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「誰も書かない」「探せない」を越える社内ナレッジ術。GROWI×生成AIで会議記録を『使える資産』に

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大西デジタルコミュニケーション部 部長(ビジネス・アーキテクツ)

事業会社にてキャリアをスタートし、コンテンツ企画やサービス開発の基礎を習得。その後、システム開発部隊の立ち上げに携わりながら、大手デジタルエージェンシーへ参画しました。同社では、新規プロジェクトの推進や既存事業の最適化を牽引し、事業部長を歴任。現在は制作部門の責任者として、これまでの経験を掛け合わせ、AIの業務活用推進と新たな価値の創出に向けて最前線で指揮を執っています。

社内Wikiを導入したのに、気づけば誰も書かない。議事録は残っているのに、必要なときに探せない。ナレッジ共有ツールを入れても、情報が活用されないまま埋もれてしまうのは多くの企業でよく見られます。

Business Architects(以下、BA)でも、同じような課題がありました。そこで取り組んだのが、Wikiツール「GROWI」と生成AIを組み合わせ、会議記録や社内のメモを後から探しやすい形で蓄積する仕組みづくりです。導入から約2カ月で400を超えるページが作成され、社内に散らばっていた情報を手間をかけずに探せる状態に近づけることができました。

この記事では、社内ナレッジがうまく活用されない背景を整理したうえで、BAが実際に取り組んだ仕組みづくりと、運用して分かったポイントを紹介します。

「誰も書かない」「探せない」を越える社内ナレッジ術。GROWI×生成AIで会議記録を『使える資産』に

なぜ社内ナレッジは「書かれず」「探せず」「使われない」のか

社内ナレッジが定着しない3つの壁

社内ナレッジが定着しない背景には、大きく3つの壁があります。

  1. 書く負担
    書くこと自体が「ひと仕事」になっている。フォーマットを整え、推敲し、関係者に確認して…と考えるほど、後回しになる。
  2. 検索性
    せっかく書いても、必要なときに見つからない。フォルダ階層やファイル名に依存し、「どこにあるか」を知っている人しかたどり着けない。
  3. 更新の継続性
    最初は気合を入れて書いても、更新が続かない。情報は古くなり、「どうせ古い」からと参照されなくなる。

この3つは互いにつながっています。書く負担が高いと情報が増えず、情報が少ないと検索しても出てこない。出てこないから使われず、使われないから書く動機も失われる。こうした悪循環が、社内ナレッジの定着を難しくするのです。

社内ナレッジが定着しない3つの壁

ツールを導入するだけでは解決しない理由

多くの企業が「よいツールを入れれば解決するのでは?」と考えます。しかし、ナレッジ共有ツールを導入しても、それだけで解決するわけではありません。ツール導入後に注意したいのが、「ルールを細かく定めすぎること」です。

ナレッジ共有を始めるとき、つい「ちゃんと整えよう」としがちです。「テンプレートに沿って書く」「タイトルの付け方を統一する」「カテゴリを正しく分類する」「公開前にレビューを通す」。一つひとつは正しく見えますが、これらが積み重なるほど、「書く前に守らなければならないこと」が増えていきます

ちょっとしたメモを残したいだけなのに、フォーマットを確認し、分類に迷い、「この内容で公開していいのか」とためらう。きれいに整ったナレッジベースを目指すほど、肝心のナレッジが集まりにくくなります。

だからこそ、BAが最初に向き合ったのは、この「ルールの逆説」でした。「どうキレイに整えるか」ではなく、「どうすれば、とりあえず書いてもらえる状態を作れるか」でした。

解決策①:誰でも書けるナレッジストアをGROWIで用意する

GROWIを選んだ理由:「とりあえず書いておく」が許される場所

数あるツールの中からBAが選んだのは、オープンソースのWikiツール「GROWI」でした。決め手は、機能の豊富さよりも「とりあえず書いておくことが許容される」というWikiならではの性質です。

ドキュメントツールやファイル共有とは違い、Wikiは「未完成のまま置いておける」文化があります。書きかけでもよい、走り書きでもよい、後から誰かが直してもよい。前章で触れた「まず書ける状態」を作るうえで、この「ゆるさ」が重要でした。また、Markdown形式で手軽に書ける点も、導入時の判断材料になりました。

実は、導入前に権限管理についても細かく検討しました。「誰がどこまで見られるか」「編集できる範囲をどう制御するか」の2点です。

しかし、運用を始めてみると、細かな権限管理はほとんど使っていません。むしろ「全社で見られて、誰でも書ける」状態にしておくことのほうが、ナレッジの流通には効果的でした。権限で囲い込むより、まずは開いておく。これも実践から得た学びです。

