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Webアクセシビリティの必要性をどう上司、社内に伝えていくのか?

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昆野アカウント/ディレクター(ビジネス・アーキテクツ)

Web業界歴20年以上、マーケティングをベースとしてWebディレクター、プロデューサーとして数々のプロジェクトを経験。Web業界の酸いも甘いも嚙み分けた結果、人材の案件への適正マッチングこそがプロジェクトの成否を決めるという持論にたどり着く。2020年BA入社。色々な人と会って相談を聞く仕事です。

最近、多くの企業がWebアクセシビリティへの取り組みを強化していますが、その重要性を上司や社内に伝えることは大きな課題となっています。本記事では、上司のタイプ別に具体的な提案方法、費用対効果や実際のメリットをどのように説明するかについてご紹介いたします。

これにより、自社サイトのアクセシビリティ向上に向けた方針を明確にし、上司や社内の理解を深めるための有益なヒントと解説となれば幸いです。

Webアクセシビリティの必要性をどう上司、社内に伝えていくのか?

なぜWebアクセシビリティは上司、社内で理解しづらいのか?

Webアクセシビリティについて上司や社内で話題になった際、なんとなくその場では盛り上がるのに、具体的な話が進まない、予算承認が下りない、別の話にすり替わる。そんな経験はありませんか?
Webアクセシビリティが、上司や社内で理解しづらい理由はいくつか考えられます。

  1. ビジネス上の優先度
    一部の企業では、アクセシビリティに配慮した施策が直ちに収益に結びつかないと見なされることがあります。そのため、他の優先事項(売上向上やコスト削減など)に対して後回しにされることがあり、理解の浸透が遅れます。

  2. 目に見えない要素
    Webアクセシビリティの向上は、視覚的にはわかりにくいことがあります。たとえば、スクリーンリーダーに対応するためのコーディングや、キーボードナビゲーションの改善は、普段の操作では気づきにくいです。こうした要素は、直接的な効果を感じにくいので、理解しづらいという印象をもたれやすいです。

  3. リソースの不足
    アクセシビリティへの取り組みには、時間や専門知識、予算が必要です。しかし、限られたリソースの中で他のプロジェクトやタスクが優先されるため、アクセシビリティに対する理解や意識が育ちにくいです。

このような理由から、Webアクセシビリティの重要性を社内でしっかりと理解してもらうためには、適切な説明やコミュニケーションの工夫、具体的な事例の提示が必要となります。

上司に説明するときに抑えておきたいWebアクセシビリティの基本

Webアクセシビリティとは何か
Webアクセシビリティは、Webにおけるアクセシビリティのことです。利用者の障害などの有無やその度合い、年齢や利用環境にかかわらず、あらゆる人々がWebサイトで提供されている情報やサービスを利用できること、またその到達度を意味します。

令和6年(2024年)4月1日から、障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)の改正により、国や地方公共団体などに義務付けられている合理的配慮の提供が、民間の事業者も義務化されました。Webサイトの場合では、JIS X 8341-3:2016やWCAG(Web Content Accessibility Guidlines)に準拠したWebサイトを作り、Webアクセシビリティを確保することがこれに当たります。

Webアクセシビリティのユーザーにとっての利点

スクリーンリーダー対応により目が不自由な人でもWebサイトが閲覧できる
スクリーンリーダーは、視覚に障害のある方がWebサイトを音声で読み上げてもらいながら利用できるツールです。これらへの対応が整っていると、視覚に障害がある人でも適切に情報を得られ、アクセス効果が大きく向上します。Webアクセシビリティを考慮することで、全ユーザーが同じ内容を公平に享受できるようになります。

キーボードだけで操作できることにより、マウスが使えない人が次のアクションに進める
マウスが使えない状態でも、キーボードだけでサイトのすべての機能を利用できるように設計することも重要です。

たとえば、「Tab」キーと「Enter」キーだけでフォームの入力やリンクの選択が行える環境を提供することです。これにより、マウスを使えない環境の方でも快適にWebサイトを操作することが可能となります。

Webアクセシビリティに関するお客さまが抑えておくべき重要な法律

最近では、各国でWebアクセシビリティに関する法制化が進んでおり、Webサイト運営者に対応が義務付けられるケースが増えています。

たとえば、日本では前述した「障害者差別解消法」に基づき、すべての企業がWebアクセシビリティに対応する必要があります。この法的要請に応えることで、企業としての信頼性や社会的責任を果たすことができます。

