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サイトガバナンスを強化!承認ワークフローで発信メッセージを統一

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アラム ナフィウルシステムエンジニア(ビジネス・アーキテクツ)

2022年にバングラデシュのIUBという大学を電子技術者として卒業。日本語と日本の文化を学ぶためにBJETに参加。2023年4月より宮崎大学で日本語を勉強しながらBA宮崎オフィスにインターンシップとして勤務。7月よりシステムエンジニアとして勤務。サッカーとアニメが好き。

海外拠点やグループ会社のサイト運営において、未承認コンテンツの公開を抑止したい、コントロールしたいと悩んでいませんか?
私たちはサイト構築やリニューアル時に企業さまから、以下のようなお悩みを聞きます。

  • 海外拠点やグループ会社のサイトにおいて、ガバナンス(統制)が不十分だと経営層から指摘があった
  • 今使っているWordPressでは複雑な承認経路(プラグイン)を設定できないので、ワークフロー機能が充実したCMSを検討したい

Webサイトで発信する情報のガバナンスを保った上で長期運用を希望するお客さまや、上記のような悩みを抱えているお客さまは大変多いです。それらの悩みを解決するための具体的な要望として、以下の例のようなカスタマイズ性の高い承認フロー設計のご相談をよくいただきます。

  • コンテンツ毎に承認段数を変えたい
  • カテゴリ毎に異なる承認フローを選択したい
  • 組織変更があったら承認権限・承認フローを変更したい

これらの課題は、AEMの承認フロー機能を使うと解決できます。AEMの承認フロー機能は管理するアセットからページの一部など幅広い用途に設定でき、承認フローの設計も高いカスタマイズ性を持っています。

本記事では、企業イメージを保つためのサイトガバナンスの重要性や、上記のような承認フローの設計に関する悩みを解決するための手法を紹介いたします。私たちがおすすめするAEMの承認フロー機能について、AEMパートナー企業のエンジニアが実際の画面を見せながら説明しますね。

サイトガバナンスを強化!承認ワークフローで発信メッセージを統一

企業イメージを保つサイトガバナンスとは

サイトガバナンスとは、WebサイトやSNSなどの企業が持つデジタルの顧客接点において、以下の2点を両立するための取り組みを指します。

  • 企業の戦略やルールに則った効率的かつ安全な運用
  • よりよいユーザー体験の提供

企業イメージを保つためには、顧客ニーズやユーザビリティ、品質基準、Web戦略を考慮したガイドライン・ルールなどを根拠に統一すべき情報が多くあります。

取り組みの内容が、組織運営の課題と紐づくことは多いです。デザインが統一できないといった見た目の問題だけではありません。たとえば、インフラやシステムへの二重投資、Webサイト間の連携不足による機会損失など企業全体で検討すべき課題も挙げられます。

これらの課題も解決に導く一つの手法として、AEMのマルチチャネル機能やライブコピー、言語コピー機能などをおすすめします。

以下の記事でそれらの機能を紹介しています。またグローバルサイトの運営でよくある課題とその解決方法についてもまとめていますのでぜひご覧ください。

AEM (Adobe Experience Manager) 導入で解決するグローバルサイトの課題 | BAsixs(ベーシックス)

サイトガバナンスの必要性

サイトガバナンスを損なうということは、重複投資による運営コストの増加、企業イメージ・ブランドの毀損、ユーザーの期待値低下による機会損失などの企業における損失が発生する可能性が考えられます。逆に、サイトガバナンスを適切に守るということは、リスクによる損失を防ぎ、メリットと変えることができるのです。

あらためて、サイトガバナンスはなぜ必要なのか、代表的な3つのメリットを紹介します。

  • コンテンツ制作・サイト運営コストの効率化(グループ全体のWeb投資効率を改善し、全体を最適化する)
  • 統一感のある企業のイメージや、一貫性のあるブランドメッセージを伝える
  • 機会損失の予防

サイトガバナンスを社内浸透させるためのポイントについては、以下記事にまとめています。

Webガバナンスとは?メリットと社内に浸透させるポイントを解説 | BAsixs(ベーシックス)

