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Microsoft PlannerでWBSを標準化する5つのステップ!プロジェクトの成功確率を上げる方法

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プロフィールアイコン(写真):シニアディレクター 野島
野島アカウント&ディレクショングループ/グループマネージャー/シニアディレクター(ビジネス・アーキテクツ)

2008年にビジネス・アーキテクツに入社。システムエンジニアとして中規模以上のシステム設計・システム開発を担当。現在はそのバックグラウンドを活用し、サイト構築案件から運用案件まで様々な案件のディレクターを担当。UXとエンジニアリングの観点から顧客の課題解決を行っている。CompTIA Project+認定資格保持。

あなたのプロジェクトのWBS(作業分解構成図)は、特定の担当者に依存(属人化)していませんか?もしそうなら、それは単なる非効率ではなく、プロジェクト失敗に直結する大きなリスクです。WBSが属人化すると、「計画の遅延」「正確な進捗の把握不能」「ナレッジの消失」といった深刻な問題が発生し、組織全体の成長を阻害してしまいます。

本記事では、この属人化の課題を根本から解決し、プロジェクトの成功確率を飛躍的に向上させる方法を解説します。Microsoft Plannerの機能を最大限に活用し、WBSを標準化するための具体的な5つのステップを、初心者でもすぐに実践できるよう分かりやすくご紹介します。Plannerを単なるToDoリストで終わらせず、組織の「共通の管理基準」としてWBSを機能させるための設計・運用ノウハウを網羅。さらに、標準化を現場に定着させるための組織的なコツも解説します。

WBSの標準化は、属人化の鎖を断ち切り、プロジェクトを「人」ではなく「仕組み」で成功させるための第一歩です。属人化のリスクから脱却し、安定した高品質なプロジェクト管理体制を構築したい方は、ぜひ本記事のステップを参考にしてください。

Microsoft PlannerでWBSを標準化する5つのステップ!プロジェクトの成功確率を上げる方法

WBSが属人化すると何が問題?標準化が必要な3つの理由

WBS(作業分解構成図)はプロジェクト成功の要ですが、もしその作成や管理が特定の個人に依存(属人化)していたらどうなるでしょうか?

本セクションでは、このWBSの属人化がプロジェクトにおいてなぜ深刻な問題を引き起こすのかを徹底解説します。属人化は単なる非効率化に留まらず、知識の共有を阻害します。例えば、担当者の離脱や異動などといった予期せぬ事態が起きた際に、プロジェクトの失敗に直結する大きなリスクとなります。プロジェクトを安定的に成功に導くために、まずは属人化のリスクを正しく理解しましょう。

標準化されたWBSのイメージ

理由1:計画に時間がかかり、プロジェクトのスタートが遅れる

WBSが標準化されていない最大の弊害の一つは、計画を毎回ゼロから構築する非効率性です。

標準化されたテンプレートや作成ルールがない場合、新しいプロジェクトが立ち上がるたびに、担当者は「どのタスクから洗い出すべきか」「どのレベルまでタスクを分解すべきか」「見積もり時間の根拠はどうするか」といった基本的な部分で悩み、多大な時間を費やします。

特に経験の浅い担当者がWBSを作成する場合、過去の成功事例や失敗事例の教訓を活かせないため、不要なタスクを含めてしまったり、逆に重要なタスクが抜け落ちたりするリスクが高まります。結果として、WBSの作成プロセス自体が長期化し、プロジェクトの本来のスタートが大幅に遅れることになります。これは、クライアントとの納期や目標達成時期に直接的な悪影響を及ぼし、プロジェクト全体に初期の遅延という大きなハンディキャップを負わせることになるのです。

理由2:プロジェクトの進捗が見えにくく、遅延リスクが高まる

WBSの属人化は、プロジェクト実行フェーズにおける進捗管理の困難さにつながります。

WBSの粒度や記述方法が標準化されていない場合、担当者Aが作成したWBSと担当者Bが作成したWBSでは、タスクの分解レベルや完了基準が全く異なってしまいます。ある担当者は「〇〇機能開発」といった抽象度の高いタスクで「完了」としてしまう一方、別の担当者は「DB設計」「画面実装」「単体テスト」と細かく分解して管理しているかもしれません。

