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Web施策は「始める」より「やめる」が難しい

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プロフィールアイコン(イラスト):マーケター 田代
田代セールス&マーケティンググループ/マーケター(ビジネス・アーキテクツ)

広告代理店にてマンションデベロッパー、人材派遣の広告・マーケティング業務に携わった後、システム開発会社にて製薬会社や生命保険会社のマーケティング支援に従事。エンドユーザーに対してWebやメールを活用してのコミュニケーションの運用、改善、最適化などを中心に業務を担当。直近ではオウンドメディアの編集長として自社への引き合いを増やす役割を担った。

Webやデジタルマーケティングの施策は、気づくと増えていきます。SNS、自社サイト、オウンドメディア、広告、メルマガ。セミナーやウェビナー、サイト更新、コンテンツ追加、動画制作、レポート作成など、新しいチャネルや手法が増えるたびに、やることも少しずつ増えていきます。

新しい取り組みを始める議論はよく行われますが、「どの施策をやめるか」という話はあまり語られません。その結果、成果が出ていない施策や目的が曖昧な施策が残り続け、整理されないまま運用されているケースも少なくありません。

では、施策はどのように整理し、どのように終わらせるべきなのでしょうか。「ビジネス貢献」と「外部影響」という2つの軸で、施策の整理とやめ方について考えます。

※この記事では、SNSやオウンドメディア、広告だけでなく、セミナーやメール配信なども含めて「施策」という言葉で扱います。

Web施策は「始める」より「やめる」が難しい

施策は増え続けるが、やめ方は語られていない

新しいツールやチャネルは日々増え続け、進化し続けています。そうした流れの中で、新しい取り組みをしていないことが、どこか「遅れている」と捉えられてしまうこともあります。「まだやってないの?」と。

最近では、AIの活用というテーマも加わってきています。さらに、既存の施策も改善や拡張を重ねる中で、コンテンツや運用の手間が少しずつ増えていきます。こうして施策は自然と広がっていきます。

一方で、施策を「始める」ことについては議論される機会が多いものの、「どの施策をやめるか」「どのタイミングで見直すか」といった話は、あまり表に出てきません。

新しい施策の導入は評価されやすい一方で、既存の施策をやめる判断は、どうしても後回しになりがちです。やめること自体がネガティブに受け取られてしまうこともあります。その結果、明確な目的や成果が見えない施策も含めて、さまざまな取り組みが残り続けることになります。外注先に依頼していたとしても、管理や指示出しなど、運用の負担は広がっていきます。

こうして施策は少しずつ積み上がり、気づいたときには現場が疲弊し、「何をやっているのか全体像が見えにくい」という状態になってしまうことも少なくありません。

なぜ施策は整理されないのか

施策が増え続けること自体は自然な流れですが、現場では「整理されないまま残り続ける」状態になってしまいがちです。なぜ、そうした状態が起きてしまうのでしょうか。ここでは、現場でよく見られる理由を整理してみます。

さまざまなWeb施策や運用タスクが増え続け、整理しきれなくなっている状態を表したイメージ

成果の判断基準が曖昧になっている

施策をやめるかどうかを判断するには、本来「成果が出ているかどうか」を見る必要があります。ただ実際には、成果判断の基準自体が曖昧になっているケースも少なくありません。

例えば、オウンドメディアであればPVなのか、CV(問い合わせ数)なのか、認知度の指標なのか。SNSであればフォロワー数なのか、エンゲージメント率なのか。評価の軸が明確でないまま運用されていると、「良いのか悪いのか判断できない」という状態になりがちです。特に、短期で成果が見えにくい施策ほど、この判断は難しくなります。

その結果、「判断できないから続けておく」という選択になり、惰性的に施策が残り続けることになります。

担当者や組織の事情で継続されてしまう

施策は必ずしも成果だけで継続・停止が決まるわけではありません。実際には、担当者や組織の事情が影響することも多くあります。

例えば、立ち上げた担当者が異動してしまい、その施策の背景や目的が分からなくなってしまうケース。あるいは、複数の関係者が関わっていることで当初の目的が共有されず、「やめる判断」を誰も言い出せないケースもあるでしょう。

