ー CMSの活用が企業のコミュニケーションにおける中心に(変わる時代に向けて) ー
第2章 CMSの有効活用の未来のために。CMS環境の現状とあるべき未来は?
歴史的背景として、名刺代わりのWebサイトから情報発信の中心であるCMS活用に移行するにあたり、大企業のWebサイト構築はパートナーである制作会社が開発を担ってきた。
しかしながら、制作会社側も新しい技術に接する機会が少ないこともあり、クライアントが指示する通りに開発をすることが提案をするにしても自社にとって都合の良いCMSを勧めがちになっており、開発力・技術力の停滞という現象も発生している。
このように、現在多くの企業のCMSはリスクにさらされた中で運用されているのである。特にサイバーセキュリティ問題は深刻で、前述の通りCMSのアーキテクチャーが古く既に使えなくなっているケースや、製品やプラグインに脆弱性が発覚しても対応が難しいという問題、利用部門がITの専門家ではないために事前の対策や初動が遅れるなど多くの問題が存在している。仮に今は良くても、従来のCMSがソフトウェア構造的にいつまで使えるかという継続性に対する懸念も出てくる。
CMSは顧客に対するフロント機能であり、会社のメッセージを伝える媒体としても重要な存在である。取り扱い、守るべき情報の量も種類も増えた。登場から四半世紀経った今、企業や公共機関は、CMSをしっかりと見直すべきだろう。予算の確保やリプレースの実施も担当部門任せや非専門職の運用者任せにせず、しっかり企業の情報資産として認識し、投資対効果の意識を持って、CMSの本質とリスクを理解した上で製品選びとパートナー選びから対策を講じていく必要がある。
第2章では、そのような状況下でユーザーがどのようなCMS製品を選んでいくべきかを考えてみたい。

インタビューを受けた人
- 野田 純生様取締役CTO(アルファサード株式会社)
2003年11月アルファサード社を設立。ウェブアクセシビリティを重視したサイト制作をモットーに、数多くの企業・公共機関のサイト制作に携わる。ソフトウェアの開発が趣味であり仕事でもある。 2007年11月商用 CMS「 PowerCMS 」を提供開始。PowerCMS は既に 3,000 サイト以上に導入されている。PowerCMS X を開発し 2018年秋にリリース。日本初のやさしい日本語化エンジン「伝えるウェブ」開発者。
- 正木 愉美様ソフトウェア2部 部長(アルファサード株式会社)
2013年、ウェブディレクターとしてアルファサードに入社。数多くのPowerCMS 導入案件のディレクションを担当した後、現在は PowerCMS X および伝えるウェブを担当するソフトウェア2部の責任者。主に、PowerCMS X 導入前のサポートや両製品の広報などを担当。
CMS選定時に考慮すべき5つの要件
まず製品選びにあたっては、CMSのメーカー(製品)、利用者(運用者)、実際に開発するパートナー企業というそれぞれの観点を考慮した上で導入を考える必要がある。その上で検討項目としては、次の5つが挙げられる。
- 製品の新規性
- 製品の信頼性
- セキュリティ
- 開発元とパートナーとの関係性
- サポートの充実と継続性
(1)製品の新規性
CMSに限らないが、時代に合わせたシステムを実現・維持するためには、新しいエンジンや開発言語を採用している方が有利である。機能面では操作性はもちろんのこと、稼働に当たってパブリッククラウドサービスなどの最新インフラ技術への対応は必須である。また、閲覧者に対するアクセシビリティやユーザビリティも重視すべきである。
(2)製品の信頼性
開発元に対しては、ユーザーのやりたいことを長いスパンで形にし続けられる対応力とサービスの継続性が求められる。そのためには、マスターエンジニアを含めて開発に携わるエンジニアを多く抱えているCMSが望ましい。
(3)セキュリティ
まず基本として製品自体にエラーが起きづらい(バグが出にくい)、不具合の修正が早いという部分がポイントになる。製品の機能面では、コンテンツ運用時にヒューマンエラーが起きにくいような管理機能が実装されていること。加えて、制作を担当するパートナーが開発する際にミスが起きにくい製品設計やサポート体制が実現されているかも、リスク回避の判断材料になる。
(4)開発元とパートナーとの関係性
双方の関係性は、一朝一夕に培うことはできない。コミュニティーの充実、市場での信頼性も含めて、これまでの国内での導入実績や対応可能なパートナー数、エンジニアの数も重要になる。その意味で、パートナーにとっての開発のしやすさも1つのポイントになる。
(5)サポートの充実と継続性
機能を提供するプラグインが多いのは強みになるが、それだけでは不十分である。製品自体に問題が生じたり利用するプラグインが増えたりした際にも、開発元やパートナーにサポートや対応をしてもらいやすい、つまり責任の所在をしっかりと確認した上でCMSを選定すべきである。OSSを使うにしても、運用段階で責任をもってサポートしてくれるパートナーとセットで考える必要がある。