また次の記事では、Webガバナンスを強化するための取り組みや工夫について、弊社ディレクター3人が対談しています。あわせてご覧ください。

グローバルサイトのWebガバナンス(前編)必要性と気を付けるポイント | BAsixs(ベーシックス)

サイトガバナンスを保ったサイトの運用をするために、AEMのワークフロー機能は不可欠です。次の章から、AEMのワークフロー機能を使って解決する方法を紹介します。

AEMの概要

AEMはAdobe Inc.が提供するCMSプラットフォームです。AEMには、大規模サイトや複数サイト・グローバルサイトなどの運営・管理を想定した、多くの便利な機能が標準で備わっています。

AEMを構成する代表的な製品群は4つあります。

  • AEM Sites
  • AEM Assets
  • AEM Forms
  • AEM Screens

AEMのワークフロー機能

今回はその中から、AEM Sitesのワークフロー機能について説明します。ワークフローとは、あらかじめ設計された一連のステップで構成され、そのステップごとに個別のタスクが実行される機能です。

AEMのワークフロー機能を使うと、AEMで管理されたコンテンツを公開するまでのさまざまな承認ステップ通りに承認や確認を行って、ページ公開や情報更新を行ったり、設定されたスケジュールに従ってステータスの自動更新をしたりできます。

高いカスタマイズ性を兼ね備えたAEMのワークフロー機能を利用することで、業務の承認ステップを通過した正しい情報を発信することが出来ます。その結果、お客さまの企業イメージを損なうことのない正しい情報を、多くの人へ届けられます。

また他にも企業のメリットとしては、Webサイトのガバナンスを保った上で長期運用が実現できます。結果、Web改修にかかる一部の浮いた予算を、コンテンツの内容に注力するなど戦略的な予算用途が検討できます。

課題1. 未承認コンテンツの公開を抑止したい

各国向けの複数サイトを運営するうえで、承認ワークフローを活用することで更新を自動化できます。更新が自動化されていない場合、一部だけ公開漏れが発生したり、情報を各国でそれぞれに更新しサイトガバナンスが保てないというリスクがあります。

本社側でコンテンツを作成・翻訳するなど管理を中央集権化させ、各地域担当者が承認してから公開するという業務フローに変更することで、未承認のまま記事を公開してしまうリスクや公開漏れを防ぐことが可能です。

AEMのワークフロー機能を有効に活用し、承認者が承認してから公開するという業務の流れを取り入れることで、未承認コンテンツの公開を防ぐことが可能です。

たとえば、公開までの承認フローは以下のように設定できます。また実際には、お客様毎の状況に応じて適切な体制・フローをご提案しています。

図:公開までの承認フロー例

上記のワークフローでは、通知を受け取ったら、公開ページのイメージ画面(AEMではペイロードと呼ぶ)を見て、コンテンツ作成者に差し戻すか判断します。校正が必要ない場合は、承認後に次の担当者へ承認依頼を送ることができます。

この例では、サイト運用承認者だけがページを公開する権限を持っています。サイト運用承認者は、コンテンツ公開に進めてもいいと判断すれば、公開を実行できます。しかし、さらに校正が必要な場合は、コンテンツ作成者に差し戻すこともできます。

コンテンツ作成者に差し戻すと、コンテンツ作成者は必要な校正を終えたコンテンツを再びコンテンツ作成依頼者に送り、承認を得ます。

このように、コンテンツは最終的に公開できる状態になるまで承認のフローを経ることになります。サイト運用承認者以外は公開できる権限を持たないため、未承認のまま、コンテンツが公開されることはありません。

承認者のプレビュー確認画面

1. 通知の受け取り

コンテンツ作成者が、要求されたページの作成を完了した後、新しく作成されたページを確認します。そしてコンテンツ作成依頼者は次のフローで承認のための通知を受け取ります。

