コーポレートサイトのリニューアルは、多くの部署が横断的に関わるプロジェクトです。さまざまな課題やリスクに向き合い、コーポレートサイトリニューアルを成功させるには適切なプロジェクトマネジメントが不可欠です。
今回は、コーポレートサイトリニューアルを 成功に導くためのプロジェクトマネジメントについて、株式会社ビジネス・アーキテクツ(以下、BA) のディレクター森住に話を聞きました。
インタビューを受けた人
- 森住ディレクター(ビジネス・アーキテクツ)
2003年よりビジネス・アーキテクツに参加。大規模サイトのフロントエンド実装で多くの実績を積む。2008年からは実装者として稼働する傍ら、フロントエンドディレクターとして大企業向けのコーポレートサイト、サービスサイトの実装要件定義、実装ガイドライン策定、アクセシビシティガイドライン策定など、プロジェクト初期段階から運用設計まで、フロントエンド領域の設計業務に携わる。2016年には、業種業態や規模の異なる複数のサイトを運用するための専任組織リテンション・デザイン部を立ち上げ、部長としてワークフロー策定からプロジェクト管理、組織マネジメント全般を担当。2017年より大手ICT企業のオンサイトチームに参加。サイト運用業務からオウンドメディア構築やイントラサイト構築・運用をディレクション。技術とトレンドの観点から提案し続けている。
コーポレートサイトリニューアルに必要なプロジェクトマネジメント
コーポレートサイトリニューアルでは、企画の提案から実装に至るまでの各プロセスにおいて、さまざまな調整や課題解決が求められます。
コーポレートサイトリニューアルを円滑に進めるためには、「何をいつまでに誰が行なうか」など、プロジェクト全体を総合的に管理するプロジェクトマネジメントを行なう人物が必要です。
コーポレートサイトリニューアルの難しさ
コーポレートサイトリニューアルでは、いくつもの部署にステークホルダーが存在します。そしてリニューアルプロジェクトの進行中は、それぞれの部署の要望やニーズが衝突することも少なくありません。
コーポレートサイトリニューアルを進める際の具体的な難しさについて、森住は以下のように語ります。
コーポレートサイトリニューアルの難しさとは何でしょう。
森住:さまざまな難しさがありますが、一つはお客さまの事業について深いところまで理解したうえで、施策を考えることだと思います。
我々はWebサイトのプロフェッショナルですが、事業を深く理解できていなければ、良いWebサイトは作れません。とくにBtoBの場合は、私たちにとってあまり身近ではないサービスを扱うこともあり、事業理解には多くの時間をかけています。
お客さまの事業理解ができていないと、そもそも現在のコーポレートサイトの改善点はどこにあるかを提案することができません。コーポレートサイトはお客さまの企業が何をしている企業なのかをわかりやすく伝えるためのものです。そのため、まずは私たちが事業理解を深める必要があるのです。
また、コーポレートサイトリニューアルでは、お客さま側が部署間の意見をすり合わせるうちに要件が二転三転したり、サイトをとりまく状況が企画立案時から変わったりすることもあります。それらにともなう調整が必要な点もコーポレートサイトリニューアルならではの難しさです。
どんなにすぐれた戦略も実現できなければ意味がない
コーポレートサイトリニューアルを行なう目的は、「売上アップ」や「採用力強化」などさまざまです。しかし、どれほどすばらしい目的であっても、実現できなければサイトリニューアルをした意味がありません。
プロジェクトの立ち上げ後に発生する課題や状況変化を乗り越えて、最適解に着地させるには、状況を冷静に分析し進行させるプロジェクトマネジメントが求められます。
戦略を実現させるためにはどのようなことが重要ですか。
森住:サイトリニューアルの目的やコンセプトについて、プロジェクトメンバーと担当者だけでなく、担当者の先にいる人も含めて共通認識を持っていただくことを重要視しています。
戦略が思い通りに実現しない要因の一つに、関係者それぞれの認識の齟齬があります。私たちは担当者の方と多くの議論を重ねることで目的の粒度を合わせていきますが、先方の社内では認識に齟齬があり、円滑に進まなくなることがあります。
そうなると各所からバラバラの意見が出てきたり、どこかでボールがストップしてしまったりといったようにプロジェクトの進行に影響が出てきます。ですので、私たちはただ施策を提案し実行するだけではなく、お客さまの関係者全員に「なぜこの施策が必要なのか」を理解してもらえるように動いています。これもプロジェクトマネジメントの大事な仕事ですね。
プロジェクトマネジメントはトラブルの予防に
プロジェクトは常に遅延やトラブルのリスクを抱えています。リスクを踏まえた計画策定は当然行ないますが、適切なプロジェクトマネジメントをすることでリスクヘッジの効果はさらに高まります。
