今回は、19年もの間、Webデザインの現場で変化を見届けてきたBAsixsのシニアデザイナー・秋山 朋三が、サービスサイトにおけるUIとUXをどのように改善すべきかを解説します。

優れたUIとは何か? UIデザイナーが果たすべき役割とは?
よくある誤解として美しいUIが良いUIと思われがちですが、そうとも限りません。美的感覚は人により異なりますし、美しさが必ずしも重要ではなく、単純に見た目の印象だけでUIの良し悪しは測れません。
PCやスマートフォンの画面上のUIを例にすると「多くの人が同じように機能を認識して操作できる」「クリックやタップがしやすい」「アクションへのフィードバックがある」「情報量が多すぎない」などは、優れたUIの共通点となり得るでしょう。
また、「優れたUI」とは「UXを高めるUI」であると言えます。どのようなサービスなのか、その利用体験はどうあるべきか。そのための優れたUIはサービスの数だけあるのです。
つまり、UIデザイナーの役割は大きく2つあり、1つは、サービス内容やそこでの体験がどのようなものであっても共通して求められる「目的の達成しやすさと満足度を高めるUIの特性」を知って・身に付けて・実践すること。
もう1つは、サービスのコンセプトやビジネス目的、ユーザーのニーズを満たすのに最適なUIをかたち作ることです。
消費行動の変化に合わせたUXデザイン
今後は、人の消費行動の変化に合わせた体験設計がより問われる時代になるでしょう。「所有」より「利用」、「モノ消費」から「コト消費」と言われて久しく、だからこそ利用体験のデザインが重要だとされてきました。
次の時代の価値観は、「イミ消費」「トキ消費」などと言われています。若者を中心に「コト」が意味する「Why」や、「今ココでだけ」といった「When/Where」に価値を見出す傾向があります。
これらに共通するのは、自分以外の他者や社会との関わりの中に価値を見出そうとしている点です。ユーザーが「何を利用し」「何をするか」の先の「Why」や「When/Where」まで見据えたUXデザインが求められています。
UIとUXの関係性
UXは特定の行動の瞬間にのみ生まれるものではありません。サービスと出会う前〜サービスの利用中〜サービス利用後の全体を通した体験と、ユーザーの抱く感情・思考・行動、その結果の満足などが総じてUXです。繰り返し利用した場合の経験の蓄積もまたUXです。
UXは多くの要素から成ります。サービスのコンセプトやサービス設計そのもの、どのような機能を提供するか。また、ユーザーはサービスを通して、コンテンツそのものや、サービスを運用する企業のブランドイメージなどに接します。これらすべてがユーザーの状況や目的と関わり合って、ユーザーの中にUXが醸成されます。その中で、サービスにユーザーが五感を通して触れる接点・接面がUIです。あくまでUIはUXを構成する要素の一つであるため、UIのみがUXを決定づけることはありません。
サービスそのものが使いやすく便利な機能もあって、良質なコンテンツが揃っていたとしても、直接的な接点であるUIが良くないと台無しになってしまうケースもあります。つまり、優れたUIは良いUXを生む必須条件なのです。
サービスサイトにおけるUI改善の考え方
サービスのUIデザインの原則を決める
UI改善以前に、そのサービスのUIはどうあるべきかや、そのための必須条件・方法論などを確立して、いわば「UIデザインの原則」を決めることが重要です。ターゲットユーザーを定義し、一連のUXを把握した上で検討します。UIは常に、目指すUXを実現するために考えられなければなりません。
「UIデザインの原則」をデザインガイドラインなどに含めることで、関係者全員の意識やUI検討の視点を統一できます。つまり、目指すUIひいてはUXに向けた目線合わせが可能になります。
デザインガイドラインとは?作るときのポイントやその役割を解説 | BAsixs(ベーシックス)
改善点を明確にする
UIを改善するには、どこに問題があるか、どこをより良くできるかを明確にするところから始めます。そのためには調査が必要です。
その方法は大きく3つあります。それは、アクセスデータから調べること、専門家の視点から仮説を立てること、実際のユーザーの認知や行動で確かめることです。