キャプチャ:通知受信画面

2.プレビュー確認し、承認時にはコメントを入れられます

承認依頼が来たら、公開予定コンテンツの表示を確認します。内容に問題がなければ、任意でコメントを入れ「完了」ボタンをクリックして、次の承認者へ確認を依頼します。

キャプチャ:ワークフロー承認完了画面

もし校正が必要な場合は、コンテンツ作成者に差し戻しを行います。注釈を追加することもできます。

差し戻しをする場合は、プレビュー画面に直接指示をいれられる

一般的にCMS上のワークフローでのやりとりはテキストのコメントを中心としたやりとりになりますが、AEMではワークフローで承認者が編集者に差し戻す際に、次の図のように視覚的に伝えることが可能です。

他のCMSでは、修正指示書を作成しワークフローに添付したり、別途コンテンツ作成者と会話をする場合が多いです。AEMのワークフローでは、直接コメントを書き込めるため、それらの手間を省きスムーズに進行できます。

キャプチャ:ページ注釈の追加の画面

課題2. カテゴリ毎・コンテンツ毎に異なる承認フローを選択したい

たとえば、IR情報カテゴリは日本語サイトだけなので承認フローは日本の本社のみ、製品カテゴリは翻訳して各国担当者に確認・承認が必要という場合があります。状況に応じて最適な承認フローを選択したい時にも、AEMの承認ワークフローでは、標準で数十種類のワークフローテンプレートが準備されているので柔軟な設計が可能です。

複数の承認ワークフローを事前に設定しておけば、カテゴリやコンテンツ毎に異なる承認フローを選択できます。さらに、1ページの上半分はグループ会社共通コンテンツ、下半分は各地域の情報を掲載しているコンテンツ、というページを分けた承認フローの実行も可能です。

グローバルサイトの承認フロー設定例

グローバル展開している企業で、各国向けの複数サイトを運営している場合は、複雑なサイト構成で各国と連携をとりながら運営することが求められます。

このような複雑な場合でも、AEM標準のテンプレートを利用したり、テンプレートをベースに企業の状況にあわせてカスタマイズすることで手軽にワークフローを設計できます。

下図のようなサイト構成の場合における、グレーで網掛けした部分(マスターサイト、フランス向け英語サイト、フランス向けフランス語サイト)の承認フローについて説明します。

図:グローバル企業のサイト構成例

上記で例に挙げたグローバル展開企業のWebサイトにおける、網掛け部分の承認フローは以下になります。

STEP1. 各国の英語サイトのコンテンツ公開までの承認ワークフロー(承認後にライブコピー)

  1. マスターサイトの英語記事の修正やページの新規作成
    1. マスター記事の承認依頼(コンテンツ作成者)
    2. マスター記事の承認(コンテンツを依頼した担当者、マスターサイト承認者)
  2. マスターサイトの英語記事をフランスサイトにライブコピーする
    1. ライブコピーを実行(コンテンツを依頼した担当者)
    2. ライブコピーの承認(各国承認者)
  3. フランスサイトの英語記事を公開
    1. 公開確認・承認依頼(ローカルサイト担当者)
    2. 公開承認(ローカルサイト承認者)
    3. 公開(ローカル担当者)

図:STEP1.各国の英語サイトのコンテンツ公開までの承認ワークフロー例

STEP2. 各言語に翻訳し、公開するまでの承認ワークフロー(言語コピーの更新)

  1. フランスサイトの英語記事をフランス語に翻訳
    1. 言語コピー機能で翻訳システムの実行・承認依頼(言語ごとの翻訳担当者)
    2. 翻訳した記事を承認(言語ごとの翻訳承認者)
  2. 公開
    1. 公開確認・承認依頼(ローカルサイト担当者)
    2. 公開承認(ローカルサイト承認者)
    3. 公開(ローカル担当者)

図:STEP2.各言語に翻訳し、公開するまでの承認ワークフロー例

翻訳作業は、コンテンツによって機械翻訳・翻訳会社(厳密にはワークフローの承認者が増える。翻訳担当者と翻訳承認者の2人になる)を選択できます。翻訳会社を選択した場合は、翻訳と校正を繰り返すなど、翻訳に最適化した承認フローを設定することが可能です。

