BAsixs(ベーシックス)

BAsixsは、ビジネス・アーキテクツが運営する
「あたりまえ」をアップデートしつづけるメディアです。

なぜAEMを推薦するのか?――ツール選定の背景【前編】

読了目安 : 10

  • 投稿日 :
  • 最終更新日 :

この記事を書いた人

プロフィールアイコン(イラスト):BAsixs編集部
BAsixs編集部

日々の業務の中で「あたりまえ」をアップデートできた取り組みを発信しています。

Webサイトの効果的な運用のためには、いまやCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)の導入が欠かせません。その中でも、「直観的な操作性」「生成AIの利便性」「大規模サイトにも対応できる堅牢性」などが評価され、グローバル企業を中心に導入が進んでいるのがAdobe Experience Manager(AEM)です。

Business Architects(ビジネス・アーキテクツ、以下BA)は、AEMの専門的な知見と技術をもつAEMのソリューションパートナーとして、お客さまのAEM導入から運用、保守までを一貫してサポートしています。

AEMの導入を成功に導くには、ツールの特性だけでなく“導入プロセス”の理解が欠かせません。AEMを数多く手がけるBAが、長年の経験から得た知見をもとに、その背景と現場のノウハウを前後編の2本立てでお伝えします。

前編では、大規模Webサイトの構築・運用に携わってきたBAだからこそ語れる「なぜAEMを推奨するのか」「導入でどんな課題を解決できるのか」について、その理由と実際の効果を、事業部長の小山とプロジェクトマネージャーの野島が現場目線で解説します。

なぜAEMを推薦するのか?――ツール選定の背景【前編】

インタビューした人

プロフィールアイコン(イラスト):ディレクター 富本
富本セールス&マーケティンググループ/ディレクター(ビジネス・アーキテクツ)

地元・愛知の印刷会社や広告会社にてディレクター・フロントエンドエンジニアとしてWeb制作に携わる。2014年頃、フロントエンドエンジニアとしてBAに入社。現在、自社コーポレートサイトやオウンドメディアのマーケティングに携わっている。また、長期にわたりウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)のWG4への参加も。好きなキャラクターはリラックマ。

インタビューを受けた人

  • プロフィールアイコン(イラスト):デザイン&コミュニケーションサービス事業部 事業部長 小山
    小山デザイン&コミュニケーションサービス事業部/事業部長(ビジネス・アーキテクツ)

    toCサービス、toBサービス拠点マネジメントを通してサービスの複数拠点の運営管理を担当。またtoBサービスの企画立案などで企業向けサービスの企画・開発を行う。Business Architectsには2019年にジョイン。大規模サイトのアカウントマネジメントや金融系サイトのプロジェクトマネジメントなど多くのプロジェクトを手掛ける。

  • プロフィールアイコン(写真):シニアディレクター 野島
    野島アカウント&ディレクショングループ/グループマネージャー/シニアディレクター(ビジネス・アーキテクツ)

    2008年にビジネス・アーキテクツに入社。システムエンジニアとして中規模以上のシステム設計・システム開発を担当。現在はそのバックグラウンドを活用し、サイト構築案件から運用案件まで様々な案件のディレクターを担当。UXとエンジニアリングの観点から顧客の課題解決を行っている。CompTIA Project+認定資格保持。

いまAEMが注目されている理由

BAでは、Adobe社が認定する「AEMのソリューションパートナー」として、Adobe Experience Manager(AEM)の導入支援サービスを展開しています。まず、あらためてAEMの特徴について教えてください。

小山:AEMはAdobe社が提供する最高峰のCMSで、テキストや画像、動画、カタログデータといったデジタルコンテンツを一元管理できる「DAM(デジタルアセットマネジメント)機能」が統合されているのが大きな特徴です。

HTMLやCSSなどの専門知識がなくても直感的にWebサイトの作成や更新ができるうえ、「多言語」「多拠点」「多数の編集者」というような複雑な条件でも強みを発揮します。

そのため、多言語対応が必要なグローバルサイト、あるいは商品やアイテム数の多い大規模サイトを中心に導入が進んでいます。

野島:具体的には、Webサイト全体を自動で翻訳できる「言語コピー機能」や、ひとつの“親サイト”を更新すると“子サイト”にも自動で反映される「ライブコピー機能」があります。

これにより「一部の国だけ更新が遅れる」といった問題を防げますし、翻訳管理ツールとも連携しやすいため、外部に依頼していた翻訳コストや作業のやり直しも減らせます。

結果として「翻訳にかかる費用の削減」と「反映スピードの向上」を同時に実現できるのです。

実際に運用する際の特徴としては、どのような部分が強みなのでしょうか?

