コミュニケーションサービス事業部 事業部長の小山がお話を伺いました。

生成AIで変わる検索行動とコンテンツ評価──ねぎお社長に聞く、今こそ向き合うべきSEOの本質

インタビューした人

プロフィールアイコン(イラスト):デザイン&コミュニケーションサービス事業部 事業部長 小山
小山デザイン&コミュニケーションサービス事業部/事業部長(ビジネス・アーキテクツ)

toCサービス、toBサービス拠点マネジメントを通してサービスの複数拠点の運営管理を担当。またtoBサービスの企画立案などで企業向けサービスの企画・開発を行う。Business Architectsには2019年にジョイン。大規模サイトのアカウントマネジメントや金融系サイトのプロジェクトマネジメントなど多くのプロジェクトを手掛ける。

インタビューを受けた人

  • プロフィールアイコン(写真): サクラサクマーケティング株式会社 ねぎお社長 (根岸雅之)様
    ねぎお社長 (根岸雅之)様 取締役社長 COO(サクラサクマーケティング株式会社)

    1980年生まれ。大学卒業後、一貫して、広告・マーケティング業界に身を置く。営業をはじめ、SEOコンサルティング、新規事業開発、自社マーケなど幅広い領域を経験し、2015 年に取締役社長に就任。SEOコンサルタントとして大規模サイトから新規サイトまで、売上向上に繋がるコンサルティングを武器に200サイト以上の実績。ねぎお社長のSEOチャンネルをはじめ、YouTube、メルマガ、SNS、書籍を通じて情報発信。

生成AI普及によるコンテンツマーケティングへの影響

生成AIの急速な普及により、ビジネスシーンから個人の行動までさまざまな変化が生じています。コンテンツマーケティングを取り巻く環境の変化と、その影響について聞いていきます。

生成AIがコンテンツマーケティングを取り巻く環境を変化させる

小山:AIの普及が進む中で、コンテンツマーケティングの現場ではどのような変化が起きていると感じますか?

ねぎお社長:2023年11月にChatGPTが一般公開されて以降、これまではGoogle検索を使用していた場面で、AIを選択するユーザーが増えていることは間違いないでしょう。特に若い世代を中心に、従来のキーワード検索からより自然な対話型の検索へとシフトしていると感じています。また、GoogleのAI Overviewsのように検索エンジンとAIが結びついたことで、ユーザーは意図せずにAI検索を使用する機会が増えています。

ただ、こうした影響はまだ序の口で、コンテンツマーケティングを取り巻く状況はさらに複雑になっていくと考えられます。

小山:最近は「検索はもう使われなくなる」といった議論もありますが、そのあたりについてはどのように見ていらっしゃいますか?急速に変化する中で気になるのが、「そもそもGoogle検索が今後も使われ続けるのか?」という視点です。

「ググる」時代から「タグる」時代になり、そして生成AIを活用する時代に突入しました。すでにiPhoneのSafariではChatGPTと連携することで、検索結果がGoogleではなくChatGPTに置き換わったりもしています。従来型の検索エンジンは今後も変わらず使われ続けるのでしょうか?

ねぎお社長:そういった議論はよく見聞きしますが、個人的には使われなくなることはないと思っています。従来型の検索エンジンとAIにはそれぞれの特性があり、どちらが優れているというのではなく、用途によって使い分けられると考えているからです。

検索エンジンが、Web上の情報に基づいて最も関連性の高いリンクを提示する一方で、AI検索は質問に対する情報を解釈・要約したうえで、回答を生成します。正確性においては従来型の検索が優れている場合が多いのですが、利便性や理解のしやすさではAI検索が勝る場合もあります。また、従来型検索は最新情報へのアクセスが優れていますが、AI検索はそれまでの対話履歴を考慮して文脈を理解できることが強みです。

例えば、今開催されている大阪万博について、チケットの購入方法や会場へのアクセス方法など知りたいことが明確な場合は、検索エンジンのほうが正確な情報を得られます。一方、「何がすごいのか」「どういうものがあるのか」といった漠然とした興味に対しては、幅広い情報提供をできるAIのほうがユーザーの「知りたい」というニーズを満たせるかもしれません。

