世界に事業を展開している企業はもちろん、これから海外進出を考えている企業にとっても必ず制作しておきたいのがグローバルサイトです。グローバルサイトは、日本語サイトをただ翻訳すれば良いというわけではなく、海外の文化や商慣習に合わせた文言やデザイン、ニュアンスを考慮した、英語か らの書き起こしのライティングなど、日本語サイトの制作とは異なるポイントが多くあります。
ここでは、グローバルサイトを制作・構築する前に確認しておくべきポイントや、制作会社に依頼する際に準備しておくべきことのほか、制作会社の選び方についてご紹介します。
グローバルサイトを制作する前に確認しておくべきこと
グローバルサイトの実際の制作作業は、制作会社に依頼して進めることになります。できるだけスムーズに制作を進められるよう、事前に重要なポイントを押さえておきましょう。
各国の文化や商慣習を理解し、どう反映させるか
グローバルサイトが対象とするのは世界です。日本と世界では文化も商慣習も異なります。言葉の使い方や色使いに対する認識の違いなど、意外なところに文化の違いが表れるので、しっかりとグローバル基準に合わせる必要があります。
制作の途中で制作会社が気づいて指摘してくれることもあるかもしれませんが、基本的に制作会社は、業界の専門的な事情には明るくないことがほとんどです。自社の業界が各国でどのような状況なのかは、依頼側があらかじめ把握し、制作会社にきちんと伝えるようにしましょう。
現地法人の担当者は誰なのか
意外とできていないのが、現地法人の担当者との連携です。グローバルサイトを制作するのは本社でも、実際に運用するのは現地法人というケースが多く、その場合、現地のキーパーソンと連携がとれていないと後々のトラブルにつながってしまいます。
例えば、制作が完了した後、現地の担当者から「このようなデザインになるなんて聞いていない」「運用しにくいから変えてほしい」といったクレームが入ることもあります。このトラブルの原因は、コミュニケーション不足です。
現地のキーパーソンにしっかりと制作内容を共有し、できれば事前にプランの段階からある程度巻き込んで、いっしょに進めていくことが理想です。その場合、吸い上げた意見を反映する承認フローも、しっかり確認しましょう。
こういった現地法人への根回しは、制作会社側では当然行えません。依頼側が制作前にきちんと体制を整えておく必要があります。
CMSやサーバなど、環境はどうなっているのか
グローバルサイトを制作する前に、CMSやサーバといったWebサイトのインフラ環境を確認しておくとスムーズに進行します。実は、インフラ周りの環境はWebサイトによって異なっていることも珍しくなく、大規模なWebサイトほどその傾向が顕著です。
例えば、ヨーロッパの各国でWebサイトがあるとしましょう。この場合、イギリスやフランス、ドイツなど、各国のWebサイトを1つのCMSで管理していることもあれば、それぞれ別のCMSを使っていることもあります。
グローバルサイトを制作する上で、環境の違いは大きな影響を及ぼします。仮に、ばらばらのCMSを統合するとなるとインテグレーションコストもかかるので、予算にも影響が出てくるでしょう。後から「こんなはずではなかった」とならないよう、CMSやサーバの環境も事前に確認しておくと、制作をスムーズに進められます。
なお、これらの環境面については、制作会社側で現地法人のウェブマスター向けのアンケートなどで調査することも可能ですが、手間とコストがかかります。自社で調べられるのであれば、自社で対応するほうがいいでしょう。
制作会社に依頼するときに準備すべきこと
「確認しておくべきこと」を済ませたら、次は実際に制作を依頼する前の準備に移ります。先ほどの項目と一部重なるところもありますが、制作会社に依頼する際には、次の情報をまとめて伝えられるとスムーズです。
URL(ドメイン)の調査・準備
グローバルサイトを一から制作する場合、新たにURLを用意する必要があります。ところが、ここで思わぬ落とし穴が待っていることがあるのです。弊社がサイト制作を手掛けた、精密機器メーカー様の事例をご紹介します。
とある精密機器メーカー様は、台湾にWebサイトを作ろうと考え、制作の準備に入りました。日本の企業サイトのドメインは「.co.jp」が多いですが、台湾の場合、ドメインは「.tw」となります。当然、精密機器メーカー様はグローバルサイト用に「社名.tw」ドメインを取得しようとしました。
ところが、この「社名.tw」というドメインが、すでに他社に取得されていたのです。ドメインは基本的に最初に申請した人が「早い者勝ち」で取得できます。台湾には以前から精密機器メーカー様の代理店があり、その代理店が「社名.tw」を取得していたのです。
