この記事を書いた人
- 山本セールス＆マーケティンググループ/マーケター（ビジネス・アーキテクツ）
South Carolina州 Winthrop University 卒業（心理学）。 広告代理店にて自動車メーカーの商品広告・マーケティング業務に携わった後、インターネットベンチャー、CRM・DRMエージェンシーにて、化粧品、マンション販売・管理、銀行、IT事業会社など様々な企業のCRM戦略策定やサイト／アプリ／メール／DMなどお客さま接点全体のコミュニケーションの最適化など、マーケティングコミュニケーション×テクノロジー×クリエイエティブ三位一体の実践的マーケティングにこだわり、多岐に渡る業務に従事する。
テクノロジーの進化と消費者ニーズの多様化が加速する現在において、マーケティング戦略も常にアップデートが求められます。本コラムでは、AI、メタバース、音声検索、動画マーケティングといった最先端のトレンドをピックアップ。具体的な事例を交えながら、各トレンドの活用法と未来について考察し、読者の皆さまのマーケティング戦略に役立つヒントを提供します。
1：AIマーケティング
AI技術の進化は目覚ましく、マーケティング分野においてもその活用が急速に広がっています。近年では、文章や画像などを生成する「生成AI」に特に注目が集まっており、ビジネスにおける活用が始まっています。
AIを活用することで、データ分析、顧客理解、コンテンツ生成、広告最適化など、多岐にわたる領域でマーケターを支援し、より効率的で効果的なマーケティング活動が可能になってきています。生成AIによって、これまで以上にパーソナライズされた顧客体験の提供や、クリエイティブなコンテンツの制作が容易になり、企業の成長を加速させる鍵となっています。
AIマーケティングとは？
AIマーケティングとは、人工知能（AI）技術を活用して、マーケティング活動を効率化・高度化することです。AIは、大量のデータを高速で処理・分析し、人間の能力を超える洞察を提供します。これにより、企業は顧客一人ひとりに合わせた最適なマーケティング施策を実行し、顧客満足度や売上向上に繋げることができます。
AIマーケティングのメリット
AIマーケティングには、以下のようなメリットがあります。
- データ分析の効率化：
大量の顧客データを高速で分析し、有益な情報を抽出できます。 - 顧客体験のパーソナライズ：
顧客の属性や行動履歴に基づいて、最適なコンテンツやオファーを提供できます。 - 広告配信の最適化：
広告のターゲット設定、配信タイミング、クリエイティブなどを最適化し、広告効果を最大化できます。 - 業務の自動化：
顧客対応やレポート作成などの業務を自動化し、マーケティング担当者の負担を軽減できます。
企業におけるAIマーケティングの事例
Amazon
Amazonで商品を見ていると、「あなたへのおすすめ」や「この商品を買った人はこんな商品も買っています」といったリコメンデーションが表示されます。Amazonのリコメンデーションエンジンは、世界で最も洗練されたレコメンドシステムの1つと言われており、その中核をなすのは、高度な機械学習アルゴリズムです。
Amazonのリコメンデーションは、主に以下の3つの要素に基づいて生成されます。
- 購買履歴と閲覧履歴：
過去に購入または閲覧した商品から、利用者が好みそうな商品を予測します。 - 商品の関連性：
同じ商品を購入した他のユーザーの購買履歴や、商品の属性情報（カテゴリー、ブランド、価格帯など）を分析し、関連性の高い商品を抽出します。 - ユーザーの行動パターン：
商品の評価、レビュー、ウィッシュリストへの追加など、ユーザーのさまざまな行動パターンを分析し、個々のユーザーに合わせたおすすめを生成します。
※参照：
【AWS グラレコ解説】「あなたへのおすすめ」はどう生成するの ? Amazon Personalize で簡単に実現する方法をグラレコで解説. builders.flash☆ - 変化を求めるデベロッパーを応援するウェブマガジン. AWS. (参照 2025-05-28)
Netflix
Netflixを開くと、まるで自分のために用意されたかのような作品がずらりと並びます。これは、Netflixが高度なアルゴリズムを駆使することで、視聴者一人ひとりの好みに合わせたリコメンデーションを提供しています。