現状のCMSは「増改築を繰り返しただけ」
一方、市場のCMS製品を見てみると、新規性をはじめとして上記の要件を満たす製品を探すのは難しいのが実情だ。市場で確固たるシェアを維持している製品は存在しているものの、コミュニティーやパートナーへの依存が強かったために、製品(ソフトウェア)自体は長い歴史を経て硬直化しているケースが多い。機能が充実しているように見えても、主体的なイノベーションの積み重ねというより周辺の押し上げの積み重ねによるところが大きく、CMSは停滞期に入っていると言っても過言ではない状況である。
「ほとんどのCMSは、ソフトウェア自体は根本的に変化していません。バージョンアップは重ねているものの、2000年頃に必要だった機能のプログラムがそのまま残っているケースも多く、言語が古いだけでなくプログラムの書き方がそろっていないものも珍しくありません。全面的にコードを書き直したと思われるものも一部ありますが、メジャーな製品でも増改築を繰り返してきただけというのが実情です。またOSSについては権利面が複雑で、そもそもどのようなライセンス体系で提供されていて、権利者は誰で、どこまでどう改変していいのか分からないという問題に突き当たり、そこをうまくクリアできないことがソフトウェアそのものの発展性を阻害し、導入時のカスタマイズやサポートを難しくしています」(野田氏)
アーキテクチャーを刷新した新世代CMSが登場
そこでアルファサード社は、従来のアーキテクチャーを刷新した新しい世代のCMSとして、「PowerCMS X(パワーシーエムエス・テン)」を開発した。開発者である野田氏は、元々企業や自治体向けに自ら開発したソフトウェアやMovable Typeを使ってWebサイト構築やCMS導入サービスを手掛け、Movable Typeのプラグインを開発する1人でもあった。その過程で数多くのプラグインを発表し、自社での作業を効率化するための開発フレームワークなどを整備していく中で蓄積した技術・ノウハウを基に、2007年にMovable Typeをベースに開発したハイエンドCMS「PowerCMS」を発表。企業や自治体の重要サイトを中心にシェアを伸ばしてきた。
PowerCMS Xは、そのPowerCMSおよびMovable Typeの操作性を踏襲しつつ、これまで指摘してきた各種課題への対応や現在求められる要件、今後の保守性を鑑みて、ゼロベースで設計し直した最新世代のCMSパッケージとなる。「プログラミング言語もPHPを採用し、サービスもクラウドとして提供しています。今までの歴史の上に引きずられているものを捨てて、新しい発想で作り直しました」と、野田氏は開発意図を語る。
管理画面のレスポンス、Webサイト再構築時の速さ
PowerCMS Xは、現状のCMSが抱えているひずみを解消し、ユーザーと開発パートナーの双方にさまざまなメリットをもたらす。
ユーザーサイドのメリットとしては、まずスピードと操作性の向上が挙げられる。従来比で20倍高速化され、管理画面の操作時のレスポンスやWebサイトの再構築時の速さが圧倒的に向上している。
アクセシビリティ面では、作成するページに対してJIS規格に準拠したWebアクセシビリティチェックを自動で行える。CMS製品として唯一となる「やさしい日本語」エディターが付属し、AI翻訳によるやさしい日本語化に加え、編集の際に手間がかかるルビの追加をボタン操作で行うことができ、音声読み上げにも対応している。
セキュリティ面では、CMSサーバーと公開サーバーを分離している。ファイルのデータをDBで管理しているため、DBのバックアップを取れば、Webサイトをフルバックアップできる。また、Webサイト全体の未来日時プレビューが可能で、ファイルが適切な時期までサーバーにアップロードされず、事前にWebサイトの公開時の状態も確認できる。これにより、昨今要求が高まる情報の適時開示やコンプライアンスへの対応がしやすくなる。二段階認証やIP制限機能、ロックアウト機能によりアクセス制限も行え、情報漏えい対策も万全となっている。
ノーコードによるモデルベース開発でサイト構築を効率化
PowerCMS Xでは、パートナーや導入担当者がCMSベースのWebサイトを構築する際のメリットも大きい。それは結果として、ユーザーにも要件通りのシステム構築、円滑なプロジェクト進捗、セキュリティリスク低減、CMSを導入する際の費用対効果が圧倒的に高まるという効果をもたらす。
まず特筆すべきは、開発のしやすさである。PowerCMSではフレームワーク型のテンプレートを利用して開発を効率化しているが、加えてPowerCMS Xでは、昨今の業務アプリケーション開発で注目されているノーコードによるモデルベース開発という手法を採用している。ユーザー権限管理の仕組みや管理画面、記事を入力する画面などのCMSに必要な共通のフレームワークが用意されていて、その上に「顧客管理」「カスタマー」といったモデルを配置し、ノーコードでWebサイトを作り上げていく。しかもその際には、DBのテーブルも自動で設計される。「製品が正規にサポートしている管理画面から、カスタマイズという範囲の中でモデルの定義を作れば簡単にWeb画面が作れる」(野田氏)仕組みになっている。
