「マーケティング」と聞くと、何を思い浮かべますか?市場調査、商品開発、CM、販売促進…人によって解釈はさまざまです。
本記事では、日本マー ケティング協会の最新定義を基に、マーケティングの基本概念から現在における応用までを解説します。顧客理解、STPプランニング、データ分析、コミュニケーション設計など、実践で役立つ情報をご紹介します。

マーケティングとは?
「マーケティング」と聞いて、何を思い浮かべますか?市場調査、商品開発、CM、販売促進など、人によって解釈はさまざまです。ここでは、共通認識としてマーケティングの定義を確認しましょう。
日本マーケティング協会が2024年に刷新した定義では、マーケティングを以下のように定めています。
顧客や社会とともに価値を創造し、その価値を広く浸透させることによって、ステークホルダーとの関係性を醸成し、より豊かで持続可能な社会を実現するための構想でありプロセスである
注 1)主体は企業のみならず、個人や非営利組織等がなり得る。
注 2)関係性の醸成には、新たな価値創造のプロセスも含まれている。
注 3) 構想にはイニシアティブがイメージされており、戦略・仕組み・活動を含んでいる。
出典 : 34年振りにマーケティングの定義を刷新.日本マーケティング協会.(参照 2025-03-31)
少し抽象的なので、以下のように分解して考えてみましょう。
- 顧客や社会とともに価値を創造すること:
顧客が求めるものに応え、満足させるだけでなく、一連の体験やその後の生活を価値あるものにすること。 - 価値を広く浸透させること:
幅広い人々に価値を提供すること。 - ステークホルダーとの関係性を醸成すること:
顧客や社会との良好な関係を築くこと。 - より豊かで持続可能な社会を実現すること:
マーケティング活動を通じて社会全体の発展に貢献すること。
つまり、マーケティングとは「顧客に価値を提供し、満足してもらい、関係性を築くための一連の活動」と言えます。
マーケティングの具体例と要素
マーケティングは、市場調査(顧客理解)から始まり、営業戦略(商品・サービスの企画)、広告宣伝や販売促進(販売方法の検討)など、見込み顧客に商品・サービスを選んでもらい、満足してもらう過程全般の活動を指します。
具体的には、以下のような要素が含まれます。
- 市場調査
- 商品開発
- 広告宣伝
- 販売促進
上記の各要素はマーケティング機能の1つであり、マーケティング活動に包含されます。
マーケティングの本質:売れる仕組みづくり
マーケティングの本質は、「商品やサービス(価値)が売れる・選ばれるための仕組みづくり」です。顧客に商品やサービスを購入してもらう(顧客に選んでもらう)ためには、以下のような点を考慮する必要があります。
- 顧客は誰なのか?
- 顧客はなぜ買うのか、または買わないのか?
- どうすれば競合よりも自社の商品やサービスを良い、または欲しいと感じてもらえるのか?
これらの点を深く考察し、戦略・計画を立て、実行することが重要です。
顧客の欲求とマーケティング
顧客が対価を支払うのは、「求めていた商品・サービスの提供を受けたとき」が基本です。顧客自身が欲しいものを認識している場合は、その欲求を満たす手段を提供すればよいでしょう。しかし、企業が持続的に成長するためには、顧客自身が気づいていない潜在的な欲求にも働きかけ、需要を創出する必要があります。
潜在的欲求を掘り起こす例として、実演販売士が挙げられます。実演販売士は、商品の魅力を実演を通して伝え、顧客の購買意欲を刺激します。例えば、切れ味のよい包丁で崩れやすいトマトをいとも簡単に目の前で切る実演販売を見た人は、包丁の必要性を感じていなくても、その場で欲しくなる欲求が生まれてきます。
実演販売士は、「新しい消費者ニーズを見つけ、それを満たす」という潜在的な欲求を掘り起こすマーケティングを実践していることになります。
販売促進とマーケティングの違い
マーケティングの一環として位置づけられる販売促進は、「販売」という共通テーマを持ちながらも、主眼が「商品」に置かれ、顧客が求めているか否かは関係なく、「どの商品を」、「いかに」売り込むかが重視点となります。
一方、マーケティングの主眼は「顧客」に置かれています。なぜなら、商品やサービスを買う・選ぶのは「顧客」となるからです。マーケティングでは、対象となる顧客は誰なのか、その人がなぜ買うのか・買わないのか、どうすればその商品やサービスが競合よりも良い、または欲しいと感じてもらい、購買行動につなげることができるのか?を熟考し、作戦・計画を立てて、実践することになります。
「販売」という共通テーマを持ちながらも、販売促進とマーケティングの本質的な志向は異なるという点は、認識しておきたいポイントです。
データ分析の重要性
