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Web制作会社の切り替えで失敗しないための「10のチェックリスト」〜円満な引き継ぎの進め方〜

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BAsixs編集部

日々の業務の中で「あたりまえ」をアップデートできた取り組みを発信しています。

対応に不満がある、コストが見合わないなど、Web制作会社を切り替える理由はさまざまあります。その際、「著作権・所有権」や「データ引き継ぎ」に関わる予期せぬトラブルで、移行が難航するケースは少なくありません。

そこで、これまで発注側(Web制作を依頼する企業)・受注側(Web制作を受注する制作会社)、さまざまな立場でシステム開発やサイト制作等の現場に携わってきたBusiness Architects(ビジネス・アーキテクツ、以下BA)の山本と田代が、Web制作会社切り替え時に実際に起こったトラブルとその回避策、そしてスムーズな移行のために発注側が事前に準備すべき10のチェック項目を、対談形式で徹底解説します。

知識と準備で「円満な卒業」を成功させ、新しいパートナーとのプロジェクトをスムーズに始めるための実践的なノウハウが詰まった記事です。

Web制作会社の切り替えで失敗しないための「10のチェックリスト」〜円満な引き継ぎの進め方〜

インタビューした人

プロフィールアイコン(イラスト):ディレクター 富本
富本セールス&マーケティンググループ/ディレクター(ビジネス・アーキテクツ)

地元・愛知の印刷会社や広告会社にてディレクター・フロントエンドエンジニアとしてWeb制作に携わる。2014年頃、フロントエンドエンジニアとしてBAに入社。現在、自社コーポレートサイトやオウンドメディアのマーケティングに携わっている。また、長期にわたりウェブアクセシビリティ基盤委員会(WAIC)のWG4への参加も。好きなキャラクターはリラックマ。

インタビューを受けた人

  • プロフィールアイコン(イラスト):マーケター 田代
    田代セールス&マーケティンググループ/マーケター(ビジネス・アーキテクツ)

    広告代理店にてマンションデベロッパー、人材派遣の広告・マーケティング業務に携わった後、システム開発会社にて製薬会社や生命保険会社のマーケティング支援に従事。エンドユーザーに対してWebやメールを活用してのコミュニケーションの運用、改善、最適化などを中心に業務を担当。直近ではオウンドメディアの編集長として自社への引き合いを増やす役割を担った。

  • プロフィールアイコン(イラスト):マーケター 山本
    山本セールス&マーケティンググループ/マーケター(ビジネス・アーキテクツ)

    South Carolina州 Winthrop University 卒業(心理学)。 広告代理店にて自動車メーカーの商品広告・マーケティング業務に携わった後、インターネットベンチャー、CRM・DRMエージェンシーにて、化粧品、マンション販売・管理、銀行、IT事業会社など様々な企業のCRM戦略策定やサイト/アプリ/メール/DMなどお客さま接点全体のコミュニケーションの最適化など、マーケティングコミュニケーション×テクノロジー×クリエイエティブ三位一体の実践的マーケティングにこだわり、多岐に渡る業務に従事する。

企業がWeb制作会社を切り替える理由

まずWeb制作会社を切り替えたいと発注側が考える理由には、主にどんなものがありますか?

山本:大きく分けると「現状のWeb制作会社への不満」と「発注側企業のWeb戦略の変化に伴うニーズの不一致」の2つに集約されますよね。

田代:短い期間でお別れが来るときの理由と、長期的に関係性が続いたうえでお別れが来るときの理由で違うんじゃないですかね。

短い期間で不満が出てくる場合は、「プレゼンや提案は良かったが、実際に運用が始まってみるとそこにズレがあったケース」や、「発注側企業の担当者とWeb制作会社の担当者の進め方のイメージが合わない」ということがありますよね。

もう1つは、「最初の見積り時に想定していた稼働よりWeb制作会社側の負荷が大きいパターン」でしょうか。そうなった場合に、発注側から金銭的なフォローがないと、Web制作会社は収益を維持するために若手スタッフにバトンタッチせざるを得なくなり、発注側に不満が溜まっていくケースはよく聞きます。

