DX推進に取り組む中で、「DX認定制度を取得したいが、何から始めればいいのかわからない」と悩んでいませんか。
DX認定制度は、自社のDX推進状況を可視化し、社外 からの信頼性向上にもつながる制度です。しかし、実際の取得プロセスや進め方はイメージしづらく、準備の途中で手が止まってしまうケースも少なくありません。
本記事では、Business Architects(ビジネス・アーキテクツ)がDX認定制度を取得した際の実例をもとに、申請準備から取得までの流れをステップごとに解説します。あわせて、各工程でのポイントやつまずきやすい点も紹介し、自社で申請準備を進めるためのヒントをお届けします。

DX認定制度とは何か
DX認定制度※1 とは、企業がデジタル技術を活用して事業変革に取り組むための準備が整っている企業を、国が認定する制度です。経済産業省が定める「デジタルガバナンス・コード」をもとに、DX推進のビジョンや戦略、推進体制などが一定の基準を満たしている企業が認定されます。
重視されるのは、単なるITツールの導入状況ではなく、「経営戦略としてDXへ取り組めているか」です。具体的には、経営層の関与や全社的な推進体制、DX戦略や情報発信などが評価対象となります。
また、大企業だけでなく、中堅・中小企業や個人事業主も申請でき、業種を問わずDX推進に取り組む事業者が対象です。企業がデジタル技術を活用しながら、継続的に変革へ取り組むためのスタートラインとして位置づけられる制度です。
※1 DX認定制度(情報処理の促進に関する法律第二十八条に基づく認定制度). 経済産業省. (参照 2026-06-05)
DX認定制度のメリット
DX認定制度を取得することで、企業は対外的な信頼性の向上だけでなく、社内のDX推進体制の強化にもつなげることができます。ここでは、主なメリットについて解説します。
①対外的な信頼性・企業価値の向上
DX認定制度は、国が定める基準にもとづいてDX推進状況を評価する制度です。認定を取得することで「DX推進に積極的に取り組んでいる企業」として対外的にアピールできます。
近年では、取引先や顧客からDX推進への取り組みを求められるケースも増えており、認定取得が企業の信頼性向上につながる場面も少なくありません。
また、採用活動や営業活動においても、自社の取り組みを伝える要素として活用できます。
②社内のDX推進を加速できる
DX認定制度の取得に向けて準備を進める過程では、DX推進の方針やビジョン、推進体制を整理する必要があります。そのため、制度への対応を通じて、社内のDX推進を改めて見直すきっかけになります。
特に、「誰がDXを推進するのか」「どのような体制で進めるのか」といった役割や責任範囲を明確にできる点は大きなメリットです。これにより、部門ごとに分かれていた取り組みを全社的な活動として推進しやすくなります。
③自社の課題や改善点を整理できる
DX認定制度では、企業のDX戦略やIT活用状況、情報発信の取り組みなどが確認されます。そのため、申請準備を進める中で、自社に不足している要素や改善すべき課題を把握しやすくなります。
例えば、「DX推進方針が明文化されていない」「データ活用の方向性が曖昧」「社内への浸透が十分ではない」といった課題に気づくケースもあります。
また、認定を取得すること自体がゴールではありません。申請準備を通じて、自社のDX推進方針や体制を見直し、継続的に改善できる状態をつくることにも意義があります。認定取得そのものだけでなく、自社のDX推進の現状把握や課題整理、さらなる改善につなげられる点も価値があるといえるでしょう。
DX認定制度の取得までの流れ
ここからは、ビジネス・アーキテクツが実際にDX認定制度を取得した際の取り組みをもとに、申請準備から取得までの進め方を紹介します。DX認定制度では、申請資料の提出だけでなく、DX推進方針の策定や体制整備などの事前準備が重要になります。
また、申請後には修正・再提出対応が発生する場合もあるため、スケジュールに余裕を持って進めることも大切です。
以降では、実際に取り組んだ内容や課題も交えながら、各ステップを解説します。
方針・DX推進整理