プロジェクトのリスクを回避するために気を付けていることはありますか。
森住:一つのプロジェクトには何人も関わっているので、それぞれの進捗管理を徹底しています。小さなリスクから大事故につながる可能性もあるので、ちょっとしたスケジュール遅延でもきちんとリスクとして扱い、その都度修正できるように動きます。
また、自社内だけでなく、お客さまに対してもリスク管理を働きかけるのがプロジェクトマネジメントの仕事だと考えています。例えば、お客さまから「これもやってほしい」という話があっても、全体のスケジュールにおける影響度を鑑みて、「ここまでだったらできます」「これをやるとこのような支障が生まれます」といったことを正直に伝えることも重要な役割です。
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成功するプロジェクトと失敗するプロジェクトの境界とは
コーポレートサイトのリニューアルが上手くいかない場合、どのようなことが起こっているのでしょうか。
コーポレートサイトリニューアルプロジェクトのよくある失敗要因、落とし穴
プロジェクトがうまくいかなくなる原因は何ですか。
森住:原因として最も多いのは、「計画以上のことをやろうとすること」だと思います。
プロジェクトを進めていくと、途中で方針の転換や、元々なかったアイデアの実現を求められることが少なくありません。しかし、お客さまの要望を何でも受け入れてしまうと、ハンドリングできなくなり、最悪の場合、計画自体が破綻します。
また、クライアントとのコミュニケーションがうまく取れず、プロジェクトがスムーズに進まないこともあります。受け答えの仕方や言葉遣い、問題点の指摘の仕方など、本当にちょっとしたことが原因ではありますが、関係性をうまく構築できずに失敗することもありますね。
プロジェクトマネジメントでどこまでサポートできるか
適切なプロジェクトマネジメントを行なえば、プロジェクトのQCD(品質、コスト、納期)を正確に管理できます。プロジェクトマネジメントでクライアントをどこまでサポートできるかが、QCD管理のうえでも重要です。
プロジェクトマネージャーとしてどのような視点でお客さまをサポートしていますか。
森住:先方の担当者の方と伴走するような視点で、サポートすることを心がけています。
例えば、プロジェクト内ではどうしても対処できないことがあると、お客さま側に対応をお願いする場合があります。このときお客さまの担当者は他部署との板挟みの状態になりやすく、負担が大きくなりがちです。
円滑にプロジェクトを進行するためには必要なこととわかっていても、他部署からすれば否定的に受け止められることもあります。できるだけ早く段取りを整え、担当者の方と一緒に各所への理解を求めることで、担当者の方の負荷を軽くすることを意識しています。
こういった細かな配慮が結果的にプロジェクト全体の成功につながります。
失敗しないサイト構築・運用のヒントを見つける
一口にコーポレートサイトリニューアルといっても、リニューアルの規模によってプロジェクトマネージャーに求められる役割やスキルは異なります。森住が経験したプロジェクトやそのなかで培われたことを聞きました。
サイト構築・運用体制の大規模プロジェクト
これまでに携わった案件について教えてください。
森住:5,000ページ規模のサイトのプロジェクトマネージャーを担当しました。要件定義などの制作工程に携わったほか、プロジェクト内の進行管理、メンバーマネジメント、お客さま側のご担当者のサポートも行ないました。
また、お客さまのオンサイトで作業したプロジェクトもありますし、企画フェーズから参画したプロジェクトもあります。
プロジェクトマネージャー、クライアントそれぞれの役割
クライアントは、コーポレートサイトをどうしたいかを社内の要望をすり合わせて方針を決定する役割を担います。一方、プロジェクトマネージャーはその方針を実現する役割を持ちます。
それぞれの役割について森住は以下のように語ります。
クライアント(発注者)側でプロジェクトマネジメントを行なう場合どんなリスクがありますか。
森住:お客さまは自社の業務やサービスは当然熟知されていますが、多くの場合コーポレートサイト制作のノウハウに精通していません。そのため、お客さまがプロジェクトマネジメントを行なうのは、非常に難易度が高いでしょう。とくにWeb制作の理解度や経験が足りない場合、品質や納期管理などにおけるリスクは大きくなります。
想定以上に費用が増大したり、スケジュールが遅延していつまでもリニューアルが終わらなかったりすることは、コーポレートサイトのリニューアルではよく起こることです。また、なんとか完成にこぎつけたとしても、当初の想定していた目的の達成には遠く及ばず、リニューアルした意味がなかったとなれば、本末転倒です。
その点、私たちはプロフェッショナルとして多くのWeb制作の経験があり、実績もありますので、安心してお任せいただきたいです。
