Webサイトを 改善しているのに、なかなか成果につながらない。そんな悩みを感じたことはないでしょうか。
リニューアルを行い、SEOも対策し、問い合わせフォームも整えた。それでもユーザーは途中で離脱し、問い合わせは思うように増えていかない。画面を眺めながら「何が悪いのだろう」と考えても、これといった手がかりも見えてこない。そんな経験をされたことがある方は多いのではないでしょうか。
改善後の成果に伸び悩んだとき、まず目が向くのはデザインや導線、コンテンツの内容です。ところが、そうした要素を見直しても手応えが得られないとき、意外と見落とされているのが画面のなかの「言葉」です。ボタンの文言、エラーメッセージ、フォームの説明文。一つひとつは小さなテキストですが、その曖昧な表現やわずかな引っかかりが積み重なると、ユーザーは操作のたびに迷い、ストレスを感じてしまいます。
この記事では、Webサイトの「言葉の設計」が使いやすさに与える影響と、改善のときに役立つ観点を、Before/Afterの事例で整理していきます。

Webサイトの体験を高める「言葉の設計」という視点
Webサイトの使いやすさを高めようとするとき、まず思い浮かぶのはデザインの見直しや機能改修ではないかと思います。導線を整える、見やすくする、フォームのバリデーション(入力チェック)を強化する。これらは確かに、使いやすさを支える土台となる要素です。
ただ、それだけでは届かない領域があります。ボタンの文言、エラーメッセージ、フォームの説明文。一つひとつは小さなテキストですが、ユーザーが「次にどう動けばいいか」を判断する場面で、その言葉は機能と同じくらい大きな影響を持っています。
こうしたUI上のテキストを、デザインや機能と並ぶ設計の対象として整えることを、「UXライティング」と呼びます。UXライティングは、ボタン・エラーメッセージ・ラベル・確認ダイアログ・リンクテキストなど、画面のなかでユーザーの操作を支える役割を持ちます。
ユーザーが「迷う」「止まる」場面に潜む言葉の問題
ユーザーがWebサイトのなかで何かに迷ったり、操作が止まったりする場面を、思い浮かべてみてください。多くの場合、そこには共通の傾向があります。
- ボタンを押す直前に手が止まる
- 「送信する」というボタンの前で、押した後の動きが想像できず、判断を保留してしまう。
- フォームの入力で迷う
- 「担当者様情報」とだけ書かれたラベルを見て、会社の担当者を書くのか、自分の情報を書くのかが分からず、しばらく画面と向き合ってしまう。
- エラー発生後、次にやるべきことが分からない
- 「入力に誤りがあります」とだけ表示され、どう直せばよいのか手がかりがつかめないまま、戻るボタンを押してしまう。
これらに共通しているのは、見た目や機能だけでは解決しきれない問題です。ボタンは押せるし、フォームへの入力も、エラーの検知も問題なく動いています。それでもユーザーが手を止めてしまうのは、画面のなかにある言葉が、判断のための手がかりを十分に渡せていないからです。こうした場面でこそ、画面のなかの言葉である「UXライティング」をどう設計するかが問われます。
コピーライティングとUXライティングの違い
「UXライティング」は、コピーライティングと混同されることが多い言葉でもあります。しかし、両者は同じWebサイトに並んで存在しながら、果たしている役割は異なります。役割は違っても、互いに補い合う関係にあります。
コピーライティング
Webサイトやサービスに触れる前のユーザーが目にする言葉で、興味を引いたり印象を残す役割を担います。キャッチコピーやバナー、ランディングページの冒頭などで使われ、サービスの価値を瞬時に伝える言葉です。
UXライティング
一方、UXライティングが扱うのは、Webサイトやサービスを使っている最中のユーザーが目にする言葉です。迷わせず次の行動へ進ませる役割を担っています。ボタンの文言、フォームのラベル、エラーメッセージといった、画面上で操作と直接結びつく部分の表現を担います。
企業のWebサイトでも、キャッチコピーやメインビジュアルには時間をかけながら、フォームのラベルや送信後のメッセージは初期設定のまま、というケースは珍しくありません。関心を引けても、最後の操作で迷いが生じれば、ユーザーは離れてしまいます。コピーとUXライティングが揃ってはじめて、関心から行動までの流れがつながります。
言葉は「減らす」より「届ける」を意識する