上記図版の翻訳作業の承認ワークフローにおいて、翻訳者による翻訳をする場合、以下の3ステップで進めます。

  1. 各国担当者が翻訳を依頼
  2. 翻訳会社内にて翻訳・校正
  3. 各国担当者に承認依頼

お客さまの状況にあわせてワークフローを柔軟に設計できる

承認者や条件分岐が少ない場合は、コンテンツ作成から公開までの工程を、1つの承認フローにまとめられます。また承認者が多く条件分岐が複雑な場合は、承認フローを分割する方法も検討します。

課題3. 状況に応じて、承認権限・承認フローを柔軟に変更したい

たとえば、社内の体制変更による組織変更や異動などの理由で承認権限を変えたいという希望をよく聞きます。この原因として考えられるのは、顧客ニーズや市場環境、社会的・政治的環境など外的要因の環境変化に基づくものでしょう。企業や組織では、そのような新たな課題や機会にあわせた組織改革が頻繁に行われます。外的要因が大きいため、組織も急な変更を強いられることとなります。

そのような状況においても、AEMの承認ワークフローを使えば、エンジニアでなくても(コードを書かなくても)、GUIで設定が可能です。さらにAEMには豊富なワークフローのテンプレートが準備されています。

組織変更でのワークフローの再設計をともなう変更や、異動での承認者の変更といった2つのシーンについてご説明します。

組織変更があったときに、柔軟にワークフローモデルの設定・変更ができる

プロセスに関与するすべての人々を含むワークフローモデルは、たとえば以下のように設計します。多くのワークフローテンプレートから選択したり、企業の状況にあわせた柔軟な設計が可能です。

なお、承認フロー設計の意図をドキュメントで残しておくことで、組織変更が発生した際のワークフローモデル再検討に役立ちます。

キャプチャ:ワークフローモデル例

異動があったときに、承認権限も柔軟に設定・変更できる

以下のようなタスクに関する権限設定について、誰にどのようなレベルの権限をつけるかを自由に設計し利用できます。

  • コンテンツの登録
  • コンテンツの編集
  • コンテンツを確認
  • コンテンツを承認
  • コンテンツを公開

さらに設定した権限をグループに対して割り当てることも、担当者レベルで可能です。グループに対して承認フローを割り当てるとは、たとえば承認設定したグループにサイト運用チームなどの複数の人を登録する場合が挙げられます。そのグループのうちの一人が承認すればフローを次のステップに進められます。

権限の変更時は、下図のように参加者から対象を選択肢するだけで設定変更が完了です。

キャプチャ:AEMで承認フローを編集する画面

まとめ:サイトガバナンスを強化するためにワークフローを活用しよう

AEMのワークフロー機能について、公開までの承認フローを例に説明しました。 説明例のような承認フロー以外にも、定型業務の自動化も可能です。たとえば、次のような作業を自動化できます。

  • マスターサイトの言語コンテンツから機械翻訳で、複数言語に記事を翻訳する
  • AEMアセット管理と連携することで、画像のバリエーション(タグラインを言語コピーしたり、A/Bテスト向けバージョン)を作る
  • アセットをメール通知で各国へ展開する

AEMを導入しワークフロー機能を活用することで、中央集権化された正しい情報を各国へ発信できます。多くの人へ統一された情報を発信し、サイトガバナンスが強化されることで、「コンテンツ制作・サイト運営コストの効率化」「企業やサービスのイメージ・ブランドの一貫性と統一感の担保」「機会損失の予防」を実現できます。

今回説明しているAEMとWordPressやPowerCMSを比較した比較表もありますので、ぜひご覧ください。

グローバル企業や、複数人・複数部署でサイト更新する担当者におすすめのCMS比較表2022 | BAsixs(ベーシックス)

BAsixs参画企業のビジネス・アーキテクツには、企業のグローバルサイトを構築・運営したノウハウがあります。AEMパートナー企業の当社は、お客様の業務の流れや要望に沿って、ワークフローを柔軟に設計いたします。

ご要望があれば、AEMに関するご相談やデモも承ります。どうぞお気軽にお問い合わせください。