Webサイトの立ち上げやリニューアルプロジェクトが始まる際、自社の課題に合ったWeb制作会社を選ぶためにコンペを行うケースがあります。
今回は、「初めてコンペを開催することになった担当者様」「コンペの経験が浅 くいまひとつ準備のやり方が固まらない担当者様」向けに、
コンペの流れ、準備に必要な提案依頼書(RFP)などの書類、Webサイト制作会社の選定基準、相見積もりの見方などを解説いたします。
ポイントを抑えて、Webサイト運営のプロジェクト成功の参考にしてください。
Web制作会社に依頼するとき、コンペは開くべき?そのメリットとは?
Webサイトを新しく立ち上げるとき、リニューアルをするとき、コンペを開いて依頼したほうが良いのかどうか悩まれるWeb担当者の方は少なくありません。
結論から言えば、Web制作会社に依頼する際はできるだけRFP(提案依頼書)を活用してコンペを開くことをおすすめします。RFPについてもう少し詳しく知りたい方は、次の記事をご覧ください。
提案依頼書(RFP)とは?要求仕様書・要件定義書との違いや重要性の考察 | BAsixs(ベーシックス)
ここでは、コンペを開くときのメリットと、開かないときのメリットをそれぞれご紹介します。
コンペを開く場合のメリット:発注受注双方のミスマッチを防ぎながら方向性も揃う
自社がどのようなWebサイトを求めているのかを詳細にまとめたRFPを用意してコンペを開くと、
- 業者各社の価格や内容を比較しやすい
- 発注側・受注側の期待値(予算・内容)のミスマッチの発生を防げる
- 自社のWebサイトでやりたいことを改めて整理することができる
というメリットがあります。
コンペを開かずに自社の提案要件が曖昧なまま業者に依頼を持ちかけると、「おそらくこのようなWebサイトを必要としているのだろう」という推測で提案を受けることになります。
そのため、自社が本当に解決しなければならない課題に寄り添わないものが提示される可能性があります。
さらに、複数の業者に見積を依頼する場合、事前に要件をまとめてコンペの案内をしていないと、各社が異なる方向性で提案してくるため単純に比較・検討がしにくくなるという問題もあります。
コンペを開くことによって、発注側の企業がまとめた要件に沿った提案が行われるため、本当に自社が必要としているWebサイトの実現に近くなるといえます。
コンペを開かない場合のメリット:担当者の表面的な負担は下がるが、トータルで考えると更なる負担が予測される
コンペを開かない場合のメリットは、コンペを開催するための書類や会場の準備を行う必要がないため、担当者の表面的な負担が軽減されることにあります。
とはいえ、
- 業者に対してWebサイトの立ち上げを依頼しなければならない
- 提案時に必要としているWebサイトの要件をまとめて各社に説明しなければならない
という点では同じです。
むしろ、
- 提案を決まった期間の中で受けることができずにバラバラの時期に提案を受ける
- 方向性が定まっていない提案の中から比較・検討しなければならない
ことで、後々の対応の負担がコンペを開く負担を上回ってくる可能性が高く、最終的にはコンペを開いた場合よりもさらに手間がかかる可能性もあります。
方向性の定まっていない提案の中から、自社に適した提案を選定するのは簡単ではありません。
あらかじめ自社で要件を取りまとめて提示し、その内容に沿って期間内で提出された提案の中から選ぶほうが結果的に労力を抑えられる可能性は高いといえます。
コンペの流れとは?おおよそのスケジュール感を知ろう
それでは、コンペを開催する際はどのような流れで行われるのでしょうか。ここでは、Web担当者が組む代表的なスケジュールをご紹介します。
1.プロジェクト計画の策定:サイトリリースの1年前には準備を
まずは、プロジェクトの目的や概要、予算、体制、承認者、納品日をそれぞれ決めていきます。
その中でも特に大切なのは、
- 現状把握・課題抽出
- 目的・目標
- 予算
- スケジュール
- 社内体制
です。上記の項目が明確になっていることが良い提案を引き出す必須条件です。