「ユーザーは文字を読まない」とよく言われます。実際、Webページに書かれているテキストのうち、ユーザーが目を通すのは平均20〜28%程度だとされています(※)。
読まれないのであればできるだけ短くする、という方向性自体は間違っていません。ただし、「読まれない=不要」と単純に置き換えてしまうと、判断に必要な言葉まで削ってしまいます。文字量ではなく、必要な言葉が必要な場所に置かれているかのほうが重要なのです。
※ How Little Do Users Read?. Nielsen Norman Group.(参照 2026-05-19)
流し読みが前提だからこそ、「届く言葉」を設計する
ユーザーは多くの場合、ページ全体を精読するのではなく、見出しやボタン、フォームのラベルといった要素を拾い読みしながら、判断に必要な情報だけを探しながら読み進めていきます。
だからこそ、ボタンラベルやリンクテキスト、エラーメッセージのように目に入りやすい場所にある短い言葉ほど、それ単体で意味が完結している必要があります。
利用頻度に合わせて言葉を設計する
言葉の量や丁寧さは、その操作がどのくらいの頻度で使われるかによっても変わってきます。
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頻繁に目にする操作は、短く直感的に
- 「保存」「完了」「キャンセル」「閉じる」。こうした短い表現で十分に意味が通じます。説明を加えすぎると、かえって操作のリズムを乱してしまいます。
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取り消しできない操作(削除や退会など)は、丁寧に先回りして伝える
- 「この操作を行うと、登録済みのデータは削除されます。元に戻すことはできません」のように影響を伝えたり、「削除せずに前の画面に戻ることもできます」のように別の選択肢を示したりすると、ユーザーは安心して判断できます。
つまり、言葉を「減らす」こと自体が目的ではありません。ユーザーがすべてを読まない前提に立ったうえで、それでも届けるべき情報を適切な分量で残しておくことが、Webサイトの使いやすさを支えていきます。
Webサイトの「言葉」は、この観点で見直せる
ここまでの考え方を踏まえて、自社のWebサイトを開いて、言葉に目を向けてみてください。次の問いを持って眺めるだけでも、引っかかりが見えてくるのではないでしょうか。
- 押した後の動きが想像できるか
- 次に何をすればいいか分かるか
- 流し読みでも意味が伝わるか
- ユーザーを責めるような言い方になっていないか
こうした視点を持って見ていくだけでも、見直しの糸口は十分に見つかるはずです。以下に、特に確認しておきたい4つのポイントをご紹介します。
①ボタンの文言:押した後がイメージできるか
- NG:「送信する」「確認する」「はい」
- OK:「申込みを完了する」「資料をダウンロードする」「お問合わせ内容を送信する」
ボタンの文言は、押した後に何が起きるのかを具体的に伝えることが基本です。「送信する」だけでは、何を送るのかが曖昧ですし、「はい」だけでは、何に対しての「はい」なのかが伝わりません。
②エラーメッセージ:次に何をすればいいかが伝わるか
- NG:「入力に誤りがあります」
- OK:「メールアドレスの形式が正しくありません。@マークを含む形式で入力してください」
エラーメッセージで特に意識したいのは、「どこに問題があるか」と「次にどう直せばよいか」をセットで伝えることです。エラーがあることだけを示しても、ユーザーは次の一歩に進めません。ユーザーを責めるような言い方を避け、「○○の形式で入力してください」のように具体的な対処方法を示すほうが、ユーザーは迷わず入力を続けやすくなります。
③確認ダイアログとボタン:選択後の結果が伝わるか
- NG:「削除しますか?」「OK」「キャンセル」
- OK:「削除しますか?」「削除する」「やめる」
ダイアログには、つまずきやすいパターンがいくつかあります。
- 「OK」が何を指すのか不明な問題
- 「OK」や「キャンセル」だけだと、何に対するOKなのかがはっきりしません。とくに削除や退会のように取り消せない操作では、ボタンの文言が判断のしやすさを大きく左右します。。「削除する」「やめる」のように動詞で書き分けることで、ユーザーは安心して選択できます。
- 「キャンセルのキャンセル」問題