Netflixのリコメンデーションは、ユーザーの視聴履歴、評価、検索履歴、視聴時間帯、デバイスなど、膨大なデータを分析することで好みの作品を提案します。
- 視聴履歴と評価：
過去に視聴した作品や評価した作品を分析して、視聴者が好みそうな作品を予測 します。 - 作品の属性情報：
ジャンル、監督、出演者、公開年など、作品に関するさまざまな情報も分析されています。例えば、特定の俳優が出演する作品をよく視聴する場合、その俳優が出演する他の作品もおすすめとして表示します。 - 視聴傾向が似ているユーザー：
あなたと視聴傾向が似ている他のユーザーの視聴履歴も参考におすすめを提案します。 - 視聴時間帯とデバイス：
いつ、どのデバイスで視聴しているかも考慮されているようです。例えば、週末の夜にテレビで視聴することが多い場合、家族で楽しめるような作品がおすすめとして表示されることがあります。
※参照：
Netflixのレコメンド機能のご利用方法 | Netflixヘルプセンター. Netflix - Netflixヘルプセンター. Netflix. (参照 2025-05-28)
今後は、より高度なAI技術の発展により、顧客一人ひとりのニーズや行動をリアルタイムで把握し、最適なマーケティング施策を自動的に実行できるようになるでしょう。また、AIは、クリエイティブなコンテンツ生成や、人間では思いつかないような斬新なマーケティング戦略の立案も支援できるようになるかもしれません。
BtoB企業におけるAIマーケティングの事例
「AIマーケティング」と聞くと、ECサイトやアプリなど、BtoC企業が中心なのでは？と思う方もいるかもしれません。しかし、BtoBマーケティングにおいてもAIを活用したさまざまな取り組みが進んでいます。
ソフトウェア企業や製造業企業などにおいても、顧客理解の深化、リード獲得の効率化、顧客体験の向上など、多岐にわたる領域でAIマーケティングが活用されています。
- リードスコアリングの高度化による営業効率の向上：
AIを活用したリードスコアリングシステムを導入し、企業規模や業種、売上など の企業特性を分析する「ファーモグラフィックデータ」や、見込み顧客の購買履歴・行動履歴など膨大なデータ分析に基づくスコアリングを通じて、営業担当者に優先度の高いリードや顧客を提示することで、営業活動の効率化に貢献することができます。 - パーソナライズされたコンテンツ配信による顧客エンゲージメントの向上：
AIの活用により、顧客の興味関心や課題に合わせて、最適なコンテンツ（メール、Webサイトのパーソナライズなど）を配信することで、顧客エンゲージメントを向上させ、Webサイトの滞在時間や資料ダウンロード数を増加させることができます。 - チャットボットによる顧客対応の効率化と顧客満足度の向上：
AIを活用したチャットボットを導入し、顧客からの問い合わせに24時間対応します。よくある質問への自動回答や、技術的な問題の解決支援などを行うことで、顧客満足度を高めることができます。 - 需要予測による在庫最適化：
AIを活用して、過去の販売データや市場動向などを分析し、需要を予測します。 これにより、在庫の最適化や機会損失の防止に貢献することができます。 - 品質管理と生産性向上：
AIを活用して製造ラインのデータを分析し、製品の品質をリアルタイムで監視します。異常を検知した場合には、自動的に修正を行うことで、品質の安定化と生産性の向上を実現することができます。
2：メタバースマーケティング
近年、メタバースの利用者が増加しています。総務省の令和5年版情報通信白書によると、世界のメタバースユーザー数は、2022年の年間約2億人から、2030年には約7億人まで拡大すると予測されており、新たなマーケティングチャネルとして注目されています。
メタバースを活用することで、仮想空間ならではの没入感のある体験を提供し、顧客とのエンゲージメントを深めることができます。
メタバースマーケティングとは？
メタバースとは、インターネット上に構築された3次元の仮想空間のことです。ユーザーはアバターを介して仮想空間内で活動し、他のユーザーとコミュニケーションを取ったり、イベントに参加したり、買い物をしたりすることができます。