目的に関しては「なぜ今回のプロジェクトを立ち上げるに至ったのか」を明確にすることが大切です。発注側の企業が抱えている課題をはっきりさせ、最終的にどのようなWebサイトを構築しなければならないのかを業者側は掴みやすくなります。
また、予算の目安がなければクオリティや機能のイメージを持ってRFPを作ることができません。Webサイト構築やシステム提案は、予算をかければいくらでも機能強化やクオリティアップを目指してしまえる領域でもあるため、「この予算の範囲内で作りたい」という希望を明示しておきましょう。
上記のような項目を決定する上で、
- 決済やステークホルダーへの合意をスムーズに取っておくこと
がWeb担当者のベーススキルとして重要になってきます。
一般的には、サイトリリースの1年前くらいにはコンペに参加する業者各社にRFPが到着している形が理想的です。RFPの到着から1ヶ月後を目安に提案を受けて、提案完了後1~2週間以内に採否を連絡するイメージで準備を進めると良いです。
Webサイト構築のおおよその予算については、下記の記事もぜひ参考にしてみてください。
Webサイトリニューアルの制作予算はいくら?予算獲得のコツについて | BAsixs(ベーシックス)
2.有力な業者候補の調査:3~5社程度に絞るのが定石
プロジェクト計画が固まったら、有力な業者候補の調査に移ります。
「できるだけ多くの業者から提案してもらったほうが良い提案が集まるのではないか?」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、あまり候補数が多すぎると情報のやり取りが煩雑になるだけでなく、比較・検討も大変になります。
そのため、提案を受ける業者の候補は多すぎず少なすぎない3~5社程度に絞り込むのがおすすめです。プロジェクトのなかで重要視している観点からとらえたときに、その観点と得意領域が合致している業者をコンペに呼ぶと、比較のときに明確な基準(デザイン性、コンテンツ、システムなど)で選定できます。
業者の選定方法については、下記の記事もご参照ください。
制作会社の選び方を解説!失敗しないために注意すべきポイントは? | BAsixs(ベーシックス)
3.RFI(情報提供依頼書)の作成を業者に依頼:依頼先としての審査を行う
コンペへの参加を依頼する業者の候補を絞り込めたら、RFIの作成に移ります。
RFIとは「情報提供依頼書」とも呼ばれる書類で、発注側の企業が業者に対して会社情報や所有しているサービス、導入実績などの提出を求めるための書類です。この書類で、自社の課題を解決できる地力を持った業者であるかの簡易的な審査を行います。
RFIはRFP作成の前段階として活用されるケースが多く、まずはRFIの内容を精査し、自社の課題や目的に合致していると判断された業者に対してRFPを配布するような使い方がよく行われます。
4.目的・目標に沿った提案をもらうためのRFP(提案依頼書)の作成
自社の目的・目標に沿った提案をもらうために、発注側の企業はRFPを作成します。RFPは「提案依頼書」と呼ばれる書類であり、発注側の企業が業者から提案を受けるために必要な要件を取りまとめた書類を指します。
RFPには以下の2つの観点で記述するのが一般的です。
プロジェクト概要
- プロジェクト実施の背景
- プロジェクトの目的
- 現Webサイトが抱える課題(リニューアルの場合)
- 新Webサイトの役割
- 提案依頼範囲
- 予算
- スケジュール
- ターゲットとするユーザー層
- 設定目標(KGI・KPI)
サイト要件
- 成果物の内容・納品形態
- セキュリティ要件
- CMS要件
- サーバ要件
- 運用要件
などの内容を記述するのが一般的です。
もし提案依頼書の書き方に悩んだときは、BAsixsがご紹介している下記のRFPの書き方記事やお役立ち資料もぜひ参考にしてみてください。
RFP(提案依頼書)の書き方とは?必要な項目や作成時の注意点 | BAsixs(ベーシックス)
RFPの作成は、目的に合わせて次のテンプレートを元に作ってみると分かりやすいです。
5.相見積もりで平等に価格比較を行うための見積依頼書の作成