マーケティングでは、「顧客」を中心としたさまざまなデータ分析が重要になります。
- 顧客分析
- トランザクション分析
- リレーション分析
- マーケット分析
これらの分析を通じて、ターゲット顧客を深く理解し、「顧客をどう攻略していくか?」を詳細に設計・実践していきます。
データ分析を通じて私たちは多くのことを把握できますが、これらデータで明らかになるのは、あくまでも「顧客行動の結果」です。「なぜ、そのような行動をとったのか?」という心理までは理解することはできません。そのため、顧客の立場に立って「内面」を推測し、マーケティング仮説を構築することが重要になります。
STPプランニング:効率的なマーケティング戦略の立て方
企業は限られた資源の中で、最大限の効果を出すために、すべての顧客に対応するのではなく、特定の顧客層に焦点を当てることが重要となります。そのために役立つのが「STPプランニング」という考え方です。
STPプランニングの3つのステップ
- セグメンテーション(顧客をグループ分けする)
- 顧客をニーズや特徴(年齢、性別、地域など)ごとに分け、「どんな顧客候補がいるのか」を明確にします。
- 単に年齢や性別で分けるのではなく、「どのようなニーズを持っているか」で分けることが大切です。
- 例:電動ドライバーなどの「電動工具」の場合、男性が使用するものだろうという先入観から男性しか見ていないと、節約志向の高い女性やモノづくり(DIY)が好きな女性を見落としてしまいます。「DIYを楽しみたい」「家を自分で修理したい」などのニーズで顧客を分けた上で、性別・年齢・居住エリアなどの属性に落とし込んで、ターゲットを定義していく方が、適切なマーケティングコミュニケーションの実践につなげることができます。
- ターゲティング(狙う顧客層を決める)
- セグメンテーションで分けたグループの中から、自社の商品やサービスに最も興味を持ちそうで、企業にとって最も魅力的な顧客層を選びます。
- 自社の強みを生かせる顧客層を選ぶことで効率のよいマーケティングを行うことが可能となります。
- ポジショニング(自社の強みをアピールする)
- 選んだ顧客層に対して、「なぜ競合ではなく自社の商品やサービスを選ぶべきか」の優位性を明確に伝えます。
- 顧客に「競合優位のある価値」を認識してもらうことが重要です。
- ポジショニングは、顧客に「自社が選ばれる理由」を明確に伝えるための重要なステップです。
ポイント
- 現在の顧客は多様なニーズを持っているため、従来の属性による分類の前に、ニーズに基づいたセグメンテーションを行うことが重要です。
現在のマーケティングに求められること:顧客の多様化への対応
今の社会において、顧客のニーズや価値観はますます多様化しています。そのため、従来のマス広告のように、画一的なメッセージを不特定多数に届ける手法では、十分な効果を得ることが難しくなっています。
顧客一人ひとりのニーズや価値観を捉え、それぞれに最適化されたアプローチをとることが、現在のマーケティングにおいては不可欠です。
しかし、顧客にどのようにアプローチすれば成果を上げられるのか、という「戦略」だけを重視すればよいわけではありません。個々の顧客の興味や行動に合わせた情報提供を行う「クリエイティブ」や、それを実現するための「マーケティングテクノロジー」も、同様に重要な要素です。
真に効果的なマーケティングを実現するためには、戦略・クリエイティブ・テクノロジーの3つをバランスよく活用する「三位一体のマーケティング」が求められます。
- 戦略:
顧客に効果的にアプローチし、成果を上げるための計画。どのように顧客に働きかけ、購買などの行動を促すのかを明確にします。 - クリエイティブ:
顧客の興味・関心を引きつけ、行動を促すための表現。広告、コンテンツ、サイトのデザインなど、顧客との接点となるあらゆる要素が含まれます。 - テクノロジー:
顧客一人ひとりに最適化された情報提供を可能にする技術。データ分析、マーケティングオートメーション、CRMなど、さまざまなテクノロジーを活用することで、効率的かつ効果的なマーケティング活動を実現します。
顧客の反応や行動変容を促すためには、「顧客を適切に刺激する」ことが重要です。そのためには、顧客の状況や心理状態を深く理解し、最適なタイミングで、最適な方法で、最適な情報を提供する必要があります。
「いつ、どのような形で、どのような方法で刺激を与えれば、顧客は行動を起こしやすくなるのか?」
この問いに対する答えを見つけるために、「刺激の設計」を綿密に行うことが、マーケティング成功の鍵となります。
顧客を惹きつけるコミュニケーション設計の重要性
顧客の心に響くコミュニケーションを行うには、顧客一人ひとりの状況や価値観を理解し、適切なタイミング、適切な方法でアプローチすることが重要です。