外注先に運営を依頼していたとしても、「一度始めたものを止める」という判断は簡単ではありません。こうした事情が重なると、施策は見直されないまま残り続けることになります。

「やめる=失敗」と捉えられやすい

もう一つ大きいのが、「やめること」に対する心理的なハードルです。

新しい施策を始めることは前向きに評価されやすい一方で、施策をやめることは「うまくいかなかった」と捉えられてしまいがちです。そのため、本来はやめるべき施策であっても、継続することが選ばれてしまうケースも少なくありません。「ここまで工数も予算もかけてきたのだから、もう少し続けたい」と感じてしまうこともあるでしょう。

また、「もう少し続ければ成果が出るかもしれない」という期待が残っている場合も、判断を難しくします。

結果として、明確な理由がないまま施策が続き、全体として整理されない状態につながっていきます。では、こうした状況を整理するには、どのような視点で見ていけばよいのでしょうか。

「成果の判断が曖昧」「担当・組織の事情」「やめる心理的ハードル」といった理由から、Web施策をやめられない状況を示した図。「結果としてやめられない」というメッセージを中央に配置している

施策を整理する視点

それでは、こうした施策はどのように整理していけばよいのでしょうか。

単純に「成果が出ているかどうか」だけで判断してしまってよいのでしょうか。短期的には成果が見えにくい施策や、直接的な成果に結びつきにくい施策もあるはずです。

この記事では、施策を整理するために、次の2つの視点で考えてみます。

ビジネスにどれだけ貢献しているか

1つ目は、どれだけビジネスに貢献しているかという視点です。

売上や問い合わせといった直接的な成果につながっているのか、あるいは認知や関係構築といった間接的な役割を担っているのか。施策ごとの役割や位置づけを整理することで、「続けるべき施策なのか」「見直すべき施策なのか」が見えやすくなります。

外部への影響・内部への影響がどの程度あるか

2つ目は、外部や内部にどの程度影響を与えているかという視点です。

例えば、広告のように流入数は減るものの止めてもユーザーに直接影響が出にくい施策もあれば、オウンドメディアのように、読者やフォロワーがいることで、止め方そのものが印象に影響する施策もあります。継続して運用している施策ほど、「見てくれている人がいる」「期待されている」といった状態になりやすく、やめ方が重要になります。

また、内部への影響も無視できません。広告を止めれば流入が減り、数値が悪くなります。経営層への報告指標として使われていれば簡単に止めづらいでしょう。想定していない使われ方をしていることもあります。

施策をマトリックスで整理してみる

「ビジネス貢献」と「影響の大きさ」。この2つの視点を使って、施策を整理してみます。この手の整理では、要素を増やしすぎず、一度シンプルに切り分けた方が考えやすくなります。「影響の大きさ」には外部向き・内部向きが含まれますが細分化せずに考えてみましょう。

このマトリックスを用いて、施策を「続ける」「やめる」で判断するのではなく、「どう扱うか」を考えるための土台として使うイメージです。

マトリックスの全体像

Web施策を「ビジネス貢献度」と「運用負荷」の2軸で整理した4象限マトリックス図。成果が高く負荷が低い施策は継続対象、成果が低く負荷が高い施策は見直し・停止候補として整理している

上記の図版が2つの視点で整理したマトリックスです。縦軸は「ビジネス貢献」、横軸は「影響の大きさ」とします。それぞれを「大・小」で分けることで、施策を4つの領域に整理します。大事なのは、分類すること自体ではなく、施策をどう扱うかを考えるために使うことです。

施策を当てはめて考えてみる

このマトリックスに、施策を当てはめてみるとイメージがしやすくなります。例えば、広告のように社内でコントロールしやすく、止めてもユーザーに直接影響が出にくい施策は、「影響 小」に当てはめてよいでしょう。一方で、メルマガ、オウンドメディアのように、読者やフォロワーがいる施策は、「影響 大」として考えることができます。「うちは逆かも」というケースもあるかもしれません。まずは考えることが大切です。