検索エンジンとAIのどちらにおいても、ユーザーにとって有益なコンテンツの定義や特徴は変わらないでしょうから、従来型の検索エンジンが完全になくなるということはないと考えています。

写真:ねぎお社長が話している様子

コンテンツマーケティングの指標「Google検索品質評価ガイドライン」

コンテンツ制作時の指標となる「Google検索品質評価ガイドライン」(以下、品質評価ガイドライン)のAI対応状況や最新アップデートなど、コンテンツマーケティング担当者が理解しておくべきポイントを解説していただきました。

コンテンツマーケティングにおける品質評価ガイドラインの位置づけ

小山:コンテンツ制作に携わる立場として、品質評価ガイドラインはどこまで意識すべきものと捉えるべきでしょうか?

ねぎお社長:コンテンツマーケティングにおいて品質評価ガイドラインは、コンテンツを制作する際の重要な指標となるものです。そもそもSEOに対して多くの人は、「アルゴリズムや上位表示の方法など不明な点が多い」など、ブラックボックスのようなイメージをもっています。ですが実際にはそうではなく、Googleはガイドラインやルールを公開し、積極的に発信しています。その中でも品質評価ガイドラインは、「適切なコンテンツとはどのようなものか」をGoogleが明確に示したものです。

元々はGoogle内部の指標として作られたものですが、現在は良質なコンテンツ制作を促進する目的で公開され、コンテンツの制作時に品質評価ガイドラインを参照することをGoogleは推奨しています。

SEOの知識がないと理解しづらい内容もありますが、コンテンツ制作に関わるなら基本原則としてどのようなものがGoogleに評価されるのか常に意識することが望ましいですね。ただ、品質評価ガイドラインは頻繁に更新されるので、すべてのアップデートを理解しながらコンテンツに反映させる作業はかなり大変です。リソースやクオリティの担保の面からいえば、SEOの専門家のサポートを受けることも一つの方法だと思います。

写真:小山がねぎお社長と話している様子

GoogleのAI対応状況

小山:GoogleはこれまでAIの進化に対してどのようにアルゴリズムや評価基準を変化させてきたのでしょうか?

ねぎお社長:Googleは、AIの動向に対応するようにアルゴリズムや品質評価ガイドラインを段階的にアップデートしています。

アルゴリズムの面では、2021年から「プロダクトレビューアップデート(2023年にレビューアップデートに名称変更)」という、AIを使った口コミやレビューの投稿行為への対策として、実体験に基づいた本物のレビューかどうかを評価するアルゴリズムがアップデートされました。元々は英語圏のみで実装されたのですが、段階的に何度もアップデートされ、現在ではコアアルゴリズムアップデートに組み込まれています。

また、品質評価ガイドラインの話でいうと、ここ数年で最も大きなものは2022年12月のアップデートです。このときの目玉は「E-A-T※」から「E-E-A-T」への移行でした。冒頭に追加されたEは「Experience(体験)」を意味し、コンテンツの信頼性を測るうえで「体験」という概念が重視されるようになったんです。つまり、人にしかできない経験や体験に基づいた情報がより高く評価されるようになりました。

その後、2024年3月の更新ではスパムポリシーに新たな項目が追加されました。具体的には、「期限切れドメインの不正使用」「サイト評判の不正使用」「大量生成されたコンテンツの不正使用」の3点です。スパムポリシーとは、サッカーでいうとレッドカード対象となる重大なファウルのことで、実際に追加されたスパムポリシーに違反する多くのサイトがGoogleのインデックスから削除されました。

※E-A-T(Expertise:専門性、Authoritativeness:権威性、Trustworthiness:信頼性)

小山:スパムポリシーやフィラーコンテンツなど、直近の変更には強いメッセージ性も感じられますが、今回のアップデートはどのように受け止められていますか?