山本:それはありますね。返事やレスポンスが遅い、品質が期待以下、最新のトレンドに対応できていないということになって、発注側にどんどん不満が溜まっていくんですよ。

長い付き合いの後にお別れが来る場合、私が最初に言った「発注側企業のWeb戦略の変化に伴うニーズの不一致」が生じるというのがよくあるパターン。それと、競合他社や取引先のリニューアル事例などを見て、そちらのほうが良く見えてしまうこともあります。隣の芝は青く見える…って話ですね。そうなると、新たに提案してもその提案も刺さらなくなって、Web制作会社をそろそろ変えよう…となる。

発注側企業の状況や戦略の変化でいうと、たとえば「ブランディング強化から、リード獲得・コンバージョン改善へ軸足を移したいが、現在の会社はデザイン特化でマーケティングに弱い」など、現在のWeb制作会社がもつ専門性や得意分野が合わなくなったということもあります。

写真:山本(左)と田代(右)が会話する様子

Web制作会社の切り替え時に実際に起こったトラブル・困りごととは?

お話しいただいたような理由からWeb制作会社を変えようということになって、新しい制作会社を選び、いざ引き継ぎとなったとき、いろいろなトラブルや困りごとが起こると思うのですが、よくある例を教えてください。

Web制作会社切り替え時に発生しやすい主なトラブル原因を示した図。著作権・所有権の扱い、制作過程データの引き継ぎ、サーバーやドメイン契約の名義、仕様書の有無といった4つの観点が整理されている。

山本:いろいろ困りごとはあるのですが(苦笑)、いちばんもめがちなのは、著作権や所有権など権利関係にまつわるトラブルですね。撮影写真や制作図版などの著作権、もしくはWebサイト全体の著作権が旧制作会社側に残っていることがあります 。契約書で、納品物すべての著作権(二次利用権含む)が発注側に譲渡されているか、利用許諾範囲も含めて把握する必要があります。もし譲渡されていなかった場合には、買い取る交渉をするか、代替品を用意するか、どちらにしてもそこに費用が発生します。

田代:とくに難しいのが間に代理店が入っていて、制作会社だけが新しく変わる場合です。旧制作会社より先の、コピーライターやカメラマンに著作権を確認しようとしても追えなくなっている場合もあるので、いざ引き継ぎとなってから困らないように日頃から旧制作会社に確認しておくとよいと思います。

山本:完成品の著作権はもちろんですが、バナーや図版などを制作した際のデザインツール(IllustratorやPhotoshopなど)で作成されたデザインデータなど、制作過程のデータまで納品しない契約になっていると、後々困ることがあります。もし納品物に含まれていない場合には、必要性を説明し、提供してもらえるように交渉する必要がありますよね。

もう1つ大きな問題になることがあるのが、サーバーやドメインの契約が自社ではなくWeb制作会社になっている場合です。さらにログイン情報を発注側で把握していない場合もあります。

田代:そうなるとログイン情報の開示と名義変更手続きが必要になりますね。これは旧制作会社側に依頼するしかありません。

山本:これまで契約関係について触れてきましたが、技術面での引き継ぎも重要です。サーバーサイドの細かい設定(リダイレクト・SSL証明書・アクセス解析タグなど)が漏れており、サイト切り替え時に一部ページが表示されない、アクセスが急落するなどの問題が発生することがあります。

田代:そうならないためには、新制作会社は旧サイトの全URLリスト、サーバー設定の詳細情報、外部連携サービス(GA・GTM・SFAなど)のタグをリストアップし、引き継ぎ項目を旧制作会社に確認してもらう必要がありますよね。前もってこういった情報を整理してあれば問題ないのですが、発注側で把握していないパターンは意外と多いです。

山本:これらの全体を通してのポイントとしては、日頃からサイトの仕様を書面に落とし込んでおいてもらうことが大事ですね。担当者間の口頭でのやり取りによる仕様変更や暗黙のルールがあると、新制作会社側の開発がストップしてしまいますから。

田代:ちょっとした更新や改修だと書面に落とし込まれていないことがよくありますからね。

山本:また、トラブルなく引き継ぐためには、発注側が仕切って引き継ぎミーティングをしっかり設定することが大事ですね。その際、旧制作会社からすれば、引き継ぐまでの日常的なサイトの運用業務とは別の業務なので、有償対応でしっかり動いてもらうしかないでしょう。

写真:田代が話している様子

Web制作会社の切り替えを決める前に確認すべきこと

では、発注側がWeb制作会社の切り替えを決定する前に、整理・把握しておくべきこととは?

