家では漫画やゲームなどの誘惑が多く、家族やペットにも邪魔されて、テレワークになってから仕事が手につかなくなった――。緊急事態宣言中にそんな話がインターネットで多くの共感を呼んでいました。
仕事に集中するためのテクニックは、古くから世界中の人たちが模索してきました。その一つが生産性を向上させるという時間管理術「ポモドーロ・テクニック」。考案者は起業家のフランチェスコ・シリロ氏で、国連やイタリア中央銀行 、さらにはノキア、ソニー・モバイルといった大手企業でも、このテクニックが高い評価を受けています。
今回はこのポモドーロ・テクニックを、実際の業務に使ってみたいと思います。
テクニックの基本は"1ポモドーロ=25分+5分"
ポモドーロ・テクニックは5段階の基礎プロセスで構成されています。
計画
「仕事の在庫」シートにたまっているタスクを記載。その中から今日やるべきことを、「今日やること」シートに優先度が高い順に書き写していきます。
追跡
ここまでの準備ができたら、タイマーを25分にセット。カウントの開始と同時に、一番優先度が高い作業を開始します。タイマーが終了したら、「今日やること」シート上で、作業中の項目の横に「×」を記入。3~5分の休憩を取ってください。
なお、この休憩時間中は極力頭を使わないようにします。水分を補給したり、同僚と話をしたり。メールの送受信など、仕事に関する行動はNG。心身を仕事から切り離します。
これを1ポモドーロ(サイクル)として、4ポモドーロが終了したら、今度は15~30分の休憩を取ります。メールの送受信などは、このタイミングで済ませておきたいですね。ただ、頭を使うことは最低限にしておきたいところです。
そのうちに作業中のタスクが片付いたら、残りの時間は、それまで作業していたタスクの情報整理や反復などに使います。そして、また1ポモドーロが始まって……。
記録・処理・視覚化
そうして、1日が終わったら、最後に「記録」シートに、今日行った作業を、それに必要だったポモドーロ数(×の数)とともに書き出します。この記録は後に、作業に必要な平均ポモドーロ数を割り出したり、改善のための取り組みなどに利用できるわけです。
その他、予定外や緊急のタスクへの対応、「仕事の在庫」シートにある各タスクの分解・融合といった整理、各タスクに必要なポモドーロ数の予測、ポモドーロ・テクニックのチーム運用など……。
テクニックの内容は多岐に渡りますが、基本は“1ポモドーロを繰り返すこと”。これによって25分間の作業に集中できるだけでなく、スケジューリング能力を高め、“タスクの達成感”という成功体験を繰り返すことによるモチベーション向上が期待できるといいます。
ポモドーロ・テクニックの専用アプリを使ってみた
さて、ポモドーロ・テクニックに欠かせないのがタイマーです。シリロ氏はトマト(=ポモドーロ)の形をしたキッチンタイマーを使ったようですが、わざわざ購入しなくても、スマホのアプリで代用できます。
今回はiPhoneアプリの「Focus To-Do: ポモドーロ技術 & タスク管理」(以下、Focus To-Do)を使ってみました。「ポモドーロ」で検索すると一番上に表示され、ユーザー評価も4.7と高いようです。他にもいくつかアプリをインストールしてみましたが、「Focus To-Do」はタイマーが4ポモドーロごとの長い休憩に対応しており、無料でタスク登録もできるのが好印象でした。
「仕事の在庫」「今日やること」「記録」と3つのシートを使うポモドーロ・テクニックですが、「Focus To-Do」には初期状態で「今日」「明日」「近日中」など複数のシート(アプリ上ではプロジェクト)が用意されています。新たなシートを追加することもできるようなので、まずは「仕事の在庫」シートを作ってみました。
さっそくタスクを登録していきましょう。「Focus To-Do」ではタスク名に加えて、期限、重要度も設定できます。その他、繰り返しのタスクを設定するなど、高度な機能もあるようですが、その利用には有料アップグレードが必要です。
タスクを登録した後で「今日」のシートを開くと、期限を今日に設定したタスクだけが表示されました。なので、これを「今日やること」シートの代わりに使うことにします。
登録したタスクの右にある「▶」をクリックすると、タイマーがスタートするので、それに合わせて作業を開始します。そして、25分が過ぎるとアラームが鳴り、引き続き5分の休憩時間のタイマーがスタート。これによって、スムーズにポモドーロ・テクニックを、日々の業務に取り入れることができます。
さらに、作業を進めるにつれて、タスクの処理に使ったポモドーロ数が、時計型のアイコンで表示されていきます。終了したタスクはチェックを入れることで、完了済み扱いにすることが可能です。
1日の最後に完了済みのタスクを見れば、どの作業に、どれだけのポモドーロ数を使ったのかが一目瞭然ですね。想定以上に時間を使ってしまったタスクがないかなど、今日一日の仕事を見直すのに役立ちそうです。
ポモドーロ・テクニックを1週間使ってみて
この原稿を書いている時点で、ポモドーロ・テクニックを使い始めてから1週間が経ちました。
その中で体感したのは、テクニックを使っていると、25分が凄く短く感じられること。その短く感じられる時間の中で、仕事が次々と片付いていくので、「しんどい」や「疲れた」と感じることが少なくなった気がします。むしろ、最初のころは5分の休憩時間に入ると、「早く次の仕事がしたい」と感じることさえありました。
また、休憩に入ることで頭の中をゼロに戻すので、仕事を再開した際に、そのまま作業を続けていたら無かったであろう“気づき”もありました。休憩の開始時、仕事の再開時にはタイマーの開始ボタンを押すのですが、この時に既に使ってしまったポモドーロ数が目に入るので、「工数を考えると、この時間の使い方はマズいな……」などとペースを調整することもできます。
ただ、長い休みに入るまで、メールをしないというのは、私の仕事の内容では少し無理がありましたね。5分の休憩が終わったら、必要に応じてメールの送受信を挟み、次の25分をスタートしていましたが、それでも十分に仕事の集中力は高まった気がします。
まとめ
仕事を集中して短時間で終わらせることができれば、自由な時間が捻出できます。「デキる人は時間の使い方が上手い」というイメージがありますが、それは単に効率が良いというだけでなく、余った時間を学びやスキルアップに利用しているという側面があるのかもしれませんね。
昨今では顔が見えないテレワークにおいて、成果主義の風潮が高まっています。日々の業務できちんと成果を出すためには、ポモドーロ・テクニックのような時間管理術を駆使するなど、自分に合った自己管理能力を身につける必要がありそうです。
参考
- Francesco Cirillo(2018). The Pomodoro Technique: The Acclaimed Time-Management System That Has Transformed How We Work. Currency. (フランチェスコ・シリロ 斉藤裕一(訳)(2019). 『どんな仕事も「25分+5分」で結果が出る ポモドーロ・テクニック入門』 CCCメディアハウス)