ねぎお社長:2025年1月にあった品質評価ガイドラインのアップデートでは、フィラーコンテンツの概念が規定され、ペナルティ基準が明確に示されましたね。フィラーコンテンツとは、既存のコンテンツの言い回しや表現だけを換えて制作したコンテンツを指し、AIを使うと容易に生成できてしまいます。これは他者が制作したコンテンツをあたかも自分が用意したかのように見せる行為です。スパムポリシーやフィラーコンテンツの規定によって、努力や独自性がないコンテンツを明確に不適切と言及したことが、今回のアップデートの重要なポイントだと考えています。

写真:ねぎお社長が小山と話している様子

生成AIとコンテンツマーケティングの新たな関係性

生成AIとコンテンツマーケティングを共存させるには、どのような点に注意すべきなのかをお聞きしました。

生成AIによるコンテンツ制作の注意点

小山:コンテンツ制作に生成AIを使う際、依存と活用の境界線はどこにあると考えるべきでしょうか?

ねぎお社長:明確な境界線を定めるのは難しいとは思いますが、コンテンツ制作の本質を考慮すると、すべての制作プロセスをAIに任せるやり方は「依存」であり、NGです。

例えば、順位を上げたいキーワードに対して「こういうコンテンツを作れば上位表示を狙いやすいから、こういう構成が必要だよね」という従来の古いコンテンツ制作は、そのままAIにやらせてしまえば正直簡単にできてしまいます。

ですが、こういうやり方は結局Googleが重視している「ユーザーにとって有益かどうか」という思想に沿っていないですよね。人がまったく関与せずAIに依存して制作されたコンテンツは独自性がなく、不適切だと判断される可能性もあるでしょう。

それに対して、制作プロセスの一部で人の思考を手助けするような使い方や、ユーザーに有益な価値提供をするために必要なプロセスでAIの助けを借りるやり方は「活用」だと思います。

小山:具体的にAIをうまく活用できる領域や工程は、どのあたりだとお感じになりますか?

ねぎお社長:例えば、自社が保有するユーザーの属性や特徴、ノウハウなどに基づいてユーザーにとって有益な構成をAIで作成する、といった使い方はAI活用がしやすいのではと思います。

自社しかもちえないデータやノウハウを活かせる領域であれば、AIと独自性を掛け合わせたハイブリッドな活用ができると考えています。

結局、コンテンツを作る道具が人の手からAIへと変わったとしても、コンテンツ制作の本質的な部分は変わりません。ユーザーが何を知りたがっているのか、それに対してどのような価値提供ができるのかを考え、独自性や信頼性を担保することが重要です。

変わりゆくAI時代のコンテンツマーケティング

小山:最後に、AI時代における「良質なコンテンツ」とはどういうものだとお考えでしょうか?

ねぎお社長:AI時代のコンテンツマーケティングにおいては、従来のSEO対策に加えてAI Overviewsにも対応するために、AIが理解・参照しやすいコンテンツ制作が求められるでしょう。例えば、明確な構造化データの提供や、AIが理解しやすい論理的な文章構成などが重要になってくると予想されます。ただし、これらはあくまでも最適化であり、適切なコンテンツの基準自体は何ひとつ変わっていません。今後も「ユーザーのために価値ある情報を提供する」という、コンテンツマーケティングの根本の部分を見失わないことが良質なコンテンツを作るうえで重要です。

写真:オフィスエントランスをバックにねぎお社長と小山の集合写真

編集後記:生成AI時代に求められるSEO視点やコンテンツ戦略を、今あらためて見直してみませんか?

Googleは、AIの普及に対応する形で評価基準や制作における規制などを強化していますが、コンテンツ制作の原則となる「ユーザーにとって有益なコンテンツ」の本質は変わっていないということがわかりました。次回のねぎお社長インタビュー記事「AI検索時代を勝ち抜く!コンテンツマーケティングの施策とは」では、コンテンツ制作への影響やコンテンツマーケティング担当者がもつべき視点について掘り下げていきます。

企業の課題や目的に合わせたコンテンツ設計・改善のご相談を承っています。ご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。