DX認定制度の取得に向けて、まず取り組むべきなのは、「なぜ自社としてDXを推進するのか」を再認識することです。DX認定制度では、単なるデジタルツールの導入状況ではなく、経営方針とDX推進がどのようにつながっているかが重視されます。
そのため、申請前に自社のDX推進方針や取り組み内容を整理し、認定申請書へ落とし込める状態にしておくことが重要です。
1.制度上求められること
DX認定制度では、認定申請書を通じて、企業のDX推進に関する方針や体制、取り組み内容を説明する必要があります。
具体的には、認定申請書の設問として、以下のような内容が示されています。※2
- (1)企業経営の方向性及び情報処理技術の活用の方向性の決定
- (2)企業経営及び情報処理技術の活用の具体的な方策(戦略)の決定
- ①戦略を効果的に進めるための体制の提示
- ②最新の情報処理技術を活用するための環境整備の具体的方策の提示
- (3)戦略の達成状況に係る指標の決定
- (4)実務執行総括責任者による効果的な戦略の推進等を図るために必要な情報発信
- (5)実務執行総括責任者が主導的な役割を果たすことによる、事業者が利用する情報処理システムにおける課題の把握
- (6)サイバーセキュリティに関する対策の的確な策定及び実施
※2 DX認定制度 申請要項 本編 申請ガイダンス. 独立行政法人情報処理推進機構(IPA). (参照 2026-06-05)
2.BAで実際に行ったこと
ビジネス・アーキテクツでは、経営方針や企業理念をもとに、「あたりまえをアップデートする」という考え方を軸として、DX推進の方向性を整理しました。また、認定申請書の作成に向けて、既存の経営方針や取り組み内容の棚卸しを実施しています。
具体的には、以下のような観点で整理を行いました。
- 「あたりまえをアップデートする」という企業理念
- クライアントと共創しながら課題解決を行う姿勢
- デジタルを活用した継続的な改善・運用支援
- 部門横断で連携しながらプロジェクトを推進する体制
- Web・システム・データ活用を組み合わせた支援体制
- 社内外のコミュニケーションを重視した組織運営
※3 私たちについて|ビジネス・アーキテクツ. (参照 2026-06-05)
3.ステップのポイント
この工程でポイントになったのは、「新しいDX施策をゼロから作ること」ではなく、「すでに行っている取り組みをDX推進として整理・言語化すること」でした。
実際に進めてみると、「取り組み自体は行っているが、DXとして説明できる状態になっていない」というケースもありました。そのため、まずは自社で行っている施策を洗い出し、「どのような目的で行っているのか」「どのような価値につながっているのか」をまとめることが、最初のステップとなりました。
推進体制と環境の整備
DX認定制度では、DX推進方針を策定するだけでなく、その方針を継続的に実行できる組織体制や運用環境が整っているかも評価のポイントとなります。
そのため、DX推進に関わる部門や役割、セキュリティ対策、継続的に改善できる仕組みを整理し、申請資料へ落とし込める形でまとめておくことが重要です。
1.制度上求められること
DX認定制度では、DX推進を一時的な取り組みで終わらせず、継続的に実行・改善できる体制が求められます。
具体的には、以下のような内容を確認しておく必要があります。
- DX推進に関わる組織や担当部門
- DX推進を担う責任者や役割分担
- DX推進を支える運用環境
- 情報セキュリティ対策やガバナンス体制
- 継続的に改善していくための仕組み
特に、DX推進ではデジタル技術の活用だけでなく、情報管理やセキュリティ対策も欠かせません。そのため、組織体制とあわせて、安心してDXを進められる環境が整っているかを確認しておく必要があります。
2.BAで実際に行ったこと
ビジネス・アーキテクツでは、まずDX推進にどの部門が関わっているのかを確認し、各部署の役割や責任範囲を資料に落とし込みました。
また、DX推進を支える基盤として、情報セキュリティ関連を担当するグループへヒアリングを実施し、現在行っているセキュリティ対策を整理しました。
具体的には、以下のような取り組みを確認しています。