メタバースマーケティングとは、企業がメタバースを活用して行うマーケティング活動全般を指しており、具体的には、仮想店舗の開設、バーチャルイベントの開催、仮想空間での広告配信などが挙げられます。
メタバースマーケティングのメリット
メタバースマーケティングには、以下のようなメリットがあります。
- 新たな顧客体験の提供：
現実では難しい体験を提供することで、顧客エンゲージメントを高めることができます。 - 顧客との深い関係構築：
アバターを介したコミュニケーションにより、顧客との親密度を高めることができます。 - グローバルなリーチ：
インターネットを通じて世界中の顧客にアプローチできます。 - データ収集と分析：
顧客の行動データを収集・分析し、マーケティング戦略の改善に役立てることができます。
企業におけるメタバースマーケティングの具体的事例
ナイキ（NIKELAND）
NIKELANDとは、オンラインゲームプラットフォーム「Roblox」内にある、ナイキのバーチャル空間です。ここでは、さまざまなミニゲームやアクティビティを通じて、ナイキ製品やブランドの世界観を体験することができます。NIKELANDは、ユーザーがより深くブランドに関わり、エンゲージメントを高めることができるだけでなく、ナイキのファン同士が繋がるコミュニティ形成の場として機能しています。
BEAMS（バーチャルショップ）
ファッション業界のリーディングカンパニーであるビームスが、バーチャルマーケットに仮想店舗を出店しています。ビームスで実際に販売されているアイテムを3Dモデル化し、バーチャル空間で販売するだけでなく、お客さまはアバターを操作して店内を自由に歩き回り、気になる商品を手に取って詳細を確認したり、アバターに3D衣装を試着させることができます。
鏡の横に表示される調整パネルを操作することで、衣装のサイズや角度を細かく調整し、自分にぴったりのコーディネートを見つけたり、試着したスタイルでアバターがランウェイを歩くモーションを楽しむことも可能です。
バーチャルショップでは、ビームスのスタッフがアバターとして登場し、接客を行っています。お客さまは、スタッフにコーディネートの相談をしたり、商品の詳細について質問したりすることができます。
バーチャルショップでは、ファッションショーやトークショーなど、さまざまなイベントが開催されており、お客さまは自宅にいながらイベントに参加し、他のユーザーと交流することも可能です。
※参照：
世界最大のVRイベント『バーチャルマーケット2023 Winter』に 7度目となるBEAMSメタバース店が出現！. BEAMS. (参照 2025-05-28)
メタバースは今後、技術がさらに進化し、よりリアルで多様な体験を提供できるようになるでしょう。またメタバースは、ECサイト、イベント、広告など、さまざまなマーケティング活動のプラットフォームとして活用されるようになるのではないでしょうか。
3：音声検索最適化
スマートスピーカーや音声アシスタントの普及に伴い、音声検索の利用が急速に拡大しています。企業は、音声検索に最適化されたコンテンツを提供することで、新たな顧客層にリーチし、顧客との接点を増やすことができます。
音声検索最適化とは？
音声検索最適化（VSO：Voice Search Optimization）とは、音声検索エンジンがWebサイトのコンテンツを理解しやすくし、検索結果の上位に表示されるように最適化することです。音声検索は、テキスト検索とは異なり、自然な会話に近い言葉で検索される傾向があります。そのため、音声検索に最適化されたコンテンツを作成するには、テキスト検索とは異なるアプローチが必要です。
音声検索最適化のメリット
音声検索最適化には、以下のようなメリットがあります。
- 新たな顧客層へのリーチ：
スマートスピーカーや音声アシスタントの普及により、新たな顧客層にアプローチできます。 - ローカル検索での優位性：
音声検索は、ローカル検索と相性が良く、地域ビジネスにとって重要です。 - 顧客体験の向上：
音声検索に最適化されたコンテンツは、顧客にとって使いやすく、満足度を高めます。
企業における音声検索最適化の事例
食べログ
Google ビジネス プロフィールへの正確な店舗情報の登録（店名、住所、電話番号、営業時間など）、適切なカテゴリーの選択、高品質な写真や動画の追加、最新情報の投稿、口コミ投稿の促進や返信を行うことで、地域名や料理名などのキーワードで音声検索に対応しています。