一方で、誰が見ることができるか、閲覧範囲のコントロールは外せませんでした。GROWIは社内アカウント(SSO/既存の認証基盤)と紐づけて管理できるため、「社外には出さず、社内には広く開く」という線引きが担保できました。細かな権限設定に頼りきらず、社内向けの安心して書ける場所を用意できる点も、導入時の安心材料となりました。

「書く心理的ハードル」を下げる運用の工夫

ツールを選んだら、次は運用です。ここで私たちが徹底したのは、「ルールを足すのではなく、減らす」という方針でした。

  • 完成度を求めない
    走り書き、箇条書き、コピペでもOK。「あとで誰かが直せる」を前提にする。
  • 分類で悩ませない
    どこに置くか迷っても、まず書く。整理は後からでもできる。
  • レビューを必須にしない
    公開前の承認フローを設けない。間違いがあれば社内Wikiらしく後から直す。

「正しく書く」より「とにかく書く」。この点に運用思想を寄せたことで、書く側の心理的ハードルを下げることができました。

「書く心理的ハードル」を下げる運用の工夫

解決策②:AIで「引き出せる」ナレッジにする

GROWIのAIによる対話型検索の仕組み

書く側のハードルを下げると、今度は情報が増えていきます。すると次に課題になるのが、最初にあげた「検索性」です。量が増えるほど、キーワード検索だけでは目的の情報にたどり着きにくくなります。

ここで役立ったのが、GROWIに搭載されたAIによる対話型のナレッジ検索です。蓄積されたページをもとに、自然な言葉での問いかけに対して、関連する情報を探し、要約して返してくれます。

「検索する」から「質問する」体験へ

従来の検索の仕組みは、「正しいキーワードを知っている人」でないと使いこなせないことがあります。ファイル名や用語を覚えていたり、推測できたりしなければ、そもそも目的の情報にたどり着けません。

AI検索では、この前提が変わります。たとえば、「先月の◯◯案件で決まった方針は?」と話し言葉で質問すれば、関連するページをもとに回答が得られます。利用者は「どこに何があるか」を細かく覚えていなくても、必要な情報に近づきやすくなります。

この体験は、「とにかく書く」運用と組み合わさって初めて活きます。情報の量があるからこそ、AI検索で引き出せる答えも増えていきます。書くハードルを下げたことと、引き出しやすくすることは、セットで考える必要があります。

解決策③:会議記録をAIでナレッジ化する

Meetなどの記録を分析・要約し、社内Wikiに登録する流れ

最後に取り組んだのが、日々おこなわれる会議記録の自動ナレッジ化です。会議には、意思決定や背景情報が多く含まれています。しかし、その内容は記録されなかったり、記録されても活用されないまま埋もれてしまったりすることがあります。こうしたことはBAに限った話ではないでしょう。

そこでBAでは、Google Meetなどの会議記録(文字起こし)を起点に、次のような流れを作りました。

  1. 会議の記録(文字起こし)を取得する
  2. 生成AIが内容を分析し、要点、決定事項、論点を要約する
  3. 整形した内容をGROWIの社内Wikiページに登録する

これにより、会議で話された内容を、後から参照しやすいナレッジという形で蓄積できるようになりました。

「書く手間」を減らし、ナレッジが貯まりやすい状態に

この仕組みのポイントは、書く負担を、人ではなくAIが肩代わりする点にあります。

「誰かが議事録を書く」「あとで社内Wikiに転記する」という工程が重いと、どうしても書き手のモチベーションに依存してしまいます。そこで、会議記録をもとにAIが要約し、社内Wikiに登録しやすい形に整えることで、会議が行われるたびにナレッジが継続的に貯まりやすい状態をつくりました。

蓄積された情報がAI検索の対象になることで、会議で話された内容を後から引き出しやすくなります。こうした流れによって、書かれないという壁を下げることができました。

導入して分かった効果と運用の注意点

定量・定性の変化

実際に運用してみると、変化は数字にもはっきり表れました。

象徴的なのが、導入から約2カ月で、作成されたページ数が400を超えたことです。会議記録のナレッジ化に加え、「とりあえず書ける」運用が浸透したことで、社内のあちこちにあった情報が社内Wikiに集まり始めました。

定性面でも、「あの件どうなってたっけ?」という確認が、口頭やチャットではなく「社内Wikiで聞けば」「見ればわかる」に置き換わりつつあります。情報が一箇所に集まり、AIで引き出せるようになったことによる変化です。

定着のためのコツ:「すでにあるナレッジ」をまず入れる

これから始める場合は、まず社内にすでに存在しているナレッジを、入れてみることをおすすめします。

新しく書き起こそうとすると、どうしても身構えてしまいます。そうではなく、手元の議事録、過去のメモ、マニュアル、チャットに流れた知見など、すでにある情報を、まずは形を問わず入れていく。これが定着への第一歩ではないでしょうか。