企業としてのWebアクセシビリティ対応メリット

Webアクセシビリティ対応を行うことで、顧客層を拡大し、サイトの利用者数を増加させることができます。

また、アクセシビリティ対応が進んでいる企業は社会的信頼を得やすくなり、ブランド価値の向上にもつながります。

さらに、検索エンジンによる評価も向上し、SEO効果も期待できます。これにより、ビジネスの成長と利益の拡大が見込まれます。

上司をDiSC理論タイプ別にWebアクセシビリティの訴求

それでは上司にWebアクセシビリティの重要性を伝えるためにどうしたら良いのか、人の性格・特性や行動パターンを4つのタイプに分類し、各タイプ別に適切なコミュニケーション方法を導きだしています。1920年代にアメリカのウィリアム・M・マーストン博士が提唱したコミュニケーション理論である「DiSC理論」を用いてタイプ別に考えてみましょう。

DiSC理論とは

DiSC理論は、個人の行動スタイルを理解するための心理学的なモデルです。この理論は、主に4つの主要な行動スタイルに基づいています。それぞれのスタイルは、以下のように分類されます。

DiSC理論分類図

D(ドミナンス)
主導的で、結果志向のスタイル。挑戦を好み、決断力があり、競争心が強い傾向があります。

I(インフルエンス)
社交的で、他者との関係を重視するスタイル。コミュニケーション能力が高く、影響力をもつことを好みます。

S(ステディネス)
安定性を重視し、協力的なスタイル。人間関係を大切にし、変化を好まない傾向があります。

C(コンプライアンス)
ルールや基準を重視するスタイル。分析的で、正確性や品質を重んじる傾向があります。

DiSC理論は、個人の行動やコミュニケーションスタイルを理解し、チームワークや人間関係の改善に役立てるために広く用いられています。ビジネスや教育の現場でも活用されることも多い理論です。

とくにダイバーシティ(多様性)が重視される昨今において、組織・チームにおけるコミュニケーションを円滑に進めるには、上司やメンバーのコミュニケーションタイプを理解することで、多様なスキルや個性をもつメンバーと信頼関係を築けます。

DiSC理論タイプ別の上司へのアプローチと提案例

DiSC理論を用いて上司にWebアクセシビリティの重要性、企業メリットを伝える際には、各タイプに応じたアプローチを考えることが重要です。以下に、各タイプ別のアプローチの方向性や提案内容、上司に刺さりそうな具体的項目をいくつかご紹介します。

D(ドミナンス)タイプ

  • アプローチ
    結果や効率を重視するため、Webアクセシビリティがビジネスに与える影響を強調します。
  • 提案内容
    Webアクセシビリティを向上させることで、より多くの顧客にリーチでき、売上が増加する可能性があります。また、法的リスクを回避することもできます。
    • 具体例
      • 市場拡大
        アクセシビリティを向上させることで、障害をもつ顧客層へのアクセスが可能になり、市場シェアを拡大できます。
      • 売上増加
        より多くのユーザーがサイトを利用できることで、購入率が向上し、売上の増加が期待できます。
      • 法的リスクの軽減
        アクセシビリティ基準を満たすことで、訴訟リスクを低減し、企業の評判を守ることができます。

I(インフルエンス)タイプ

  • アプローチ
    人間関係やコミュニケーションを重視するため、ユーザーの体験や感情に訴えかけます。
  • 提案内容
    Webアクセシビリティを改善することで、すべてのユーザーが快適に利用できるサイトを提供できます。これにより、ブランドの信頼性が向上し、顧客との良好な関係を築けます。
    • 具体例
      • ユーザー体験の向上
        Webアクセシビリティを改善することで、視覚や聴覚に障害のあるユーザーも快適にサイトを利用できます。
      • 2ブランドの信頼性向上
        アクセシブルなサイトは、すべてのユーザーに配慮している印象を与え、ブランドの信頼性を高めます。
      • 顧客との良好な関係構築
        アクセシビリティを重視することで、顧客からのフィードバックが向上し、長期的な関係を築けます。

