2025年1月、ビジネス・アーキテクツは企業統合を行い、新たな一歩を踏み出した。デジタルコミュニケーションを提供してきた、統合前の「ビジネス・アーキテクツ(以下、旧BA)」、ECソリューションに強みをもつ「BAXS」、クラウドサービスに強みをもつ「クラウドテクノロジーズ」の3社が統合したことで、どのようなシナジーが生まれたのか。
本記事では、統合に至る背景や意思決定のプロセス、今後の展望について、事業部長・副事業部長の4名に話を聞きました。

インタビューを受けた人
- 小山第1事業部 事業部長(ビジネス・アーキテクツ)
BPOの会社でのなんでも屋を経て、2019年からBAへジョインしました。第1事業部で責任者をしております。
- 森下 新之助第3事業部 事業部長/シニアディレクター(ビジネス・アーキテクツ)
ベンチャー企業のブランディング部門などを経て2010年にBA入社。以来、戦略立案・プロジェクト運営・情報設計を担当している。主なプロジェクトは、国内消費財メーカーのグローバルサイト、国内自動車メーカーのグローバールスマートフォンサイト等。現在は、金融系企業にてオンサイトチームを率いて、継続的なUI/UX改善に取り組んでいる。
- 大澤 直樹ソリューションサービス部 部長(クラウドテクノロジーズ)
CTI事業の責任者として、事業全体のマネジメントを行っています。
- 村田 高宗エンジニアリング&テクノロジー ゼネラルマネージャー(ビジネス・アーキテクツ)
証券会社、ベンチャー企業の立ち上げを経てBAに。2023年より現職。
なぜ企業統合に至ったのか?
まず企業統合した3社(旧BA、クラウドテクノロジーズ、BAXS)について聞かせてください。これまで、それぞれの企業はどんな領域に強みをもっていたのでしょうか?
小山:旧BAでは、Webサイト設計やUI/UXデザインを中心として、お客さまのデジタルコミュニケーションの領域をサポートしていました。
具体的には、コーポレートサイトやグローバルサイトといった、来訪ユーザーと企業のコミュニケーションツールにおけるプロジェクトマネジメント・設計・実装開発・運用などです。
大澤:クラウドテクノロジーズは、クラウドやセキュリティといったIT基盤を支える領域を中心に活動してきました。
主に中小企業のお客さまに対し、AWSを利用したクラウドサービスやシステム運用サービス、ログ管理やUTMをはじめとするセキュリティ製品の構築・運用サービスを提供しています。
村田:BAXSでは、EC関連のソリューションを開発・提供してきました。
具体的には、EC運営に必要な「ささげ(撮影・採寸・原稿)業務」の自動化と効率化を実現するシステムである「PANAMA(注1)」、サイト画像を高速表示してWebP自動変換でコード変更なしでSEOにも貢献する「snaprec(注2)」を運営してきました。
図:今回の統合により、これまで旧BAの強みであったデジタルコミュニケーションに加え、ECとクラウド領域を強化することになった。
統合に至った背景には、どのようなものがあったのでしょうか?
小山:近年、デジタル技術が急速に進化するなかで、お客さまから「より包括的なデジタルソリューションがほしい」という声が増えていました。
そうした旧BA単体ではカバーしきれない領域を、クラウドテクノロジーズとBAXSのサービスとノウハウで補完する。これにより、お客さまに提供する価値をもっと高められると考えたのがきっかけです。
これからの技術的な進歩を見据えた考えもあるのでしょうか?
小山:もちろんその側面もありますね。今後は、ますます「情報」の活用や伝達が重視される世界になると感じています。
例えば、昨今では「生成AI」の存在などもそうです。新たなイノベーションであるという点は間違いないですが、フェイクニュースの責任や法的ルールの整備など、より一層複雑になってくるはずです。
これはつまり、情報の「正しい管理活用」が求められる時代になること。今回の統合背景には、そんな時代に対してアンサーを出せる企業でありたいという思いもありますね。だからこそ、統合にあわせて「情報を価値ある資産に」というビジョンを掲げたんです。
(注1)PANAMA:ささげ業務(撮影・採寸・原稿)の自動化と効率化を実現するささげ支援システム
(注2)snaprec:サイト画像を高速表示し、WebP自動変換でコード変更なしにSEOにも対応したサイト画像最適化ソリューション
3社の強みをどう融合させていくのか?
さきほど「情報を価値ある資産に」というビジョンのお話もありましたが、3社が統合するにあたって、新しい企業方針やミッションはどのように策定していったのでしょうか?
