BAsixs参画企業のビジネス・アーキテクツでは、2018年にHubSpotを導入しました。数々の機能を使う中で、リードの動きや施策成果など様々なことが見えてきました。社内に浸透し、HubSpotへの理解が深まることで「これってHubSpotでできるのか」という問い合わせも増えてきました。
HubSpotの機能を使った施策を試す中で、社外からの問い 合わせ数も増加してきました。
HubSpot運用経験から得たノウハウを、今度はクライアントの悩みを解決するために活用していきたいと思い、サービス化に取りくみました。これから新しいサービスを立ち上げる方、MAツールが気になっている方に向けて、企画からサービス化までの流れとその過程で感じたことや気づきを紹介します。
Web集客や見込み顧客のナーチャリングに課題がある方は、お気軽にお問合せください。
現代のWebサイトに求められていることの変化に対応する「インバウンドマーケティング」という概念
近年、商品・サービスを購入・契約する前にユーザー自らが情報収集することが当たり前になってきました。
例えば商品・サービスを見つけ、購入・契約を決断するためにSNSや口コミサイト、ブログなどで利用者の声を見た経験はありませんか?
数年前までは、マスメディアなどプッシュ型の売り込みが主流でしたが、近年はWebサイトを使って見込み顧客(狙っているターゲット層)を集客し、見込み顧客が欲しいタイミングで必要な情報を提供し、購入や契約を後押しする方が効果が出やすいといわれています。
この見込み顧客を獲得・育成して、顧客になってもらう手法のことを、インバウンドマーケティングと言います。
見込み顧客が欲しい情報を予め準備して発信し、自社を見つけてもらい、自社の価値や強みを理解してもらったうえで、相談・問合せや購入・契約に繋げます。
例えば、以下の内容をブログやダウンロード資料にまとめて公開します。
ブログやダウンロード資料の4つのネタ
- 自社商品・サービスを開発・提供するに至ったストーリー
- 実際に使っている利用者の声
- 利用者がなぜ購入を決めたかのインタビュー
- 業界のトレンドやノウハウ
弊社でHubSpot導入・運用支援サービス化プロジェクトを立ち上げ
2021年3月のプロジェクト立ち上げ時、メンバーは以下の4名で進めていました。
- フロントエンドエンジニア
- バックエンドエンジニア
- マーケター
- エンジニア・システムのマネージャー
弊社のコーポレートサイトや、メルマガのテンプレートはHubSpotを使って運用・更新しており、CMS実装担当者側の観点からフロントエンドエンジニアの根本さんが参加しています。
これまで情報システムを担当していて、マーケティングの担当になったばかりの私、信谷は、導入企業担当者側のイメージを持てるためメンバーに参加しました。
では、実際にプロジェクト立ち上げ時に取り組んだことを3ステップで簡単に紹介します。
ステップ1:目標を決め、目標達成のメリット・必要なタスクを定める
まず、プロジェクトの最終目標を決めます。
受注金額は設定せず「1年後に1件のHubSpot導入案件を受注すること」と設定しました。
次に、案件受注を達成したときのメリットを考えます。
お客様にとって何がメリットになるのか、自社組織にどんなメリットがあるのかをディスカッションしました。そこで出てきたのは以下です。
お客様へのメリット
- 従来の売り込み型の営業に限界を感じ、Webサイトを使った集客に力を入れたい
- Webサイト構築から運用だけでなく、見込み顧客の集客や育成まで、まるっと総合的に依頼することができる
自社へのメリット
- 提案できる新サービスを作る
- 長くお付き合いする案件を獲得できる
- お客様の幅を広げ、案件を増やし、売上を上げる
- ビジネスの目的をもとに、営業支援するところから体験できる
メリットを洗い出し、プロジェクトに取り組む価値があるとメンバー間で認識を統一できたので、プロジェクト計画を立てます。プロジェクト計画を立てるためには大きく7つのタスクがあります。
プロジェクト計画を立てるための7つのタスク
- 目的を決める
- 目標を決める
- 達成指標を決める
- スコープを決める
- 体制を決める
- スケジュールを決める
- リソース計画を決める
プロジェクトメンバーを集めてからプロジェクト計画を考えるという流れは、一般的なプロジェクトのやり方とは逆ですが、今回集まったメンバーでディスカッションしながら言語化していきました。
ステップ2:KPIを考え・KPIツリーを作成。1年での目標達成のスケジュールを作る
目標が決まると、次は目標達成のためにどんなKPIが必要か考えます。