これでは、プロジェクトマネージャーが全体の進捗を横断的に比較し、正確に把握することが極めて困難になります。粒度の粗いタスクは「順調」に見えても実は内部で深刻な遅延が発生している可能性があり、問題が表面化した時には手遅れという事態になりかねません。正確な状況が見えないため、リソースの再配置やスコープ調整といった遅延を防ぐための早期アクションが取れず、結果としてプロジェクト全体の遅延リスクを大幅に高めてしまうのです。

理由3:ナレッジが共有されず、組織全体の成長が止まる

プロジェクトが終了するたびに、そのプロジェクトで培われた貴重なノウハウがWBSとともに失われるのが、属人化の最も深刻な組織的課題です。

標準化された形式がないため、成功したプロジェクトのWBSであっても、他のチームや担当者がテンプレートとして再利用することができません。「あのプロジェクトでうまくいったタスクの分解方法は?」「予期せぬリスクを回避できたのはどのチェック項目のおかげか?」といったナレッジは、作成者個人の頭の中か、共有フォルダのファイルの中に埋もれてしまいます。

これにより、組織として「より速く、より正確に」計画を立てる能力が蓄積されず、同じ失敗を繰り返すことになります。ノウハウが個人のスキルに依存し続ければ、優秀な担当者が異動や退職をした際、その瞬間に組織の品質レベルが低下してしまうという、組織成長の停滞を招いてしまうのです。

プロジェクトを「点」ではなく「線」で成功に導くためには、WBSを標準化し、すべての経験を組織の共通資産(ナレッジ)として活かし続ける仕組みが必要不可欠です。

Microsoft PlannerでWBSを標準化する5つのステップ

プロジェクト管理ツールとして広く使われているMicrosoft Plannerを、単なるタスク管理ツールで終わらせてはいけません。その機能を活用すれば、WBSの標準化を実現し、組織全体の計画作成能力を底上げできます。

ここでは、プロジェクト管理初心者の方でもすぐに実践できるよう、Microsoft Plannerを最大限に活用して、効率的なプロジェクト計画を実現するための具体的な手順を5つのステップで分かりやすく解説します。ツールの機能を活用し、組織的なナレッジとしてWBSを定着させるための道筋を見ていきましょう。

ステップ1:WBSの共通ルールを定める

標準化の第一歩は、ツールの設定の前に、組織内の共通言語とルールを定義することです。どんなに優れたテンプレートを作成しても、メンバー間でルールが異なれば、進捗報告の解釈がバラバラになり、結局は属人化の温床となります。

特に重要なのは、以下の2点に関する明確な定義です。

  1. タスクの粒度(分解レベル)の定義
    • 「どこまで細かくタスクを分解するか」の基準を定めます。例えば、「1つのタスクは、計測可能で、担当者一人で最大1日〜3日で完了するものとする」といった具体的なルールです。これにより、進捗率の計算が正確になり、タスクの「完了」定義が一貫します。
  2. タスクの命名規則の定義
    • タスク名を見ただけで何をするのかが明確になるよう、「【動詞】+【目的語】+【成果物】」や、「【フェーズ名】_【タスク内容】」など、組織で共通の命名規則を定めます。曖昧な表現を排除し、誰もが理解できるWBSを作成するための土台作りです。

ステップ2:標準テンプレートを作成する

共通ルールが定まったら、過去の成功プロジェクト(初期計画時に設定されたタスクの分解レベル、工数見積もり、期間設定が、実際の作業実績と大きく異ならなかったプロジェクトなど)をベースに標準テンプレートを作成します。これは、WBS作成をゼロから始める労力を大幅に削減し、重要なタスクの抜け漏れを防ぐ最も効果的な手段です。

Microsoft Planner上で、繰り返し発生するプロジェクトの典型的なフェーズ構造、主要なタスクリスト、マイルストーンをあらかじめ組み込みます。プロジェクトの種類(例:システム開発、イベント企画など)に応じて複数のテンプレートを用意することも有効です。

標準テンプレートを作成する

テンプレートには、先行タスクの依存関係(ガントチャートの矢印)まで組み込んでおくと、新しいプロジェクト開始時に期間を入力するだけで、スケジュール全体が自動で調整されるようになり、計画作成の効率が飛躍的に向上します。

