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コーポレートサイトの価値向上にコンテンツが果たす役割とは

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BAsixs編集部

日々の業務の中で「あたりまえ」をアップデートできた取り組みを発信しています。

コーポレートサイトは企業の顔ともいうべきコミュニケーションツールです。近年、コーポレートサイトが多様な役割を果たすようになる中、コーポレートサイトにおけるコンテンツの重要性がますます高まってきています。優良なコンテンツは、コーポレートサイト来訪者のユーザー体験を向上させ、企業への信頼感の醸成に効果を発揮します。

本記事では、以下のような

  • 優良なコンテンツを制作するうえで意識すべきこと
  • コーポレートサイトの価値向上にコンテンツが果たす役割

について、Business Architects(以下、BA)のデザイン&コミュニケーションサービス事業部 クリエイティブグループ グループマネージャーであり、人間中心設計スペシャリストの森 太輔に聞きました。

コーポレートサイトの価値向上にコンテンツが果たす役割とは

インタビューした人

プロフィールアイコン(イラスト):ディレクター/フロントエンドエンジニア 富本
富本ディレクター/フロントエンドエンジニア(ビジネス・アーキテクツ)

地元・愛知の印刷会社や広告会社にてWeb制作に携わる。2014年頃、フロントエンドエンジニアとしてBAに入社。現在、ディレクターとして開発・運用の進行管理やWebサイトのガイドライン作成やコンポーネントの設計・作成を担当しています。好きなキャラクターはリラックマ。イタリアとスイスに行きたい。

インタビューを受けた人

  • プロフィールアイコン(写真):ゼネラルマネージャー/CDO(Chief Design Officer)/人間中心設計スペシャリスト 森 太輔
    森 太輔ゼネラルマネージャー/CDO(Chief Design Officer)/人間中心設計スペシャリスト(ビジネス・アーキテクツ)

    2008年、企業の情報コミュニケーション戦略を実現するプロジェクトを中心に、アートディレクター及びリードデザイナーとしてビジネス・アーキテクツに入社。特に日本の製造業のグローバル展開プロジェクトに長年関わっている。現在はデザイン部門の責任者も務める。

コーポレートサイトの機能・役割・目的

最初のテーマは、コーポレートサイトの機能・役割・目的についてです。

コーポレートサイトとは何か?

そもそもコーポレートサイトとは「どんなサイト」か、お客さまごとにイメージが違うと思います。どう説明していますか。

森:コーポレートサイトの役割は大きく3つあると考えています。まずは、「企業ブランドの強化」、次が「優秀な人材の獲得」、3つめが「社内の情報ツール」です。

企業ブランドの強化とは、自社が伝えたいメッセージや強みを押し出して、お客さま企業などに届けるという役割です。また、人材の獲得では、コーポレートサイトとは別に採用サイトがあっても、その会社について知ろうと思う人はやはりコーポレートサイトを訪れます。優秀な人材の獲得という意味でもコーポレートサイトは非常に重要な役割を担います。

また、グローバル企業や大企業になると拠点も多く、自社がどんなメッセージを発しているのか従業員も実は正しく理解していないということがよくあります。企業としての社内外に向けたメッセージを「従業員の誰もが簡単に見られる」コーポレートサイトで発信する、社内の情報ツールとしての位置づけも大きいと思います。

インターネットやWebの進化にともない、コーポレートサイトの役割、求められる機能はどう変わってきましたか。

森:以前は企業の情報発信ツールとして、会社概要やサービス情報を掲載する「静的」な役割のサイトが大半でした。それが今では、お客さま企業や自社の製品やサービスに興味をもってくれた潜在顧客との双方向のコミュニケーションやブランド体験を提供する「動的」なプラットフォームへと進化しています。

サイト来訪者がどのコンテンツを見ているのかを分析し、パーソナライズ化されたコンテンツを配信することでユーザー体験を高め、精度の高いターゲティングでコンバージョンにつながる動線を設計することが求められています。

コーポレートサイトを作る目的を端的に示すと、どのようなことでしょうか。

森:コーポレートサイトの目的は、「自社が伝えたいメッセージや強みを通じて、ファンを増やすこと」です。コーポレートサイトには取引先や求職者、投資家などさまざまな人たちが訪れ、それぞれのニーズもバラバラです。ただし、その企業の製品やサービスを購入する、その企業で働く、その企業に投資する、いずれも根底には「信頼」が必須です。自社を「信頼」してもらい、共感してもらい、ファンになってもらう。その役割を担っているのがコーポレートサイトだと思います。