主な4つの集客方法
- Webサイトからの新規問合せ
- 既存顧客からの紹介
- 休眠顧客へのメルマガ
- SNSからWebサイトへの送客
弊社の場合、商談はWebサイト経由が6割以上を占めています。これまでコーポレートサイトやこのBAsixsサイト経由で受注した実績を参考に、KPIと評価指標を整理します。
上記画像では、Web経由(既存顧客の案件拡大、紹介を除く)での目的と評価指標を整理しています。
目的:Webサイトに狙っている層を集客する
評価指標
- アクセス数(PV)
- 検索エンジンの順位
目的:リード(見込み顧客)を獲得する
評価指標
- 問合せ数
- 資料DL数
目的:MQL(リード数の内、競合他社、パートナー企業を除いた数)を決める
評価指標
- サイト再訪数
- メルマガクリック率
目的:商談数(MQLの内、ヒアリングのミーティングを設定したリード数)
評価指標
- 打ち合わせ回数
- 見積り依頼数
- 案件確度
目的:受注する
評価指標
- 案件単位での売上/粗利
- 企業単位での売上/粗利
さらに既存顧客を分析し、予算を策定する時期はいつ頃で、いつまでに営業を開始する必要があるのか、どんな資料があると営業しやすいかを考えました。
これらを元に、目標達成時期を1年と決め、プロジェクトのスケジュールを作成しました。
ステップ3: プロジェクトロードマップを「3つの大枠」で考える
プロジェクトのロードマップ作成の流れは以下の通りです。
まずはHubSpotを知ることから始めました。社内でこれまで使っていなかった機能や、HubSpotの他のプランの機能、連携できる外部サービスなどを理解したあとで、改めてプロジェクト計画書を作成し理解を深めました。
プロジェクトロードマップの3つの大枠
HubSpotを知る
- 市場の動向、自社のターゲット企業にニーズがあるかを調べる
- 競合ツール、他の導入支援企業を調べる
- 分担して、全ての機能を使ってみる
サービスを設計する
- 提供するサービスプランを決める
- 価格を決める
- 利用規約を作る
- 運用体制を決める
- 運用フローを決める
- 上記をサービス設計書にまとめる
HubSpot活用ができると社外に知ってもらう
- 自社メディアサイトに記事を掲載する
- 自社コーポレートサイトにサービスページを作成する
- 営業資料を作成する
ステップ4:プロジェクトの作業をタスクに分解する
プロジェクトロードマップを元に、マイルストーンを設定しました。そしてマイルストーン毎の業務をタスクに分解して、工数を算出します。メンバーの繁忙期を考慮しながら、タスクをWBS(プロジェクトの作業をタスクに分解し、構造化した図)に落としこみました。
弊社では、WBSを使ってプロジェクトのタスクを洗い出し進行管理をしています。WBSのサンプルをご紹介していますので、ご興味がある方は以下のページもご覧ください。
Webサイト立ち上げ・リニューアルプロジェクト管理表サンプル | BAsixs(ベーシックス)
HubSpotの全ての機能を分解してスプレッドシートに書き写してみると2021年3月時点で60以上の機能がありました。機能が多く、全体像を理解するには時間と知識が足りないと気づき、HubSpot機能調査に3ヶ月かけることにしました。
さらに連携できるアプリ数は1,000を超えるため「マーケティング」「営業」「カスタマーサクセス」「生産性」「財務・会計」の5つのカテゴリ毎に連携実績が多い2ツールを検証しました。
連携するアプリの契約プランにより、連携設定はサポートの範囲外のため自力でエラーと闘わなくてはなりませんでした。
また、HubSpotはユーザーからの要望で毎月機能をアップデートしたり、毎年大きな見直しが行われています。WBS作成直後の2021年4月にOperations Hubのリリースがあり、とても驚いたことを覚えています。
検証環境で実際に設定して感じたこと、便利なポイントや注意点、設定前の全体設計の重要性、他の機能と組み合わせて出来ることなど、調査・検証結果を元にチームであれこれ意見を出しながら理解を深めていていきました。
3人で分担したにもかかわらず、3ヶ月強かかりました。今回の調査でHubspotのチャットサポートには本当にお世話になりました。少し踏み込んだ質問でも1営業日以内に一次回答をもらえること、技術担当の検証も1週間ほどで回答いただけることからすっかりファンになりました。
MAツール導入後につまずく5つのポイントが体験からわかった
多くの機能を調査・検証する中で、MAツール導入後につまずくポイントにも気づきました。
MAツール導入後につまずく5つのポイント