このケースは特に悪意があったわけではなく、たまたま関連会社が取得していただけだったので大きな問題にはなりませんでした。しかし、中には一般の方がドメインを取得してしまっており、ドメインの買い取りを持ちかけることになるケースや、所有している人に連絡がつかず、やむなく別のドメインを使うことになるケースもあります。
ほかにも、コーポレートサイトや商品情報サイト、キャンペーンサイトなどで明確な管理者がいない場合、作りっぱなしのまま放置され、ドメインやサーバなどの保守費用が膨大になっているケースもあります。そのような場合は、自社が持っているサイトのURLを洗い出して、棚卸が必要です。
グローバルサイトを制作する可能性があるのなら、ドメインは早いうちに取得し、整理しておくことが重要です。
ドメイン戦略については、次の記事で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
グローバルサイト構築におけるドメイン戦略のポイントは? | BAsixs(ベーシックス)
CMSの準備
各国の環境を把握できたら、グローバルサイトの設計に合わせてCMSの準備も進めましょう。先ほどもお伝えしたように、「同一地域のWebサイト間でCMSを統一するのか」「各国で別のシステムを使うのか」といった方針を、しっかりと決めておく必要があります。
CMSを統合するメリットは、長期的な運用コストが下がることや、ガバナンスが楽になることが挙げられます。
一方、短期的に見ると、CMSの統合には多大な改修コストがかかります。また、統合することで、ある程度各国のWebサイトの仕様が共通のものにならざるをえませんから、ローカルマーケティングの観点で不都合が生じる可能性もあります。
ローカルマーケティングでの不都合とは、例えば商慣習の違いへの対応です。
家電を例に挙げて説明すると、販売店を通して販売することが一般的な日本と、メーカーサイトでの直接販売が主流のアメリカでは、商慣習がまったく異なります。アメリカでは直販のためのCMSが必要ですが、日本法人のWebサイトで直販は必要ありません。このように、商慣習の違いがWebサイトの仕様にも影響を与えます。
日本とアメリカでWebサイトのCMSを単純に統合してしまうと、日本にも販売ページが存在することになってしまいます。事情を知らない販売店からすれば、「直販するなんて聞いてない!」ということになってしまうかもしれません。反対に、日本主導でCMSを統合すると、アメリカで「直販の仕組みが不十分」ということにもなりかねません。
このように、CMSの統合にはメリットもデメリットもあります。自社の状況をよく確認して、グローバルサイト制作前にしっかりと方針を定めておきましょう。
グローバルサイト構築に最適なCMSを検討中の方は、CMS比較表も合わせてご覧ください。
グローバル企業や、複数人・複数部署でサイト更新する担当者におすすめのCMS比較表2022 | BAsixs(ベーシックス)
運用チームの構築
グローバルサイトは、「制作して終わり」ではありません。当然ですが、制作した後に運用するチームが必要です。誰が運用を行うのか、関わる人を洗い出して、承認フローをチェックしておきましょう。
グローバルサイトはその会社が持つウェブサイト群の中の総本山とも言える重要な役割を担います。いつ、どの情報をどのように出すのかといった点を考慮し、正しく運用できるチームを事前に構築しておきましょう。
グローバルサイト制作に強い制作会社を探すときのポイント
事前の準備を終えたら、いよいよグローバルサイトの制作に入ります。最も重要なのは、グローバルサイトに強い制作会社を選ぶことです。
一見すると、グローバルサイトはコーポレートサイトと似ていますが、ここまでご説明してきたように、両者は似て非なるものです。仮に、国内のコーポレートサイトの制作に長けている制作会社でも、グローバルサイトの制作に強いかどうかは別問題なのです。
制作会社を選ぶポイントは、なんといっても過去の実績でしょう。自社と同じ規模や業界の会社を手掛けた実績があれば安心です。制作会社のWebサイト、あるいは問い合わせからグローバルサイトの制作実績をしっかりチェックしましょう。
制作実績に加えて、「どこまで担当したのか」という、制作範囲を確認することも大切です。Webサイトの制作だけを行う制作会社もあれば、プランニングから制作後の運用までを行う制作会社もあります。前者に運用を期待して依頼してしまうと、後からの運用が大変になるケースもあります。
まとめ
グローバルサイトを制作する際には、しっかりと事前準備をして臨むべきです。各国の文化や商慣習の把握、現地法人への根回しなど、コーポレートサイトの制作とは異なる準備が必要になります。
BAsixsでは、豊富なグローバルサイトの制作実績があり、幅広くお手伝いすることが可能です。グローバルサイトの制作を考えている方は、ぜひご相談ください。