写真:森が話す様子1

コーポレートサイトにおけるコンテンツの重要性

2つめのテーマは、コーポレートサイトにおけるコンテンツの重要性です。

企業価値を高めるコンテンツの3つのポイント

コーポレートサイトにおけるコンテンツの重要性をどのように考えていますか。

森:コーポレートサイトは、単なる情報発信の場を超え、企業価値を高める重要なタッチポイントとして機能すべきです。タッチポイントとして「その企業らしさ」を打ち出せるのが「コンテンツの力」だと感じています。企業らしさを表現して、ファンを増やす、その重要な役割を担うのがコンテンツです。

コーポレートサイトとは、デジタルコミュニケーションの領域における「企業の顔」ともいえます。企業としてのリアルな取り組みや思い、企業ならではのストーリーなどを届けることで信頼感や親近感を醸成し、ファンを増やすことにつながります。コンテンツを定期的に更新し、企業の「今」を伝えることで、サイト来訪者との継続的なタッチポイント=接点を生み出すことができるのです。

その視点に立つと、コンテンツは作って終わりではなく、常にサイト来訪者のニーズに応じ、疑問に答えるものでなければなりません。事例紹介やFAQ、業界トレンドの発信を通じて、訪問者に「この企業と関わりたい、もっと知りたい」と思わせる動機を提供すること、それもコンテンツの重要な役割です。

コーポレートサイトにおいても検索エンジンからの流入を増やすため、SEO記事を「安易に大量に」掲載する動きもあるように感じています。

森:コーポレートサイトは、「企業の顔」であると同時に「信頼を育む場」です。短期的なSEO対策だけに依存せず、サイト来訪者にとって価値ある情報を提供することで、中長期的なブランド価値の向上を実現することが重要です。その視点に立ったとき、どのようなコンテンツが求められるのか。考えているポイントは3つあります。

ひとつは、文字通り「信頼性を高める」コンテンツです。高額な製品やサービスの購入は重要な意思決定をともないます。お客さま企業の担当者だけで決められるものではなく、その上長、経営層などさまざまなステークホルダーがいます。その人たちに承認してもらえる、信頼してもらえるコンテンツが必要です。

その一例が事例紹介です。それも「〇〇企業に導入されました」という事実だけを記載するのではなく、成果や導入プロセスを詳細に記載することがポイントです。その他、自社の専門性を伝えるホワイトペーパーや技術資料、業界特有の課題解決に役立つ情報などのコンテンツも信頼性を高めるのに有効です。

2つめは、ストーリーテリングを活用して企業の魅力を発信するコンテンツです。例えば、自社製品について、「どのようなプロセスで作っているのか」を明確に示し、そこに込めた想いや使命感などを伝えることで信頼が高まるでしょう。また、企業のミッションやビジョンを踏まえて、自分たちが「どのように社会課題を解決しているのか」をストーリー仕立てで紹介するといったコンテンツも共感を得るのに効果的だと考えています。

3つめは、意思決定を推し進めるコンテンツです。製品やサービスを検討するサイト来訪者が抱える疑問や不安に応えるコンテンツで、FAQやトラブルシューティングガイドなどが相当します。こうしたコンテンツは、ただ掲載しておくだけではなく、そのコンテンツからリンクなどでサイト内の「どこにつなげるか」を意識することが重要です。購入を検討しているサイト来訪者がFAQやトラブルシューティングを見た後にどこに向かうのか、裏側に潜むニーズは何かまで意識してコンテンツを検討することが大切です。

コンテンツの重要性を踏まえて「コンテンツとは何か」と聞かれたら、ひと言でどう説明しますか。

森:ずばり「ラブレター」です。ラブレターには書き手の気持ちが込められていないとならないし、それを読む相手の気持ちも考えなくてはなりません。相手がどんな言葉を受け取ったら嬉しいか、どんな書き方をすれば気持ちが伝わるかを考えるでしょう。それと一緒だと思います。

ただ、本物のラブレターと違うのは、コンテンツは誰が読むのかわからない、その前提で作らないとなりません。だからこそ、よりわかりやすく、より共感を得られる内容であることが求められます。ハードルはかなり高く、決して安易に作れるものではないのです。そして、あるコンテンツを読んだサイト来訪者を、別のコンテンツに誘導するような導線を考え、ひとつのコンテンツで完結するのではなく、次々に誘導しながらトータルでサイト来訪者のニーズを満たすようにコンテンツを構成していくという考え方をもつことも必要です。