山本:ここまで権利関係など、具体的な引き継ぎ時のトラブルやその原因について言及してきましたが、それ以前に発注側が考えておかなければならないことがあります。それは「切り替えの目的を明確にし、現サイトの現状を客観的に把握すること」です。

これが明確になっていないと、今後の向かうべき方向が定まらず、新しく発注するWeb制作会社に無駄な動きをさせてしまう可能性があるからです。具体的には以下の5つを社内で確認・検討しておくと、その後の動きがスムーズに進みます。

  1. 現サイトの評価と課題の特定(目標とのギャップ)
  2. 新サイトで達成したい具体的なKGI/KPIの設定
  3. 旧制作会社との契約内容と権利関係の確認
  4. サイトの全構成要素の棚卸しと優先順位付け
  5. 新制作会社に依頼するうえでの「必須要件」と「予算感」の策定

①現サイトの評価と課題の特定(目標とのギャップ)
「なぜ変えたいのか?」の根源的な理由を言語化する。単なるデザインの不満ではなく、「コンバージョン率が低い」「情報が整理されていない」など、具体的なビジネス課題に落とし込むことで、新制作会社に求める要件を明確化できる。

②新サイトで達成したい具体的なKGI/KPIの設定
新しいパートナーに何を求めるのかを明確にするため、単なるリニューアルではなく、「売上〇%向上」「リード数〇件達成」など、具体的なゴールを共有することで、Web制作会社選定の軸(マーケティング力・デザイン力・システム力など)を定める。

③旧制作会社との契約内容と権利関係の確認
トラブルを未然に防ぎ、スムーズな引き継ぎを可能にするため、とくに著作権、サーバー・ドメインの管理、制作過程データの提供範囲について、過去の契約書を掘り起こして現状を正確に把握しておく。

④サイトの全構成要素の棚卸しと優先順位付け
必要な引き継ぎ情報とリニューアルの範囲を明確にするため、全URLリスト、コンテンツ量、利用中の外部ツールなど、必要な機能を一覧化し、「残すもの」「捨てるもの」「新しく作るもの」を整理する。

⑤新制作会社に依頼するうえでの「必須要件」と「予算感」の策定
予算と要求のバランスを取り、ミスマッチを避けるため、「これだけは譲れない技術・機能・デザインレベル」と、それに対して用意できる予算のレンジを定めることで、Web制作会社側も提案の深度や実現可能性を判断しやすくなる。

①〜②は新しいWeb制作会社を選定するうえで必要な情報になります。③~⑤は、前半でも触れたように、引き継ぎをスムーズに行うために必要な情報なので、Web制作会社の変更が決まる前から少しずつ準備しておくのが理想的です。

写真:山本が話している様子

引き継ぎ丸投げはNG。発注側が新旧制作会社に対して配慮すべきポイント

Web制作会社を切り替えるときには、新旧いずれの制作会社も気をつかうものですし、旧制作会社はモチベーションが上がらず簡単に済ませたいと思うものだと思います。スムーズに新制作会社へ移行するために、発注側が配慮したほうがいいことや心構えがあれば教えてください。

Web制作会社切り替え時の関係整理を示した図。中央の発注元が調整役となり、スケジュール管理と公平な情報管理を担う。新制作会社には必要な情報を提供し、旧制作会社には切り替えの前向きな理由と引き継ぎ業務に対する費用を説明する関係性が示されている。

山本:発注側が取るべき心構えは、「円満な卒業」と「情報のフェアな管理」。旧制作会社にも最後までプロフェッショナルな対応を求めるためには、発注側も配慮が必要です。 

まず卒業の理由は、ネガティブな不満ではなく、前向きな理由や戦略的な理由として誠実に伝えてほしいと思います。そうすることで、旧制作会社の面子を保ち、協力を得やすくなります。