野島:運用面では、公開の承認フローや編集権限をシステム上で設定できるので、従来の「メールで承認を回す」という手間を省けます。

また、ロゴや画像などの素材もDAMに集約しておけるため、常に最新版をすぐに使える状態にでき、「どの画像が正しいのか探す」時間を削減できます。

こうした仕組みによって、キャンペーンの開始タイミングを逃すこともなくなります。ほかにも、クラウド版を使えばAdobe社が自動でアップデートしてくれるため、他のCMSのように大規模なアップグレードに振り回されにくいのも実務上の安心材料です。

プロジェクトマネージャー・シニアディレクター 野島

どのような課題感からAEMへの移行を決断するのでしょうか?

小山:まず、エンタープライズ企業におけるWebサイト運用の課題として一番多いのは、「誰がWebサイトやコンテンツを管理しているのかがわからない」です。

というのも、属人化したルールで運用している企業が多く、担当者が異動や退職で抜けると、途端にブラックボックス化してしまうからです。

次に多いのが、部門・部署ごとにロゴや写真の使い方がバラバラで、「気づかないうちにブランド毀損が進んでいる」というケースです。こうした課題解決のほか、最近は「既存のCMSがEOL(サポート終了)を迎えたので、セキュリティ対策も兼ねて替えたい」というご相談も増えていますね。

野島:具体的には、「スマートフォンでの表示が最適化されていない」「マーケティングオートメーション(MA)ツールや顧客管理システム(CRM)との連携、多言語対応、Eコマース機能など、ビジネスの成長に必要な機能が備わっていない」といった理由で既存CMSからの移行をご検討される企業さまも多いですね。

その点、AEMであれば、こうした課題をスパッと解決してくれます。WYSIWYG(ウィジウィグ・見たまま編集)エディタやドラッグ&ドロップによって、専門知識がなくても誰でも簡単にコンテンツを編集・公開可能です。

他のCMSと比較しても、運用・管理をする担当者が作業しやすいCMSになっているということですね。

野島:はい。レガシーなCMSでは、HTMLの知識が必要なうえ、管理画面も複雑なものが多く、コンテンツの追加や更新に膨大な時間と手間がかかってしまう点も問題です。

直感的に操作できる設計になっておらず、コンテンツ更新担当者が限定されてしまったり、新しい担当者がスムーズに作業を始められなかったりするわけです。

運用を外部ベンダーに一任している企業もありますが、ベンダーの都合で「コンテンツの更新は1か月後」ということも珍しくありません。

「なぜ企業はAEMへ移行を決断するのか」というタイトルの図。左側には「従来CMSの課題」として、管理が属人化・ブラックボックス化していること、ブランドが部署ごとにバラバラで統一されていないこと、セキュリティ面での不安(EOL=サポート終了など)、更新に時間がかかること、外部依存によりスピードが遅いことが挙げられている。右側には「AEMで解決」として、誰でも簡単に編集できる点、ブランドを一元管理できる点、セキュリティ強化と自動アップデートによる安心感、更新スピードの大幅向上、多言語・EC・CRMとの連携が容易である点が示されている。従来CMSの限界に対して、AEMが業務効率・セキュリティ・ブランド統一の面で包括的な解決策を提供することを視覚的に比較している図。

AEMが選ばれる4つの理由

では、実際にAEMへの移行によりWebサイト運用がどのように変わるのか、あらためてその効果を教えてください。

小山:大きく以下の4点における課題を解決してくれます。順番にご説明しましょう。

  1. 多言語対応
  2. アセット(素材)管理
  3. セキュリティ
  4. マーケティング

AEMが解決する4つの課題

①多言語対応

小山:まず①「多言語対応」についてです。

AEMの言語コピー機能やライブコピー機能、また連携可能なTMS(Transfer Management System)により、その企業独自の用語の多言語化と、各国・各リージョンでのガバナンスされた状態での多言語化が可能です。これにより、翻訳作業のスピードアップとコスト削減を同時に実現できます。

②アセット(素材)管理

小山:次に②「アセット(素材)管理」です。

AEMでは、バナーや画像、ロゴなどの素材を「DAM」という仕組みで一元管理できます。部署や国ごとに分散していた素材をまとめて管理できるので、どの拠点からでも最新の素材を安全に利用可能です。これにより、更新担当者の手間も大幅に減り、効率的な運用ができます。

さらに「Adobe Asset Link」を使えば、PhotoshopやIllustratorで編集したデザインをそのままAEMに反映できます。デザイナーとWeb担当者のやり取りがスムーズになるので、販促のタイミングを逃すリスクも減らすことができます。

③セキュリティ

野島:③「セキュリティ」について。

AEMにはオンプレミス型(自社サーバーで運用する形)もありますが、最近は多くの企業がクラウド版を選んでいます。その理由のひとつは、Adobe社の厳しいセキュリティ基準を満たした環境で運用できるからです。