- セキュリティハンドブックを用いた定期チェック
- 社員向けのセキュリティ教育
- セキュリティマニュアルの整備
- ISMS認証取得への取り組み
- プライバシーマーク取得・運用
さらに、DX推進を継続的に進めるため、部門間で連携しやすい組織づくりや、状況に応じた組織体制の見直しも行っていました。PDCAサイクルを意識して運営することで、継続的に改善できる体制作りにつなげました。
3.ステップのポイント
このステップでは、DX推進の方針を実行に移すための体制や環境を整理しておくことが重要です。関係する部門や役割、セキュリティ対策、継続的な改善の仕組みを棚卸しし、申請資料の中で説明できる状態にしておくと、認定取得に向けた準備を進めやすくなります。
申請資料作成と手続き
DX認定制度では、これまで整理してきたDX推進方針や組織体制、セキュリティ対策などの情報をもとに認定申請書を作成し、IPAが提供する申請システム(DX推進ポータル)から申請を行います。※4
※4 DX認定制度の申請方法. 独立行政法人情報処理推進機構(IPA). (参照 2026-06-05)
また、申請書だけでなく、企業が公開しているDX推進情報も審査の対象となるため、公開情報との整合性を意識しながら準備を進めることが重要です。
1.制度上求められること
DX認定制度では、DX推進に関する取り組みをまとめたうえで、認定申請書の作成と情報公開を行う必要があります。
具体的には、以下の流れで準備を進めます。
- 整理した情報をもとに申請書を作成する
まず、事前に整理した情報をもとに認定申請書を作成します。
具体的には、以下のような内容を申請書へ記載します。
- 経営方針・DX推進方針
- DX戦略や取り組み内容
- 推進体制や役割分担
- セキュリティ対策
- 情報発信内容
申請書では、「どのような取り組みを行っているか」だけでなく、「なぜその取り組みを行っているのか」まで説明することが求められます。そのため、DX推進の目的や背景も含めて整理しておくことが重要です。
-
コーポレートサイト上にDX推進情報を公開する
申請時には、申請書だけでなく、企業が公開しているDX推進情報も確認されます。そのため、DX推進方針や推進体制、取り組み内容、セキュリティ対策などをコーポレートサイト上で公開し、第三者が確認できる状態にしておく必要があります。 -
申請内容と公開情報の整合性を確認する
最後に、認定申請書と公開情報の内容に差異がないかを確認します。
「申請書には記載しているが公開情報がない」「公開情報には記載されているが申請書へ反映されていない」といった状態になっていると、修正対応が発生する可能性があります。そのため、提出前に内容や表現、掲載URLなどを確認し、申請書と公開情報の整合性を確保することが重要です。
2.BAで実際に行ったこと
ビジネス・アーキテクツでは、前工程で整理したDX推進方針や組織体制、セキュリティ対策などの情報をもとに認定申請書を作成しました。
また、DX認定制度の申請に対応するため、コーポレートサイト上へDX推進に関するPDFを掲載し、申請内容との紐づけを行っています。
公開した内容は以下のとおりです。
- DX推進方針
- DX推進体制・推進責任者
- DX推進に関する取り組み内容
- 人材育成・組織改善施策
- セキュリティ対策やガバナンス体制
さらに、提出前には申請書と公開情報の内容を照らし合わせ、最終確認を実施しました。
特に、
- 申請内容と公開情報に差異がないか
- 記載内容に矛盾がないか
- URLリンクに誤りがないか
- 第三者が見ても理解できる内容か
といった観点で確認し、公開情報を含めた全体の整合性を意識しながら申請を進めました。
3.ステップのポイント
DX認定制度の申請では、「申請書の作成」だけでなく、「申請内容と公開情報の整合性確保」が重要になります。申請前に、DX推進方針や推進体制、取り組み内容がコーポレートサイト上で適切に公開されているかを確認し、申請書との内容に差異がない状態を整えておきましょう。
申請後の修正・再提出
DX認定制度では、申請書を提出した後にIPA(情報処理推進機構)による内容確認が行われます。提出内容に問題がなければそのまま審査が進みますが、不足事項や確認事項がある場合は、修正依頼が届きます。
