教育分野で多様なサービスを展開するリヴィジョングループ様が取り組んだ「採用サイト改革」は、サイト公開から1年で採用者数が倍増という成果を上げ、単なるリニューアルにとどまらない価値を生み出しました。
前編では、企業カルチャーの言語化やスローガン設計など、採用コンセプトの土台づくりに迫りました。
後編となる本記事では、前編に引き続きご登場いただく富永 光太郎氏(株式会社リヴィジョン 代表取締役)と田坂 圭吾氏(株式会社キャリアビスタ ブランド コミュニケーション課 課長)へのインタビューを通じて、制作の裏側や現場での工夫、そして今後の採用戦略について紐解いていきます。
採用サイトの刷新を検討中の方にとって、実践的なヒントが満載です。ぜひ前編とあわせてご覧ください。
リヴィジョン様が実践する“採用サイト改革”
- 【前編】課題の見える化とコンセプト設計の舞台裏
- 【後編】リニューアルの成果をどう活かすのか?(本記事)

インタビューを受けた人
- 富永 光太郎様代表取締役(株式会社リヴィジョン)
暁星高等学校、早稲田大学を卒業。株式会社日経BP社等での勤務を経て独立。現在は、「Craft Careers」「Close Together」を理念に掲げ、教育業界の持続可能な発展に貢献すべく、学校の経営・広報・人材・教務の観点から、私立学校および公立学校を支援する事業を展開している。
- 田坂 圭吾様ブランドコミュニケーション課/課長(株式会社キャリアビスタ)
早稲田大学教育学部を卒業後、大手塾での算数指導を経験。2009年より株式会社キャリアビスタで教員の就職支援や私立学校の生徒指導に携わる。教育現場とキャリア支援の経験を活かし、現職ではグループの価値を高め、認知度の向上に努めている。
企業理念を言語化していく「プロセス」の重要性
前編では、「採用サイト公開後の1年間で採用者数が倍増した」と伺いました。そのほか、特筆すべき成果があれば教えてください。
田坂様:「Close Together」と「Craft Careers」というスローガンを用いて、会社のビジョンを社内外に発信できるようになったことが大きな成果だと感じています。
当社では毎年5月から6月にかけて、前年度の総括と次年度の方針をグループ社員全員に説明する場があります。
その際、「グループ・会社として皆さんとどのように関係を構築していきたいのか」「お客さまに対してどのような価値を提供していくのか」を、きちんと言葉で伝えられるようになりました。
採用サイトの制作過程で、自分たちのミッションとバリューを再確認し、整理して言語化したおかげだと感じます。
その採用サイトのコンテンツは、どのような方針で企画されたのでしょうか?
田坂様:当社として初めての採用サイト制作でしたから、基本的にはBusiness Architects(ビジネス・アーキテクツ、以下BA)さんのご提案に従ってスタンダードなものを目指しました。ただ、現場社員のインタビュー記事は、BAさんから強く勧められたこともあり、絶対に入れたいと思いました。
社員インタビューの初回は、メディア運営部門「リヴィジョン」と、人材サービス部門「キャリアビスタ」の責任者に語ってもらいました。それぞれの部門の思いをどのように伝えるか、参加者と相談して決めていきました。
他にも、若手社員の単独インタビュー「Staff Story」に関しては、本当に率直な意見を語ってもらい、「リヴィジョングループのリアル」をお届けすることを目指しました。現在、6本の記事がアップされています。出演者の皆さんやBAさんのご協力のおかげで、社風や働き方がよくわかる、どれも中身の濃い内容に仕上がっていると思います。
記事制作過程で苦労した点はありますか?