- これまでの業務フローを変えたり新しい機能をおぼえたりが面倒で、現場に浸透しづらい
- たくさんの機能があるため、既に用意されている便利な機能に気づかず、効果的に使えない
- 機能追加に気づかず、業務に活かせない
- 可視化したデータを分析したり、新たな施策を考えたりする知識が足りない
- アプリ連携では、Hubspotと連携先ツールの両方のサポートとそれぞれやり取りが必要がある
他にも機能調査をする中で気づいたことがあります。それは、お客様が導入を決断するために「お客様自身が運用している具体的なイメージ」を伝える必要があることです。
プロジェクトを通して得られた気づき:お客様自身が運用シーンのイメージが出来ないと、お客様はツールの要否を判断できない
元々私は情報システム部門でツール導入経験があり、導入後の運用の負担と予算の無駄遣いを減らすために、導入前の機能の比較検討に重きを置いていました。そのため、HubSpotを知るフェーズが一番大切ではないかと考えていました。
HubSpotの機能を紐解く中で、ツールを入れて達成したい目的を整理することの重要さを私は痛感しました。
お客様の組織内で解決したいビジネス課題や実現したい目標が定まっていないと、いくら高機能なツールを導入しても、業務の設計→ツールの設定をスムーズに進められません。
業務の設計→ツールの設定が進まないと、施策を企画→施策実行→施策効果を正しく評価→仮説を立てる→改善施策を検討というPDCAを回せません。さらに、ツールの利用料を払っているのに成果に繋がらないと社内から評価されてしまいます。
また自社でのHubSpotの打ち出し方を設計するフェーズでは、想定するお客様のペルソナを定義しカスタマージャーニーを整理しました。
その中で感じたのは「導入後にいかにお客様の運用支援ができるかどうかがこのようなサービスの肝である」ということです。
上記画像のペルソナは、会社概要から価値観や人柄まで具体的にイメージ・理解できるように整理しました。
上記画像のカスタマージャーニーではペルソナAの目的・場面毎に、行動・考えること、チャネル、コンテンツ、KPIを洗い出しました。
例えば「利用開始」場面では、「行動」「考えた・感じたこと」「チャネル」「コンテンツ」「KPI」は以下のようにまとめました。
ペルソナの行動
- 初期設定する
→サポートを受けながらやってみる - 社内の関係者に説明する
→使い方・メリットなどを社内に説明する - 進め方がわからない
→出入り業者や詳しそうな友人に聞いてみる - マーケティング施策開始
- メルマガ配信開始
- SNS運用開始
- 既存サイトの見直し
ペルソナが行動する時に、考えた・感じたこと
- 専門用語が多いから、かみ砕いてほしい
- 各機能の使い方がわかっても、課題解決への活用の仕方がわからない
- 入力するものが増えたが、効果があるのかすぐに実感できない
- 他社の失敗・成功事例をもとに、アドバイスがほしい
- 自社の関係者へ、使うメリットの説明がうまくできない。使ってもらえない
- 既存サイトを含めた全体の戦略はこれでいいのか不安、プロに方向性を示してもらいたい
チャネル
- サポートサイト
- 電話
- メール
- 対面
- チャットツール
必要なコンテンツ
- 権限や社内ルール・運用フローを決めるためのおすすめの設定マニュアル
- 関係部門ごとのメリット説明資料
- 全社の目標から各部門の目的・目標をまとめた資料
- 導入支援、運用支援の実績紹介記事
- 社内ノウハウ紹介記事
- 各施策の事例記事
KPI
- 記事のPV数
- 資料ダウンロード数
ペルソナとカスタマージャーニーを整理する過程で、導入後の運用支援が手厚くないと「検討対象にならない」「結局使われない」と感じ、ハッとしました。
ただ初期設定をしてMAツールを導入すれば終わりなのではなく、運用こそが重要です。
そして、お客様の課題を的確にとらえて、刺さるメッセージの打ち出し方の工夫も必要です。
大型新人:青木さんの登場
プロジェクトチーム発足時のメンバーはエンジニア色が強く、プロダクト目線で機能面での「できること」ベースの考え方に偏ってしまうことが問題でした。
お客様の課題やサービスの特徴をお客様視点で表現する、営業目線がプロジェクトチームに足りないことに苦しみました。
そこで新規営業を担当している青木さんにプロジェクトに加わってもらい、お客様への打ち出し方を一緒に考え設計することにしました。
青木さんの営業視点で、調査結果や自社の強みをふまえて、どういう流れで何をいちばん伝えたいかをお客様視点で見直しました。
お客様視点とは、
- どういう伝え方であれば受け入れやすいか
