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【書評レビュー】Webディレクションの標準ルールで安心を買いましょう

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寺尾(ビジネス・アーキテクツ)

20代半ば、フリーランスのweb屋として独立。web制作からビジネスの上流へ興味が移り、リアルの教育事業立ち上げ、AIを活用した観光サービス立ち上げ、不動産の事業企画などを経験。自ら立ち上げた事業のwebまで見ていた。0→1の事業企画からwebマーケティングまで一気通貫して組み立てられるのが強み。2015年には地域活性化のため単身長崎県に移住。第二の故郷となっている。東京に戻り2020年BAへ入社。提案営業の出来るディレクターとして大手デベロッパー向けの仕事に従事。DXとサステナビリティ分野のプロフェッショナルを目指す。姪っ子とボードゲームしているときとギター弾いて歌ってるときが至福。

本記事は「Webディレクションの標準ルール」の書評です。

結論から言うと、「Webディレクション」の業務内容が網羅されている本です。

Webディレクター、フロントエンドエンジニア、サーバサイドなど、Web業界には、会社ごと、個人ごと、プロジェクトごとに言葉の定義が変わるものがたくさんあります。

「Webディレクション」はその最たる言葉です。「業務領域、必要なスキルセット、誰かWebディレクションの標準を教えて!」と困っていた私が行き着いたのがこの本です。

ぜひ、Webディレクションに関わる方にはこの記事を読んでいただき、最後にはこの本が読みたい、と思っていただけると幸いです。

【書評レビュー】Webディレクションの標準ルールで安心を買いましょう

自分流でやっていたフリーランスWebディレクション

この本を私が手に取った理由はたった一つ。
「Webディレクターの仕事を網羅的に包括的に把握したい!」からでした。

Web業界歴は約10年とそこそこにあるのですが、その8割方はフリーランスとして我流でWebディレクションをしていました。

要件定義書を作ったこともない、外部パートナーの工数管理や進捗管理でガントチャートを使ったこともないなど、今考えるとなかなかにずさんな進め方をしていたと思います。

BAsixs参画企業、ビジネス・アーキテクツ(以下、BAと称する)にWebディレクターとして入社したものの、今まで自分がやってきたWebディレクターらしき仕事の仕方は果たして正解だったのだろうか、と不安な気持ちがいっぱいのときにこのありがたい本を見つけました。

「Webディレクションの標準ルール」の内容

この本は、ディレクションの目的と役割から始まり、Webディレクターに必要なスキルセット、Web制作における各フェーズでやること、その具体的手法にまで言及されています。
以下のCHAPTERに分かれています。

CHAPTER1:ディレクションの目的と役割

このチャプターでは、なぜディレクションが必要なのか?そしてどのような役割が期待されているのか、ターゲットブラウザの範囲指定などについて書かれています。

CHAPETR2:企画

キックオフミーティング、ヒアリングシート、UX設計や要件定義書への落とし込み方などが書かれています。特に要件定義書は具体例が充実しているため、そのまま実務で使えます。

CHAPTER3:設計

設計フェーズで作成するドキュメント例の紹介がまずあります。全体がさっと把握できてありがたいです。ワイヤーフレーム作成については特にページを割いて詳しく説明されています。

CHAPTER4:制作・進行管理

マイルストーン設定、スケジュール管理やコラボレーションツールなどが説明されています。特にコラボレーションツールは、いくつかの具体的なツールとそのメリット・デメリットが載っていて重宝します。

CHAPTER5:運用・改善

ヒューマンエラーの回避方法やサイト改善のためのweb解析ツールについて解説があります。web黎明期は作って納品して終わりという仕事が多かったですが、近年のweb制作は運用・改善までセットなのが当たり前になってきています。このCHAPTER5まで丁寧に解説されているところから、著者たちが実務家であることが伺えます。

サイト制作から運用までの一連の流れに沿った章立てとなっており、プロジェクトの進捗に合わせて随時確認できます。実務においても隣に携帯しておくべき本の一冊だと思います。

業界での経験豊富な実務家によるリアルな知識が収録

栄前田勝太郎さん、 岸正也さん、 滝川洋平さん、 タナカミノルさんと、4名の共著となっているこの本ですが、全員がプロのWeb制作の実務家です。

理屈は正しいけれど現場で使えない本はよくありますが、本書では「実務家ならではのリアルな知識」が豊富に載っています。

網羅性の高さに感動:「全体像」がわかることで迷いなく業務ができる

本書はWebディレクションの上流から下流までカバーすることを主題として書かれています。

実際に読み進めると、確かにWebディレクションに関わる全体像を網羅しており、感動しました。

Webディレクションに限らずですが、全体感がわからずに仕事を進めるのはとても非効率です。全体の流れがわかっていれば先回りしておくことも出来るし、無駄なダブリが発生することもありません。基礎知識として備えておくには十分なカバー範囲だと感じました。

ただし、一点注意があります。

この本で紹介しているWeb制作の流れはあくまで「標準ルール」です。

プロジェクトによっては予算の都合で「カスタマージャーニーマップを作らない」など、一部の工程が発生しないケースはあります。

プロジェクトによって、必要な工程を足し引きしながら最適なディレクション形態を追求するのが良いでしょう。

チームでWebディレクションをするときは「しっかりとした進め方」「情報共有」が大事

フリーランスで仕事をしていると、どうしても情報共有の機会が少なくなるため、ドキュメンテーションが弱くなりがちです。

しかし、組織人として、クライアントを含め多くの人間が関わる場合には、ドキュメンテーションが生命線になります。

ドキュメントがあることでチームメンバーの共通認識ができ、方向性が定まった状態で進めると混乱が少ないこともよくあります。

ただ、そのようなときに、自分だけその知識がかけていると歯車が狂い混乱の元です。そのような意味でも、Webディレクションの標準的な進め方を学べたのは大きな財産となりました。

小さい事業会社や個人事業などで「自分流で」やってきたWebディレクター・Web担当者さんに本書はオススメ!

本書は「カスタマージャーニー」「SEO」など、個別の工程・マーケティングについて深く知りたい方には向いていない書籍です。

しかし「自己流でWebディレクションをやってきたけど、Webディレクションの標準的な業務内容を知りたい」という方にはピッタリの書籍となっています。

「標準的なWebディレクションを知った上でWebディレクションをやっていきたい」という方はぜひ一度読んでみてはいかがでしょうか?
BAsixsでは、業務未経験の方が書籍で学習するのを推奨していて、書籍購入の支援制度もあります。業界標準をしっかりとインプットしながら、業務にあたることができます。ぜひお気軽にご応募ください。

参考

  • 栄前田勝太郎, 岸正也, 滝川洋平, タナカミノル. Webディレクションの新標準ルール. 初版, MdN, 2017, 167P