S(ステディネス)タイプ

  • アプローチ
    安定性や協力を重視するため、チーム全体の利益や協力の重要性を強調します。
  • 提案内容
    Webアクセシビリティを考慮することで、すべてのメンバーが平等に情報にアクセスできる環境を作り出せます。これにより、チーム全体の生産性が向上します。
    • 具体例
      • チームの協力促進
        アクセシビリティを向上させることで、すべてのメンバーが同じ情報にアクセスでき、円滑なコミュニケーションが実現します。
      • 生産性の向上
        アクセシブルな環境を整えることで、障害のあるメンバーも含めた全員が効率的に作業でき、チーム全体の生産性が向上します。
      • チームの一体感強化
        すべてのメンバーが平等に情報を得られることで、チームの一体感が高まり、より強固な協力関係が築けます。

C(コンプライアンス)タイプ

  • アプローチ
    データやルールを重視するため、具体的なデータや法的要件を示します。
  • 提案内容
    Webアクセシビリティは法律で求められている要件です。具体的な統計データを示し、アクセシビリティの改善がどのようにリスクを軽減するかをまとめました。
    • 具体例
      • 法的リスクの軽減
        Webアクセシビリティの改善により、法的リスクを軽減できます。たとえば、過去にアクセシビリティ違反で訴訟を起こされた企業は、費用と時間の損失を被りました。
      • ブランドの信頼性向上
        アクセシビリティの向上は、企業の評判やブランド価値を高めます。顧客や利害関係者からのポジティブなフィードバックが増加し、信頼性が向上します。
      • 市場拡大
        アクセシビリティに配慮されたWebサイトは、SEO(検索エンジン最適化)の向上にもつながります。障害者向けのコンテンツは、検索エンジンのランキングにプラスの影響を与えます。

円滑なコミュニケーションを行うためにも、自分の上司に具体例を示し提案書を作成しましょう。上司のタイプがわからない、どんな提案で説得できるかわからないなど、相談先をお探しの場合は、当社でもご協力が可能です。

理解が得られたら、Webアクセシビリティ対応の具体的な施策検討を進めよう

上司から一定の理解が得られたら、実施に向け具体的にどんな施策を行うか見ていきましょう。一般的な10の施策を時系列に沿ってご紹介します。

  1. 自社サイトの診断
    • Webアクセシビリティ診断
    • UI/UX診断
  2. Webアクセシビリティ方針の策定
    • 社内でWebアクセシビリティの方針を決める
    • Webアクセシビリティ方針をサイトに公開する
  3. Webアクセシビリティ方針に則った試験・改善
    • Webアクセシビリティ方針に則った改善
    • 試験の実施
    • 試験結果を公開する
  4. 社内体制の確立
    • 社内向け運用ガイドラインの策定
    • 運用ガイドラインの浸透
  5. 定期的な検査
  6. 継続的な改善と評価

BAでは、WebアクセシビリティやUI/UXの診断サービスからアクセシビリティに配慮したWebのコンサルティング・制作などすべての施策のお手伝いが可能です。

Webアクセシビリティ診断やUI/UX診断については、以下の記事をご覧ください。
うちのWebサイトはどうなってる?診断から始めるウェブアクセシビリティ対応 | BAsixs(ベーシックス) 価値あるユーザー体験を届ける為に〜UI/UXの改善が重要な理由〜 | BAsixs(ベーシックス)

まとめ:社内にWebアクセシビリティを展開するために

法改正の影響もあり、Webアクセシビリティの向上に取り組み始めている企業は増加傾向にあります。しかし、まだまだ多くの企業では、対応方針の検討や社内理解を得るためにどうすればよいのか?と迷っていると聞きます。

社内理解を得るためには、Webアクセシビリティ対応することで、費用対効果や重要性が高まっていることを強調しましょう。基本的な説明と具体的な実施内容、法的な背景、ビジネスメリットを網羅的に伝えることで、上司の理解を得やすくなります。これにより、社内全体でWebアクセシビリティ向上に向けた取り組みが進みやすくなり、結果としてより多くのユーザーが快適に利用できるWebサイトが実現します。

Webアクセシビリティの方針は必要不可欠であり、それに基づいた対応を進めることが求められます。企業がこれを無視することは、法的リスクを抱えるだけでなく、ビジネスチャンスを逃すことにもつながります。今からしっかりと対応を進め、ユーザーにとって使いやすいWeb環境を提供していきましょう。

BAでは所属するアクセシビリティスペシャリストとともに、Web黎明期よりWebアクセシビリティに携わってきた知見を活かし、お客さまの課題を解決するお手伝いを行っております。ぜひお問い合わせください。