ビジネス・アーキテクツ(以下、BA)では数多くのウェブサイト、とりわけコーポレートサイトのリニューアルを行ってきました。そしてここ数年において、お客さまがウェブサイトに対する課題として挙げられることの多くに「海外現地法人のサイト更新が滞っている。」があります。CMS、ガイドライン、マニュアルといった環境は整っていても、実際に更新を行うための体制が整っていないことが背景にあります。
Adobe Experience Manager(以下、AEM)にはライブコピーや言語コピーといったページのコピー機能があります。これらを活用することで、起点となるサイトに加えた更新を関連するサイトにコピーすることが可能です。つまりこの機能を活用することで、本社サイトに加えた更新を海外現地法人のサイトに行き渡らせることが可能となり、冒頭で挙げた課題を解決することができるのです。
本記事では、グローバル展開されている企業様のコーポレートサイト群をAEMで効率よく管理する方法を、海外現地法人が以下のプロセスで成長していくと想定して紹介していきます。
AEMでの管理と海外現地法人が成長する4つのプロセス
グローバル展開されている企業様のコーポレートサイト群をAEMで効率よく管理する方法を、海外現地法人が以下のプロセスで成長していくと想定して紹介していきます。
- 海外現地法人はあるがウェブサイトの担当者はおらず、日本の本社が海外現地サイトの更新を行っている。機械翻訳されたテキストをそのままサイトに掲載している。
- 海外現地法人に現地スタッフがおり、機械翻訳されたテキストを現地スタッフが適宜修正したテキストをサイトに掲載している。しかしページ作成等の更新は日本の本社が行っている。
- 海外現地法人にウェブサイト運用チームができ、現地スタッフで一通りの運用ができるようになった。裁量を与えてサイト運用を行いたいが、本社によるガバナンスも効かせたい。
- 複数の海外現地サイトを束ねた地域(リージョン)レベルでのコンテンツマネジメントや、ガバナンスを効かせたサイト運用を任せたい。
解説例:ブラジルの現地サイト(ポルトガル語)
本記事では下記を前提に、ブラジルの現地サイト(ポルトガル語)を例に説明します。
- 日本に本社があり、海外の複数の国に現地法人や現地サイトを持っている。
- 現地サイトはAEMで管理されている。
- 現地法人側にウェブサイトの運用体制がある場合は現地法人が更新を行い、運用体制がない場合は日本の本社が更新を行っている。
用語の説明
AEMでよく使われる用語について説明します。
- ローカルサイト
- 世界各国の現地サイトです。現地法人に運用体制がある場合は現地法人が更新を行います。
- 例:ブラジルのローカルサイト、アルゼンチンのローカルサイト
- マスターサイト
- ローカルサイトを束ねるサイトです。
- AEM内のみに存在する非公開サイトです。
- 複数サイトへの更新においては、更新の起点となります。
- ローカルを束ねる「リージョンマスター」、リージョンマスターを束ねる「グランドマスター」があります。
- 例:Japanマスター、南米マスター
- ライブコピー
- AEMが標準で持っている、ページ全体もしくは一部をコピーする機能です。
- コピー先ページの言語はコピー元と同じになります。
- コピー元からの継承を切ることも可能で、ページの一部だけコピー元と異なる内容にすることが可能です。
- 例:Japanマスター(英語)で作成したページをブラジルサイト(英語)にライブコピーする。
- 言語コピー
- AEMが標準で持っている、コピー元ページを翻訳してコピーする機能です。
- AEMは外部翻訳ツールとのシステム的な連携が可能で、翻訳ツールと翻訳ジョブの受け渡しをして翻訳を行います。
- 例:ブラジルサイト(英語)で作成したページをブラジルサイト(ポルトガル語)に言語コピーする。
AEMのさまざまな機能について、以下の記事でも詳しく説明しています。 AEM (Adobe Experience Manager) 導入で解決するグローバルサイトの課題 | BAsixs(ベーシックス)