同じく、売上や問い合わせにつながっている施策は「ビジネス貢献 大」、そうでないものは「ビジネス貢献 小」といった形で整理していきます。

  • この施策は、売上や問い合わせにどれくらい貢献しているか
  • この施策を止めたときに、外部や内部にどれくらい影響が出るか

この2つの視点で考えてみると、「これはこのあたりに位置しそうだな」と整理できるものもあれば、「どこに置くべきか迷う施策」も出てくるはずです。ただ、それで問題ありません。むしろ迷う施策こそ、これまで位置づけが曖昧だった施策と言えます。

各象限の考え方

それぞれの象限を、もう少し具体的に見てみます。

ビジネス貢献 大 × 影響 大(戦略的に判断する)

売上や成果に直結しており、かつ外部・内部を含めた影響が大きい施策です。
例えば、継続的にリードを生んでいるオウンドメディアやホワイトペーパー、重要なコミュニケーションチャネルになっている施策、サイトへの流入経路になっているSNSなどが該当するでしょう。

この領域の施策は、「やめるかどうか」だけで判断しない方がよい施策です。もし、やめる、あるいはペースを落とす判断をする場合は、アクセス減やリード減少といった影響も考慮しながら、全体戦略の中で位置づけを見直す必要があります。

言い換えると、この領域の施策は単独で止める・続けるを決めるというより、「代わりに何を強化するのか」まで含めて考えるべき施策と言えそうです。

ビジネス貢献 大 × 影響 小(慎重に扱う)

成果にはつながっているものの、影響が比較的小さいと言える施策です。例えば、検索連動広告の縮小などがこれに近いかもしれません。

この領域は、外から見た印象の変化はそれほど大きくない一方で、ビジネスへの影響は無視できません。そのため、比較的コントロールしやすい施策ではあるものの、「止めやすい施策」と考えてしまうのは危険です。

重要なのは、止めること自体ではなく、止めたときにどの数字がどう変わるかを見ながら判断することです。

ビジネス貢献 小 × 影響 小(停止候補)

現時点での貢献度も低く、影響も小さい施策です。この領域にある施策は、まず見直しや停止の候補として考えやすい領域と言えます。

例えば、効果が見えにくいWeb接客ツール、成果につながっていないSNS運用、内部向けであれば誰も見ていない定期的な集計や報告資料なども含まれるでしょう。

この領域であっても、すぐにやめればよいとは限りません。以前は成果や意味があったのか、ずっと成果が出ていないのか、将来的な見込みがあるのかないのかで判断は変わります。加えて計測ごとは一度止めてしまうと将来的に失われてしまうといったリスクもあります。

この象限は「止めてよい施策」ではなく、「一度立ち止まって役割を見直すべき施策」と捉えた方がよさそうです。

ビジネス貢献 小 × 影響 大(設計して終わらせる)

成果にはつながっていないものの、外部への影響が大きい施策です。例えば、更新を止めてしまったオウンドメディアや、形だけ残っているSNSアカウントなどが該当するでしょうか。

この領域の難しさは、「雑に終わらせると印象が悪くなる」ことです。そのため、単純に止めるのではなく、終了の仕方や整理の仕方を設計したうえで段階的に見直していくことが重要になります。

更新終了を伝えるのか、別のチャネルに誘導するのか、役割を縮小して残すのか。こうした判断まで含めて考える必要があるため、この象限は「止める判断」よりも「終わらせ方の設計」が大切な領域と言えそうです。

このように整理してみると、それぞれの施策を「続けるか、やめるか」ではなく、「どのように扱うか」という視点で考えやすくなります。

施策のタイプによって変わる「やめ方」

実際に施策を見直す、あるいはやめる際には、どのように考えればよいのでしょうか。繰り返しになりますが、大切なのは、「やめるかどうか」をいきなり決めるのではなく、まず施策の位置づけを整理し、「どう扱うか」を考えることです。