ステップ3:バケット、ラベルを活用して必要な情報を定義する

標準WBSテンプレートの価値を最大化するのが、Microsoft Plannerの「バケット」や「ラベル」機能です。これらの機能を活用し、組織独自の共通管理項目を明確に定義します。

バケット(Bucket)は、WBSにおける主要なフェーズや工程、あるいはタスクの進捗ステータス(例:「設計中」「実装」「テスト」「レビュー待ち」)を分類するのに最適です。これにより、作業の流れを視覚的に把握できます。

一方、ラベル(Label)は、より詳細な属性情報や管理情報をタスクに付与するために使用します。例えば、以下のような組織独自の管理項目をラベルとして定義します。

  • タスクの種類(例:ドキュメント作成、バグ修正、機能追加)
  • 関連部署(例:営業部連携、開発部、デザインチーム)
  • リスクレベル(例:リスク高、リスク中、リスク低)

これらのバケットとラベルを共通ルールとして活用することで、「必要な情報が必ずWBSに記載される」状態を作り出し、誰がタスクを作成・管理しても一貫した情報レベルで進捗を追跡できる環境が整います。結果として、プロジェクトマネージャーはタスクボードを一目見ただけで、どこにボトルネックや優先すべき作業があるかを瞬時に把握できるようになります。

ステップ4:入力ガイドやマニュアルを作成する

テンプレートとバケット・ラベルの定義が完了しても、メンバーが正しく使わなければ属人化は解消されません。次のステップは、「誰でも簡単に正しく使える」ための教育資料を作成することです。

作成した標準テンプレートとルールの使い方を簡潔にまとめた入力ガイドまたはクイックマニュアルを作成しましょう。

特に、以下の点について明確な指示を盛り込みます。

  • ステップ1で定めた粒度のルールを、タスク分解のどの段階で適用するか
  • バケットやラベルの各項目には何を記入すべきか(例:ラベル『リスク高』とは具体的にどういう場合か)
  • テンプレートのコピー方法と保存場所(誤って原本を編集しないための手順)

などを、A4用紙1~2枚程度にまとめて共有します。これにより、WBS作成の品質が担当者のスキルに依存しなくなり、新メンバーでもすぐにプロジェクト計画に参加できるようになります。

ステップ5:テンプレートを共有し、継続的に改善する

標準化は「テンプレートを作って終わり」ではありません。作成したテンプレートを全メンバーがアクセスできる共有フォルダやライブラリに保存し、周知徹底します。

そして最も重要なのは、「継続的な改善」の仕組みを取り入れることです。

プロジェクトが完了するたびに、そのプロジェクトで発生した成功事例や予期せぬリスクを洗い出し、WBSテンプレートにフィードバックします。「このタスクは不要だった」「このタスクは分解が甘かった」といった教訓をテンプレートに反映させることで、テンプレート自体が組織の「生きたナレッジ」として進化し続けます。

このサイクルを回すことで、WBSの品質と作成スピードが向上し、組織全体としてプロジェクト成功の確率を確実に高めることができるのです。

WBS標準化を成功させるための注意点とコツ

WBSの標準化を行った上でプロジェクトを真に成功に導くには、ツールの機能を超えた組織的な課題を乗り越える必要があります。この課題をクリアできなければ、せっかくのテンプレートも形骸化し、属人化は解消されません。

ここでは、その組織的な壁を打ち破り、標準化を現場に定着させるための3つの重要なコツを解説します。これらのポイントを押さえ、実効性のある標準化を実現しましょう。

コツ1:最初はスモールスタートで始める

標準化の取り組みで最も失敗しやすいパターンの一つが、「一気に全社展開しようとする」ことです。完璧なテンプレートを目指して時間と労力をかけ、完成した途端に全社に強制適用しようとすると、現場からは「使いにくい」「今までのやり方と違う」と抵抗が起き、定着しない可能性が高くなります。

成功の秘訣は、まずはスモールスタートを切ることです。

  1. 対象を絞る
    • まずは特定の部門や、比較的規模の小さな標準的なプロジェクト一つに絞って、作成したテンプレートを試験的に導入します。
  2. フィードバックを得る
    • 実際にプロジェクトを動かしながら、現場のメンバーから使い勝手や改善点について生きたフィードバックを収集します。
  3. 改善を繰り返す
    • フィードバックを基にテンプレートやルールを修正し、ある程度洗練された段階で次の部門へと展開していく。