- 「申請をキャンセルしますか?」「はい」「キャンセル」は何をキャンセルするのかが分かりにくい二重構造になりがちです。「申請を取り消しますか?」「取り消す」「戻る」のように、場面ごとに「やめる」「戻る」「取り消す」を使い分けると、二重構造による混乱を避けられます。
- ネガティブアクションのボタン設計
- 「アカウントを削除する」「 キャンセル」より、「アカウントを削除する」「削除しない」と選択の意味が伝わる言葉にすると、ユーザーは判断しやすくなります。
確認ダイアログは、「取り消しができない操作」の最後の砦になる場面です。ボタンの文言ひとつで、ユーザーが安心して選べるかどうかが変わってきます。
④リンクテキスト:遷移先が想起できるか
- NG:「詳しくはこちら」
- OK:「サービスの料金プランを見る」
「詳しくはこちら」というリンクは、文脈に依存しすぎているため、リンク単体では何が書かれているページに移動するのかが分かりません。これはアクセシビリティの観点でも見過ごせません。スクリーンリーダーには、ページ内のリンクを一覧にして読み上げる機能があり、その際は前後の文章が切り離されます。「こちら」「こちら」と同じ言葉が続くと、どれが目的のリンクなのか判断できなくなってしまいます。リンクテキストは、それ単体で意味が完結している状態が理想です。
言葉の一貫性が、サイト全体の使いやすさと信頼を支える
ボタンやエラーメッセージなど、個別の言葉を見直すことは、今日からでも始めやすい取り組みです。ただ、個別の文言を直すだけでは、サイト全体の使いやすさまでは整いません。サイト全体で言葉のトーンや表記が揃っていると、ユーザーは違和感なく読み進めやすくなり、「このサイトは信頼できる」と感じやすくなります。
口調がバラバラだと、ユーザーは無意識に違和感を覚える
実際の運用では、ページごとに更新する人が違ったり、サービスごとにライティング担当が分かれていたりすると、Webサイト全体でトーンや用語がズレていきます。あるページでは丁寧な敬語を使っている一方で、別のページでは簡潔な命令形になっている、といった状態が起こります。
こうしたことが積み重なるとユーザーには「ちぐはぐなサイト」として映り、無意識のうちに違和感を抱かせてしまいます。
こうした状態を防ぐには、個別の表現を一つずつ決めるのではなく、判断の軸をあらかじめ持っておくことが有効です。場面ごとの基本トーンを決めておくとよいでしょう。
- 通常時:落ち着いた口調で
- 操作完了:前向きに
- エラー時:丁寧かつ建設的に
- 警告時:感情を抑えてニュートラルに
また、文言を判断するときには、次のような観点があります。
- ユーザーにとって自然な日本語か
- 判断に必要な情報が整理されて入っているか
- 流し読みでも理解できるか
- 同じ意味が一貫しているか
これらを揃えておくだけでも、言葉の揺れは小さくなります。
Webサイトをリニューアルしても成果が伸びない背景には、こうした小さな違和感の積み重ねが関係しているケースは少なくありません。
ただし、こうしたルールを言語化し、組織で運用し続けることは、ひとりで抱えるには大きな負担です。個別の文言は直せても、Webサイト全体の整合性を保ち続けるには、Webサイト全体を見渡す視点と、継続的に見直すための体制が必要になります。
まとめ:「言葉」は、今日から見直せるUX改善の手段
Webサイトの体験は、デザインや機能だけで決まるものではありません。ユーザーが迷うかどうか、次の一歩に進めるかどうかは、画面のなかの一つひとつの言葉に大きく左右されます。
「言葉」を装飾ではなく、設計の対象として捉え直す。UXライティングの考え方を取り入れることが、改善の入口になります。
一つひとつの見直しは今日から始められますが、サイト全体で一貫した運用を続けていくのは、想像以上に手間のかかる領域です。社内だけで抱えきれないと感じたら、外部の視点を入れてサイト内の言葉の棚卸しから始めてみてください。
「言葉」という、見えにくいけれど確かに体験を左右する領域に、少しだけ光を当ててみる。そこから、UX改善は始まります。
Business Architects(ビジネス・アーキテクツ)では、Webサイトのデザインや機能だけではなく、ライティングも含めてUX改善のご支援を行っています。「どこからはじめるべきか分からない」という棚卸しの段階からご一緒できますので、自社サイトのライティングに少しでも引っかかりを感じたら、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