RFPを配布する各業者には、相見積もりで平等に価格比較を行うために見積もり項目をあらかじめ設定した見積依頼書を作成し、併せて配布しましょう。
各業者の様式に任せて見積書を提出してもらうと、それぞれの業者で見積書の様式が異なり、比較が難しいです。
発注側で見積もり項目を統一した見積依頼書として業者に配り、その様式で業者に見積書を作ってもらうことで、相見積もりで平等な観点から価格比較をすることができます。
見積書には各業者の要件も詳細に記述してもらい、抜け漏れがない状態で比較・検討できる状態にしておくことが大切です。
6.提案内容の確認:RFPの内容が明確であればあるほど本質的な確認ができる
締切日までに集まった提案内容を確認し、各業者からの提案内容を比較します。
- 自社の要件に合致しているか
- 課題を解決できそうか
- 費用対効果はどうか
など、さまざまな観点から検討することが重要です。RFPで依頼内容、目的、目標を明確にしていればしているほど、ミスマッチを防ぐ本質的な確認ができます。
7.見積もりの精査:提案内容とのマッチ感を確認
各業者から提出された見積もりを精査します。提出された見積書の中で、明らかに提案内容から考えて高い、または安いような項目があるようであれば直接確認を取りましょう。
8.業者の評価:得点表を作って数値比較をすると公平性があり便利
業者が出揃ったら、全ての業者を評価し比較します。
スプレッドシートなどで項目ごとの得点表を用いて数値比較するのが公平性があり便利です。
機能性が十分かどうか、自社の課題にマッチしているかどうか、運用はしやすそうかなど、総合的に判断して最も自社に適している業者を選びましょう。
9.業者の決定:決定したら早めに連絡しよう
提案内容と見積もりを総合的に比較・検討した上で、Webサイトの構築を依頼する業者を決定します。
業者が決定したら、提案から1~2週間以内を目安に各業者に対して採否を通知します。
業者決定後のリニューアルの流れについては、下記記事を参考にしてください。
Webサイトのリニューアル前に知っておきたい手順と注意点とは? | BAsixs(ベーシックス)
また、リニューアルにあたって計画表の作成が必要であれば、こちらのお役立ち資料をぜひご活用ください。
Webサイト立ち上げ・リニューアルプロジェクト管理表サンプル | BAsixs(ベーシックス)
業者の評価の正しい方法は?初めてのコンペで提案書を見るべきポイント
初めてのコンペの際は、提案を受けた業者をどのように評価すれば良いのか悩む方も多いのではないでしょうか。そこで、提案書を見るべきポイントについて解説します。
発注側から提案書が返ってきたときの評価ポイント:大切なのは「ビジネス理解力」
発注側から提案書が返ってきたときに注目したい評価ポイントは、
- Webサイトで収集した情報から一歩踏み込んで、自社のビジネス課題を理解してくれているか
- ビジネス課題に対して実現可能なソリューションを提案してくれているか
- サイトユーザーだけでなく、自社のWeb担当者や経営層も見据えた多角的な提案になっているか
- 目先だけでなく、中長期的な視点で提案ができているか
も大切なポイントです。自社が要求した内容に返答するだけで、自主的な提案をしてもらえない企業とは、長続きしにくい傾向にあります。
他にも、
- 自社ブランドを深く理解しているか
- 公開後の保守・運用の体制
- サイトデザインの見栄えの良さや使い勝手の良さ
なども評価ポイントになります。
より自社にマッチした業者を選ぶため、評価のポイントを事前に整理しておきましょう。
まとめ:コンペは準備が9割。ポイントを押さえて自社に合った業者を選ぼう
Webサイト立ち上げ・リニューアルにあたってコンペを行う際は、事前準備をどれだけスムーズに、厚く行えるかがプロジェクト成功のカギになります。
今回ご紹介したポイントを押さえて、適確なRFPを作り、自社に合った業者を選定しましょう。
RFPの作成が不安な方は、ぜひBAsixsまでご相談ください。貴社の課題を解決するWebサイトの構築を実現するための要件を整理させていただき、プロジェクト成功のお手伝いをさせていただきます。