大澤:まずは、お互いを知るという意味もかねて、各事業部のリーダーが集まって会議やワークショップを定期的に開催しました。そこで、3社で丁寧に擦りあわせながら、企業としてのミッションやプリンシプル(行動指針)など細かい部分まで策定していきましたね。
小山:実は、さきほどの「情報を価値ある資産に」というビジョンは、もともとクラウドテクノロジーズが掲げていたものでした。でも、それにあわせただけというわけではなく、旧BAもBAXSも、これまでやってきた方向性が「情報を価値ある資産に」という姿勢と通じていたんです。
森下:根幹の思想が合致していますよね。例えば、サイトに来訪したユーザーにどう情報を見せていくのか、デザインでどうやって情報を見せやすい形にするのか、ということも「情報を価値ある資産に」するという点で通じています。
村田:BAXSであれば、ECサイトに訪れた人へのスムーズなサービス提供、運用する側が「ささげ業務」を自動化・効率化するなど、よりダイレクトに通じるメッセージだと感じます。
異なるバックグラウンドをもつ3社が統合するとなると、企業文化の違いや業務フローの違いなどで課題も出てくるかと思います。その点はどのようにクリアしていくのでしょうか?
大澤:私が所属していたクラウドテクノロジーズは、システムのインフラ領域を中心に事業活動をしていて、なおかつお客さまの多くが中小企業でした。そのため、お客さま企業の規模感や事業領域、常識やルール、仕事の進め方が異なる会社とひとつになることに対し、不安を感じていたメンバーが多かったことは事実です。
ただ、この不安の多くは相互理解の不足や誤解に起因するものだと思っていたので、新しい会社やその会社のルールについて、「なぜそうするのか」「そのことでどのような将来があるのか」の説明を丁寧に重ねました。
その際に、ワークショップで策定したさまざまなメッセージを共通言語にコミュニケーションをしていくことで、ミスマッチのない状態でスタートが切れたと感じています。もちろん、現時点でも試行錯誤が続いている状況ではありますが、確実に良い方向に向かっていると思います。
統合したことによって、どのようなシナジーが生まれると考えていますか?
小山:さまざまなお客さまの異なる課題に対して、一気通貫で提案できる体制が整ったことが一番のシナジーだと感じます。サイト運用からデータ分析、UX改善、システム構築、さらにはEC領域まで一貫してサポートできるようになりましたね。
森下:これまで、旧BAでは「デザインに特化した会社」という見られ方をすることが多かったんです。しかし、今回の統合で、システムやインフラといった基盤の部分やセキュリティ、ECや画像などのソリューションも提供できるようになりました。
なにより、これまで同じ会社にはいなかった職能のメンバーが増えたことで、自分としてもシステムやECの領域が身近になりましたね。企業としてのケイパビリティの広がりを感じています。
これまでも、これからも「あたりまえ」をアップデートする
現在(取材時は2025年2月)は、統合してまだ間もない状況ですが、3社のシナジーを生み出すために直近で取り組んでいることがあればお聞かせください。
大澤:まず大前提として、一緒に働くメンバーがものすごく増えたので、まずは相互理解を深めていきたいと考えています。コミュニケーションの場を増やすのはもちろん、情報システム業務の統合やインフラ関連業務への参画など、一緒に業務を行う環境をつくっていくところからはじめています。
あとは自分自身を知ってもらうことも必要だと感じています。そのため、社内打ち合わせの場ではしっかりと自分の意見を言うことを大切にしていますね。
村田:統合によって、意思決定のプロセスが変わった箇所はいくつかあります。どこまで自分たちで決めて良いのか、新たな稟議が必要なのか。そういった部分に対して、現場メンバーの判断がスムーズにできるようなコミュニケーションは心掛けていますね。
森下:会社が大きくなると、マネジメントで調整しなくてはならない点は間違いなく出てきます。旧BAとして当たり前だと思っていた部分が、クラウドテクノロジーズやBAXSでは当たり前ではないこともあり、その逆もまた然りです。
だからこそ、我々のミッションにもある通り「あたりまえをアップデートしつづける」ことを、お客さまに対してだけでなく社内でも適応することが重要だと考えています。
最後に、これから先のビジネス・アーキテクツが描く未来図についてお聞かせください。
小山:現在掲げている「情報を価値ある資産へ」というビジョンには、「情報を安全に管理して資産にする」という面と、「すでにある情報を最大限に利活用して資産にする」という面があります。これは統合した3社が行っていたビジネスを体現しており、これからさらに知見の融合を進めていくことでお客さまに新たな価値を提供していきます。
一方で、時代が進むにつれて、足りないパーツも今後出てくると感じています。その際には、統合という形でなくとも新たなパートナーとして連携し、補完していく。安全な環境、プラットフォーム、サイト設計でお客さまが持っている「情報」を最大限に活かす方法を提案する。そして、目指す世界を一緒に描けるようなデジタルパートナーとしての立ち位置を確立していきたいですね。
編集後記
旧BA、クラウドテクノロジーズ、BAXS——今回、3社の企業統合のプロセスをインタビューしました。これまでUI/UXのデザインやサイト設計などのデジタルコミュニケーションを中心に提供していた旧BAにとって、クラウド技術やEC運営のノウハウはまさに新たな武器となります。これから、さらに事業のシナジーが生まれ、お客さまの課題に幅広く対応できるようになります。
では、3社の統合によって具体的にどのようなソリューションが生まれ、顧客体験がどのように変化するのか。次の記事「3社が融合したシナジーで新たな顧客体験を創る——なぜBAは企業統合をしたのか?(後編)」にて、その変化と新たな挑戦について詳しく伺います。