田代:はい。自分の経験でお話しすると、発注側は、卒業側(旧制作会社)のモチベーションの低下をやや軽んじている気がしますね。卒業を伝えてから資料などをすべてもらおうとすると不幸な最後になることもあるので、それ以前から必要なドキュメントは提供を依頼しておくなど、早めに動くことも必要ですよね。

山本:2つ目は、これがとても重要なのですが、引き継ぎ作業には対価が発生するということを前提にしたほうがいいと思います。通常業務以外の業務となるため、正当な対価を支払うことで、モチベーションの低下を防ぎ、スムーズで丁寧な作業を期待できます。

田代:そうですね。純粋に引き継ぎ業務の費用として支払うことで、旧制作会社は動きやすくなりますから。それと旧制作会社側にこちらの事情を理解してくれる味方を作っておくことも大事だと思います。

山本:3つ目は発注側が間に立って「調整役」に徹することです。新旧の会社が直接やり取りする場合、立場の違いからスムーズにいかないこともあります。発注側が間に立って必要な情報の提供や作業範囲、スケジュール管理等を行い、「ハブ」としての役割を果たすことが重要です。

田代:とくに金額や新たな戦略など機密性の高い情報は発注側がきっちり管理するべきかと思います。

新旧制作会社の引き継ぎをスムーズに行うための10の確認事項

山本と田代が考える「新旧の制作会社間で引き継ぎをスムーズに行うために発注側が確認・把握しておかなければならないこと」を、10個の項目にまとめてもらいました。

新旧制作会社の引き継ぎをスムーズに行うため、発注側が確認すべき10項目のチェックリスト。1.旧制作会社との契約書において、著作権・所有権・二次利用権が自社に帰属しているかを確認する。2.ドメインとサーバーの契約名義が自社になっているか、あわせてログイン情報を把握しているか、更新期限はいつかを確認する。3.サイト内の全URLリストを作成し、重要なページやリダイレクト元を含めてサイト構造を把握する。4.利用中の外部サービスやツール(GA・GTM・SFA・フォームなど)を一覧化し、ログイン情報を整理する。5.新制作会社と共有すべきKGI・KPIを明確にする。 6.過去のWebサイトのアクセス解析データ(最低1年分)をバックアップしているかを確認する。7.旧制作会社から、制作過程データ(ai・psd・xdファイルなど)が納品・保管されているかを確認する。8.旧制作会社への引き継ぎ費用の有無と、対応可能なスケジュールを事前に確認する。9.サーバーサイドの設定内容(リダイレクトルール・SSL設定など)を洗い出して把握する。10.サイトリニューアルにあたり、社内の意思決定プロセス、権限者、予算枠を明確にする。

発注側としては早く新制作会社に移行してスムーズに運用を始めたいと思うものだと思いますが、新旧のWeb制作会社任せにせず、発注側の担当者が真ん中に立って積極的に調整することが遠回りのようで実は近道。新旧双方のモチベーションを下げずに次のステップへと進むために重要なことではないでしょうか。

編集後記:Web戦略を次のステージへ導くために

集合写真:山本(左)、田代(右)で椅子に座っている様子

Web制作会社の切り替えは、新しいスタートを切るための重要なステップです。
とくに、グローバルサイトのリニューアルや運用においては、多言語対応、各国の文化・法規制への配慮、複雑なシステム連携など、さらに高度な専門知識と豊富な経験が必要となります。

Web戦略の策定から、複雑な権利関係の整理、スムーズな引き継ぎ、そして成果を最大化するためのサイト構築・運用まで、当社ではWeb制作会社の切り替えだけでなく、その先の成功を力強くサポートします。

「今の制作会社ではグローバル戦略に対応できない」
「複雑なサイトの移行で失敗したくない」

このようにお考えなら、ぜひ一度ビジネス・アーキテクツへご相談ください。長年の経験に基づいた確かなノウハウで、お客さまのWeb戦略を次のステージへ導きます。