まずは“やめるかどうか”ではなく、“どう扱うか”を決める

施策の見直しというと、「続けるか、やめるか」という二択で考えてしまいがちです。ただ実務では、この二択だけで判断できるケースは多くありません。

一時的に成果が落ちているだけなのか、役割自体が変わっているのか、他の施策で代替できるのか。前提によって、取るべき判断は変わります。

そのため、いきなり「やめる」という結論を出すのではなく、まずは施策の位置づけを整理し、「どう扱うか」を考えることが重要になります。

判断の目安をあらかじめ持っておく

もう一つ大事なのが、「やめるかどうか」を後から考えるのではなく、あらかじめある程度の目安を持っておくことです。

例えば、「何を見て評価するのか」「いつ見直すのか」「どこまでコストをかけるのか」といった目安です。もちろん、現場ではきれいに決めきれないことも多いと思います。ただ、こうした目安が何もないまま進むと、「なんとなく続ける」状態になりやすくなります。

実際には、「もう少し続ければ成果が出るかもしれない」「ここまで工数も予算もかけたのだから、今やめるのはもったいない」といった判断が繰り返され、施策が残り続けてしまうことも少なくありません。

「どこで立ち止まるか」を決めておくだけでも、判断はしやすくなるでしょう。完璧な基準を作る必要はありません。あらかじめ目安を持っておくことで、「続ける理由」だけではなく、「見直す理由」でも施策を見られるようになります。

「施策を見直すときの考え方(やめ方の整理)」をまとめた図。「判断の前提を整理する」では『何を見て評価するか』『いつ見直すか』『どこまでコストをかけるか』を整理。「施策のタイプで考える」では『内部で完結する施策は段階的に調整しやすい』『外部に影響がある施策は終わらせ方の設計が必要』と説明。「『やめる』以外の選択肢」では『縮小する』『効率化する(AIなど)』『役割を見直す』という選択肢を示している

内部で完結する施策の扱い方

広告やレポート作成、ツール運用など、主に社内で完結する施策は、比較的見直しやすい領域です。

外部への影響が小さいため、段階的に縮小する、別の施策に置き換える、一度止めて様子を見るといった判断が取りやすい特徴があります。

一方で、内部施策であっても、重要な指標に影響している場合や、他の施策の前提になっている場合は注意が必要です。特に、レポートや評価指標として使われている場合は、「止めると何が見えなくなるのか」という観点で整理しておくことが重要になります。

外部に影響がある施策の扱い方

SNSやメルマガ、オウンドメディアなど、ユーザーや読者に直接影響がある施策は、やめ方を慎重に考える必要があります。

こうした施策は、単純に止めてしまうと、「更新が止まっている」「運用されていない」といった印象を与えてしまう可能性があります。

そのため、止める場合でも、事前に告知する、更新頻度を徐々に下げる、別のチャネルに誘導するといった形で、段階的に整理していくことが求められます。

ここでは「止めるかどうか」よりも、「どう終わらせるか」の設計が重要になります。

「やめる」以外の選択肢も考える

最後に、施策の見直しは必ずしも「やめる」だけではありません。

例えば、更新頻度を下げる、運用を簡略化する、AIなどを活用して効率化するといった形で、負担を抑えながら継続するという選択もあります。

特に、一定の役割はあるものの工数がかかっている施策については、「やめるかどうか」ではなく、「どう続けるか」という視点で見直すことが有効です。

このように、施策の位置づけや影響の大きさによって、適切な見直し方ややめ方は変わってきます。では最後に、ここまでの内容をまとめてみます。

施策を終わらせることも設計する

施策は、気づけば増えていきます。だからこそ、「何を始めるか」だけでなく、「何をやめるか」「どう見直すか」も含めて考えることが大事になってきます。

とはいえ、実際の現場では、数字だけでは決めきれないことも多いですし、関係者の事情やこれまでの経緯もあって、1人で判断しきれないこともあると思います。整理してみたものの、「結局どう考えればいいのか」と迷う場面もあるでしょう。

そんなときは、社内だけで抱え込まず、社外に相談してみるのも一つの方法です。Business Architects(ビジネス・アーキテクツ)でも、施策の整理や見直しについて壁打ちのような形でご相談いただくことがあります。

「いきなり何かを決める」ためではなく、まずは今ある施策をどう見るか、どこから整理するか。そんなところからでも、一緒に考えていければと思います。