プロジェクトマネージャーとして心がけていること
プロジェクトを成功させるには、クライアント(発注者)との信頼関係や連携が重要です。森住がプロジェクトマネージャーとして心がけていることはなんなのでしょうか。
プロジェクトマネージャーとしてクライアントに対して心がけていることはありますか。
森住:最も注意しているのは、コミュニケーションと関係性の構築ですね。お客さまとの関係性がプロジェクトの進退を左右しますし、ちょっとしたコミュニケーションのミスによって、安定していた進行が失敗に傾くこともあります。
ですので、安易に「ここがダメ」というような指摘はせず、前向きなメンタルで建設的に話し合えるような空気づくりや、関係性の構築を心がけています。とくに失敗要因などのネガティブな議論こそ、こういった姿勢が大切に思います。
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これからプロジェクトを立ち上げる担当者様へのアドバイス
サイトリニューアルで失敗したくない、どこを注意すればよいかわからないという声は多くあります。プロジェクトの立ち上げや業者選定の際の注意点について聞きました。
担当者としてやっておくべき発注前の準備、始動後の注意点
コーポレートサイトのリニューアルに着手するとき、担当者が注意すべきことはありますか。
森住:RFP(提案依頼書)で要件を精査しても、実際にプロジェクトを進めていくと要件を覆すような課題が発生することがあります。お客さまには、自社サイトの現状把握やリニューアルの方針決定を行なうとともに、予期しない軌道修正が発生する可能性も念頭に置いていただくことが必要だと思います。
プロジェクト始動後に注意すべきことはありますか。
森住:プロジェクト始動後に「せっかく改修するのだからこれもやりたい」という要望が次々と出てくるのはよくあることですが、時間とリソースは限られています。すべて実現しようとするとプロジェクト全体が破綻するおそれがあるので、優先順位を常に意識されると良いと思います。
委託する会社の選定のポイント
コーポレートサイトリニューアルを考えている担当者からすると、どのような点で委託する会社を選定すれば良いのか悩むでしょう。プロジェクトが成功するかどうかは、委託する会社の実績や経験だけではなく、対応範囲なども確認しておきたいところです。
委託先選定の際に気を付けるポイントはありますか。
森住:コーポレートサイトリニューアルでは、変化する状況に対応しつつ、プロジェクト全体の進行を管理し、品質を担保しなければなりません。つまり、ただ技術面でリニューアルに必要な作業を行なうだけではなく、適切なプロジェクトマネジメントまで任せられるかどうかが、委託先選びの重要なポイントの一つだと思います。
BAでは、RFP作成から制作までワンストップで対応しているので、制作業務に加えプロジェクトマネジメントまでお任せいただけます。
プロジェクトの成果を評価する仕組みも必要
プロジェクトの成果を判断するには、リニューアルのビフォーアフターを評価する仕組みが用意されているかも重要なポイントです。
プロジェクトの成果について評価する仕組みをどのように用意していますか。
森住:どれだけ成果が出ているかをわかりやすく伝えるには、やはりビフォーアフターを比較して、どこがどれだけ改善されたのかが目に見える仕組みが必要です。
BAでは、専門家によるUI/UX診断サービスを行なっております。客観的な視点で課題を発見し、具体的にどの部分をどう改善すれば何が変わるのかを、わかりやすくお伝えします。リニューアルを実施すると、実際に何がどれだけ改善されるのかが明確なので、お客さまに好評です。
「UI/UX診断サービス」リリースのお知らせ | BAsixs(ベーシックス)
プロジェクトマネジメントがコーポレートサイトリニューアルを成功に導く!
コーポレートサイトのリニューアルでは、ビジネスとサイトに関する知識との両方が必要です。ただWeb制作の知識や経験があるだけではなく、クライアントのビジネスを理解したうえで、プロジェクトマネジメントを適切に行なえるかどうかが、コーポレートサイトリニューアルを成功に導くカギです。
ビジネス・アーキテクツならではの強みを教えてください。
森住:RFP作成から制作までワンストップで対応できる点です。Web制作のプロとして、これまでの経験則に基づいたアドバイスや提案ができるのはもちろん、全体を見られるプロジェクトマネージャーを配置するので、QCD管理なども含めて全体のフォローができます。
またここ数年、お客さまのニーズや課題感が「デザインを良くしたい」といった抽象的なものではなく、より具体的で専門的になってきています。当社にはコーポレートサイトのノウハウが蓄積されており、お客さまの課題に寄り添って最適なソリューションを提供できる環境が整っています。