- 運用時につまずく・不安になる原因はどこか
- 関連部門に快く協力してもらうために何が必要か
- どうすれば運用のモチベーションを保てるのか
という4点です。
また、情報収集の担当者だけでなく、決裁者が納得し「BAなら信頼してお願いできそうだ」「BAが提案・先導する方法で売上が増えそうだ!」「ふんわり描いていた理想が、現実に達成できそうだ」と思ってもらうことが最も大切だと気づきました。
そこで以下の流れで、「お客様が欲しいサービスって何か?」を突き詰め、サービスを設計しました。
具体的なサービスを設計する流れ
- HubSpotパートナー企業を11社調査し、BAの強みをどう表現するか考える
- HubSpotプラットフォームの競合製品(CRM/SFA+MA+CMSの組み合わせ4パターン16プラン)を調査し、HubSpotの特長を検討する
- 求められているサービスを調査する
- サービスとは何かを思考する
- 世の企業が抱えている課題を調査する
- ペルソナ・カスタマージャーニーを作成する
- どんなサービスなら頼みたいかを思考する
- サービスメニューの方針を決める
- 基本メニューとオプションを決める
- 必要な成果物を洗い出し、作成する優先順位を決める
- 業務プロセスの大枠を決める
- 各成果物を作成する
- 工数を計算し、価格を決める
- 契約書を確認する
- マーケティング設計をする
- 社外へのリリースやサービスページを作成する
- 社内向け説明資料を作成する
- 営業活動用資料を作成する
市場のニーズ調査やペルソナ・カスタマージャーニー作成を通して、お客様が「いつ」「どんなサポートがあると嬉しいか」「どんな資料が必要か」を洗い出すことは、一見手間がかかります。しかし、お客様の視点で表現するためには避けて通れないことを体感できました。
決裁者が回避したい4つのリスク
決裁者に納得してもらうためには、決裁者が懸念していること、回避したいことを理解する必要があります。
決裁者が回避したいリスク
- MAツール運用に必要なスキルがある人材を見極められない、採用に失敗する、退職する
- マーケティング施策を企画するノウハウ・時間がない
- 新たな人材を教育できるスキルがない
- 導入の目的・設計がブラックボックス化
これらのリスクを社内のリソースだけで、すぐに解決することは困難です。
実際に導入を進めるにあたって求められる人材の例を挙げると、MAツールの運用担当者が1人確保できればいいわけではありません。WebサイトのUXデザインに詳しいデザイナー、運用を見据えた設計が出来るエンジニア、営業のKPIを考慮できるマーケターなど、様々な知見をもった人材が必要です。
そこでビジネス・アーキテクツではお客様毎に、デザイナー・エンジニア・マーケター・営業のメンバーで構成するチームを作り、ノウハウを元に提案・先導サポートいたします。
まとめ:外部の専門家の知見を利用することがWeb集客・見込み顧客育成の近道
昨今、お客様から「対面営業が難しくなったためWebを用いた集客、 営業を見直したい」という問合せが増えている中で、何か自分たちの持っている知見をお客様に還元できないかと、サービス化を始めました。
はじめて新規サービス立ち上げに携わったメンバー3人が主担当だったため、プロジェクト開始時に考えていた計画を都度ブラッシュアップし、ようやくサービスリリースまで漕ぎつけました。
お客様が求めていることを調査し、サービスに落とし込む過程では、悩む事ばかりでした。しかし、時間をかけて向き合ったからこそ、お客様の痒い所に手が届くサービスが出来たと思います。
社内にマーケティング担当者がいないお客様の場合、なにから手をつけたら良いのか分からず、どの施策を優先すると効果的かの判断ができないことが、第一の課題としてあげられます。
またマーケティングの知識があっても、ビジネスの目的から仮説を立てる→施策を立案する→施策の効果を分析する→仮説を立てる→次の施策を考える…といったPDCAを短いサイクルで回せるスキルや知識も必要になります。
Web集客や見込み顧客のナーチャリングを効果的に継続して行いたいのであれば、外部の専門家に頼ることも視野に入れて検討することをおすすめします。
そこでビジネス・アーキテクツでは、一般的な伴走型のサポート支援ではなく、「目標や施策を進んで提案してくれる先導型のサポート支援」を重要視したサービスを提供していきます。
HubSpot運用経験に基づいたアドバイスやWebサイト運用の知見を活かしたマーケティング施策の立案・分析が可能です。
売上を増やすためのMAツール導入・運用支援はビジネス・アーキテクツにお任せください。