サイバー攻撃対策やデータ暗号化、自動バックアップといった機能が標準で備わっていますし、専門家が24時間体制で監視してくれるので、自社でサーバーを守るより安心です。

さらにAEMでは、ユーザーごとに細かい権限設定ができます。「記事を書く人」「公開を承認する人」といった役割ごとにアクセス制限を設けられるので、人為的なミスや不正アクセスを防げます。

また、WordPressのように多くの外部プラグインに依存する必要がなく、必要な機能が最初から組み込まれている点も安全性の高さにつながっています。クラウド版ならアップデートやセキュリティパッチも自動で適用されるので、常に最新かつ安心な状態で使えるのも魅力です。

④マーケティング

小山:最後に④「マーケティング」についてです。

Webサイトはいまや単なる情報発信の場ではなく、売上や成果に直結する“営業ツール”として活用することが求められています。そのため担当者には、「どんな施策を打つか」「どう改善を繰り返すか」といったPDCAをスピード感をもって回していくことが課題になります。

AEMは、Adobe社の他の製品とスムーズに連携できるのが大きな強みです。たとえば「Adobe Analytics」でユーザーの行動を分析し、「Adobe Target」や「Marketo」を使えば、各ユーザーのニーズにあわせた体験を提供することが可能になります。

事業部長 小山

導入事例に見る効果

では、これまでお二人が担当したAEMへの移行案件で、「ほかのCMSでは難しかったが、AEMだからこそ実現できた」という事例があれば教えてください。

小山:具体的には申し上げられませんが、複数言語へ展開されていたサイトをAEMへ統合しました。それまでは各国ごとに別々で運営していたため、更新に手間がかかり、ブランド表現もバラついてしまうのが課題でした。

AEMを導入してからは、ひとつのマスターサイトを更新すれば、各国のWebサイトにも自動的に反映される仕組みに。

結果として運用コストを大きく削減でき、さらに承認フローをシステム化したことで、情報発信のスピードも格段に向上しました。ご担当者の方々からも「業務がずっと楽になった」と喜んでいただきました。

ブランドの一貫性を保ちながら、多言語・大規模サイトを効率よく管理できるのはAEMならではですね。

小山:とくに数百点規模の製品カタログを扱うメーカーでは、DAMとCMSを組み合わせ、コンテンツフラグメントを活用することで、どの国でも常に最新の正しい情報を提供できるようになります。

従来のようにCMSとアセット管理を別々に運用する必要がなくなり、「管理に追われる」状態から「コンテンツを活用する」運用にシフトできるのです。

(AEM構築事例はこちら

野島さんが印象に残っているAEMへの移行案件はありますか?

野島:私が担当した教育機関のケースでは、以前はAWS+WordPressでWebサイトを運用していました。平常時はサーバーを2台だけ動かし、イベントでアクセスが集中する時期にはサーバー台数を増やして対応していたのですが、正直これでは限界がありました。

そこで、AEMに移行したことで、アクセスが集中する期間でもインフラ面で特別な対応をする必要がなくなり、「サーバーが落ちるかも」という不安から解放されました。

さらに、AEMの標準機能であるコンテンツフラグメントにより、複数のデータを一元管理できるようになったのも大きな成果です。データを決まった枠の中だけで管理するのではなく、柔軟に拡張できるので、運用コストの削減にもつながりました。

小山:製造業や教育機関を例として挙げましたが、AEMは業種を問わずに導入効果を発揮できるCMSです。

とくに、「展開している国が多い」「ブランドや製品群が多岐にわたる」「編集者が部署横断になっている」といったWebサイトで強みを発揮しますので、ぜひご興味がある企業さまは導入を検討していただきたいですね。

集合写真:プロジェクトマネージャー・シニアディレクター 野島(右)、事業部長 小山(左)

AEM導入の本当の価値を引き出すために

前編では、AEMがなぜ多くの企業から選ばれているのか、その背景や特徴を現場の視点から掘り下げました。実際の事例を聞いてみると、単なるCMSの置き換えではなく「運用の質そのものが変わる」ことを実感いただけたのではないでしょうか。

とはいえ、AEM導入を成功に導くには「要件定義」のフェーズが欠かせません。どの機能をどう使い、どのプロセスをどこまでAEMに担わせるのか、その整理ができてはじめて、導入後に本当の効果を得ることができます。

後編(なぜAEMを推薦するのか?――導入時の「要件定義」の勘どころ)では、AEM導入プロジェクトを数多く支援してきたBAが、その要件定義の重要性をテーマに、実務で役立つヒントをたっぷりお届けします。AEMを検討している方も、すでに導入を進めている方も参考になる内容ですので、ぜひあわせてご覧ください。