田坂様:全体的にはBAさんと密に連携してスムーズに進行できたのですが、原稿ができあがってから赤字のやりとりが多くて少し大変でした。
というのも、私たちが日常業務で使っている言葉や、業界では当たり前の専門用語を原稿でも使用したところ、BAさんから「業界経験のない求職者の方でもわかる、平易な言葉に換えたほうがいいですよ」といったご指摘を度々いただきました。
言われてみれば、確かに一般の方の誤解を招いたり、齟齬を生んだりするような表現が多々あったので、コミュニケーションをとりながら修正していきました。
富永様:本当にBAさんのアドバイスには助けられました。そもそも当社の事業は、製造業や小売業とは異なり、何か「形があるもの」を提供しているわけではありません。
しかも、「教育」という身近でありながらブラックボックスも多い業界にあって、業務内容や提供価値を伝えるのがなかなか難しいんですよね。
たしかに、「教育」の現場は定性的な要素も多いイメージがありますね。
富永様:そうなんです。そのなかで、BAさんはさまざまな業界のWebサイト制作で蓄積された知見をもとに、中立的な立場で的確なアドバイスをくれました。
正直、もっとリーズナブルな制作会社はあっただろうし、知り合いのフリーランスのエンジニアに依頼するという選択肢も考えたのですが、そうしたところに依頼してしまうと、恐らく私たちの言うままに動いてしまい、いいモノにならなかったはずです。
田坂様:その点、BAさんは「他社の場合はこうでした」「こっちの見せ方のほうがいいですよ」「最近の流行はこうです」などと具体的な提案をしてくれながら、サイトをよりいいモノへと導いてくれました。
いまもサイトの更新や運用をBAさんにお願いしていますが、さまざまな引き出しや知恵があって、頼りになる存在です。
富永様:そもそも「Craft Careers」という、今後の事業展開の核になる言葉もBAさんと一緒だからこそ生まれた言葉ですから、今回のサイト制作をBAさんに依頼して本当に良かったと思っています。
求職者に寄り添って「教育現場の実情」を発信する
採用サイト公開から1年が経ちました。今後、どのように運営していくのか展望をお聞かせください。
富永様:社会全体、あるいは業界内で採用トレンドは時々刻々と変化していくと思いますから、その変化についていけるようにコンテンツの充実を図るなど、ブラッシュアップを続けていきたいですね。
たとえば、「Staff Story」の記事は、いまは若手中心の構成ですが、経験豊富なベテランを採用するためには、相応の社員を登場させたほうがいいのかもしれません。また、事業が全国規模になれば、PRの仕方も変える必要があると思います。
あくまで採用したい人材に合わせたコンテンツ発信をしていく必要がある、と。
富永様:そうです。ただ、一貫して言えるのは、採用情報の発信と職場環境の改革は、セットで行わなければならないということです。いくら人を採用しても、定着してくれなければ意味がありません。
求職者自身だけでなく、そのご家族やパートナーさんにも「リヴィジョングループっていい会社だよね」と言っていただけるよう、多様性が認められる働きやすい環境をつくっていきたいと思います。
そして、そこで生き生きと働く姿を採用サイトで紹介することで、また多様で有能な人材が集まる。そんないいサイクルを回していきたいですね。
田坂様:私は個人的に、今回、採用サイトという名の“ブランドサイト”をつくったと思っています。先ほども申し上げましたが、「Close Together」と「Craft Careers」という言葉を軸に、存在意義や提供価値をまとめたサイトになったので、ぜひ社員の方々にも見ていただきたい。
志をひとつにして、全社員が同じ方向を向いてこれから進んでいくための拠り所として、このサイトを活用していきたいと思います。
昨今、注目されている「パーパス経営」に近い考え方ですね。では、リヴィジョングループとしての今後の事業展望について教えてください。
富永様:前編でも少し触れましたが、現在は、お客さまの多くが関東圏の中学校、高校ですから、これを全国へと拡大していきたいですね。
その際には、社員だけで仕事を回すのは難しくなると思いますから、外部のパートナー企業やフリーランスの方々とも連携しながら、仕事の効率性を上げていく必要があると考えています。そうした場合には、採用サイトもまた違った利用方法がありそうです。
「人材サービス」という領域では、そもそも志望者が減少しているなかで、どのように採用を維持していくのでしょうか?