写真:森が話す様子2

ユーザー体験(UX)を向上させるコンテンツは「戦略的情報資産」

優良なコンテンツがもたらすコーポレートサイトへの効果や影響をどう考えていますか。

森:優良なコンテンツは、「この企業ならでは」の魅力を印象づけ、ブランド価値向上に貢献します。

もう一つは、ユーザー体験(UX)の向上です。サイト来訪者が求める情報に迅速かつ的確にアクセスできる構造や、魅力的なビジュアルやコピーが盛り込まれたコンテンツは、閲覧体験そのものを心地よいものにします。結果として、直帰率の低下や滞在時間の増加といった具体的な成果につながります。また、優良なコンテンツは、来訪者の興味を引くだけでなく、次の行動(お問い合わせ、資料請求、購入など)へのきっかけにもなります。

優良なコンテンツとは単なる「情報の羅列」ではなく、企業の価値観を伝え、サイト来訪者との関係性を深める「戦略的情報資産」だと考えています。そのためにはUXデザインと一体化したコンテンツ戦略が不可欠で、総合的に考えながら設計していく必要があると思っています。

企業の独自性・競争優位性を伝えるためのコンテンツ戦略

UXを向上させるコンテンツを制作するのに重要なことはどのようなことでしょうか。

森:前提はお客さまのことを知ること、顧客ニーズの深い理解です。お客さま自身も気付いていないことや、自分たちが改めて知らなくてはいけないことなどを、ペルソナやカスタマージャーニーを考えながら具現化していきます。そして、誰にどんなメッセージを伝えたいのか、コンテンツの根幹をお客さまとすり合わせしておきます。これができないまま作り始めると、制作が進む中で「あれこもれも」となってしまいます。

また、コンテンツの戦略的設計も重要です。コンテンツ制作では、顧客の課題を解決する道筋を意識します。どんな目的や課題を解決したいのかを考えるということ。長文が必要な場合でも、見出しや画像を活用して情報を整理し、読みやすさを担保することも細かいことですが現場経験から得たノウハウです。

そして、「共感」や「期待」を抱くようなストーリーテリングを意識することが大切です。例えば、企業の挑戦や成功事例を具体的に紹介する特設ページなどを作り、企業側が伝えたいメッセージや想いが記されたコンテンツと、それを具体化した事例とを「行ったり来たり」しながら読み込み、理解を深めることができるようにするのも、「わかりやすい」というUXを高めることになります。

そして、データに基づく改善の継続も忘れてはなりません。コーポレートサイトのリリース後も、Google Analyticsやヒートマップツールを用いてユーザー行動をモニタリングし、課題を特定して改善を続けます。

もうひとつ、ある程度早くリリースすることも大事だと思っています。リリースするのが遅れると市場環境などの状況が変わってしまう可能性があります。タイムリーに適切なメッセージを発信することも重要です。

企業の強みや技術的優位性、実績を効果的に伝えるコンテンツを作成した事例を教えてください。

森:味の素さまのコーポレートサイトでのコンテンツ制作の事例があります。もともとグローバルサイトのリニューアルで、いろいろな国・地域で発信するメッセージが統一されていないという課題がありました。味の素さまのビジネスが伝わっていなかったのです。そこで、「People(人)」「Social(社会)」「Business(ビジネス)」の切り口で訴求要素を整理し、それぞれの要素をストーリーとして編集することで共感を生み、味の素さまへの理解を深めるコンテンツとして発信しました。

グローバルサイト構築事例 味の素様 | BAsixs(ベーシックス)

コーポレートサイト構築のステップ=実行計画をどう立てるか

UXを向上させるようなコンテンツを含んだコーポレートサイトをどう構築するのか、具体的なステップを教えてください。

森:大きく「プロジェクトの立ち上げや環境整備」と「運用を見越した設計とデザインとコンテンツ制作の一連プロセス」に分けられます。それぞれを細かく見ていきます。

図:コーポレートサイト構築のステップ(STEP1:目標の明確化と要件定義、STEP2:プロジェクトチームの編成、STEP3:CMS導入、STEP4:サイト構造の設計、STEP5:プロトタイピングとユーザーテスト、STEP6:コンテンツの作成と最適化、STEP7:継続的なデータモニタリングと改善)