正直に言えば、BAの400ページも、そのすべてが必ずしも有用とは限りません。重複もあれば、断片的なメモもあります。それでも、はじめは量を増やすことにこそ価値があると考えています。理由は2つです。

  • 情報の量が多いほど、AI検索で引き出せる内容も増える
    使ってもらうため、誰かの課題を解決するためには、まず情報が存在している必要があります。
  • すべてのページがユニークなURLを持つため、共有しやすい
    「このページを見て」とURLを送るだけで、関係者間の認識がそろいやすくなります。

この2点目は、過去にドキュメントやファイル共有で感じていた課題の裏返しでもあります。ファイルベースの運用では、同じ内容のコピーが作られやすく、「どれが最新か」「正しい情報はどこか」が分からなくなることがありました。社内Wikiであれば、一つの情報に一つのURLが対応するため、複製が乱立しにくく、共有もしやすくなります。

推進の鍵:責任者・推進者を明確にして“旗を振る”

ここまで「ルールを減らす」「とにかく入れる」と繰り返しお伝えしてきましたが、ひとつ誤解してほしくないことがあります。それは、ゆるくすることと放置することは違う、という点です。

ルールを減らせば、現場の心理的ハードルは下がります。しかし、ルールが少ないからといって、ナレッジが自然に集まり、勝手に育つわけではありません。立ち上げ期には、「誰が責任を持って、この取り組みを前に進めるのか」を明確にすることが重要です。

BAでも、ナレッジ基盤の責任者・推進者を明確にし、その人が旗を振り続けたことが定着の後押しになりました。推進者が担った役割を具体的に見ていきます。

  • 率先して書く
    「まず自分が、雑でもいいから入れる」姿を見せ、書いてよい空気をつくる。
  • 書かれたものに反応する
    投稿に「ありがとう」「これ助かった」と反応し、書くことが報われる場をつくる。
  • 迷いを引き取る
    「これ書いていいのか」というためらいに対し、「どんどん書いて大丈夫」と判断を引き受ける。
  • 目的を語り続ける
    なぜナレッジを貯めるのか、何のための取り組みかを折に触れて伝える。

ルールという仕組みで縛るのではなく、推進者が方向を示す。ルールを減らした分、推進者が取り組む意味を伝え続けることが、立ち上げ期には欠かせませんでした。

逆に言えば、責任者や推進者が曖昧なまま「ツールだけ用意して、あとは各自で」としてしまうと、せっかくの仕組みも使われにくくなります。ナレッジ共有を定着させるには、ツールを用意するだけでなく、誰が旗を振り、どのように使っていくのかを示し続けることが大切です。

推進者が担った役割

運用の注意点

一方で、注意すべき点もあります。「量」を歓迎する文化は、放っておくと情報の鮮度や信頼性の管理が難しくなる側面があります。

BAでは、「まず入れる、整理は後から」を基本としつつ、重要なページについては、AI検索で参照されやすいよう要点を明確にする、古くなった情報には注記を入れる、といった最低限の手入れを続けています。

ここでも原則は変わりません。ルールで縛って入口を狭めるのではなく、入れやすくしたうえで、必要なところを後から整える。この順番が、ナレッジを育てる重要な鍵だと感じています。

まとめ:ナレッジは「貯める」から「活用して育てる」へ

社内ナレッジが定着しない原因は、ツールの性能だけではありません。きれいに整えようとするほど、かえって書くハードルがあがってしまうことがあります。

BAがGROWI×生成AIで実践したのは、次の3つです。

  1. 誰でも「とりあえず書ける」場所をつくる
    GROWIを使い、ルールを増やしすぎず、社内アカウント連携で安心して書ける場所を用意する。
  2. AIで引き出せるナレッジにする
    AIの対話型検索を活用し、キーワードを知らなくても必要な情報に近づきやすくする。
  3. 会議記録をAIが自動でナレッジ化する
    会議記録をもとにAIで要約し、社内Wikiに蓄積することで、書く負担を減らす。

この3つが噛み合うと、ナレッジは人の努力だけで「貯める」ものから、仕組みの中で活用して育てるものへと変わっていきます。出発点は、難しい設計でも完璧なルールでもありません。まずは、社内にすでにある情報を、形を問わず入れてみることです。

そして、もうひとつ大切なのが、推進する人の存在です。ルールを減らすことと、責任者や推進者を立てて旗を振り続けることは矛盾しません。ゆるく始めやすい仕組みをつくりながら、誰が推進するのかを明確にする。この両輪が、ナレッジ共有を定着させるうえで重要になります。

Business Architectsでは、こうした社内ナレッジマネジメントや情報設計、生成AIを活用した業務改善・DX支援をご提供しています。「ツールは入れたのに使われない」「議事録を活かしきれていない」そんな課題をお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。