ホテル三日月
龍宮城スパホテル三日月では、客室とフロントにAIスピーカー「Alexa」を導入し、宿泊客からの問い合わせ対応や館内案内を自動化しています。
宿泊客は、音声で館内施設やイベント情報、周辺観光情報などを手軽に取得できます。
これにより、フロントスタッフの負担軽減と、24時間対応可能な顧客サービスの提供を実現しています。
※参照：
龍宮城スパホテル三日月、全室にAIスピーカー導入、生成AIの組み込みや、スマートルームの試験導入も. トラベルボイス（観光産業ニュース）. トラベルボイス. (参照 2025-05-28)
今後は、音声検索の精度が向上し、より複雑な検索にも対応できるようになるでしょう。また音声検索は、ローカル検索だけでなく、商品検索や情報検索など、さまざまなシーンで活用されるようになるでしょう。
4：動画マーケティング
近年、動画マーケティングは企業のマーケティング戦略において欠かせない要素となっています。スマートフォンの普及や動画視聴プラットフォームの進化により、消費者はテキストや画像よりも動画コンテンツを好む傾向が強まっています。
動画マーケティングとは？
動画マーケティングとは、動画コンテンツを活用して商品やサービスの認知度向上、ブランディング、顧客獲得、顧客エンゲージメントの向上などを目的としたマーケティング手法です。
動画マーケティングのメリット
動画マーケティングには、以下のようなメリットがあります。
- 情報伝達力の高さ：
動画はテキストや画像よりも多くの情報を短時間で伝えることができます。 - エンゲージメントの向上：
動画は視聴者の感情を揺さぶり、共感や興味を引き出しやすい特性があります。 - SEO効果：
YouTubeなどの動画コンテンツを最適化することで、検索エンジンからの流入を増やすことができます。
企業における動画マーケティングの事例
株式会社ベルク
採用PR動画をYouTubeで公開し、企業の魅力を効果的に伝えています。
働くスタッフの姿や企業の理念をリアルに表現することで、視聴者の共感を呼び、応募者数増加に貢献しています。
※参照：
PR動画作成のコツとは？採用や商品PRでの活用事例を紹介. KAIZEN PLATFORM. (参照 2025-05-28)
トイザらス
トイザらスは、YouTubeでショート動画を積極的に活用し、おもちゃの紹介や遊び方などを発信しています。
子供たちの興味を引くような楽しい動画コンテンツは、多くの視聴者の支持を集めています。
※参照：
【2024年】動画マーケティングとSNS活用法｜事例6選・成功のポイント. テテマーチ株式会社. (参照 2025-05-28)
動画マーケティングは、ショート動画、ライブ配信、インタラクティブ動画など、さまざまな形式で活用され始めていますが、今後は動画コンテンツの制作技術が進化し、より高品質で多様な動画コンテンツが制作できるようになるのではないでしょうか。
進化するマーケティング：事例から学ぶ実践的活用
本コラムでは、AIマーケティング、メタバースマーケティング、音声検索最適化、動画マーケティングという最新のマーケティングトレンドを事例を交えて紹介しました。これらのトレンドは、テクノロジーの進化や消費者の価値観の変化に伴い、今後ますます重要性を増していくと考えられます。企業は、これらのトレンドをいち早く取り入れ、自社のマーケティング戦略に活かすことで、競争優位性を確立し、持続的な成長を実現することができるでしょう。
これらのトレンドは、相互に連携し、影響し合うことで、より大きなマーケティング効果を生み出す可能性があります。例えばAIは、メタバース空間での顧客行動を分析し、最適な商品やサービスを提案したり、動画コンテンツを自動生成したりすることができます。また音声検索は、メタバース空間での情報検索や商品購入を支援したり、動画コンテンツの検索を容易にしたりする上で有効です。
企業は、これらのトレンドを個別に捉えるのではなく、相互の関連性を理解し、統合的に活用することで、より効果的なマーケティング戦略を展開することができるのではないでしょうか。
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