パートナーがユーザーの要求に合わせたサイトを構築しやすい
PowerCMS Xは、他のCMSにはない独自視点の設計思想を有する。それは、「社員に仕事を渡すという感覚で製品を開発している」(野田氏)ことである。野田氏は、CMSに特化し、数多くのWeb制作を手掛けるアルファサード社を率いてきたため、単にCMSの利便性を追求するだけでなく、案件時に必要となる作業や機能も想定して製品を開発しているのである。
PowerCMS XはCMSの仕組みが一括で提供されるが、申し込んですぐにWebサイトの利用を開始できるSaaS(Software as a Service)ではなく、利用者に併せてWebサイトの形を設計していくPaaS(Platform as a Service)という形になる。つまり、「パートナーと開発元が一緒になってお客様の要望に合わせた形に創り上げる」(野田氏)ことが前提になっている。
その際に開発会社は、発注元と打ち合わせをしながらアジャイル型でWebの画面を作っていくことができる。
「作ったモデルの定義ファイルは、エクスポートボタンを押すと、定義ファイルをダウンロードでき、それを持ち帰って本番環境に入れるとそのまま作業ができます。次の案件で使いたかったら使ってもいいし、自分たちが使うための定義ファイルを独自に作ることも可能です」(野田氏)
またデータ移行時に便利な機能として、HTMLからコンテンツ部分を自動抽出し、ページに含まれている画像やダウンロード対象のリンクファイルを含めてインポートできる機能を備える。CMS刷新プロジェクトでは予算の多くがデータ移設に費やされるが、データ移行の自動化に加えて、移行の際に旧URLが出てくるため確認や修正もしやすくなり、作業工数が大幅に圧縮される。
「1回のインポートで約500URL分を移行できます。データ移行作業時には画面上のチェックボックス機能で確認ができ、それらは最後に消せるので邪魔なファイルも残りません。エビデンスもCSVで落とすことができるため、納品時のドキュメントを書く作業負荷も激減します」(野田氏)
CMSを導入する際には選定してデザインを組み込み、画面を設計し、データを移し、テストをし、ドキュメントを書いてから運用に至る。つまりPowerCMS Xは、その一連のプロセスもサポートしていくことを考えて設計されているのである。
また製品自体、バージョンアップが頻繁に行われていて、便利な機能がどんどん追加されている。設計時に拡張性を意識して土台をしっかりと作っているため、ユーザーの要求を受けて新しい機能をプラグインとして追加開発することも、自然な流れで行えるようになっている。開発元がマスターエンジニアを中心に複数メンバーでのサポート体制を敷いているため、保守性も担保されている。
このようにPowerCMS Xは、今後を見据えたCMSの再構築時に最適な製品となっている。3章では、ユーザーがPowerCMS Xを活用してどのように課題を解決しているか、またユーザーのニーズに合わせてどのようにパッケージが進化しているかについて紹介する。
編集後記
「第2章 CMSの有効活用の未来のために。CMS環境の現状とあるべき未来は?」はいかがでしたでしょうか。
本記事は、3回シリーズの2回目として、PowerCMS Xの開発元アルファサード社 野田純生氏と正木愉美氏へ「軽視されがちな企業の“超重要システム” 新世代CMSの導入でデジタル時代に備えを ー CMSの活用が企業のコミュニケーションにおける中心に(変わる時代に向けて) ー」と題してCMS環境の現状とあるべき未来についてお話を伺いました。
次章では、ユーザーの利用目的やユースケースごとにCMS製品を検討する際のポイントを解説いたします。PowerCMS Xの事例についてユーザーが最新CMSで何を実現しているのかを業種ごとに紹介いたします。
- 第1章「歴史で振り返るCMSの意義と役割の変化」インターネットが社会インフラになった背景
- 第2章 CMSの有効活用の未来のために。CMS環境の現状とあるべき未来は?(本記事)
- 第3章「最新CMSの導入と活用に向けたポイント」
PowerCMS Xは、高度で多彩な機能と高セキュリティやパフォーマンスを兼ね備えたCMSです。貴社のWebサイトの課題を解決し、高品質なWebサイトへと変えるための最適なCMSです。PowerCMS Xにご興味をお持ちいただけましたら、お気軽にお問い合わせください。
本記事は、株式会社ビジネス・アーキテクツによって作成し、ZDNET Japanに掲載された記事を元に本メディアへ掲載しています。
URL:https://japan.zdnet.com/pickup/ba_202412/35226295/
(掲載期間:2025年6月30日)