そのため、申請後も内容確認や修正対応が発生することを前提に、スケジュールに余裕を持たせておくことが重要です。
1.制度上求められること
DX認定制度では、申請後にIPAから修正依頼や確認事項が提示された場合、内容を見直したうえで再提出を行う必要があります。
具体的には、以下の流れで対応します。
-
フィードバック内容を確認する
まず、IPAからの指摘内容を確認し、どの箇所に修正や補足が必要かを整理します。 -
申請内容と公開情報の整合性を確認する
申請後の確認では、申請書だけでなく、コーポレートサイトなどで公開しているDX推進情報も確認対象となります。
そのため、以下の内容に差異がないかを確認し、必要に応じて修正を行います。
- 申請書の内容
- 公開しているDX推進情報
- 掲載しているURLや関連資料
- 修正内容を反映し再提出する
修正対応では、単に情報を追加するだけでなく、第三者が理解しやすい内容になっているかを確認しながら、再提出を行います。専門用語や抽象的な表現を避け、具体的な取り組み内容をわかりやすく整理することが重要です。
2.BAで実際に行ったこと
ビジネス・アーキテクツでも、申請後にIPAからフィードバックを受け、一部内容を修正して再提出しました。
主に以下のような観点で内容を見直しました。
- 説明内容が不足している箇所の補足
- DX推進内容の具体化・言語化
- 記載内容の表現調整
- Webサイト上の公開情報との整合性確認
また、申請書の内容だけでなく、
- DX推進PDFの内容
- コーポレートサイト上の記載内容
についても、内容に差異がないかを再確認しました。
修正対応では、「社内では理解できている内容」を第三者にも伝わるように整理し直すことを意識し、専門用語を減らしながら具体的な表現へ修正しました。
その結果、申請後の内容確認や修正対応を経て、ビジネス・アーキテクツでは申請から約6カ月でDX認定を受理いただくことができました。
3.ステップのポイント
DX認定の取得までには一定期間を要します。ビジネス・アーキテクツでは、申請後の内容確認や修正対応を含め、申請から認定まで約6カ月かかりました。そのため、申請書作成だけでなく、公開情報の整備や修正対応期間も考慮し、余裕のあるスケジュールで進めましょう。
DX認定制度の取得に向けて今からできること
DX認定制度では、単に申請資料を提出するだけでなく、自社のDX推進を可視化することが重要です。ビジネス・アーキテクツでも、経営方針の整理や組織体制・セキュリティ対策の見直しを行いながら、認定取得を進めました。
特にポイントとなったのは、以下の3つです。
- DX推進の目的や方針を明確にする
- 継続的に推進できる体制を整備する
- 既存の取り組みを整理・言語化する
DX認定制度では、新しい施策を増やすよりも、「現在行っている取り組みをDX推進の文脈でどう説明できるか」が重要になります。
そのため、まずは既存のDX推進施策や業務改善活動を整理することから始めてみるとよいでしょう。
また、申請後には修正対応が発生する場合もあるため、余裕を持ったスケジュール設計や、複数人での確認体制も大切です。
よくある疑問(Q&A)
Q.DX認定制度は大企業しか取得できませんか?
A.いいえ。中堅・中小企業を含め、業種を問わず申請可能です。
Q.特別なシステム導入は必要ですか?
A.必須ではありません。既存のDX推進施策や業務改善を整理・明文化することも重要です。
Q.申請後すぐに認定されますか?
A.内容確認や修正対応が発生する場合があるため、一定の期間を見込んで進める必要があります。
Q.申請から認定まではどのくらいかかりましたか?
A.ビジネス・アーキテクツでは、申請後の内容確認や修正対応を含め、申請から認定まで約6カ月かかりました。
DX認定制度の取得を進めるには、制度要件を確認するだけでなく、自社の方針や取り組みを第三者に伝わる形で整理し、Webサイトや公開資料で発信することも重要です。ビジネス・アーキテクツでは、こうした情報整理やコンテンツ設計、Webサイトでの情報発信を支援しています。