プロセス1:日本の本社がブラジルサイトを更新する状態
ブラジルに現地法人を設立し、ブラジルサイトを開設した状態です。
現地法人にウェブサイトの運用チームはなく、日本の本社がブラジルサイトの更新を行っています。そのため、ブラジルサイトはJapanマスターの配下にいます。
日本の本社には英語が分かるスタッフはいますが、ポルトガル語が分かるスタッフがいないため、ブラジルには英語とポルトガル語の2サイトがあり、英語サイトをメインにしています。
ブラジルサイトにページを作成する場合は、日本の本社がブラジルの英語サイトに英語でページを作成し、言語コピーによってブラジルのポルトガル語サイトにポルトガル語ページを作成します。ポルトガル語サイトは機械翻訳されたテキストがそのままの状態で掲載されています。
プロセス2:ブラジルの現地スタッフが翻訳のチェックや修正を行う状態
ブラジルの現地法人にウェブサイトの翻訳チェックを行う現地スタッフが登場し、翻訳のチェックや修正が現地法人で対応可能となりました。ただしページの作成は、引き続き日本の本社が行っています。
これによって、ブラジルの英語サイトの更新は日本の本社が担当、ポルトガル語サイトは現地法人の担当、といった棲み分けがされるようになりました。
プロセス3:海外現地法人のチームに運用を任せる状態
ブラジルの現地法人にウェブサイト運用を行うチームができました。これによってページ作成から更新まで一連の運用業務が現地法人側で完結可能となりました。
ブラジルのサイトは、ポルトガル語の方がメインとなるため、Japanマスターの中で日本語→ポルトガル語の言語コピーを行い、それをブラジルサイト(ポルトガル語)にライブコピーする構造となりました。これは、言語コピーではコピー先での編集ができないためです。
ウェブサイト運用を現地法人に任せてもガバナンスが維持されるよう、日本の本社ではガイドラインやマニュアル等を整備して支援します。また、ガイドラインやマニュアルもAEMサイトとして構築し、言語コピーを利用してポルトガル語版も作成しました。
プロセス4:リージョンマスターの管理を任せる状態
ブラジルでの事業が成功し、アルゼンチンやペルーにも進出することになりました。
ブラジルのウェブサイト運用チームはうまく機能しており、彼らにアルゼンチンやペルーのウェブサイト運用を任せることにしました。
南米マスターを新規作成し、そこにブラジルサイトを移動し、アルゼンチンやペルーのサイトを新規作成します。南米マスターはポルトガル語とし、グランドマスターの中で英語→ポルトガル語の言語コピーを行い、それを南米マスターとしてライブコピーしています。
さらに、南米マスターの中でもポルトガル語→スペイン語への言語コピーを行い、それがアルゼンチンやペルーのサイトにライブコピーされる構造となりました。
これまで、4つのプロセスでブラジルの現地サイト(ポルトガル語)を展開していく例をご紹介しました。以下の記事でもAEMを利用した多言語対応方法をご案内しています。
AEMでWebサイトを多言語対応する方法 | BAsixs(ベーシックス)
まとめ:AEMを利用して効率よくガバナンスを効かせる
ライブコピーや言語コピーは、コーポレートサイト群を管理する上では欠かせない機能で、うまく設計することで大きな効果を得ることができます。現地法人それぞれの特徴、翻訳(言語)の関係性、マスターサイトの管理者といった観点を含めて設計をしておけば、将来のローカルサイトやマスターサイトの追加にもしっかりと対応ができるようになります。
また、サイト群の管理においてはガバナンスが大きな課題になります。AEMではサイトをまたいだテンプレートやコンポーネントの共通化も可能であるため、本記事で紹介した手法を用いて管理することで、効率よくガバナンスを効かせることも可能です。
サイト群の運用やガバナンスでお困りの場合は、是非BAにご相談ください。