富永様:教員の流動性を高めるためには、もっと「働く場としての学校の情報」を発信していく必要があると考えています。
たとえば、多くの高校が「早慶上智に○○人合格!」「△△部が全国優勝!」といった生徒の活躍の情報をPRしています。もちろん素晴らしいことですが、そこで働く人(教員)の情報はほとんどわからないのが実情です。
たしかに、学校情報で「教員の働き方」の情報は少ない気がします。
富永様:教員採用希望者が知りたいのは「職員室の雰囲気」だったり、「各種手当などを加味した本当の給与」といった情報だと思います。
学校の内情を公表することは、なかなか難しい部分もありますが、メディア事業を手がける私たちとしては、できる限り求職者に寄り添った情報を発信していきたい。「教員不足」という社会課題の解決に微力ながら貢献していきたいと思います。
田坂様:本当に教員採用を目指す皆さんのモチベーションが上がるような情報を発信していきたいですね。
教員の皆さんが生き生きと働くことは、巡り巡って生徒さんのためになります。「Craft Careers」を胸に、学校や教育のすべての人が幸せになれるよう、私たちにできることを頑張っていきたいと思います。
ミスマッチを減らす「真摯な情報発信」を心掛ける
最後に、採用サイトの新設やリニューアルを検討されている企業へアドバイスをお願いします。
田坂様:やはり「ミスマッチ」は避けなければいけないので、なるべく会社の実状をわかりやすく伝えることが重要だと思います。
また、入社時はミスマッチではなかったとしても、ライフステージの変化によって、これまで通りの働き方ができなくなるなど、事後的に「ミスマッチ」が生じてしまうケースもあると思います。
そうした「ライフステージの変化」を迎えても、辞めずに長く働いてもらえる環境をつくる。多様な働き方ができる会社だということを採用サイトでも発信していきたいですね。
富永様:すでに採用サイトを公開されている企業にとっては、釈迦に説法だと思いますが、やはり大切なことは「嘘をつかないこと」だと思います。
世の中には都合のいいことばかりを並べて、とにかく応募者を集めようとする企業の採用サイトもありますが、それは結局、定着につながりません。採用する側も、される側も幸せにならない。真摯に情報を発信することが大切だと思います。
編集後記
後編では、今回の採用サイトの工夫点、より具体的な成果、今後の採用戦略などについて伺いました。取材を通じて感じたのは、採用サイトは単なる「応募の窓口」ではなく、「企業の想いと未来を描くメディア」だということです。
印象的だったのは、富永様の「BAさんは、私たちの意見を絶対的なものとせずに、膨大な知見のなかから、多様な提案をしてくれる。一緒にものづくりをしている感じがする」というお言葉でした。
企業理念の言語化からコンテンツ設計、社員インタビューまで、常に「どうすれば企業の魅力を正しく伝えられるか」を考え抜いた結果、完成したサイトは採用者数の増加だけでなく、「企業価値を再定義する機会」にもつながっています。
私たちは今後も、お客さまとともに未来を描きながら、採用やブランディングの課題解決に取り組んでいきます。ともに考え、議論し、最適な答えを導き出す――。そんな伴走型のパートナーとして、企業の想いやビジョンを形にするお手伝いを続けていきたいと考えています。
本記事は前・後編の構成となっています。前編では、リヴィジョングループ様の採用課題からサイト制作のコンセプト設計、サイト立ち上げ後の効果について紹介しています。ぜひ前編もあわせてご覧いただき、採用サイトづくりのヒントにしていただければ幸いです。
リヴィジョン様が実践する“採用サイト改革”
- 【前編】課題の見える化とコンセプト設計の舞台裏
- 【後編】リニューアルの成果をどう活かすのか?(本記事)