この段階的な導入こそが、現場の納得感を得て、標準化を組織全体に根付かせるための賢明なアプローチです。

コツ2:メンバー全員を巻き込む

WBS標準化は、一部のプロジェクト管理部門やマネージャー層だけで進めてはいけません。実際にWBSを使ってタスクを実行し、進捗報告を行う現場のメンバーを初期段階から巻き込むことが極めて重要です。

テンプレート作成の初期段階で、以下の意見をヒアリングしましょう。

  • どの粒度までタスクが分解されていれば作業しやすいか?
  • 進捗報告に必要な情報は何か?
  • 現在のWBS作成で非効率だと感じている点はどこか?

現場の意見を取り入れたテンプレートは、実務に即しているため使いやすく、「自分たちが作ったルール」という当事者意識が生まれます。これにより、新しいルールやテンプレートへの抵抗が最小限に抑えられ、スムーズな定着につながります。一方的な「押し付け」ではなく、「共創」のプロセスを踏むことが成功の鍵です。

コツ3:専門家の力を借りることも選択肢に入れる

WBSの標準化は、過去のプロジェクトのノウハウを体系化する取り組みであり、高度なプロジェクトマネジメント知識と、組織変革を推進するスキルが求められます。

もし社内に標準化の経験をもつ人材や、他社の成功事例に精通したシニアディレクターがいない場合は、外部コンサルタントなどの専門家の力を借りることも賢明な選択肢です。

外部の専門家は、以下のような点で標準化を強力にサポートしてくれます。

  1. 客観的な視点
    • 社内の慣習や常識に囚われず、組織の問題点を客観的に指摘し、最適なルールを設計できます。
  2. 豊富な成功事例
    • さまざまな業種・規模の成功事例に基づき、失敗しないテンプレートと導入プロセスを提供できます。
  3. 推進力の強化
    • 組織的な抵抗を乗り越え、変革を一気に加速させるための実行力と専門知識を提供できます。

自社だけで何年も試行錯誤を繰り返すよりも、プロフェッショナルな知識を活用して短期間で高品質な標準化を実現することが、結果としてプロジェクト成功への最短ルートになるのです。

まとめ:WBS標準化はプロジェクト成功への第一歩

本記事では、WBSの属人化がプロジェクトの遅延や失敗に直結する大きなリスクであることを解説し、Microsoft Plannerを活用した具体的な標準化の5つのステップ、そして成功に導くための組織的なコツをご紹介しました。

改めて、WBSを標準化することのメリットを整理しましょう。

WBSを標準化することのメリットをまとめた表。項目と標準化によって得られる効果が記載されている。計画効率の項目では、毎回ゼロから作成する手間が省け、プロジェクトの立ち上げが迅速化する。進捗管理の項目では、粒度が統一され、進捗の把握が容易になり、遅延リスクを早期に発見できる。ナレッジ化の項目では、成功・失敗の教訓がテンプレートに蓄積され、組織全体の能力が向上する。

ツールを超えた「共通の管理基準」の定着が鍵

重要なのは、Microsoft Plannerはあくまで標準化を実現するための「手段」であるということです。最も価値があるのは、ツールが生み出す「共通の管理基準」を組織全体に根付かせることにあります。

この「共通の管理基準」があることで、経験の有無に関わらず誰でも一定レベルのWBSを作成でき、プロジェクトの品質が「人」ではなく「仕組み」によって保証されるようになります。これが、プロジェクトの成功確率を飛躍的に向上させる真の力となります。

組織的な課題解決と標準化の推進をサポート

しかし、WBSのルール決めやテンプレート設計、そして何より現場への定着は、自社のリソースだけで推進するには大きな労力をともないます。「忙しくて標準化まで手が回らない」「ルールは決めたが誰も使ってくれない」といった組織的な課題に直面することは少なくありません。

私たちBusiness Architects(ビジネス・アーキテクツ)のプロジェクトマネージャーは、まさにこのような課題を解決するために存在します。Microsoft Plannerを活用した最適な標準テンプレートの設計から、現場への教育、組織文化への定着支援まで、実効性のある標準化を最短距離で実現するためのプロフェッショナルなサポートを提供します。

属人化の鎖を断ち切り、プロジェクト成功を組織の標準にしたいとお考えでしたら、ぜひ一度ご相談ください。