「プロジェクトの立ち上げや環境整備」の最初のステップは「目標の明確化と要件定義」です。主要なステークホルダーにヒアリングを実施し、コーポレートサイトの目的(ブランド認知、採用強化、リード獲得など)を明確にして、ペルソナを作成してターゲットを特定します。同時にペルソナが求める情報はどんなものか、その価値を明確にし、競合分析を行い、自社の差別化ポイントを洗い出します。

ステップ2は「プロジェクトチームの編成」です。プロジェクトマネージャー、デザイナー、エンジニア、コンテンツ担当者など、適切な専門家を揃えます。

ステップ3が「CMS導入」です。お客さまのコーポレートサイトのご担当者は、Webに関するリテラシーが高い方ばかりとは限りません。そこで、簡単にコンテンツ更新が可能なCMSを選定します。運用担当者向けのトレーニングも実施し、社内でのスムーズな更新が可能になるように支援します。運用を見越したコーポレートサイトの設計とデザイン、コンテンツ制作がポイントです。

次に「運用を見越した設計とデザインとコンテンツ制作の一連プロセス」を説明します。
ステップ4として、「サイト構造の設計(情報アーキテクチャ設計)」に取り組みます。必要なページリストを作成し、サイトマップを設計し、サイト来訪者が最短で必要な情報にアクセスできるナビゲーションを設計・構築します。

ステップ5で「プロトタイピングとユーザーテスト」を実施する流れです。ワイヤーフレームやプロトタイプを作成し、サイト来訪者がどう動くのか、シナリオに基づいた動線を検証します。ユーザーテストも実施し、使い勝手や改善点を収集・反映するのがこの段階です。チームの編成とCMSの導入は、環境の整備という意味で必要なことです。

実は次のステップ6にある「どんなコンテンツを作るのか」が、お客さまが一番頭を抱えるところです。ここでは「コンテンツの作成と最適化」として、各ページで伝えるべきメッセージを決定し、適切なトーン&マナーでライティングをします。SEOを意識したキーワード選定と最適化も行い、検索エンジンからの流入を強化します。

コンテンツ制作にあたっては、お客さまもいろいろと素材は持っていますが、実際にそれをコンテンツにしていくことについては経験がないし、編集のプロではないので難しいです。まずは、社内で持ち合わせているIR情報、サステナビリティレポートなどコンテンツ化しやすいテーマを活用することから始めると良いと思います。

ステップ7は「継続的なデータモニタリングと改善」です。アナリティクスツールを設定し、サイトのパフォーマンス(訪問者数、直帰率、コンバージョン率など)を定期的に確認し、デザインやコンテンツの改善を行います。

運用を見越した設計とデザイン、コンテンツ制作では何が重要でしょうか。

森:お客さまがいかに運用しやすい構造や設計になったコンテンツ提案ができることが、私たちの強みです。例えば、初期のデザイン案の段階から、コンテンツの要素が増減した場合を想定したデザインをご提案しています。コンテンツが少ない場合にはスッキリ見えても、増加した際に「こんなデザインになるのか」というのを予め予測した設計をすることが重要です。このプロセスによって、お客さまが運用をスムーズに進められるようになるのです。

写真:森が話す様子3

コーポレートサイトを再設計し、新たな一歩を踏み出すために

最後のテーマは、コーポレートサイト再設計のポイント。コンテンツの強化も含めどんな視点で見直していけばいいのでしょう。

企業は自社のコーポレートサイトをどのような視点で見直すと良いのでしょうか。

森:一足飛びにコンテンツを考えたり、プラットフォームを作ったりしようとは考えずに、まずは自分たちにできることは何だろう、伝えきれていない課題は何だろうと整理することからスタートするのが良いと思います。

まずは、現在のサイトの強みと弱みを洗い出し、ユーザー視点での改善点を整理することが、成功への第一歩だと思います。

まとめ:価値を高めるコンテンツ制作で意識すべきことは

BtoB企業のコーポレートサイトには、自社の製品・サービスの認知度向上や、企業ブランドの発信強化、さらには「自社への信頼を育み」、「ファンを増やす」といった目的があります。こうした役割や目的を実現するために、優れたUXを提供できるようなコンテンツの重要性がますます高まっています。

コーポレートサイトの価値を高めるコンテンツには、導入事例など信頼性を高めるコンテンツ、企業の魅力を伝えるストーリー性のあるコンテンツ、意思決定を推し進めるコンテンツなどがあります。自社がコーポレートサイトを通じて達成したい目的に応じて適切なコンテンツを適切なタイミングで制作・発信することが大切です。