- アクセスデータから調べる
Google Analytics などの解析ツールで、ページの遷移率やサイトが実際どう使われているかを測定し、問題点をあぶり出す方法です。そうすることで数値的なファクトが分かり、目標との照らし合わせが可能になります。 - 専門家の視点から仮説を立てる
UIデザインの知見のある人がユーザー目線でサイト全体もしくは主要な場面のUIをチェックし、問題を洗い出す方法です。特別なツールや調査設計が不要で、比較的低コストで実施できることが特徴です。 - ユーザーの認知や行動で確かめる
印象や使い勝手の観点で、ユーザーへのアンケートやインタビュー、ユーザーテストなどで実際にユーザーから声を拾ったり、使ってみてもらって問題を見つける方法です。
アンケートは多くの声を短期間で拾いやすく、インタビューはユーザーの背景や状況、操作上の問題について深堀りできます。ユーザーテストは、実際にいくつかの操作をするところを観察し、問題点を見つけることです。その時考えたこと感じたことを口に出していただくことで、UIの問題をよりリアルに捉えることができます。
複数の方法をかけ合わせることで問題の特定の精度が上がります。
特に3は、実際のユーザーの認知・行動から問題を特定できるため有効性が高い方法です。実ユーザーに似た身近な数名で実施するだけでも、大きな問題や数値では分からない問題が分かることがよくあります。
これらの調査から、サービス運営側の主観ではなく客観的な観点での問題が見つかるはずです。サービス名が分かりにくい、コンテンツが響かない、機能が複雑など、UI以外の問題も見つかることが副次的なメリットとしてあります。
UI/UXの改善方法
問題をあぶり出したら、次は改善方法の検討と有効性の検証を行います。見つかった問題の質もいろいろあるでしょう。サービス利用のための重要な操作が達成できないといった致命的なものから、達成はできるが時間の無駄や迷いがあったり、満足度が低いといったこともあるかもしれません。
その際、何をどう改善すれば良いかすぐに見当がつくものもあれば、分からないものも出てきます。目指すUXにとってどうあるべきか分からない場合は、UX観点への立ち返りが必要ですし、具体的な手法が分からないのであれば他サービスを調査し参考にすることも必要です。
すべての問題点を完璧に改善することは理想ですが、UX観点・ビジネス観点で費用対効果を検討し、現実的な方法で重要なものから改善を施します。
改善の有効性を検証し改善を重ねる
改善点と改善方法を明確にしたら、サービスに反映する前にプロトタイプで有効性を検証します。プロトタイプとは試作品のことで、実際にユーザーに使ってみてもらって問題がどの程度解消されるかを検証するために作成します。検証が可能なかたちになっていれば、しっかり作り込む必要もありません。
プロトタイプをユーザーテストで評価した結果、想定より効果がある場合もあれば、あまり効果がない場合もあります。その場合はさらに改善を重ねて再検証することでより効果をあげることができます。
調査や評価ができる体制やスキルも必要
このように問題点を明らかにする調査や、改善の結果を評価するには、それができる体制やスキルも必要です。また、それ以前にこのような調査や評価に人手や時間を割く意味を決済者の方に理解していただく必要もあります。そして何より、現場のみなさんが本当に必要と思えているかどうかが重要で、意義を伝えモチベーションにつなげていくための活動も必要となります。
そのために、まずは普段の業務の中で小規模でも構わないので自分たちなりに実施してみて、その成果を積み上げて有効性を示していくのも方法の一つです。
もう一つは、我々のような実績のある外部の企業に依頼する方法です。
BAsixsが支援させていただいている企業さまの中には、新規構築・運用問わず必ずこういったプロセスを組み入れているケースもあります。その枠組みに参加させていただきながらさまざまなご提案をしているため、どのような体制が必要か、業務への組み込み方、実施方法など、蓄積された知見があります。
UI/UXとはなんなのか、自分たちが目指すUXとはどうあるべきか、UI/UX改善のための考え方や仕組みづくり、組織への浸透方法など、UI/UXデザインでお悩みの方はお気軽にBAsixsへご相談ください。