そのためには、マーケティングファネルという考え方を活用します。マーケティングファネルとは、顧客が商品やサービスを知り、購入に至るまでの過程を段階的に表したものです。
各段階に合わせて適切な情報提供やコミュニケーションを行うことで、顧客との関係性を深め、購買へと導きます。
- 認知:
まずは、顧客に自社の商品やサービスを知ってもらう段階です。広告やコンテンツマーケティングなどを通じて、顧客の目に触れる機会を増やし、興味関心を高めます。 - 興味・関心:
商品やサービスに興味を持った顧客に対して、より詳細な情報提供を行い、理解を深めてもらう段階です。Webサイトやブログ、SNSなどを活用し、顧客の疑問を解消し、魅力を伝えます。 - 検討:
購買を検討し始めた顧客に対して、比較検討材料を提供し、購入の意思決定を支援する段階です。商品デモ、レビュー、テスティモニアルなどを活用し、顧客の不安を解消し、購入への後押しをします。 - 購買:
顧客が購入に至る段階です。購入手続きをスムーズに行えるよう、分かりやすく使いやすい導線を設計します。 - リピート:
顧客に再度購入してもらう、あるいは口コミで広めてもらう段階です。アフターフォローやロイヤルティプログラムなどを活用し、顧客との長期的な関係を構築します。
マーケティングファネル全体を俯瞰し、各段階における顧客の心理状態を理解した上で、コミュニケーション戦略を練ることが重要です。
顧客アプローチ最適化のための6つの視点
効果的な顧客アプローチを実現するためには、以下の6つの要素を総合的に考慮することが重要です。
- ターゲット:
- 誰にアプローチするのか
顧客の属性(年齢、性別、居住地など)、興味関心、購買履歴などを分析し、最適なターゲットを明確に定義します。
- 誰にアプローチするのか
- タイミング:
- いつアプローチするのか
顧客の行動パターンやライフスタイルを考慮し、最も効果的なタイミングでアプローチします。
- いつアプローチするのか
- オファー:
- 何を価値として提供するのか
顧客のニーズや課題を解決できるような、魅力的な価値提案を設計します。
- 何を価値として提供するのか
- デバイス:
- どのような手段でアプローチするのか
スマートフォン、PC、タブレットなど、顧客が利用するデバイスに合わせて最適なアプローチ方法を選択します。
- どのような手段でアプローチするのか
- メッセージ:
- 何を伝えるのか
顧客の心に響く、共感を得られるメッセージを作成します。
- 何を伝えるのか
- メディア:
- どこで伝えるのか
顧客が利用するメディア(Webサイト、SNS、メール、広告など)を選択し、最適なチャネルで情報を届けます。
- どこで伝えるのか
これらの要素を統合的に捉え、顧客にとって最適なアプローチを設計することで、より効果的なマーケティング活動を実現することができます。
マーケティングテクノロジーの活用
顧客の段階(ステージ)やニーズに合わせた最適なアプローチは、人の手だけで行うには限界があります。そこで、マーケティングテクノロジーを活用し、顧客とのコミュニケーションを自動化・最適化することが不可欠です。
適切なツールを選び、効果的に活用することで、より効率的かつ効果的に顧客を増やし、ビジネスの成果を高めることができます。
要するに
顧客を適切に惹きつけるためには、顧客の状況を深く理解し、最適なタイミングで、最適な方法でアプローチすることが重要です。そのために、マーケティングファネルを活用し、全体的なコミュニケーション戦略を設計します。また、マーケティングテクノロジーを積極的に活用することで、より効率的かつ効果的な顧客コミュニケーションが可能になります。
まとめ:多様化する顧客ニーズに対応するマーケティング
現在のマーケティングでは、顧客中心の考え方を基礎とし、データ分析やテクノロジーを活用しながら、多様化する顧客ニーズに合わせた最適なアプローチを行うことが重要です。
具体的には、以下の3点を意識しましょう。
- 顧客理解:
データ分析などを活用し、顧客のニーズや行動を深く理解する。 - 最適なアプローチ:
STPプランニングなどを活用し、ターゲットを絞り込み、最適な方法でアプローチする。 - コミュニケーション設計:
マーケティングファネルなどを活用し、顧客との長期的な関係構築を目指したコミュニケーション戦略を設計する。
これらのポイントを踏まえ、顧客アプローチの最適化について、検討してみてはいかがでしょうか?
ビジネス・アーキテクツでは、顧客の課題解決に貢献するさまざまなマーケティングサービスを提供しております。顧客の状況やご要望に合わせて最適なソリューションをご提案いたしますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。