プロジェクト概要
製造業大手のK社様が所有するウェブアクセシビリティガイドラインの更新をお手伝いいたしました。既存のガイドラインはWCAG(※1) 2.0のレベルAに準拠するように作成されていました。それをWCAG 2.1のレベルAへの準拠とする(以降、「あるべき姿」)ために、WCAG 2.1で追加された達成基準の分を追記(以降、追記分)するというプロジェクトです。
※1
WCAG:Web Content Accessibility Guidelinesの略称で、W3Cが勧告しているウェブコンテンツのアクセシビリティに関するガイドラインです。ウェブアクセシビリティにおいては国際的な標準規格であり、本記事で紹介しているプロジェクト当時の最新バージョンはWCAG 2.1でした。
ご提案・実施内容
進め方提案(フェーズ1)
既存のガイドラインを確認したところ、WCAG 2.0というよりもWCAG 1.0に近い状態でした。ガイドライン全体の内容を精査し、以下に分類しました。その結果、単に追記するだけでは不十分であることが分かりました。
- 要修正:既存分の内、修正が必要なもの
- 追記分
- 不足分:既存分に不足しているもの
- その他:既存分で上記以外の、レベルAA・AAAの項目または独自にK社様が必要と判断したもの
しかし予算は追記分のみであり、その予算だけで「あるべき姿」まで仕上げるのは難しい状況でした。そのためK社様と相談し、追記分をフェーズ1、「あるべき姿」まで仕上げることをフェーズ2と位置付け、フェーズ2をゴールとした形で取り組みました。
次に、ガイドラインを「あるべき姿」とするために、フェーズ1とフェーズ2で何をやるかの提案を行いました。フェーズ1は予算や期間に制約があったため、その範囲内で対応でき、かつフェーズ2に上手く繋げられるように、既存のガイドラインの章立てをWCAG 2.1に合致させるところまで進めることにしました。
追記分執筆(フェーズ1)
WCAG 2.1のレベルAでは、WCAG 2.0に比べて5件の達成基準が追加されているため、その5件分の執筆を行いました。
しかしながらWCAGは専門的な言葉で書かれており、知見のない方が内容を理解するのは非常に困難であるため、執筆を始める前にそれぞれの達成基準が何を伝え、何を求めているかをお客様に説明しました。さらにどのような形でガイドラインに落とし込むかを伝えた上で執筆を行いました。
文字だけだと分かりづらいと思われたため、適宜図版を盛り込み理解しやすいようにしたり、既存のガイドラインのトーン&マナーに従って対応したため、いわゆる「つぎはぎ」にならないよう注意しました。
章立て修正(フェーズ1)
既存のガイドラインの章立てはWCAG 1.0に近く、WCAG 2.0のどの達成基準に対応したものかが分かりにくくなっていたため、WCAG 2.1の章立てと合致するように組み替えを行いました。これによってWCAG 2.1のどこに対応しているかが明確になったことの他に、不足している分やWCAG 2.0(または2.1)以外の分も明確となり、フェーズ2で必要なことを明確にできました。
既存分の修正、不足分の執筆(フェーズ2)
修正が必要なものが6件、不足しているものが13件あり、それらの対応を行いました。
進め方は「追記分執筆(フェーズ1)」と同様ですが、フェーズ1の5件に対してフェーズ2では計19件と4倍近い数でした。そこで、それぞれの達成基準が何を伝え、何を求めているかの説明部分を資料化したり、全体を前半分と後半分の2つに分けてお客様が受け取る量を多すぎないようにしたりと、お客様がより理解できるように注意しました。
成果
- ウェブアクセシビリティガイドラインがWCAG 2.1のレベルAに準拠するようになった。
- ウェブアクセシビリティガイドラインをWCAG 2.1と同じ章立てに変更したことで、WCAG 2.1の原文を参照しやすくなった。
プロジェクト期間
フェーズ1:1ヶ月
フェーズ2:2ヶ月
プロジェクトメンバー
関連事例
同一企業様で、アクセシビリティ診断も実施しました。是非あわせてご覧ください。
サービス提供会社
- 会社名
- 株式会社 ビジネス・アーキテクツ
- 事業内容
Webサービスの企画・設計・デザイン・開発・運営にかかる総合サービスの提供
- 企業URL
- https://www.b-architects.com/